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第2章──少年期5~10歳──
060 義務で参加の子供会
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◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そうしてフェリシア一向が王都へ向かう日がやってきた。
「フェル、大丈夫か?ほら。これだけ柔らかければ、痛くならねぇだろ?」
「う、うん。ありがとう、グーリフ」
もふもふとしたクッションに埋もれている状態のフェリシア。長距離移動となる馬車の中、周囲をこれでもかと衝撃吸収対策されている。
グーリフとミアと合わせて三人しかいないのに、広い筈の馬車内が既にいっぱいだった。
(それにしても……、多すぎない?)
大人が楽に四人乗れる馬車である。そこに十歳の子供二名と侍女。他の部分は全てといっても良い程、ふわふわが占有していた。
フェリシアの周囲は、どう転んでももふもふ。クッション。ぬいぐるみ。毛布まである。
「往路だけでも一週間ありますからね。以前外出したコノネン領地は、グーリフ様のお力で三日掛かるところを一日で到達致しました。けれども今回は旦那様と同行でありますので、強行は出来かねます」
「仕形ねぇな。護衛を兼ねてんだ。さすがに置いていく訳にゃいかねぇだろ」
「うん、それは分かってる。っていうか、帰りもガウ兄と一緒だから同じだけ掛かるよねぇ」
「当然だな」
復路も同様に、長距離馬車の旅が確定していた。
フェリシアは前世でもこのような長旅をした経験がない為、楽しみ半分憂鬱半分といった気持ちである。
しかも事前に聞いた話では。安全策の理由から、宿泊先や立ち寄り先においても外出禁止だとか。
完全に、現地到着まで軟禁状態。フェリシアの憂鬱度が増した。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「やっと着いたぁ~」
「お疲れ様でした、シア様」
「良く我慢したな、フェル」
ぐったりとしながら、グーリフの腹部に顔を擦り付けたフェリシアである。
思った以上に、外に出られない行程は厳しかった。精神的にも肉体的にも。
一日や二日ならば、まだ我慢が出来ただろう。十歳とはいっても、精神年齢は既に成人している程に生きているのだ。
多少の不自由を我慢出来ないで騒ぐ程、幼くはない。けれども、単に乗り物に乗っているだけの旅。
窓から景色は見えるが、町などのヒトが多い場所ではカーテンが閉めきられ。食べ歩きも、ウインドウショッピングも。何一つ経験出来ないのだ。獣属は総じて鼻が良いので。窓を開けて匂いを嗅ぐ事すら、禁じられていた。
完全に箱の中。鬱憤は溜まる。それはもう、はち切れんばかりに。
「王都滞在は四週間です。その間にシア様とグーリフ様が参加される子供会。そしてガウリイル様の卒業式があります。その他諸々を済ませて、終わりましたら帰還となります」
「はあい~」
「とりあえずは、フェル。疲れただろ?この王都の邸宅で休むとするか」
「うんっ」
ヨアキムはそのまま城に顔を出さないとならないらしく、邸宅に入る事なく見送った。フェリシアはグーリフとミアに連れられ、王都のラングロフ邸に入る。
一通りヨアキムが紹介だけしていったので、執事と侍女長はフェリシアとグーリフを丁寧にもてなしてくれた。グーリフは親戚筋の子供として紹介されたので、きちんと客人としての扱いである。
ミアはフェリシアの専属侍女と紹介されたので、王都のラングロフ邸でもフェリシアと共にいられるようだ。
ちなみに、フェリシア以外を紹介したのはベルナールである。
ヨアキムは色々と拗らせているのか、ただの脳筋勢なのか。フェリシアの紹介すら、『娘だ』以外になかった。
見れば分かる銀色オオカミ。間違いようもないが、すぐにベルナールが間に入ったのである。使える補佐官だった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
<……予想してなかったよ>
<そうかぁ?鳥が、クマ兄妹も来るって言ってたろ>
