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第2章──少年期5~10歳──
053 解決という事で良いのだと思う
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◆ ◆ ◆ ◆ ◆
不意に戻った意識に、フェリシアは自分が寝ているのだと分かる。横たわっているのだからと、寝返りを打とうとして──身体を固定されている事に気付いた。
ギクリとして、けれども不快な感じがしない事に遅れて気付く。
(ん?………………っ!?)
重い瞼を必死に開けて、驚いた。目の前に顔があったのである。──その顔は勿論知っている人物で、匂いも体温も当然のように自分に馴染みあるもの。
ただ共寝が幼い頃に禁止になってからは本当に久し振りで、こうしてグーリフの寝顔を見るのもどれくらいぶりだろうか。
(グーリフ……。無事で良かった……っ)
軟禁されていた部屋からの脱出。
地下にいるらしきグーリフの気配。
魔力を吸い取る石壁。
経緯を思い出したフェリシアは、その安堵からグーリフに──無意識ではあるが頭を擦り付けていた。
脱出した時は獣型だったが、今は何故かヒト型に戻っている。自分の手を見て気付いたのだが、それは些事であった。結局どちらでもフェリシアであり、【獣化】スキルで外見を自分の意思で変えられるのだから。
「何だ、フェル。可愛い事してんなぁ」
「っ?!お、起きてたのっ」
「あぁ。起きたと思ったら俺にスリスリしてくるから、思わず舐めそうになった」
「な、舐め……っちゃ、ダメなんだからねっ」
「くくくっ、そうだったな。ヒトはところ構わず相手を舐めねぇんだよな」
「ところ構わず?……うん、とりあえずヒトは舐めちゃダメ。あ、それよりもグーリフ。怪我とかしてないっ?」
「ん~……?」
グーリフに擦り寄っている事を知られていたのは恥ずかしかったフェリシアだが、それよりも離れていた間に何もなかったかが気になった。
布団から出ている部分に怪我らしきものは見えないし、血のにおいもしないから大丈夫だとは思う。けれども、しっかりと確認しておかなければ気が済まなかった。
グーリフの方は、僅かに考えるように視線を斜め上に向けている。だがすぐにフェリシアに向き直ると、ニカッと気持ちの良い笑みを浮かべた。
「大丈夫だ。俺も何ともねぇ。フェルも大丈夫そうだな」
「え?う、うん……?」
そうしてフェリシアの手を布団から取り出すと、その指先に唇を付ける。
グーリフの行動の意味が分からず、横になったままで小さく首を傾げた。
その時、部屋の扉が開かれる音が小さく聞こえる。
頭を巡らせて音の方向を向くと、薄く開かれた扉の先に見知った色を見付けた。
「ミア?」
「っ?!」
「え………………?ちょ、グーリフ。ミアだったよね?今、ミアだったよね?」
隙間に茶色の髪を見たのだが、声を掛けた途端に消える。
思わず追い掛けようとして、身体を動──かせない事に気付いた。
「ほっとけ。俺はフェルを満喫してんだ」
「は?ちょ、何言ってるの?グーリフ、放してって」
「何でだよぉ。昨日俺、頑張ったんだぜ?」
「……え?何、それ」
「あ………………」
「ちょっと、グーリフ。何があったの?」
押し退けようとしていると、べったり張り付いている事を拒絶されたと感じたのか。グーリフが口を滑らせるように告げた言葉だ。
フェリシアはそれを耳にした途端に固まる。
怪我をしていない事の確認はした。だから今は勿論大丈夫なのだろうが、何がどうなったのかまだ聞いていないのだ。それを考えれば現時点でいるこの部屋の事もあるが、グーリフが隣にいる事もあって危険はないと判断している。
ラングロフ邸でない事くらいしか分からないが、グーリフの様子から再度誘拐犯に軟禁されている訳でもないのだろう。それはしっかりと寝具を身に纏っている自分が、汚れ一つない事からも想像がついた。
「グーリフ?」
「あ……いや、その……だ」
「………………ぐぅ?」
「うっ………………や、俺も、最終的にヨアキムに投げちまったし……」
横たわったままではあるが、上目遣いで問うフェリシア。
