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第2章──少年期5~10歳──
036 夫婦間
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そして新鮮な果物で豪華に飾られたミニケーキをフェリシアが食べ終えた頃、紅茶しか飲んでいなかったライモが口を開く。
「……良いな、娘……」
(は……?)
ケーキに舌鼓を打っていたフェリシアは、思わず目の前の大将をマジマジと見つめてしまった。
しかしながらライモは、怪訝な顔のフェリシアを気にするでもなく、視線は彼女を見ているようで違う所を見ているような印象を受ける。
「……失礼ですが、御子息がいらっしゃいましたよね?」
「あぁ、息子はいる。……だが、娘もほしい」
(いやいや、作れば良いじゃん。奥さんいるでしょうが。しかもそんな事、シアに言われても困るんだけど?!ま、まさか幼女趣味とか?いや待て待て、そんな筈ない。現に息子作ってるし、奥さんもちゃんと大人の女性だった筈だし)
フェリシアの疑問も当然で、まだお二方共高齢と言う程ではなく、奥さんも第二子を身籠る事に問題はない筈だった。
そもそも結婚年齢が早いこの国では、十代で子持ちが普通である。
「フェルはやらんぞ」
困惑していたフェリシアの隣から、不機嫌そうな声がライモに向けられた。──声の主は勿論、グーリフだ。
当然、フェリシアは困惑する。しかしながら注意したところで、目上の者への口調や態度など、魔獣であるグーリフには関係ないのだ。──詰んでいる。
「……ちょ」
「あぁ、ここには小さな騎士がいたな。いやはや、俺の言い方が悪かった。大丈夫だ、心配はない。さすがにこのような小さな姫に、俺自身を受け止めてもらおうと思ってはいないからな」
不機嫌さを隠そうともしないグーリフだったが、ライモは不敬と咎める事もなく、豪快に笑い飛ばす。その様子から、フェリシアやグーリフが懸念するような事にはならなさそうだった。
けれども、フェリシアはその言葉にゾッとする。己が『受ける側』である事を想像したからだ。──勿論、今はそれを態度に出してはならない事を頭では理解している。
「え……っと、あの、どういう事です?」
「いや、変に警戒させてしまったな。悪い、悪い。俺はただ、その……俺と妻との娘がほしいのだ」
「はあ……。あの、奥さまにお願いすればよろしいのではありませんか?」
大柄な体躯の男が照れる様子を目の前にして、フェリシアは対処に困ってしまう。
そしてその上で、至極真っ当な助言を口にしたのだ。
「ど、どうやってだ?アイツは婚姻してすぐ子が出来たから、それ以降俺と寝屋を共にしていないんだ。それに第一子が男だったからか、それ以降その……ないままだし……」
(おぉう……。夫婦間のレス問題を、何故五歳児に相談するんだこのクマ。しかも普通に考えて、こういった地位のある者程、内情を他者に知られては困る筈だろうが)
「き、嫌われてはいないと思うが……俺が触れると尾が立つし……」
(え、それって……)
大将との茶会をするに当たって、まず最初に相手の家族構成を知識として詰め込まれたフェリシアである。
それによると細君であるフェツィエナ・コノネンはトラ種。猫科が尾を立てる時には、『かまって』や『嬉しい』などの感情表現が含まれていた。
「あの……その時奥さまの尻尾は、毛が立ってはいなかったのですよね?」
「あ、あぁ。毛が立つのは俺……クマでもあるが、怒りや威嚇などだろう。そんな事はなかった、と思う」
「ですよね……って、『思う』ってどういう事ですか。もしかして、随分前の記憶とかですか?」
「や……。そ、そんな事は……」
「いつですか。まさか、お子さんが出来てから、とか?」
「いや、その……婚姻してから、殆ど……」
(釣った魚にエサをやらないタイプだったっ!)
