異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1286 黒魔法使いの神髄

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「ぐっ!・・・こ、これは!?」

突然足に感じた強い痛みに、ミゼルは目を見開いた。

刺された箇所は左の太腿(ふともも)である。トリッシュの攻撃に備え、体の隅々まで魔力を張り巡らせて集中していたその時、前触れもなく自分の足に走った鋭く強い痛みに目を開けると、細く長い金属の針が突き刺さっていたのだ。


なんだこれは!?針?針が刺さっているのか!?いったいなぜ?どうやって刺さった?どこから?

直接刺しにくればさすがに分かる。では距離をとって投げた?・・・そうだな、それしか考えられない。
だがあの女が針を投げて俺に刺したのか?他に敵の気配は無い。今この場には俺とあの女だけのはず・・・だが投げても魔法使いに届かせる事ができるのか?それにこれはなかなか深い。投げてここまで深く刺すのは魔法使いで、しかも女では難しいはずだ。
素手じゃないな・・・考えられるのは、魔力を使ってこの針を飛ばしたってところか。

「ちっ、そう簡単にはいかねぇって事か・・・・・はぁ・・・ふぅ・・・ぐッ!」

左足に刺さった金属の棒を握ると、一気に引き抜いた。

「あぐッ!いってぇッ!・・・・・はぁ、はぁ・・・くそっ!」

油断した・・・青魔法使いという事、魔道具は姿を消す能力、この二つでイメージを固定してしまった。
攻撃手段は近づいて、刃物か鈍器によるものだろうと思い込んでいた。
遠距離からの攻撃を頭から外していた。馬鹿だ、俺は。今のが頭か胸にでも来てたら死んでいたぞ。

傷はかなり深そうだ。痛みで立っているのも辛くなる。
けど・・・・・

「このくらいで倒れると思うなよ?俺だって命懸けてここに来てんだ!こそこそ足なんか狙ってねぇでここを撃ってみろ!」

拳を握り、左胸をどんと叩く。


さぁかかって来い!覚悟はできた!俺は絶対に倒れなねぇぞ!特大の一発をぶちかましてやる!




ふん・・・少し狙いが反れたみたいですね。
腹を狙ったのに左の太腿に刺さってしまった。やはり私は戦闘は苦手です。

ローブの内側のポケットから、透明のケースを取り出す。
ケースの中には15センチ程の細く長い針が、何十本と収められていた。

音も立てずに蓋(ふた)を開け、指先で一本摘まみ取る。

金属製の針は、細くても簡単には折れる事はない。しっかりした強度がある。
鋭く尖った先端を、数メートル先のボサボサ頭の男に向けて狙いを付ける。


これは魔道具でもなんでもない。私が護身用に作ったただの針。
でも魔力はとても通しやすい金属を使っている。だからほんの少しの魔力を込めるだけで、勢いよく飛ばす事ができる。

ただ魔力の通りが良過ぎる事も、考えものかもしれない。
撃つ瞬間はずみがつき過ぎて、今みたく狙いが反れてしまう事がよくある。
もう少し金属の質を落とした方が安定するかもしれない。

改良の余地有り、と・・・・・


「そういうわけでやる事が沢山あります。早く死んでください」


視線の先に映るボサボサ頭の黒魔法使いに向けて、指に挟んだ二発目の針を撃ち放った!





「ぐぁッ!」

今度は左肩に針が突き刺さった。強い痛みに顔が歪むが、歯を食いしばって針を握り、一気に引き抜いた!

「くそっ!痛ぇ・・・はぁッ・・・はぁッ・・・」

あの女、なんでさっさと頭や胸を撃たねぇ?痛ぶる気か?
いや、俺が見た印象だと、あの手のヤツは合理的で無駄を嫌うタイプだ。
早く国に帰りたいと言っていたし、俺を痛めつける時間があるなら、さっさと殺してさっさと帰っているはずだ。
つまり痛ぶる趣味は無いって事だ。そうなるとなぜこんな無駄撃ちをしているか?それが問題だ。

実際に俺にダメージは与えているわけだから、無駄撃ちと言うのも適切ではないかもしれないが、やれるなら早く頭なり心臓を撃って終わらせればいい。なぜそれをしない?

