異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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「あ~、メシメシ!腹減った、早くメシ!今すぐメシ!メシメシメーシーメーシーーー!」

小屋の中に入ると、板張りの広間の真ん中で大の字で寝ころびながら、リカルドは両手両足をばたつかせて喚き散らした。

「・・・リカルド・・・お前その年でダダこねるって・・・・・」

欲しい物が買ってもらえなくて暴れる子供のようなリカルドを見下ろして、アラタは額に手を当ててガックリとうなだれた。

「あー、今日こそ美味いメシが喰いたいなー、毎日毎日保存食、乾パン、干し肉、干し芋は飽きたなー、なんでだろーなー、腹いっぱい食えるって話しだったのになー、俺って騙されたのかなー、正直者が馬鹿を見るって嫌な世の中だよなぁぁぁぁぁぁ~~~~~~」

棒読みだが部屋中に聞こえるような声量で、一方的に話し出す。
話しの内容から、標的は自分をこの遠征に誘ったレイチェルなのは明らかだった。


「おいリカルド。ずいぶんな言い方じゃないか?私がいつお前を騙した?」

無視をしてもよかったのだろうが、あまりにひどいリカルドの愚痴に、レイチェルは荷物を整理していた手を止めると、赤い髪を掻き上げて近づいて来た。

「騙したじゃねぇかよ?俺に好きなだけ食えって言ったくせに、なんで毎日毎日保存食のオンパレードなんだよ?干物ばっか出しやがって!酒のつまみはメシって言わねぇんだよ!」

レイチェルがリカルドの隣に立って顔を見下ろすと、リカルドはガバッと体を起こして、レイチェルの顔に指先を突き付けた。

「約束守れよ!つまみじゃなくてメシを出せ!」

「リカルド、私は嘘なんて一つもついていない。あの時ちゃんと話しを聞いてなかったのか?よく思い出せ。私はレイマートを救出できたら、好きな物を好きなだけご馳走してやると言ったんだ。ああ、費用は騎士団持ちだがな」

「・・・あ?だからその約束を守れって言ってんだよ?」

「リカルド、頭に血が上り過ぎじゃないのか?いいか、レイマートを救出できたらと言ったんだぞ?まだ救出できてないよな?したがって今はキミにご馳走する理由がないんだ。分かったかい?お腹いっぱい食べたかったら、この任務を全力でこなす事だ」

反対にリカルドの鼻先に人差し指を突き付け、レイチェルは一言一句を言い聞かせるように力を込めて話した。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!」


しばらくの間きょとんとしていたリカルドだったが、やっと言葉の意味を理解できたのか、目を見開いて驚きの声を発した。

「うん、ようやく理解できたみたいだね?そういう事だ。私は約束は守るよ。全員を無事に救出できたら、キミの気が済むまでご馳走しようじゃないか。費用は騎士団持ちでね」


「な・・・そんな・・・・・バカな・・・・・・」

おそらく最初にレイチェルが条件を説明した時、リカルドは嬉しさのあまり、自分に都合の良いように話しを改良してしまったのだろう。
そして今、レイチェルから聞かされた話しが事実だと気づき、膝から崩れ落ちてしまった。


「レイチェル、それだとレイチェルが胸張って言う事でもないような・・・」

お金を出すのは騎士団だという話しだ。それをまるで自分がご馳走するかのように話すレイチェルに、一歩離れて話しを聞いていたアラタが、遠慮がちに声をかける。

「何を言う?私が騎士団と交渉したんだぞ?私の功績でもあるだろう?」

するとレイチェルは、さも当然と言わんばかりに腕を組んで、アラタの目を見て言い返す。

「うっ、まぁ・・・そう、なのか?」

「そうだぞ。これは騎士団からの依頼なのだからな?依頼には報酬があって当然だろ?そしてその報酬は私が勝ち取ったんだ。ならば私の功績だろう?」

「お、おう、分かった・・・」

「うん、分かればよろしい」

ぐいっと詰め寄られて、レイチェルの迫力にアラタは頷くしかできなかった。
そしてたじたじと狼狽えるアラタに、レイチェルはニッコリと笑って見せた。





「みんな、食べながらでいいから聞いてくれ」

自然と輪になって干し肉を齧(かじ)っていると、アルベルトが話しを切り出した。
返事はないが、全員の視線が自分に集まった事が分かると、アルベルトは水を一口飲んで話しを続けた。