内心で驚愕するフェリシアだった。
大将ともなれば仕事柄多忙である事は想像出来るが、ライモは41歳。妻のフェツィエナは24歳。
息子が4歳である為、そろそろどころか、いい加減第二子をという言葉も大きくなる頃だろう。
(そりゃスキンシップ自体、もともと子作りの為の行為ではあるけどさぁ)
溜め息を押し殺しながらも、フェリシアはライモのスキル【神の眼】に意識を向けた。
このスキルは相手のステータスが読めるが、それ以上に説明書たる機能もある。
《状態……【セクシュアルコンタクト・レス】【コミュニケーション不足】【そもそも女性に対する接し方が分からない】》
(……ってか、中学生かよっ)
「あの、最近奥さまとお話をされたのはいつですか?」
「あぁ……、い、いつだったか……」
(ダメだ~……)
〈なぁ、フェル。もう終わるか?〉
〈え?いやいや、全くそんな気配はないよ。ってか、現在進行形で相談受けてるんだけど?〉
〈相談?やらせろって言えば良いだけだろ〉
〈いや~、やめて~。その可愛い姿でそんな下世話な言葉言わないで~っ〉
〈可愛いのはフェルだぞ〉
〈わ、分かったから。それ、結構こっ恥ずかしいからな?〉
〈そうなのか?〉
「ったく、ヘタレだな。そんなの、好きって言えば良いんじゃね?」
「え?」
「な……」
違う意味で頭を抱えたフェリシアを他所に、グーリフがライモに率直に告げた。
それに驚くフェリシアとライモである。
「好きだとか綺麗だとかさ。相手を素直に誉めて、いつも見ている思っているって、言葉で言えば良いだけだろ。それとも、誉めるとこが少しもないような相手なのか?」
「そ、そんな訳がなかろうっ」
「本当面倒臭ぇ。交尾したけりゃ、動物だって自分を見てもらうような努力をするぜ?強いんだ、綺麗だろ、大きいだろってな」
「確かに……言葉を尽くす事は大切だよね。言われなきゃ分からないのに、分かるだろって決めつけられても困るし」
「な、なる程……。さすがにそこまで言われれば俺でも分かる」
パクリと一口でケーキを食べたグーリフは、面倒臭い顔を本当に隠す事なく告げた。
勿論フェリシアはドキドキだったのだが、仮にライモが怒りに任せて暴力に訴えてきたとしても、魔獣である本来の力を出せばグーリフが負ける筈もない──等と内心で頷き、グーリフの強さには欠片も不安を持っていないフェリシアだった。
だがしかし、ヒトとしての対応は出来ない事を失念していたのである。
「いっそのこと、はっきりヤラ……」
「ちょっと待ったあ!」
安心したのも束の間、隣の五歳児から本当に口にするとは思っていなかった単語が飛び出したのだ。
思い切り腕を伸ばし、グーリフの口を押さえるフェリシア。
座っているのは背の高い椅子ではあったが、手の届く範囲にグーリフの席が配置されていて良かったとバクバクと暴れる心臓の鼓動を感じながら思う。
「そういうこと、言わないでって」
「もごもごもご」
〈そんな事、言ったか?〉
〈言ってなくてもダメなのっ。人付き合いには礼儀ってのがあるんだから、思った通り口にしてたら問題ばかり起きるでしょうが〉
〈面倒臭いな、ヒト族ってぇのは〉
「……さすがの俺も、交尾させろとは言えん」
〈言ってるじゃん〉
〈言われてる~っ〉
スキル【以心伝心】で言い合っていたら、ライモがポツリと溢した。
目の前にいる二人が子供だからか、自分の悩みたる相談をしたからなのか。それまでの大将としての重々しい風格は鳴りを潜めている。
その為か緊張する事なく、マジマジと悩めるクマを観察した。そしてフェリシアは一つの結論に達する。
見てくれがクマだろうがなんだろうが、ただ性欲をもて余した一人のヒトなのだ。
「あの、奥さまは?」
「あぁ……、この時間なら温室にいるとは思うが」
問い掛けにさして迷う事なく、細君の居場所を告げるライモである。
そういった点からも、自分が外出していても邸内の者から様々な報告を受けているのだろうと推測出来た。