そこまで考えて、俺は一つの仮説に行き当たった。


・・・・・しないんじゃなくて、できないのか?


「・・・なるほど、戦闘は苦手って事か」

それなら説明はつく。狙った場所に撃てねぇんだ。魔力操作が下手なのか?もしくはこの針が扱い辛いのか?いずれにしろ、この女は頭を狙っても肩に刺しちまうくらいコントロールが悪い。

けど、それが分かってもこっちが劣勢なのは間違いねぇ。結局のところ急所は外しても、体のあちこちに穴を空けられりゃ、いずれ殺されちまうんだ。

お前の狙いはそれだろ?自分のコントロールの悪さを理解した上で、安全なところから俺を串刺しにするつもりなんだ。だったら時間はかかっても、このまま続ければいずれはお前が勝つ戦いだ。


・・・・・へっ!させっかよ!さっきお前が消えてから最初の攻撃を受けるまでにかかった時間は、おそらく10秒~20秒。俺から離れてもせいぜい10メートルくらいだろう。

「その距離ならいける・・・」

溜めは必要だが、10メートルならぶつけられる。


「はぁ・・・ふぅ・・・・・スゥーーー・・・・・・」

息を吸って吐き出し、最後にゆっくりと吸い込んだ。呼吸を整えると体中にいきわたらせた魔力をもう一度循環させる。そして鳩尾を意識して魔力を集中させると、準備が整った。


さぁ、何発でも撃ってこい!その時がお前の最後だ!




「あれは・・・」

私の針で刺された肩と足は軽傷ではない。それなりに出血もしているし、ダメージは大きいはず。
でもあの男・・・あの魔力はなに?

外に向かって放出するのではなく、体の中に溜め込んでいる。しかも相当な魔力量だわ、それだけの魔力を一気にぶつけるつもりなのね?

「・・・狙いは分かったわ。素晴らしい魔力ですね。それだけの魔力を一気にぶつけられれば、私のブレンドなんて関係無しにやられてしまいそうですね。でもそれはあくまで、ぶつけられればの話しですけどね」

目算で私とあの男の距離は10メートル。でもあれだけの魔力ならこの距離でも届かせるでしょう。
だったら私はそれより距離をとって撃てばいいだけの事!

人差し指と中指に挟んだ針の先を向けて狙いをつける。

確かに私は戦闘には向かない。けれどこの姿を消す魔道具ブレンドは、ハマれば無敵といっていいくらい利便性の高い魔道具です。丁度今のような状況では、一方的に攻撃ができるんです。
開き直って灼炎竜でも使われたら話しは別ですが、自軍の兵士もいるなかで山火事なんて起こせないでしょう?

上級魔法も使えず、姿の見えない敵を相手にできる攻撃手段は限られている。
あなたにできる唯一の戦い方はそう、今あなたがやろうとしているソレ、魔力開放だけです!

「無駄ですけどねッ!」

指先に込めた魔力を、針に流して飛ばす!
それと同時に地面を後ろに蹴って、今より更に距離を取った。
結局のところ距離を取れば勝てる戦いなのだ。相手の攻撃は届かない。自分の攻撃は致命傷を避けれてもダメージは蓄積していく。いずれは私に勝利が舞い込でくる。

「体中に穴を空けてあげますよ!全身の血を流して干からびて死ねばいい!」





「うァッ・・・!」

今度は左腰に針が刺さった。これで三発目だ。

「ぐぅッ・・・がっ!?」

ほとんど間を開けず、今度は左の二の腕を針が刺し貫いた。
さっきまでとは違い感覚が短い、たて続けに撃たれた。

「ッ!あ、ぐぅッ!」

そして五発目が左のふくらはぎに刺さる。
連続して体に穴を空けられ、耐え難い痛みが全身を駆け抜ける。

「ぐぅっ!・・・う、ぐ・・・・・」

ここまで気持ちで耐えてきたが、今の三連続はまずい!
痛みだけじゃなく、一気に血も流れた。気持ちだけではカバーしきれない現実がある。


「・・・・・ここまでだな」

できればあの女の位置を正確に把握したかった。
青魔法のサーチでも使えれば一番なんだが、黒魔法使いの俺にはできるわけもねぇ。
だから精神を集中してあの女の魔力を探っていたんだが・・・さっさときめねぇとこれ以上は体がもたねぇ。

