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【229 スカウト】
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「王宮仕え?私が・・・ですか?」
「はい、先日こちらのお店で暴れた、元剣士隊副隊長のゲーリーを、いともたやすくあしらったと聞きまして。ご存じかもしれませんが、今カエストゥス国は体力型の兵士を増やしております。
剣士、弓使い、槍使い、まぁ扱う武器はなんでも結構ですし、素人でも鍛えればいいので構いませんが、やはり即戦力は貴重です。ぜひ、シンジョウ・ヤヨイさんには、王宮の剣士隊への入隊をお願いしたいのです」
先日レイジェスで暴れたゲーリーは、リンダさんが城へ知らせるなり、すぐに駆けつけてきた兵士達に連行されて行った。
どのような処分になるか分からないけれど、リンダさんが言うには、元副隊長という立場を考えれば、かなり重い罪になるらしい。
そして、その一件があった二日後、私はお店の事務所で、お城のお偉いさんとテーブルを挟んで向かい合い、紅茶を飲みながらスカウトされている。
開店と同時に入ってきて、ちょっとよろしいですかと詰め寄られた時は、日本の刑事ドラマの職務質問を思い出した。
さて、この目の前のスカウトに来た大柄な男性も体力型のようだ。
これまであまり優遇されていなかった体力型だけど、これからは戦力として期待される事に大変喜んでいた。
勧誘にも力が入っており、私を口説く弁にも熱が入っている。
「えっと・・・私は、その・・・このお店と孤児院の、二つのお仕事がありますので、難しいです」
戦ったのは私だけど、私ではない。
もう一人の弥生の事を説明しても、おそらく信じてもらえないだろうし、おかしな人と思われかねないから黙っておいた。
実際、あの日は私の代わりに一日弥生が働いたようだけど、顔なじみになったお客さんからは、なんかいつもと雰囲気違くない?と言われたり、あんなに強かったんだ!?と驚かれていたらしい。
あまり目立ったり、変に勘繰られる事はできれば避けたい。
「はい。私もだいたいのご事情は伺っております。ですが、そこを何とかお願いしたいのです!元副隊長のゲーリー以上の実力者が、このまま埋もれてしまうのはあまりに惜しい!無理を言っているのは分かりますが、国のためになんとかご助力をお願いいたします!」
この熱心に私を勧誘する男性は、年齢はロビンさんと同じくらいだろうか。
頭には黒髪より白い毛の方が多い。顔にも年相応のシワが刻まれている。だが、その目にはまるで少年のような無邪気でキラキラとした純真さがあり、とても実直な人なんだなと感じさせた。
「・・・私などに過大な評価をいただいて大変恐れ多いのですが、やはり私はこのお店と孤児院の仕事だけで精一杯です。このお店もオープンしてまだ一月足らずですし、なにより孤児院にはまだ幼い子供達が沢山おります。ですので申し訳ありませんが、ご容赦いただけましたらと・・・」
ここまで自分を評価してくれる事は嬉しいけれど、やはり私にはこのお店と孤児院以外に、どこかで働く事は考えられない。
私は今では孤児院を実家だと思っている。言うまでもなく孤児院のみんなは私の家族だ。
どんなに好条件でも、家族を放って他所で働くなどありえない。
そしてレイジェスは私がこの世界にできる恩返しだ。
日本で命を落とした私に、この世界はもう一度命を与えてくれた。そしてこんなに優しさで溢れた人達に囲まれている。私はなんて恵まれているのだろうと毎日思っている。
レイジェスの仕事は私が考えたこの世界への恩返しなのだ。
王宮仕えでもこの国に貢献はできるので、それでもいいとは思う。だけど、私は街の人に密着した形で、生活を豊かにするお手伝いをしたい。
勧誘の男性はしばらく黙っていたけれど、私の気持ちが伝わったみたい。
残念ですが、しかたありませんね・・・そう言って席を立った。
帰り際、もう一度お詫びの言葉を口にしてお見送りをする私に、お仕事頑張ってくださいね。と言葉をかけてくれた。
優しい人なんだなと思った。
「ヤヨイさん・・・何の話しだったの?」
城の勧誘の人が帰ると、ジャニスさんが心配そうに眉を下げて話しかけて来た。
何でもないわと言おうとしたけれど、それでは逆に心配をかけてしまうと思い直し、私は正直に王宮仕えの勧誘だったと、経緯を話した。
「・・・という話しだったの。断ったわ。私にはこのお店と孤児院が一番大切だもの。それに私は戦えないからね」
「そうだったんだ・・・もう一人の弥生さんは強かったからね。リン姉とどっちが強いだろうって思うくらいだったから、そりゃ話しを聞きつければ、お城から誘いも来るか・・・・・でも良かった。断ってくれて」
ジャニスさんは、にかっと歯をみせて笑う。
「ふふ、安心して、私はどこにも行かないわ。これからも一緒に頑張りましょう」
「うん!」
だって、私はジャニスさんのお姉ちゃんだものね。
ジャニスさんをハグすると、ジャニスさんは、え!?と、しどろもどろになるので、そのしぐさが可愛くて、ついイタズラしたくなる。
最近知ったのだけれど、ジャニスさんは意外とこういうスキンシップに弱い。
メアリーちゃんと真逆だ。
「さぁ、今日も一日頑張ろう!」
私が張り切った声を上げると、ジャニスさんはおかしそうにクスッっと笑ったけど、おー!と続いて声を上げてくれた。
暖かく明るい日差しが、今日も店内に心地よい温もりをくれる。
いらっしゃいませ!