<そうだけど……>
王都のラングロフ邸に到着してから、早くも二週が経ち。その間も使用人達は、示し合わせたかのように外出させてくれない。そんな軟禁状態のまま、フェリシアが全く来たくなかった子供会の日がやって来た。
朝早くヨアキムから準備をするように言われ、大慌てで身なりを整えたフェリシアとグーリフ。せめて数日前に言っておいて欲しかったと言いたかったが。王都に来たと言っても、継続して父娘の接点は皆無なのだ。
そうしてやって来た王城。ここは毎月の子供会用に使われている、小さめのホールである。
そこへ集まった五歳から十歳の、男女合わせて二十名程。それなりの回数を参加している子供もいるようで、既に幾つかのグループを形成していた。
フェリシアはグーリフと手を繋いだまま、遠巻きにその様子を見ていたのである。先程までは。
けれども現在は、二人の目の前にトラ種の男女。クマ種の男女が立ちふさがっている。
「ねぇ。聞いているのかしら?」
「やめなよぉ、パツェニル。ぼくらが虐めてるみたいじゃないか」
「おにさま、おねさま。しずかに。おくち、とじて。おあいて、はなせない、です」
ミアから聞いた情報では、トラ種の双子は五歳。後ろのクマ種の長男は九歳だから、子供会に参加する権利があった。だが一番前に立ち塞がる小さなクマ娘は、確か四歳ではないだろうか。──というか、フェリシアの視界に映るスキル【神の眼+】がそう告げている。
きょうだいでやいのやいのと言い合っていた。周囲の他の子供達は、状況を見極めようとしているのか。様子見といった感じである。
これが始まるまでは。ラングロフから噂の銀狼娘が参加した事で、いつ声を掛けようかと見計らっていたのだ。出鼻を挫かれた感じだろう。
「そうよね、ツビカ。イェアンは黙って。もう一度お聞きしますわ、ラングロフ令嬢。少しわたくし達と、お話しする時間を頂けませんか」
<どうするよ、フェル。ここでぶっ飛ばすか?>
<いやいや、ダメだから。落ち着いて、グーリフ。殺気が漏れてるって>
再度トラ娘が問い掛けてくる。
だが、不快さを隠さないグーリフ。その為に周囲の空気が重くなり、目の前のきょうだい達は顔色が悪くなってきていた。
「彼と一緒でしたら」
「それは構わないですわ。では、あちらの休憩室に行きましょうか」
「はい」
溜め息を圧し殺し、フェリシアはトラ娘に応じる。こういったヒトの集まりの際には、必ず用意されている個室。そこへ移動する提案を受けたのだ。
グーリフの馬耳が 忙しなく動いている。彼は草食ではないが、根本的な性質のようなものだろうか。内心が荒れると、耳の動きが活発になるようなのだ。
それはさておき。
他の面々は口を開く事なく。非常に静かな時が流れていた。聞く耳を立てているとも言えるが。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「「「申し訳ございませんでしたっ」」」
「でした」
「っ……」
個室へ移動し、扉が閉められた直後の事だった。突然、クマきょうだいが深々と頭部を下げたのである。
予想外の出来事に、フェリシアは硬直した。グーリフは即座にフェリシアを抱き寄せたが、そこまで。目の前に並ぶ四つの後頭部に視線を向けるだけである。
フェリシアはグーリフの腕に包まれたまま、とりあえず状況判断の為に【神の眼+】の力を借りる事にした。
≪状態……【恐怖】【困惑】【興奮】【後悔】≫
≪【五年前】【許してほしい】【二度としない】≫
どうやら、五年前のクマ長男がやらかした事を謝罪しているようだった。
確かにあの後から、直接フェリシアと顔を合わせる機会はなく。領地から出ないフェリシアと、立ち入りを禁止するヨアキム。──大将はヨアキムに謝罪して、とりあえず許して貰ったようだが。マットは謝罪すらさせてもらえなかったのである。
フェリシアが社交界を避ける事で、マットも公の場に出られない。自業自得とはいえ、幼かったが故の行動の結果が重かった。
ミアから聞いていた話では、それらが原因でマットを潰してしまっていると。
「まぁ……もう良いです。感情に振り回される事なく、常に理性的であって下さい」
「あ、ありがとうございますっ」