視線を逸らしながらも必死に誤魔化そうとしていたグーリフは、根負けしたようにそれだけ溢す。──そしてフェリシアは、その一言だけで分かってしまった。
グーリフはヨアキムをフェリシアの親と認識しているが、信頼はしていない。フェリシア自身もあまりヨアキムに情を感じていない事もあるだろうが、だからこそグーリフが自らフェリシアをヨアキムに渡す事は普通なら有り得ないのだ。
それが成されたという事は、そうしなければならない事情があったと推測される。つまりは、グーリフが自分では守れないと判断する『何か』がだ。
「っ、フェル?!」
慌てたグーリフに、応じる事が出来ない。フェリシアはグーリフの胸元にしがみつくように、自分の顔を隠していたからだ。
だがいくら隠そうとも、彼の服に染みて伝わってしまう涙を誤魔化せるものではない。
「悪ぃ……。泣かすつもりはなかったんだ」
「……泣……いて……ないもん……、グズッ」
「ん………………そ、か」
頭部を撫でてくれる、優しいグーリフの手に甘えてしまった。
心地好い。彼はフェリシアを責める事がないのだ。──でも。
フェリシアは今回、自己満足の為に周囲へかなりの被害をもたらしたのだろう事を自覚した。
誘拐事件に自ら巻き込まれた事も。
ヨアキムを動かしてしまった事も。
グーリフ、ミア、護衛達。
自分の発案で被害にあったかもしれない、囮役の子供達。
それが、ただ泣いて済む訳ではないだろう。
謝って済む問題でもないのかもしれない。
(もしかしたらミア……)
先程、声を掛けた時にこちらへ来なかったのは。──もう、呆れられたのかもしれない。見捨てられたのだと、したら。
ヨアキムの地位があるから、フェリシアはそれなりの厚待遇を受ける事が出来ている。
グーリフが傍にいてくれるから、フェリシアは安心してあるがままでいられる。
ミアが全てを認めてくれるから、フェリシアは存在を許されているのだと思える。
皆──周囲がフェリシアを拒絶したら。
不要だと、要らないと──見限られたとしたら。
この世界が優しくない事は知っている。
守られているから傲慢になっていたが、フェリシアが何をしても良い訳ではないのだ。今はまだ、許されているだけ。──この先もずっと同じではない。
ゾクリと身体が震えた。
その時、部屋の扉が開かれた。
「っ!?」
驚きで跳ねる身体を、グーリフが抱き締めてくれる。
恐る恐る振り返った扉の先。恐怖で見開かれた瞳に、ヨアキムとミアが映った。
ナディヤとエリアスもいる。
ベルナールや、誘拐された時に護衛担当だった──こちらはあまり覚えてはいないけれど、何となく獣部分の色や形を記憶していた──ヒトもいた。
「フェル」
「シア様」
「シア」
「シアちゃん」
皆が口々に声を掛けてくれる。
まだ見限られていないと、許されているのだと思えた。
「ご、ごべんなざい、ごべんなざい、ごべんなざい。もうじないがら、ゆるじでぐだざい。ごべんなざ……うあああぁぁぁ~ん!」
起き上がってベッドの上にペタリと座り、布団に頭を擦り付けるようにして謝罪する。
耳も尾もヘニョリと垂れ下がって、顔は涙と鼻水とで大洪水だった。
物凄くみっともない姿だと分かっているけれど、たくさん迷惑を掛けたのだから、頭を下げて許しを請うのは当たり前である。──まだ許してくれるのなら。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
結果的に──急に泣いて謝罪するフェリシアを、誰もが許してくれた。普段は殆ど泣かない子供だったから、逆に涙を見た周囲が慌てた程に。
ベルナールは相変わらず冷めた態度で、彼は──彼だけはフェリシアを認めていないのかもしれないけれど。
一頻り泣いて慰められて、何とか落ち着いたフェリシア。グーリフに抱き留められて、背中をポンポンと軽く叩かれて寝落ちしそうになった。
ハッと我に返り、ここで改めて皆に向き直って謝意を示す。
「本当にごめんなさい。もうしません。父様。シアが勝手をしたので。ミアも護衛してくれたヒトにも、怒らないで下さい。ミア。わざとはぐれるような事をしてごめんなさい。護衛のヒトも、意地悪してごめんなさい。エリ兄、母様。心配掛けてごめんなさい。グーリフ。無茶させて、本当に、ごめんなさい」