(つまりは妻に興味がないどころか、興味有りすぎて接触に戸惑っているだけだ。それなら、後は相手の方を確認してみるべきだよね)
「伺っても宜しいですか?」
「え……あ、あぁ。銀の娘を茶会に招く事は伝えてある」
『銀の娘』というのが、銀色の毛色ではなく、銀の太刀という父親ヨアキムの二つ名からきている事は想像がつく。
そもそも銀色自体稀少である為、結局は何を言ってもヨアキム一家を指すのだ。
しかしながら、今のフェリシアにとっては好都合である。己の身元を証明する苦労なく、邸内にいる奥方と顔を合わせる事が出来るのだ。
「案内しよう」
「宜しいのですか?」
「あぁ。元々茶会のあと、合わせるつもりだったのだ」
「そうなのですか」
〈それは好都合だね〉
〈相手に直接言うのか?〉
〈まさか。でも見ないと読めないし、双方の想いが違う事もあるからね〉
〈ヒト族は面倒臭いな〉
ライモについていきながら、フェリシアとグーリフが並んで歩く。
実際にはその後ろにぞろぞろと侍女やら侍従やらを従えているのだが、その者達は必要時以外に口を開かなかった。さすが大将邸に仕えるだけあって、まるで空気のように存在感を消している。
ラングロフでは主であるヨアキムの性格もあり、もっと──かなり和気あいあいとしていた。
フェリシアも生まれながら周囲にヒトがいる生活をしている為、完全に一人になる事はない。更に言うならば誘拐事件があった為、傍につく者が必ず複数人いた。
それは昼夜問わずだ。三歳を過ぎてからはグーリフとの共寝も許可が下りなくなった為、一人になるのは布団の中だけだった。
〈おぉ、中々頑張ってるな〉
〈うん、凄い温室。緑が濃くて、本当に森の中にいるみたいだね〉
そうして連れられてきたのは、広大な面積を持つ温室である。
内部は魔法石をふんだんに使い、一定の気温と湿度が保たれていた。
「素晴らしいですね」
「あぁ……。ここは彼女の生まれ故郷を、可能な限り再現している」
感嘆の声をあげたフェリシアに対し、ライモは瞳を細めながら静かにそう呟く。
その視線の先には噴水があり、傍のガゼボにヒトがいるのが見えた。
「……良いな、娘……」
(は……?)
ケーキに舌鼓を打っていたフェリシアは、思わず目の前の大将をマジマジと見つめてしまった。
しかしながらライモは、怪訝な顔のフェリシアを気にするでもなく、視線は彼女を見ているようで違う所を見ているような印象を受ける。
「……失礼ですが、御子息がいらっしゃいましたよね?」
「あぁ、息子はいる。……だが、娘もほしい」
(いやいや、作れば良いじゃん。奥さんいるでしょうが。しかもそんな事、シアに言われても困るんだけど?!ま、まさか幼女趣味とか?いや待て待て、そんな筈ない。現に息子作ってるし、奥さんもちゃんと大人の女性だった筈だし)
フェリシアの疑問も当然で、まだお二方共高齢と言う程ではなく、奥さんも第二子を身籠る事に問題はない筈だった。
そもそも結婚年齢が早いこの国では、十代で子持ちが普通である。
「フェルはやらんぞ」
困惑していたフェリシアの隣から、不機嫌そうな声がライモに向けられた。──声の主は勿論、グーリフだ。
当然、フェリシアは困惑する。しかしながら注意したところで、目上の者への口調や態度など、魔獣であるグーリフには関係ないのだ。──詰んでいる。
「……ちょ」
「あぁ、ここには小さな騎士がいたな。いやはや、俺の言い方が悪かった。大丈夫だ、心配はない。さすがにこのような小さな姫に、俺自身を受け止めてもらおうと思ってはいないからな」
不機嫌さを隠そうともしないグーリフだったが、ライモは不敬と咎める事もなく、豪快に笑い飛ばす。その様子から、フェリシアやグーリフが懸念するような事にはならなさそうだった。
けれども、フェリシアはその言葉にゾッとする。己が『受ける側』である事を想像したからだ。──勿論、今はそれを態度に出してはならない事を頭では理解している。