私達はそう声を上げ、今日も街のために働く。
「はい、先日こちらのお店で暴れた、元剣士隊副隊長のゲーリーを、いともたやすくあしらったと聞きまして。ご存じかもしれませんが、今カエストゥス国は体力型の兵士を増やしております。
剣士、弓使い、槍使い、まぁ扱う武器はなんでも結構ですし、素人でも鍛えればいいので構いませんが、やはり即戦力は貴重です。ぜひ、シンジョウ・ヤヨイさんには、王宮の剣士隊への入隊をお願いしたいのです」
先日レイジェスで暴れたゲーリーは、リンダさんが城へ知らせるなり、すぐに駆けつけてきた兵士達に連行されて行った。
どのような処分になるか分からないけれど、リンダさんが言うには、元副隊長という立場を考えれば、かなり重い罪になるらしい。
そして、その一件があった二日後、私はお店の事務所で、お城のお偉いさんとテーブルを挟んで向かい合い、紅茶を飲みながらスカウトされている。
開店と同時に入ってきて、ちょっとよろしいですかと詰め寄られた時は、日本の刑事ドラマの職務質問を思い出した。
さて、この目の前のスカウトに来た大柄な男性も体力型のようだ。
これまであまり優遇されていなかった体力型だけど、これからは戦力として期待される事に大変喜んでいた。
勧誘にも力が入っており、私を口説く弁にも熱が入っている。
「えっと・・・私は、その・・・このお店と孤児院の、二つのお仕事がありますので、難しいです」
戦ったのは私だけど、私ではない。
もう一人の弥生の事を説明しても、おそらく信じてもらえないだろうし、おかしな人と思われかねないから黙っておいた。
実際、あの日は私の代わりに一日弥生が働いたようだけど、顔なじみになったお客さんからは、なんかいつもと雰囲気違くない?と言われたり、あんなに強かったんだ!?と驚かれていたらしい。
あまり目立ったり、変に勘繰られる事はできれば避けたい。
「はい。私もだいたいのご事情は伺っております。ですが、そこを何とかお願いしたいのです!元副隊長のゲーリー以上の実力者が、このまま埋もれてしまうのはあまりに惜しい!無理を言っているのは分かりますが、国のためになんとかご助力をお願いいたします!」
この熱心に私を勧誘する男性は、年齢はロビンさんと同じくらいだろうか。
頭には黒髪より白い毛の方が多い。顔にも年相応のシワが刻まれている。だが、その目にはまるで少年のような無邪気でキラキラとした純真さがあり、とても実直な人なんだなと感じさせた。
「・・・私などに過大な評価をいただいて大変恐れ多いのですが、やはり私はこのお店と孤児院の仕事だけで精一杯です。このお店もオープンしてまだ一月足らずですし、なにより孤児院にはまだ幼い子供達が沢山おります。ですので申し訳ありませんが、ご容赦いただけましたらと・・・」
ここまで自分を評価してくれる事は嬉しいけれど、やはり私にはこのお店と孤児院以外に、どこかで働く事は考えられない。
私は今では孤児院を実家だと思っている。言うまでもなく孤児院のみんなは私の家族だ。
どんなに好条件でも、家族を放って他所で働くなどありえない。
そしてレイジェスは私がこの世界にできる恩返しだ。
日本で命を落とした私に、この世界はもう一度命を与えてくれた。そしてこんなに優しさで溢れた人達に囲まれている。私はなんて恵まれているのだろうと毎日思っている。
レイジェスの仕事は私が考えたこの世界への恩返しなのだ。
王宮仕えでもこの国に貢献はできるので、それでもいいとは思う。だけど、私は街の人に密着した形で、生活を豊かにするお手伝いをしたい。
勧誘の男性はしばらく黙っていたけれど、私の気持ちが伝わったみたい。
残念ですが、しかたありませんね・・・そう言って席を立った。
帰り際、もう一度お詫びの言葉を口にしてお見送りをする私に、お仕事頑張ってくださいね。と言葉をかけてくれた。
優しい人なんだなと思った。
「ヤヨイさん・・・何の話しだったの?」
城の勧誘の人が帰ると、ジャニスさんが心配そうに眉を下げて話しかけて来た。
何でもないわと言おうとしたけれど、それでは逆に心配をかけてしまうと思い直し、私は正直に王宮仕えの勧誘だったと、経緯を話した。
「・・・という話しだったの。断ったわ。私にはこのお店と孤児院が一番大切だもの。それに私は戦えないからね」
「そうだったんだ・・・もう一人の弥生さんは強かったからね。リン姉とどっちが強いだろうって思うくらいだったから、そりゃ話しを聞きつければ、お城から誘いも来るか・・・・・でも良かった。断ってくれて」
ジャニスさんは、にかっと歯をみせて笑う。
「ふふ、安心して、私はどこにも行かないわ。これからも一緒に頑張りましょう」
「うん!」
だって、私はジャニスさんのお姉ちゃんだものね。
ジャニスさんをハグすると、ジャニスさんは、え!?と、しどろもどろになるので、そのしぐさが可愛くて、ついイタズラしたくなる。
最近知ったのだけれど、ジャニスさんは意外とこういうスキンシップに弱い。
メアリーちゃんと真逆だ。
「さぁ、今日も一日頑張ろう!」
私が張り切った声を上げると、ジャニスさんはおかしそうにクスッっと笑ったけど、おー!と続いて声を上げてくれた。
暖かく明るい日差しが、今日も店内に心地よい温もりをくれる。
いらっしゃいませ!
私達はそう声を上げ、今日も街のために働く。
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