言葉を尽くし、フェリシアは皆に頭を下げる。
実際にはまだ皆の身に何が降り掛かったのか知らないけれど、多大なる迷惑を掛けたのは事実なのだ。
「ん、まぁ……分かった。こいつらには怒らない」
「シア様、大丈夫です。旦那様も、シア様付きでいられるようにして下さいましたので」
「ご無事でなりよりです」
「シア、迷子はダメ。おれも迷子楽しいけど、後でいっぱい困るから」
「エリちゃん、それは貴方の場合でしょ?シアちゃん、無事で良かったわ」
「俺は、まぁ……。お前に泣かれるのが一番嫌だ」
「うぅ~……っ、皆が優しい……っ。グーリフ、大好きっ。ありがとう」
結局グーリフに抱き付いて、また泣いてしまったけれど。周囲が──主にヨアキムが、物凄くピリッとした空気になった気がしたけど。
そんなこんなで、何だか物凄く一生分泣いた感がある。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そうして食堂らしき場所へ移動し、遅い朝御飯を食べる段階で漸く状況を知った。
フェリシアの身に起きた事。
皆に起こった事。
原因と結果。
変わった事、変わらない事。
やはりと言うか、全てが何もなかった事にはならない訳で。
その後に事情聴取のようなものがされ、フェリシアは自分が知っている事を色々と聞かれた。
単独で、個室で。
ベルナールだけが目の前にいる状況に、微妙に恐怖したけれど。彼は良くも悪くも、フェリシアに無関心だった。
本当に淡々と、仕事なのだという態度を崩さない。
グーリフとはスキル【以心伝心】で繋がっているから、酷く心が乱れる事はなかった。そも聞かれたところで、フェリシアが誘拐されてきて体験した事などは本当に極僅かだったから。
それでも脱出の時に獣化したと告げた際は、ベルナールの眉間に青筋が見えた気がする。基本的に無表情というか能面なので、フェリシアの見間違いかもしれないけれど。
(やっぱりシア、ベルナール苦手だな)
全てのヒトを好きになんてなれないのは分かっているが、こちらに関心がない相手に好意を向ける事は出来ないと思えた。
フェリシアは、とりあえず嫌いにはならないようにしたいなと結論付ける。
不意に戻った意識に、フェリシアは自分が寝ているのだと分かる。横たわっているのだからと、寝返りを打とうとして──身体を固定されている事に気付いた。
ギクリとして、けれども不快な感じがしない事に遅れて気付く。
(ん?………………っ!?)
重い瞼を必死に開けて、驚いた。目の前に顔があったのである。──その顔は勿論知っている人物で、匂いも体温も当然のように自分に馴染みあるもの。
ただ共寝が幼い頃に禁止になってからは本当に久し振りで、こうしてグーリフの寝顔を見るのもどれくらいぶりだろうか。
(グーリフ……。無事で良かった……っ)
軟禁されていた部屋からの脱出。
地下にいるらしきグーリフの気配。
魔力を吸い取る石壁。
経緯を思い出したフェリシアは、その安堵からグーリフに──無意識ではあるが頭を擦り付けていた。
脱出した時は獣型だったが、今は何故かヒト型に戻っている。自分の手を見て気付いたのだが、それは些事であった。結局どちらでもフェリシアであり、【獣化】スキルで外見を自分の意思で変えられるのだから。
「何だ、フェル。可愛い事してんなぁ」
「っ?!お、起きてたのっ」
「あぁ。起きたと思ったら俺にスリスリしてくるから、思わず舐めそうになった」
「な、舐め……っちゃ、ダメなんだからねっ」
「くくくっ、そうだったな。ヒトはところ構わず相手を舐めねぇんだよな」
「ところ構わず?……うん、とりあえずヒトは舐めちゃダメ。あ、それよりもグーリフ。怪我とかしてないっ?」
「ん~……?」
グーリフに擦り寄っている事を知られていたのは恥ずかしかったフェリシアだが、それよりも離れていた間に何もなかったかが気になった。
布団から出ている部分に怪我らしきものは見えないし、血のにおいもしないから大丈夫だとは思う。けれども、しっかりと確認しておかなければ気が済まなかった。
グーリフの方は、僅かに考えるように視線を斜め上に向けている。だがすぐにフェリシアに向き直ると、ニカッと気持ちの良い笑みを浮かべた。