「え……っと、あの、どういう事です?」
「いや、変に警戒させてしまったな。悪い、悪い。俺はただ、その……俺と妻との娘がほしいのだ」
「はあ……。あの、奥さまにお願いすればよろしいのではありませんか?」
大柄な体躯の男が照れる様子を目の前にして、フェリシアは対処に困ってしまう。
そしてその上で、至極真っ当な助言を口にしたのだ。
「ど、どうやってだ?アイツは婚姻してすぐ子が出来たから、それ以降俺と寝屋を共にしていないんだ。それに第一子が男だったからか、それ以降その……ないままだし……」
(おぉう……。夫婦間のレス問題を、何故五歳児に相談するんだこのクマ。しかも普通に考えて、こういった地位のある者程、内情を他者に知られては困る筈だろうが)
「き、嫌われてはいないと思うが……俺が触れると尾が立つし……」
(え、それって……)
大将との茶会をするに当たって、まず最初に相手の家族構成を知識として詰め込まれたフェリシアである。
それによると細君であるフェツィエナ・コノネンはトラ種。猫科が尾を立てる時には、『かまって』や『嬉しい』などの感情表現が含まれていた。
「あの……その時奥さまの尻尾は、毛が立ってはいなかったのですよね?」
「あ、あぁ。毛が立つのは俺……クマでもあるが、怒りや威嚇などだろう。そんな事はなかった、と思う」
「ですよね……って、『思う』ってどういう事ですか。もしかして、随分前の記憶とかですか?」
「や……。そ、そんな事は……」
「いつですか。まさか、お子さんが出来てから、とか?」
「いや、その……婚姻してから、殆ど……」
(釣った魚にエサをやらないタイプだったっ!)
内心で驚愕するフェリシアだった。
大将ともなれば仕事柄多忙である事は想像出来るが、ライモは41歳。妻のフェツィエナは24歳。
息子が4歳である為、そろそろどころか、いい加減第二子をという言葉も大きくなる頃だろう。
(そりゃスキンシップ自体、もともと子作りの為の行為ではあるけどさぁ)
溜め息を押し殺しながらも、フェリシアはライモのスキル【神の眼】に意識を向けた。
このスキルは相手のステータスが読めるが、それ以上に説明書たる機能もある。
《状態……【セクシュアルコンタクト・レス】【コミュニケーション不足】【そもそも女性に対する接し方が分からない】》
(……ってか、中学生かよっ)
「あの、最近奥さまとお話をされたのはいつですか?」
「あぁ……、い、いつだったか……」
(ダメだ~……)
〈なぁ、フェル。もう終わるか?〉
〈え?いやいや、全くそんな気配はないよ。ってか、現在進行形で相談受けてるんだけど?〉
〈相談?やらせろって言えば良いだけだろ〉
〈いや~、やめて~。その可愛い姿でそんな下世話な言葉言わないで~っ〉
〈可愛いのはフェルだぞ〉
〈わ、分かったから。それ、結構こっ恥ずかしいからな?〉
〈そうなのか?〉
「ったく、ヘタレだな。そんなの、好きって言えば良いんじゃね?」
「え?」
「な……」
違う意味で頭を抱えたフェリシアを他所に、グーリフがライモに率直に告げた。
それに驚くフェリシアとライモである。
「好きだとか綺麗だとかさ。相手を素直に誉めて、いつも見ている思っているって、言葉で言えば良いだけだろ。それとも、誉めるとこが少しもないような相手なのか?」
「そ、そんな訳がなかろうっ」
「本当面倒臭ぇ。交尾したけりゃ、動物だって自分を見てもらうような努力をするぜ?強いんだ、綺麗だろ、大きいだろってな」
「確かに……言葉を尽くす事は大切だよね。言われなきゃ分からないのに、分かるだろって決めつけられても困るし」
「な、なる程……。さすがにそこまで言われれば俺でも分かる」
パクリと一口でケーキを食べたグーリフは、面倒臭い顔を本当に隠す事なく告げた。
