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第11章 そのお祭り、本当に必要ですか?

第124話 見えないもの

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「それは理解よ」

 答えの見えないレーキに対して、ウェルシェは事もなげに答えた。

「国や領の運営は一人ではできないわ」
「つまり、人を理解せよと?」

 確かにそれは必要だとレーキも頷いた。
 ところがウェルシェは首を横に振った。

「違うわ、仕事よ。まあ、人を理解できたら、それはそれで有益な能力だけど」
「人は理解できないと?」

 あなた方もオーウェン殿下で経験したでしょ、とウェルシェは笑った。

「人の能力、忠誠、性格……それらを他人が理解できると思って?」

 私は無理よとウェルシェは手をヒラヒラ振る。

「だから必要なのは人に仕事を任せた時に適切な評価を下す事よ」
「ああ、だから仕事の理解ですか」

 人に仕事を任せる、そして評価する。それは簡単なようで難しい。

「ええ、例えば戦争が起きて将軍に一軍を与えたとしましょう。戦に敗北した場合、その将軍は無能かしら?」
「なるほど、成果主義なら無能と断じるでしょうが、戦の状況が分からねば正確な判断は下せませんね」
「そうよ。もしかしたら100対1の最初から勝ち目の無い戦かもしれないんだから」

 ここに来てレーキにもウェルシェの考えが理解できた。

「だから、理解が必要なの。そして、人は経験しなければ中々理解できないものでもあるわ」
「エーリック殿下は全てにおいて一流とは言い難いですが、逆に満遍なく色々な事ができる……」
「無知蒙昧による盲目的な人任せと博聞強記による信頼の一任は似て非なるものなのよ」
「これは確かに私が浅はかでした」

 専門家に優る必要はないが、何も知らなければ彼ら専門家がしている仕事を評価できない。往々にして上司が部下の仕事を掻き乱すのは業務への無理解からくる。

「何でもできるだけではなく、それらを理解しなければならないけど……きっと大丈夫、エーリック様は一歩一歩努力を重ねる方だから」

 そうエーリックを語るウェルシェの顔がとても優しくて、レーキは思った以上に彼女が自分の婚約者を想っているのだと知った。

「なるほど、自分の事さえ見えないのだから他人を見抜けるなどと思い上がるものではありませんね」

 深謀遠慮のウェルシェでさえ自分の恋心に気がついていないのだなと、レーキは魔王ではないかと思っていたウェルシェの少女らしい一面に少しホッとしたのだった……




〇魔術競技『氷柱融解盤戯アイシクルメルティング

  氷柱配置図
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 盤上に互いの氷柱を交互に並べ、時間内に何本対戦相手の氷柱を溶かせるかを競う。ただし、自分の柱を溶解させた場合はペナルティがつく。
 炎熱魔術と氷結魔術を複合・応用した調温魔術ターゲットテンパレイチャと呼ばれる温度を調節するだけの魔術で溶解させなければならない。あくまで魔力コントロールを鍛える盤上遊戯であり、他の魔術で破壊するなどは反則となる。
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