「大丈夫だ。俺も何ともねぇ。フェルも大丈夫そうだな」
「え?う、うん……?」
そうしてフェリシアの手を布団から取り出すと、その指先に唇を付ける。
グーリフの行動の意味が分からず、横になったままで小さく首を傾げた。
その時、部屋の扉が開かれる音が小さく聞こえる。
頭を巡らせて音の方向を向くと、薄く開かれた扉の先に見知った色を見付けた。
「ミア?」
「っ?!」
「え………………?ちょ、グーリフ。ミアだったよね?今、ミアだったよね?」
隙間に茶色の髪を見たのだが、声を掛けた途端に消える。
思わず追い掛けようとして、身体を動──かせない事に気付いた。
「ほっとけ。俺はフェルを満喫してんだ」
「は?ちょ、何言ってるの?グーリフ、放してって」
「何でだよぉ。昨日俺、頑張ったんだぜ?」
「……え?何、それ」
「あ………………」
「ちょっと、グーリフ。何があったの?」
押し退けようとしていると、べったり張り付いている事を拒絶されたと感じたのか。グーリフが口を滑らせるように告げた言葉だ。
フェリシアはそれを耳にした途端に固まる。
怪我をしていない事の確認はした。だから今は勿論大丈夫なのだろうが、何がどうなったのかまだ聞いていないのだ。それを考えれば現時点でいるこの部屋の事もあるが、グーリフが隣にいる事もあって危険はないと判断している。
ラングロフ邸でない事くらいしか分からないが、グーリフの様子から再度誘拐犯に軟禁されている訳でもないのだろう。それはしっかりと寝具を身に纏っている自分が、汚れ一つない事からも想像がついた。
「グーリフ?」
「あ……いや、その……だ」
「………………ぐぅ?」
「うっ………………や、俺も、最終的にヨアキムに投げちまったし……」
横たわったままではあるが、上目遣いで問うフェリシア。
視線を逸らしながらも必死に誤魔化そうとしていたグーリフは、根負けしたようにそれだけ溢す。──そしてフェリシアは、その一言だけで分かってしまった。
グーリフはヨアキムをフェリシアの親と認識しているが、信頼はしていない。フェリシア自身もあまりヨアキムに情を感じていない事もあるだろうが、だからこそグーリフが自らフェリシアをヨアキムに渡す事は普通なら有り得ないのだ。
それが成されたという事は、そうしなければならない事情があったと推測される。つまりは、グーリフが自分では守れないと判断する『何か』がだ。
「っ、フェル?!」
慌てたグーリフに、応じる事が出来ない。フェリシアはグーリフの胸元にしがみつくように、自分の顔を隠していたからだ。
だがいくら隠そうとも、彼の服に染みて伝わってしまう涙を誤魔化せるものではない。
「悪ぃ……。泣かすつもりはなかったんだ」
「……泣……いて……ないもん……、グズッ」
「ん………………そ、か」
頭部を撫でてくれる、優しいグーリフの手に甘えてしまった。
心地好い。彼はフェリシアを責める事がないのだ。──でも。
フェリシアは今回、自己満足の為に周囲へかなりの被害をもたらしたのだろう事を自覚した。
誘拐事件に自ら巻き込まれた事も。
ヨアキムを動かしてしまった事も。
グーリフ、ミア、護衛達。
自分の発案で被害にあったかもしれない、囮役の子供達。
それが、ただ泣いて済む訳ではないだろう。
謝って済む問題でもないのかもしれない。
(もしかしたらミア……)
先程、声を掛けた時にこちらへ来なかったのは。──もう、呆れられたのかもしれない。見捨てられたのだと、したら。
ヨアキムの地位があるから、フェリシアはそれなりの厚待遇を受ける事が出来ている。
グーリフが傍にいてくれるから、フェリシアは安心してあるがままでいられる。
ミアが全てを認めてくれるから、フェリシアは存在を許されているのだと思える。
皆──周囲がフェリシアを拒絶したら。
不要だと、要らないと──見限られたとしたら。
この世界が優しくない事は知っている。
守られているから傲慢になっていたが、フェリシアが何をしても良い訳ではないのだ。今はまだ、許されているだけ。──この先もずっと同じではない。
ゾクリと身体が震えた。
その時、部屋の扉が開かれた。
「っ!?」
驚きで跳ねる身体を、グーリフが抱き締めてくれる。
