あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第9章 その乙女ゲーム、本当に必要ですか?

第101話 まさかのマゾ!?

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「『悪役令嬢』?」

 アイリスの口からまたもや知らぬ言葉が飛び出しウェルシェは小首をかしげた。

(たしかイーリヤ様も同じ言葉を使われていたけど……)

 いったい『悪役令嬢』とは何なのだろうか?


「あなたみたいに傲慢で高飛車な女の事よ」
「傲慢……ですか?」

 ウェルシェは他人をおちょくって楽しむ腹黒な少女だが傲慢ではない。侍女のカミラに好き勝手言われても許してしまっているように気さくな令嬢である。

 実際に学園内の評価でも親しみやすい令嬢として人気があるほどだ。

「身分が低いからって『私』ヒロインをイジメるのよ。それでみんなから嫌われて最後には『ザマァ』されるの」
「は、はぁ?……」

 何と答えて良いのやら。

 ウェルシェに彼女を虐げた事実は無い。
 また、今後もそんな予定は皆無である。

 だいたい自分がどうして身分が低い人物をイジメなければならないのだろうか?

 この学園にはウェルシェよりも家格の下の者の方が圧倒的に多いのだ。そんな者達をいちいちイジメるなど非効率で非生産的な行為である。利と理を重んじるウェルシェには不可解極まりない。

 そこに何の得があると言うのか……まったくもって意味不明だ。

「だから早く自分の役割を果たしなさいよ!」
「役割?」
「そうよ、あんたは『わんこルート』と『ヤンデレルート』の悪役令嬢じゃない」

 わんこ?
 ヤンデレ?
 何のこっちゃ?

 次から次にアイリスの口から出てくる意味不明な言葉にさしものウェルシェも目が点だ。

「エーリックとの政略結婚が嫌で片想いしてるケヴィンに付き纏う、ヤンデレケヴィンルートの悪役令嬢としてヒロインに意地悪するのがあんたの役目でしょ!」
「先程から何を仰られておりますの?」

 まったく意思疎通が取れず、とにかく人語で話して欲しいとウェルシェは切実に願う。

「あんたが仕事しないせいで『わんこルート』が解放されないじゃない!」
「そう申されましても私には何の事やら……」

 アイリスとは面識がないし、仕事を依頼された覚えもない。

「いいから、あんたは私をイジメなさいよ!」
「えっ!? あなたマゾなんですの?」

 ドン引きだ。

 そんな変態との関わり合いはノーサンキューだ。

 ウェルシェはスススーッとアイリスから距離を取った。
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