≪【これで】【学園に】【社交界に】【出られる】≫
「考えなしの兄のせいで申し訳ございませんでした。わたくしからも、今後もきちんと言い聞かせておきます。ありがとうございます」
どうやらマットのきょうだい達は、彼の謝罪の為に共についてきたようだ。
フェリシアとは初対面なのだ。しかしながら長男のやらかしの結果、今後継続して自分達にも泥が掛かるからだろうか。
それでも、今後はもうフェリシアには関係がないだろう。謝罪は受け入れたし。──と思っていたら、クマきょうだいの言い合いが始まった。
「ぼくの美しさの前では、バカな兄の所業など霞んでしまうがな」
「はあ?アンタこそバカじゃないの。パパが大将だからって、アンタにもその地位があるなんて思ってるんじゃないわよね。バカなのは髪の色だけにしなさいよね」
「なっ?!黄色はバカじゃないからなっ。それを言うならお前だって」
「残念でした~。わたくしはママと同じ、綺麗な黄色と黒の縞模様の髪なの。ベタな黄色はお呼びじゃないわ。それに双子だもの。それを言うなら、わたくしの方が美しいわね」
「あたしはくろ。パパとおなじ。めも。パパとおなじ。クマだし。パパとおなじ。あたしがいちばん。だからつよい。きれい」
トラ息子とトラ娘の言い合いに、クマ娘が参戦する。
クマ息子はフェリシアに謝罪を受け入れて貰っただけで満足のようで、ニコニコと笑顔を浮かべて見ているだけだった。
「ぼくの方が美しいんだっ」
<なぁ、フェル。もう良いだろ?煩くてかなわねぇ>
<まぁ……ねぇ。用事は済んだだろうし、子供会行って何か食べようか>
このままこうして、きょうだい喧嘩を見ていても仕方ない。
そう判断したフェリシアは、呆れた様子のグーリフとこの場を立ち去る事にする。
「ちょっと待って!誰が美しい??」
「……フェルに決まってるだろう」
「あ、はい……」
退室しようとしたグーリフの肩に手を置いたトラ息子だが。鋭い視線と共に向けられた言葉にスン、と我に返ったのだった。
そんなドタバタがあった、初の子供会。
これで、義務である最低一回の参加はしたので。その後の時間も、全く友達なんて作る事は出来なかったが。
フェリシアはグーリフと共に、王都の食材を堪能したのである。さすがに王城だからか、料理は全て逸品だった。満足満足。
そうしてフェリシア一向が王都へ向かう日がやってきた。
「フェル、大丈夫か?ほら。これだけ柔らかければ、痛くならねぇだろ?」
「う、うん。ありがとう、グーリフ」
もふもふとしたクッションに埋もれている状態のフェリシア。長距離移動となる馬車の中、周囲をこれでもかと衝撃吸収対策されている。
グーリフとミアと合わせて三人しかいないのに、広い筈の馬車内が既にいっぱいだった。
(それにしても……、多すぎない?)
大人が楽に四人乗れる馬車である。そこに十歳の子供二名と侍女。他の部分は全てといっても良い程、ふわふわが占有していた。
フェリシアの周囲は、どう転んでももふもふ。クッション。ぬいぐるみ。毛布まである。
「往路だけでも一週間ありますからね。以前外出したコノネン領地は、グーリフ様のお力で三日掛かるところを一日で到達致しました。けれども今回は旦那様と同行でありますので、強行は出来かねます」
「仕形ねぇな。護衛を兼ねてんだ。さすがに置いていく訳にゃいかねぇだろ」
「うん、それは分かってる。っていうか、帰りもガウ兄と一緒だから同じだけ掛かるよねぇ」
「当然だな」
復路も同様に、長距離馬車の旅が確定していた。
フェリシアは前世でもこのような長旅をした経験がない為、楽しみ半分憂鬱半分といった気持ちである。
しかも事前に聞いた話では。安全策の理由から、宿泊先や立ち寄り先においても外出禁止だとか。
完全に、現地到着まで軟禁状態。フェリシアの憂鬱度が増した。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「やっと着いたぁ~」
「お疲れ様でした、シア様」
「良く我慢したな、フェル」
ぐったりとしながら、グーリフの腹部に顔を擦り付けたフェリシアである。
思った以上に、外に出られない行程は厳しかった。精神的にも肉体的にも。
一日や二日ならば、まだ我慢が出来ただろう。十歳とはいっても、精神年齢は既に成人している程に生きているのだ。