勿論フェリシアはドキドキだったのだが、仮にライモが怒りに任せて暴力に訴えてきたとしても、魔獣である本来の力を出せばグーリフが負ける筈もない──等と内心で頷き、グーリフの強さには欠片も不安を持っていないフェリシアだった。
だがしかし、ヒトとしての対応は出来ない事を失念していたのである。
「いっそのこと、はっきりヤラ……」
「ちょっと待ったあ!」
安心したのも束の間、隣の五歳児から本当に口にするとは思っていなかった単語が飛び出したのだ。
思い切り腕を伸ばし、グーリフの口を押さえるフェリシア。
座っているのは背の高い椅子ではあったが、手の届く範囲にグーリフの席が配置されていて良かったとバクバクと暴れる心臓の鼓動を感じながら思う。
「そういうこと、言わないでって」
「もごもごもご」
〈そんな事、言ったか?〉
〈言ってなくてもダメなのっ。人付き合いには礼儀ってのがあるんだから、思った通り口にしてたら問題ばかり起きるでしょうが〉
〈面倒臭いな、ヒト族ってぇのは〉
「……さすがの俺も、交尾させろとは言えん」
〈言ってるじゃん〉
〈言われてる~っ〉
スキル【以心伝心】で言い合っていたら、ライモがポツリと溢した。
目の前にいる二人が子供だからか、自分の悩みたる相談をしたからなのか。それまでの大将としての重々しい風格は鳴りを潜めている。
その為か緊張する事なく、マジマジと悩めるクマを観察した。そしてフェリシアは一つの結論に達する。
見てくれがクマだろうがなんだろうが、ただ性欲をもて余した一人のヒトなのだ。
「あの、奥さまは?」
「あぁ……、この時間なら温室にいるとは思うが」
問い掛けにさして迷う事なく、細君の居場所を告げるライモである。
そういった点からも、自分が外出していても邸内の者から様々な報告を受けているのだろうと推測出来た。
(つまりは妻に興味がないどころか、興味有りすぎて接触に戸惑っているだけだ。それなら、後は相手の方を確認してみるべきだよね)
「伺っても宜しいですか?」
「え……あ、あぁ。銀の娘を茶会に招く事は伝えてある」
『銀の娘』というのが、銀色の毛色ではなく、銀の太刀という父親ヨアキムの二つ名からきている事は想像がつく。
そもそも銀色自体稀少である為、結局は何を言ってもヨアキム一家を指すのだ。
しかしながら、今のフェリシアにとっては好都合である。己の身元を証明する苦労なく、邸内にいる奥方と顔を合わせる事が出来るのだ。
「案内しよう」
「宜しいのですか?」
「あぁ。元々茶会のあと、合わせるつもりだったのだ」
「そうなのですか」
〈それは好都合だね〉
〈相手に直接言うのか?〉
〈まさか。でも見ないと読めないし、双方の想いが違う事もあるからね〉
〈ヒト族は面倒臭いな〉
ライモについていきながら、フェリシアとグーリフが並んで歩く。
実際にはその後ろにぞろぞろと侍女やら侍従やらを従えているのだが、その者達は必要時以外に口を開かなかった。さすが大将邸に仕えるだけあって、まるで空気のように存在感を消している。
ラングロフでは主であるヨアキムの性格もあり、もっと──かなり和気あいあいとしていた。
フェリシアも生まれながら周囲にヒトがいる生活をしている為、完全に一人になる事はない。更に言うならば誘拐事件があった為、傍につく者が必ず複数人いた。
それは昼夜問わずだ。三歳を過ぎてからはグーリフとの共寝も許可が下りなくなった為、一人になるのは布団の中だけだった。
〈おぉ、中々頑張ってるな〉
〈うん、凄い温室。緑が濃くて、本当に森の中にいるみたいだね〉
そうして連れられてきたのは、広大な面積を持つ温室である。
内部は魔法石をふんだんに使い、一定の気温と湿度が保たれていた。
「素晴らしいですね」
「あぁ……。ここは彼女の生まれ故郷を、可能な限り再現している」
感嘆の声をあげたフェリシアに対し、ライモは瞳を細めながら静かにそう呟く。
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