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1287 包囲網
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「ハァッ!ハァッ!くっ、邪魔だぁぁぁーーーーーーーッ!」
剣を振り上げ襲いかかってくる帝国兵に、右手に握る炎の杖を向けると、魔力を炎に換えて撃ち放った!
炎を正面から浴びた帝国兵は悲鳴を上げて地面を転げまわる。
しかし一人倒したところで状況は好転しない、その後ろから続々と現れる帝国兵が、剣や槍を持って飛び掛かって来るのだ。
「オォォォォォォーーーーーーーーーッツ!」
たった今撃ったばかりの炎の杖に、より大きな魔力を込めて撃つ!
巨大な炎の噴射は、飛び掛かってきた何人もの帝国兵を一発で飲み込んだ。轟々と燃え盛る炎の中、絶叫を上げて悶え苦しみながら倒れていく帝国の兵士達。しかしそれを目にしても、後に続く帝国兵隊が怯む事はなかった。
むしろ仲間を倒された事で怒りを増幅させ、士気が上がっているようにさえ見える。
傍らにアゲハを寝かせ、フィゲロアは一人、炎の杖を持ち構え立っていた。
すでに自分達は大勢の帝国兵に囲まれている。ここまで百を超える帝国兵を倒したが、全く数が減ったようには見えない。それもそうだろう。このパウンド・フォーには、五万の帝国兵が集められているのだ。百や二百減ったとしても、ほとんど変わらないと言っていい。
「ハァッ、ハァッ・・・ちっ!しつけぇぜ・・・次から次へときりがねぇ!」
額から流れる汗を拭い、フィゲロアは憎々し気に周囲に目を向けた。
体力型を中心としているようだが、黒、白、青の魔法使いも揃っている。そして一定の距離を保ちながら、隙間なく包囲網ができていて逃げ道がない。
「くそっ、急いでるってのによ・・・」
額に滲む汗を拭って、苛立ちを言葉にした。
呪いの刃で刺されたアゲハを背負い、クインズベリーの拠点に向かって走った。
魔法使いのフィゲロアは体力が少なく、すぐに息も上がり脇腹が痛くなったが、それでも走り続けた。
腹を刺されたアゲハの容態は深刻を極め、一分一秒を争っている。
だからどんなに苦しくても足を止めるわけにはいかない。早く、少しでも早く!
その想いでフィゲロアは走り続けた。
しかしパウンド・フォーに配置された、五万人もの帝国兵の目をかいくぐって目的地へたどり着けるほど、現実はあまくなかった。
樹々を抜け、足場の悪い山中を懸命に走ったが、さっきの戦いの音を聞いて集まったのだろう。
数えきれない程の帝国兵に囲まれたのだった。
「落ちつけ!あの杖だ!あの杖の前に立つな!数の利を生かしてかかれ!」
「そうだ!ヤツの攻撃手段はあの杖だけだ!冷静に対処すれば恐れる事はない!」
「青魔法使いが結界でフォローして攻めるんだ!連携だ!」
さっきまで怒涛の勢いで攻め立ててきた帝国兵だったが、フィゲロアに死体の山を築かれた事で警戒したのだろう。部隊長格の男が声を上げ、冷静に場を指揮し始めた。
少し腕が立つくらいなら力押しでと考えていたようだが、フィゲロアの実力は敵にとって想定以上であり、このままでは制圧できないと判断したようだった。
事実、一騎当千と謳(うた)われる四勇士のフィゲロアにとって、今自分を取り囲んでいる敵の一人一人は脅威ではない。だが状況がフィゲロアを苦戦させていた。
まず、フィゲロアがジャロン・リピネッツとの戦闘の後だった事がある。
アゲハに助けられダメージを負う事はなかったが、危ういところがあった事は事実であり、精神的な消耗があった。
次にアゲハを背負いここまで走って来た事で、息が上がる程体力を消耗してしまった。
魔力に余裕があっても、自分を取り囲む大勢の敵を相手に、集中力を切らさず戦い続ける事が難しくなってきていた。
そして最後に、人を護りながら戦う状況である事だった。
アゲハはすでに意識失っているため、今襲われたら何の抵抗もできずに殺されてしまう。
そのためフィゲロアはアゲハの傍を離れる事ができない。必然的に戦い方は待ちの一手になる。
自分から攻めに行く事ができないフィゲロア対し、帝国兵はいくらでも時間を使って体勢を整えられる。尚且つ今までは体力型がガンガン攻めてきたが、ここからは距離を取って、弓でも魔法でも安全圏からの攻撃に切り替える事ができるのだ。
そしてアゲハにはあまり時間が残されていない事も、フィゲロアを焦らせていた。
早くここを抜けなければならない。だが現実的にどうすればいいのか方法が思いつかない。
アゲハを背負い、この包囲網を抜けるにはどうすればいいのか?