「このペースで行けば、あと三日でパウンド・フォーに着くだろう。エクトールの話しでは10メートルもある蛇が何匹もいたと言うし、俺達が知ってる普通の蛇は、足元を埋め尽くす程だったらしい。そんな山に入るんだ・・・今から覚悟しておいてほしい事がある」

「・・・覚悟?・・・死ぬ気は更々ないですよ」

アラタが言葉を返すと、アルベルトはアラタに顔を向けて頷いた。

「それはその通りだ。俺も死ぬ気はないし全員生きて帰してみせる。俺の言いたい事は蛇の毒だ」

毒という言葉に、これまで穏やかだった場の空気に緊張が走った。


「・・・毒か・・・なるほど、確かにそうだな。相手は蛇なんだ、毒くらい持ってて当たり前だな」

レイチェルがアルベルトの言葉を受け止めて、神妙な顔で頷いた。

「10メートルってサイズと、闇にばかり意識がいっていたな。蛇は毒を持っているものも多い、闇の力が無い蛇もあまくは見れないな」

リーザ・アコスタも食事の手を止めて腕を組み、真剣みのある声で毒に対する注意を言葉にする。

「地を這うものを相手にする時、一番気を付けなければならないのは足でしょう。我々騎士団は鉄のレッグガードを装備していますが、みなさんはどうですか?」

シルバー騎士のラヴァル・レミューが、騎士以外のメンバーにスッと手を差し向けて問いかけた。

食事中のため外しているが、レミュー達騎士団は、膝から下に鉄のレッグガードを装着している。
レッグガードは足首まで保護できており、丈夫そうな革のブーツには、鉄と同じ強度を持つ鉄糸(てっし)という特殊な糸が縫いこまれており、噛まれたとしても蛇の牙が肉に刺さる事は無い。
騎士団の装備は、蛇の対策としては十分にできていた。


「ああ、私も足の装備はバッチリだぞ。私は機動力が命だから騎士団みたく鉄ではないが、この皮のレッグガードは密度がしっかりしていて蛇の牙程度なら通さない。このブーツだって肉厚だから問題ないな」

レイチェルはみんなに見せるように、右足を前に出して装備の説明をした。


「私は騎士団と似たような装備だ。国から支給された物だが、軽くて使い勝手が良くて気に入っている」

リーザ・アコスタもレイチェルと同じように、右足を前に出して自分の装備を見せながら話す。
見た目は騎士団の鉄のレッグガードと似ているが、薄く軽量化されており、機動力はあまり落ちないと言う。


「私はこれだ」

アゲハの靴は、足の甲から足首にかけて、何本もの細い革バンドで覆われたデザインだった。
日本でも見た事があるが、グラディエーターという靴に近いように思う。
ただ日本で見たグラディエーターと決定的に違うのは、バンドとバンドの間に、一切の隙間が無くギッチリと覆われている事だった。

「けっこう硬いし弾力性もあるんだ。蛇の牙なんてなんでもないね」

そう言ってアゲハは、靴を指先でつついて見せる。
コッ、コッ、と固そうな音が耳に届く。確かに蛇の牙程度は通さなそうだ。


自然と順番に装備を見せていく流れになり、アゲハの隣に座るリカルドに視線が集まった。

「モグ、モグ・・・あ~あ、今日も干し肉かよ、たくっ、これじゃ腹が膨れねぇよ・・・ん?んだよ?なに見てんだよ?」

自分に視線が集まっている事に気付いたリカルドが、干し肉を嚙みながら睨むように見返す。

「いや、お前話し聞いてなかったの?みんなで装備を見せあってたんだよ。蛇対策で足はどうしてるかって」

アラタが呆れたように説明すると、リカルドは、はいはいと軽い調子で返事をし、投げ出すように両足を前に出した。

「おらよ、俺のはこれだ。膝から下は全部鉄だ。リーザが使ってる軽量化された鉄と似たようなもんだ。蛇の牙なんてクソにもならねぇくらい硬度はある。あと俺は蛇が嫌う匂い袋も持って来た。だからお前らに蛇が寄って来ても、俺には寄ってこねぇから心配いらねぇぞ」