多少の不自由を我慢出来ないで騒ぐ程、幼くはない。けれども、単に乗り物に乗っているだけの旅。
窓から景色は見えるが、町などのヒトが多い場所ではカーテンが閉めきられ。食べ歩きも、ウインドウショッピングも。何一つ経験出来ないのだ。獣属は総じて鼻が良いので。窓を開けて匂いを嗅ぐ事すら、禁じられていた。
完全に箱の中。鬱憤は溜まる。それはもう、はち切れんばかりに。
「王都滞在は四週間です。その間にシア様とグーリフ様が参加される子供会。そしてガウリイル様の卒業式があります。その他諸々を済ませて、終わりましたら帰還となります」
「はあい~」
「とりあえずは、フェル。疲れただろ?この王都の邸宅で休むとするか」
「うんっ」
ヨアキムはそのまま城に顔を出さないとならないらしく、邸宅に入る事なく見送った。フェリシアはグーリフとミアに連れられ、王都のラングロフ邸に入る。
一通りヨアキムが紹介だけしていったので、執事と侍女長はフェリシアとグーリフを丁寧にもてなしてくれた。グーリフは親戚筋の子供として紹介されたので、きちんと客人としての扱いである。
ミアはフェリシアの専属侍女と紹介されたので、王都のラングロフ邸でもフェリシアと共にいられるようだ。
ちなみに、フェリシア以外を紹介したのはベルナールである。
ヨアキムは色々と拗らせているのか、ただの脳筋勢なのか。フェリシアの紹介すら、『娘だ』以外になかった。
見れば分かる銀色オオカミ。間違いようもないが、すぐにベルナールが間に入ったのである。使える補佐官だった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
<……予想してなかったよ>
<そうかぁ?鳥が、クマ兄妹も来るって言ってたろ>
<そうだけど……>
王都のラングロフ邸に到着してから、早くも二週が経ち。その間も使用人達は、示し合わせたかのように外出させてくれない。そんな軟禁状態のまま、フェリシアが全く来たくなかった子供会の日がやって来た。
朝早くヨアキムから準備をするように言われ、大慌てで身なりを整えたフェリシアとグーリフ。せめて数日前に言っておいて欲しかったと言いたかったが。王都に来たと言っても、継続して父娘の接点は皆無なのだ。
そうしてやって来た王城。ここは毎月の子供会用に使われている、小さめのホールである。
そこへ集まった五歳から十歳の、男女合わせて二十名程。それなりの回数を参加している子供もいるようで、既に幾つかのグループを形成していた。
フェリシアはグーリフと手を繋いだまま、遠巻きにその様子を見ていたのである。先程までは。
けれども現在は、二人の目の前にトラ種の男女。クマ種の男女が立ちふさがっている。
「ねぇ。聞いているのかしら?」
「やめなよぉ、パツェニル。ぼくらが虐めてるみたいじゃないか」
「おにさま、おねさま。しずかに。おくち、とじて。おあいて、はなせない、です」
ミアから聞いた情報では、トラ種の双子は五歳。後ろのクマ種の長男は九歳だから、子供会に参加する権利があった。だが一番前に立ち塞がる小さなクマ娘は、確か四歳ではないだろうか。──というか、フェリシアの視界に映るスキル【神の眼+】がそう告げている。
きょうだいでやいのやいのと言い合っていた。周囲の他の子供達は、状況を見極めようとしているのか。様子見といった感じである。
これが始まるまでは。ラングロフから噂の銀狼娘が参加した事で、いつ声を掛けようかと見計らっていたのだ。出鼻を挫かれた感じだろう。
「そうよね、ツビカ。イェアンは黙って。もう一度お聞きしますわ、ラングロフ令嬢。少しわたくし達と、お話しする時間を頂けませんか」
<どうするよ、フェル。ここでぶっ飛ばすか?>
<いやいや、ダメだから。落ち着いて、グーリフ。殺気が漏れてるって>
再度トラ娘が問い掛けてくる。
だが、不快さを隠さないグーリフ。その為に周囲の空気が重くなり、目の前のきょうだい達は顔色が悪くなってきていた。
「彼と一緒でしたら」
「それは構わないですわ。では、あちらの休憩室に行きましょうか」
「はい」
溜め息を圧し殺し、フェリシアはトラ娘に応じる。こういったヒトの集まりの際には、必ず用意されている個室。そこへ移動する提案を受けたのだ。