女の位置は大まかにだが掴めた。左だ。あの女は俺から左に10~12メートル程離れた場所にいる。
いや、さっき少し動きがあったから、今はもう少し離れているな。それでも15メートル以内だ。

それにこれだけ左半身ばっか撃たれれば、こっちにいますよって教えてるようなもんだ。
左方向にいる事は間違いねぇ。

見てろよ・・・俺の特大の魔力開放なら、15メートルの距離でも十分届かせる事ができる。
ふっ飛ばしてやるぜ!



「っ!?」

ケースから針を取り出し、六発目を撃とうとして手を止めた。
この魔力・・・来る!




「オォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーッツ!」

ミゼルが大きく両手を広げると、自身を中心として凝縮された魔力が一気に解き放たれた!

強大な魔力の波動は四方八方に吹きすさび、台風の如き圧は樹々を薙ぎ倒す!

四属性の魔法とは違い、魔力を直接放出する魔力開放は射程距離が短い。
並みの魔法使いで数メートルだが、レイジェス一の魔力量を誇るミゼルは15メートルどころではない、驚異的広範囲に魔力をぶつけた。




「・・・ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・・・・・」

自分を中心に周囲の全てを吹き飛ばしたミゼルは、大きく息を乱して膝を着いた。
刺された痛みと流した血の多さに意識が遠くなる。


「ハァッ・・・ハァッ・・・ど、どうだ・・・?」

周囲を見まわし敵の姿を探した。だが視界に映るものは根元から折れた樹と、雪が飛ばされ剥き出しになって、地肌をさらした大地だった。

姿を消したトリッシュはどこにもいない。


「ハァッ・・・ハァッ・・・・・やった、のか?」

あれだけの魔力をぶつけたんだ。躱す事などできはしない。絶対に直撃させたはずだ!
姿を消す魔道具は効力を失ったはず!それでここに姿が見えないという事は、魔力開放の衝撃によって、視界に入らない程遠くに吹き飛ばされたという事だろう。

「俺の、勝ち・・・」
「死ねぇッ!クソ野郎ォォォーーーーーーッツ!」

勝利を言葉にしたその時、ミゼルの背後から現れたのはトリッシュ・ルパーシュだった!
右手にはナイフを握り、ミゼルの脳天目掛けて振り下ろす!



「やっぱりな・・・一発じゃ難しいと思ってたんだ」

振り下ろしたナイフがミゼルの頭に刺さるまでかかる時間は、一秒にも満たないだろう。
だがその刹那の一瞬にトリッシュは確かに聞いた。

なに・・・!?


この男、私が生きていると確信していたのか?そして待っていた?最後には直接とどめを刺しに来ると知っていたのか?まさか?いや、だが背後から襲われて振り向きもしないのか?なぜ?それはやはり来ると知っていたからに他ならないのではないか!?

まさか、私はおびき寄せられたのか?こ、この魔力!ま、まさか・・・ッツ!

「き、きさまぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーッツ!」
「魔力開放ッツ!」


トリッシュのナイフがミゼルの頭に刺さるよりも早く、ミゼルの二度目の魔力開放が放たれた。


「う、わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーッツ!」


吹き荒ぶ魔力の波動をその身に受けたトリッシュは、空高く打ち上げられた。
そして巨木に強かに体を打ちつけると、そのまま力なく落ちてそれきり動かなくなった。


「ハァッ!・・・ハァッ!・・・・・青魔法使いの、お前なら、結界で凌ぐと、思ってたぜ・・・俺をバカにしてたし、最後は直接トドメを刺しに来るともな・・・たくっ、きっつい女だったぜ・・・・・・・・・」


トリッシュ・ルパージュは倒した。
だが失血により体力の限界を迎えていたミゼルもまた、意識を保つ事ができずその場に崩れ落ちた。
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