「なんだよリカルド、お前話し聞いてないと思ったら、リーザの装備しっかり見てんじゃないか?」

「あん?そりゃこうして輪になってんだから、聞こえて当然だろ?何言ってんだよ兄ちゃん?」

「お前・・・本当にそういうとこだぞ?」

「んだよ?難癖つけんのか?俺よっか兄ちゃんはどうなんだよ?ちゃんと装備固めてんのか?」

呆れ顔を見せるアラタに、リカルドが眉間にシワを寄せて言い返す。

「・・・あ、いや、俺は・・・」

ぐっ、言葉を詰まらせるアラタに、リカルドの目が光った。


「んだよ?もしかして兄ちゃん、なんも用意してねぇのか?まさかなぁ?そんなわけねぇよなぁ?俺に難癖つけて、自分はなんもありませんって、そんなわけねぇよなぁぁぁ?」

「ぐぬっ、お、俺は・・・その・・・」

「だりぃなぁ兄ちゃん、さっさと足出せよ、おら、見せてみろって!」
「お、おい!やめろ!こ、このっ!」
「ほらやっぱり!なんもねぇじゃねぇか!」

アラタに掴みかかり、無理やり足を引っ張っり出したリカルドは、勝ち誇った顔でふんぞり返った。

「んだよ兄ちゃん、そんな足で山に行くのかよ?山を舐めてんじゃねぇか?蛇は食い物だけどよぉ、毒蛇に噛まれりゃ普通に死ねるんだぜ?反省しろよなぁぁぁぁ!?」

「くっ、いや、俺そういう習慣ないから、闇の大蛇を光の力がぶっとばせばいいのかなって、それだけ考えて・・・そんな普通の蛇の事は考えてなかった・・・・・」

バツの悪そうな顔で、どんどん声が小さくなっていくアラタ。
確かに足の対策は頭に無かった。山登りというから一応底が厚く、登山に向いた靴は履いてきたが、脛を護る物は何もない。これで蛇の牙を防げるかというと、それは無理だろう。
これではリカルドに何も言い返せないし、言われて当然である。


「たくっ、予想通りだったぜ。ちょっと待ってろ」

「ん?」

立ち上がって部屋の隅に置いた自分のリュックの中をあさると、リカルドは革製のレッグガードを取り出して、アラタに手渡してきた。

「ほら、兄ちゃん、これやるから付けとけよ」

「え?・・・俺に?」

驚くアラタの隣にドカッと腰を下ろすと、リカルドは干し肉をガブっと噛みちぎる。

「んだよ?いらねぇのか?兄ちゃんの事だから、そこまで気がまわらねぇだろうと思って用意しといたんだぜ?感謝しろよ?」

「お、おお、まさかお前がそんな気を回してくれるなんて・・・ありがとうなリカルド」

「礼なんて別にいいんだよ、帰ってからキッチンモロニ-奢ってくれりゃそれで十分だから」

「相変わらず食い気ばっかだな・・・ははは、分かった、帰ってからな」

まさかリカルドが、自分のために用意してくれているとは夢にも思わなかった。
面食らったが、正直とても嬉しくて自然と笑みがこぼれた。


「リカルド、アタシも無い」


いつの間にかリカルドの隣に座ったユーリが、リカルドに向けて手を差し出していた。

「うぉッ!びっくりしたぁー!ユーリ、お前いきなり声かけてくんなよ!」

「リカルド、アタシの分は?」

抗議するリカルドに対して、ユーリは涼しい顔で手をぐいっと前に出す。

「・・・んだよぉ~、分かったからちょっと待ってろ」

ぶつぶつ文句を言いながら、リカルドはもう一度自分のリュックをガサゴソとあさると、アラタと同じデザインのレッグガードを取り出した。
だが、その大きさはアラタがもらった物より一回り小さく、女性や子供用に見える。


「・・・ほら、これでいいんだろ?」

「・・・ピッタリ・・・リカルド、最初からアタシのために用意してた?」

「うっせぇなぁ、兄ちゃんと一緒でどうせ持ってこないと思ってたんだよ。ほら、もういいだろ?俺は味気ねぇ干し肉食うので忙しいんだよ」

そう言ってリカルドは、ユーリに背中を向けると、黙々と干し肉を齧りだした。


「・・・ありがと」

「・・・・・おう」

ユーリは一言だけお礼を口にすると、リカルドの隣で黙って干し肉を食べ始めた。

リカルドもボソっと返事はしたが、特に顔を向ける事もせず、そのまま干し肉を食べ続ける。


なんとも不思議な雰囲気になったが、空気は決して悪くない。
むしろ他のメンバーは微笑ましいものを見るように、温かい視線を二人に向けた。

時間がゆっくりと流れて行った。
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