グーリフの馬耳が 忙しなく動いている。彼は草食ではないが、根本的な性質のようなものだろうか。内心が荒れると、耳の動きが活発になるようなのだ。
それはさておき。
他の面々は口を開く事なく。非常に静かな時が流れていた。聞く耳を立てているとも言えるが。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「「「申し訳ございませんでしたっ」」」
「でした」
「っ……」
個室へ移動し、扉が閉められた直後の事だった。突然、クマきょうだいが深々と頭部を下げたのである。
予想外の出来事に、フェリシアは硬直した。グーリフは即座にフェリシアを抱き寄せたが、そこまで。目の前に並ぶ四つの後頭部に視線を向けるだけである。
フェリシアはグーリフの腕に包まれたまま、とりあえず状況判断の為に【神の眼+】の力を借りる事にした。
≪状態……【恐怖】【困惑】【興奮】【後悔】≫
≪【五年前】【許してほしい】【二度としない】≫
どうやら、五年前のクマ長男がやらかした事を謝罪しているようだった。
確かにあの後から、直接フェリシアと顔を合わせる機会はなく。領地から出ないフェリシアと、立ち入りを禁止するヨアキム。──大将はヨアキムに謝罪して、とりあえず許して貰ったようだが。マットは謝罪すらさせてもらえなかったのである。
フェリシアが社交界を避ける事で、マットも公の場に出られない。自業自得とはいえ、幼かったが故の行動の結果が重かった。
ミアから聞いていた話では、それらが原因でマットを潰してしまっていると。
「まぁ……もう良いです。感情に振り回される事なく、常に理性的であって下さい」
「あ、ありがとうございますっ」
≪【これで】【学園に】【社交界に】【出られる】≫
「考えなしの兄のせいで申し訳ございませんでした。わたくしからも、今後もきちんと言い聞かせておきます。ありがとうございます」
どうやらマットのきょうだい達は、彼の謝罪の為に共についてきたようだ。
フェリシアとは初対面なのだ。しかしながら長男のやらかしの結果、今後継続して自分達にも泥が掛かるからだろうか。
それでも、今後はもうフェリシアには関係がないだろう。謝罪は受け入れたし。──と思っていたら、クマきょうだいの言い合いが始まった。
「ぼくの美しさの前では、バカな兄の所業など霞んでしまうがな」
「はあ?アンタこそバカじゃないの。パパが大将だからって、アンタにもその地位があるなんて思ってるんじゃないわよね。バカなのは髪の色だけにしなさいよね」
「なっ?!黄色はバカじゃないからなっ。それを言うならお前だって」
「残念でした~。わたくしはママと同じ、綺麗な黄色と黒の縞模様の髪なの。ベタな黄色はお呼びじゃないわ。それに双子だもの。それを言うなら、わたくしの方が美しいわね」
「あたしはくろ。パパとおなじ。めも。パパとおなじ。クマだし。パパとおなじ。あたしがいちばん。だからつよい。きれい」
トラ息子とトラ娘の言い合いに、クマ娘が参戦する。
クマ息子はフェリシアに謝罪を受け入れて貰っただけで満足のようで、ニコニコと笑顔を浮かべて見ているだけだった。
「ぼくの方が美しいんだっ」
<なぁ、フェル。もう良いだろ?煩くてかなわねぇ>
<まぁ……ねぇ。用事は済んだだろうし、子供会行って何か食べようか>
このままこうして、きょうだい喧嘩を見ていても仕方ない。
そう判断したフェリシアは、呆れた様子のグーリフとこの場を立ち去る事にする。
「ちょっと待って!誰が美しい??」
「……フェルに決まってるだろう」
「あ、はい……」
退室しようとしたグーリフの肩に手を置いたトラ息子だが。鋭い視線と共に向けられた言葉にスン、と我に返ったのだった。
そんなドタバタがあった、初の子供会。
これで、義務である最低一回の参加はしたので。その後の時間も、全く友達なんて作る事は出来なかったが。
フェリシアはグーリフと共に、王都の食材を堪能したのである。さすがに王城だからか、料理は全て逸品だった。満足満足。
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