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第13章 そのラブコメ、本当に必要ですか?
第140話 成長する者としない者
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まだ十五歳の少年が他人の努力を垣間見るのは簡単なようで、実はなかなかできるものではない。
どこかオドオドしていて覇気がないとか頼りないとか陰口を叩く連中も多い。だが、なかなかどうしてエーリックは得難い資質を備えている。
しかも、最近では人としても大きくなってきていた。
(スレインみたく愛の力とは言わないが、これも姫さんのお陰なんかね?)
かの腹黒令嬢は婚約してからエーリックをそれとなく育成している節がある。もしかしたらウェルシェ自身も気がついていないかもしれないが。
(それに比べてオーウェン殿下の落ちぶれようと言ったら……)
王者の風格のあったオーウェンの凋落ぶりはどうか。
彼は異母弟と違い幼少期より王威があり、その気風もからりとしていて彼の治世は明るいものになりそうであった。
だが、オーウェンの成長は一人の令嬢と出会ってから止まってしまった。
――アイリス・カオロ
彼女もまた男を手玉に取ってもてあそんでいる。
だが、ウェルシェは男に幸をもたらし、アイリスは男に不幸を撒き散らす。
セルランには同じように見えてしまう二人の悪女。
それではウェルシェとアイリスの違いはいったい何なんだろう?
(婚約者が姫さんだったらオーウェン殿下も違った未来があったんだろうか?)
奇しくもセルランは自分の真の主人と同じ思考に至った。
(だが、オーウェン殿下は優秀な婚約者と有能な側近に囲まれていたじゃないか)
イーリヤは能力的には間違いなくウェルシェ以上で、レーキ達は頼れる頭脳である。質、数ともにオーウェンはエーリック以上のものを与えられた。
ところがオーウェンは自らそれらを捨てようとしている。
(彼らの上に立つのはそれだけ求められるものも多いのかもしれない)
時として天才の婚約者や有能過ぎる側近達は相手に大きな挫折感を与えるものだ。自信家のオーウェンにはそれが耐えがたい屈辱だったのかもしれない。
(オーウェン殿下はそれに耐えられなかったのだろうか?)
自分より優れた婚約者や腹心に嫉妬する気持ちは理解できなくもない。では、エーリックはどうなのか?
「殿下は姫さんに嫉妬した事はないんですかい?」
セルランの口を突いた疑問はかなり際どいもの。
スレインもギョッとしてセルランを睨みつけた。
セルラン自身もまずいと思ったが、今さら口から出た言葉は引っ込められない。
「僕が? ウェルシェに? 何で?」
ところが、エーリックは意味が分からないと目を点にして聞き返してくるではないか。
「えっ? いや、だって、姫さんって天才じゃあないですか」
何を当たり前の事を聞くんだとセルランは思ったが、エーリックは嫉妬の色などまったく見せずニマニマしだした。
「そうだよねぇ、ウェルシェってすごいよねぇ。この大会でも一年生で既にすごい成績残してるし」
「殿下、殿下、俺が聞きたいのは、そんなに優れた婚約者に嫉妬しないんですかって話でして」
ずれそうな話の方向をセルランが修正しようとしたが、エーリックはキョトンと目をぱちくりさせた。
どこかオドオドしていて覇気がないとか頼りないとか陰口を叩く連中も多い。だが、なかなかどうしてエーリックは得難い資質を備えている。
しかも、最近では人としても大きくなってきていた。
(スレインみたく愛の力とは言わないが、これも姫さんのお陰なんかね?)
かの腹黒令嬢は婚約してからエーリックをそれとなく育成している節がある。もしかしたらウェルシェ自身も気がついていないかもしれないが。
(それに比べてオーウェン殿下の落ちぶれようと言ったら……)
王者の風格のあったオーウェンの凋落ぶりはどうか。
彼は異母弟と違い幼少期より王威があり、その気風もからりとしていて彼の治世は明るいものになりそうであった。
だが、オーウェンの成長は一人の令嬢と出会ってから止まってしまった。
――アイリス・カオロ
彼女もまた男を手玉に取ってもてあそんでいる。
だが、ウェルシェは男に幸をもたらし、アイリスは男に不幸を撒き散らす。
セルランには同じように見えてしまう二人の悪女。
それではウェルシェとアイリスの違いはいったい何なんだろう?
(婚約者が姫さんだったらオーウェン殿下も違った未来があったんだろうか?)
奇しくもセルランは自分の真の主人と同じ思考に至った。
(だが、オーウェン殿下は優秀な婚約者と有能な側近に囲まれていたじゃないか)
イーリヤは能力的には間違いなくウェルシェ以上で、レーキ達は頼れる頭脳である。質、数ともにオーウェンはエーリック以上のものを与えられた。
ところがオーウェンは自らそれらを捨てようとしている。
(彼らの上に立つのはそれだけ求められるものも多いのかもしれない)
時として天才の婚約者や有能過ぎる側近達は相手に大きな挫折感を与えるものだ。自信家のオーウェンにはそれが耐えがたい屈辱だったのかもしれない。
(オーウェン殿下はそれに耐えられなかったのだろうか?)
自分より優れた婚約者や腹心に嫉妬する気持ちは理解できなくもない。では、エーリックはどうなのか?
「殿下は姫さんに嫉妬した事はないんですかい?」
セルランの口を突いた疑問はかなり際どいもの。
スレインもギョッとしてセルランを睨みつけた。
セルラン自身もまずいと思ったが、今さら口から出た言葉は引っ込められない。
「僕が? ウェルシェに? 何で?」
ところが、エーリックは意味が分からないと目を点にして聞き返してくるではないか。
「えっ? いや、だって、姫さんって天才じゃあないですか」
何を当たり前の事を聞くんだとセルランは思ったが、エーリックは嫉妬の色などまったく見せずニマニマしだした。
「そうだよねぇ、ウェルシェってすごいよねぇ。この大会でも一年生で既にすごい成績残してるし」
「殿下、殿下、俺が聞きたいのは、そんなに優れた婚約者に嫉妬しないんですかって話でして」
ずれそうな話の方向をセルランが修正しようとしたが、エーリックはキョトンと目をぱちくりさせた。
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