恐る恐る振り返った扉の先。恐怖で見開かれた瞳に、ヨアキムとミアが映った。
ナディヤとエリアスもいる。
ベルナールや、誘拐された時に護衛担当だった──こちらはあまり覚えてはいないけれど、何となく獣部分の色や形を記憶していた──ヒトもいた。
「フェル」
「シア様」
「シア」
「シアちゃん」
皆が口々に声を掛けてくれる。
まだ見限られていないと、許されているのだと思えた。
「ご、ごべんなざい、ごべんなざい、ごべんなざい。もうじないがら、ゆるじでぐだざい。ごべんなざ……うあああぁぁぁ~ん!」
起き上がってベッドの上にペタリと座り、布団に頭を擦り付けるようにして謝罪する。
耳も尾もヘニョリと垂れ下がって、顔は涙と鼻水とで大洪水だった。
物凄くみっともない姿だと分かっているけれど、たくさん迷惑を掛けたのだから、頭を下げて許しを請うのは当たり前である。──まだ許してくれるのなら。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
結果的に──急に泣いて謝罪するフェリシアを、誰もが許してくれた。普段は殆ど泣かない子供だったから、逆に涙を見た周囲が慌てた程に。
ベルナールは相変わらず冷めた態度で、彼は──彼だけはフェリシアを認めていないのかもしれないけれど。
一頻り泣いて慰められて、何とか落ち着いたフェリシア。グーリフに抱き留められて、背中をポンポンと軽く叩かれて寝落ちしそうになった。
ハッと我に返り、ここで改めて皆に向き直って謝意を示す。
「本当にごめんなさい。もうしません。父様。シアが勝手をしたので。ミアも護衛してくれたヒトにも、怒らないで下さい。ミア。わざとはぐれるような事をしてごめんなさい。護衛のヒトも、意地悪してごめんなさい。エリ兄、母様。心配掛けてごめんなさい。グーリフ。無茶させて、本当に、ごめんなさい」
言葉を尽くし、フェリシアは皆に頭を下げる。
実際にはまだ皆の身に何が降り掛かったのか知らないけれど、多大なる迷惑を掛けたのは事実なのだ。
「ん、まぁ……分かった。こいつらには怒らない」
「シア様、大丈夫です。旦那様も、シア様付きでいられるようにして下さいましたので」
「ご無事でなりよりです」
「シア、迷子はダメ。おれも迷子楽しいけど、後でいっぱい困るから」
「エリちゃん、それは貴方の場合でしょ?シアちゃん、無事で良かったわ」
「俺は、まぁ……。お前に泣かれるのが一番嫌だ」
「うぅ~……っ、皆が優しい……っ。グーリフ、大好きっ。ありがとう」
結局グーリフに抱き付いて、また泣いてしまったけれど。周囲が──主にヨアキムが、物凄くピリッとした空気になった気がしたけど。
そんなこんなで、何だか物凄く一生分泣いた感がある。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そうして食堂らしき場所へ移動し、遅い朝御飯を食べる段階で漸く状況を知った。
フェリシアの身に起きた事。
皆に起こった事。
原因と結果。
変わった事、変わらない事。
やはりと言うか、全てが何もなかった事にはならない訳で。
その後に事情聴取のようなものがされ、フェリシアは自分が知っている事を色々と聞かれた。
単独で、個室で。
ベルナールだけが目の前にいる状況に、微妙に恐怖したけれど。彼は良くも悪くも、フェリシアに無関心だった。
本当に淡々と、仕事なのだという態度を崩さない。
グーリフとはスキル【以心伝心】で繋がっているから、酷く心が乱れる事はなかった。そも聞かれたところで、フェリシアが誘拐されてきて体験した事などは本当に極僅かだったから。
それでも脱出の時に獣化したと告げた際は、ベルナールの眉間に青筋が見えた気がする。基本的に無表情というか能面なので、フェリシアの見間違いかもしれないけれど。
(やっぱりシア、ベルナール苦手だな)
全てのヒトを好きになんてなれないのは分かっているが、こちらに関心がない相手に好意を向ける事は出来ないと思えた。
フェリシアは、とりあえず嫌いにはならないようにしたいなと結論付ける。
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