焦りと苛立ちがフィゲロアの思考を鈍らせる。
これらの悪環境が、フィゲロアを追い詰めていた。
「おい!お前!そこに寝ている女、もしやアゲハか?帝国軍第二師団長だったアゲハか?」
打開策を見出すためにフィゲロアが頭を回転させていると、敵の部隊長らしき男がふいに声を飛ばしてきた。フィゲロアのすぐ隣で横たわっているアゲハの顔を見たのだろう。確信に近いものは持っているのだろう、断定めいた口調にフィゲロアは口の端を持ち上げて言葉を返した。
「だったらなんだ?敵である俺に聞いてねぇで、こっちに来てしっかりと顔を見てみたらどうだ?それとも一人じゃ怖くてこれねぇか?」
「ッ!なん、だと!この状況でよくもそんな口がきけたな!その女が裏切り者のアゲハであるなら大人しく身柄を渡せ!そうすれば貴様も捕虜として命だけは助けてやる!」
フィゲロアに嘲笑された部隊長は、怒りに顔を歪めて怒声をあげた。
さも自分が格上だと言わんばかりの台詞。そして命が惜しければプライドも仲間も捨てろと告げられたフィゲロアは、込み上げて来るものを抑えきれず、大口を開けて笑った。
クセの強い茶色の髪をかき上げ、天を仰ぐようにして高らかに声を上げる。
「・・・ククク・・・ハハハハハ・・・ハーッハッハッハッハッハ!」
「なっ!き、貴様!何がおかしい!」
突然笑い出した目の前の魔法使いに一瞬驚かされた部隊長だが、すぐに険しい顔で怒鳴りつける。
だがフィゲロアは細い目に強く力を込めて睨み返すと、ぶつけられた怒声をかき消すくらい、大きな声を張り上げた。
「見くびられたもんだぜ!身柄を渡せだぁ?瀕死の女を差し出して自分は命乞いをしろってのか!?
俺はクインズベリー国の守護者と呼ばれる四勇士だ!舐めんじゃねぇぞォォォォーーーーーッツ!」
フィゲロアの体から青く輝く魔力が溢れ出し、右手に握る炎の杖の赤い石が、大きく強く輝きだした!
「なにっ!?こ、これはッ!?」
突然フィゲロアから発せられた凄まじい魔力の圧に、部隊長を始め帝国兵達がたじろいだ。
赤い石の輝きは強烈な魔力の波動を放ち、フィゲロアを囲む帝国兵達に、ビリビリとしたプレッシャーをぶつけて来る。
そしてフィゲロアが炎の杖を頭上高く掲げると、上空に無数の炎の塊が出現した。
「裁きの炎を受けてみろ!」
剣を振り上げ襲いかかってくる帝国兵に、右手に握る炎の杖を向けると、魔力を炎に換えて撃ち放った!
炎を正面から浴びた帝国兵は悲鳴を上げて地面を転げまわる。
しかし一人倒したところで状況は好転しない、その後ろから続々と現れる帝国兵が、剣や槍を持って飛び掛かって来るのだ。
「オォォォォォォーーーーーーーーーッツ!」
たった今撃ったばかりの炎の杖に、より大きな魔力を込めて撃つ!
巨大な炎の噴射は、飛び掛かってきた何人もの帝国兵を一発で飲み込んだ。轟々と燃え盛る炎の中、絶叫を上げて悶え苦しみながら倒れていく帝国の兵士達。しかしそれを目にしても、後に続く帝国兵隊が怯む事はなかった。
むしろ仲間を倒された事で怒りを増幅させ、士気が上がっているようにさえ見える。
傍らにアゲハを寝かせ、フィゲロアは一人、炎の杖を持ち構え立っていた。
すでに自分達は大勢の帝国兵に囲まれている。ここまで百を超える帝国兵を倒したが、全く数が減ったようには見えない。それもそうだろう。このパウンド・フォーには、五万の帝国兵が集められているのだ。百や二百減ったとしても、ほとんど変わらないと言っていい。
「ハァッ、ハァッ・・・ちっ!しつけぇぜ・・・次から次へときりがねぇ!」
額から流れる汗を拭い、フィゲロアは憎々し気に周囲に目を向けた。
体力型を中心としているようだが、黒、白、青の魔法使いも揃っている。そして一定の距離を保ちながら、隙間なく包囲網ができていて逃げ道がない。
「くそっ、急いでるってのによ・・・」
額に滲む汗を拭って、苛立ちを言葉にした。
呪いの刃で刺されたアゲハを背負い、クインズベリーの拠点に向かって走った。
魔法使いのフィゲロアは体力が少なく、すぐに息も上がり脇腹が痛くなったが、それでも走り続けた。
腹を刺されたアゲハの容態は深刻を極め、一分一秒を争っている。
だからどんなに苦しくても足を止めるわけにはいかない。早く、少しでも早く!
その想いでフィゲロアは走り続けた。
しかしパウンド・フォーに配置された、五万人もの帝国兵の目をかいくぐって目的地へたどり着けるほど、現実はあまくなかった。
樹々を抜け、足場の悪い山中を懸命に走ったが、さっきの戦いの音を聞いて集まったのだろう。
数えきれない程の帝国兵に囲まれたのだった。
「落ちつけ!あの杖だ!あの杖の前に立つな!数の利を生かしてかかれ!」
「そうだ!ヤツの攻撃手段はあの杖だけだ!冷静に対処すれば恐れる事はない!」
「青魔法使いが結界でフォローして攻めるんだ!連携だ!」
さっきまで怒涛の勢いで攻め立ててきた帝国兵だったが、フィゲロアに死体の山を築かれた事で警戒したのだろう。部隊長格の男が声を上げ、冷静に場を指揮し始めた。
少し腕が立つくらいなら力押しでと考えていたようだが、フィゲロアの実力は敵にとって想定以上であり、このままでは制圧できないと判断したようだった。
事実、一騎当千と謳(うた)われる四勇士のフィゲロアにとって、今自分を取り囲んでいる敵の一人一人は脅威ではない。だが状況がフィゲロアを苦戦させていた。
まず、フィゲロアがジャロン・リピネッツとの戦闘の後だった事がある。
アゲハに助けられダメージを負う事はなかったが、危ういところがあった事は事実であり、精神的な消耗があった。
次にアゲハを背負いここまで走って来た事で、息が上がる程体力を消耗してしまった。
魔力に余裕があっても、自分を取り囲む大勢の敵を相手に、集中力を切らさず戦い続ける事が難しくなってきていた。
そして最後に、人を護りながら戦う状況である事だった。
アゲハはすでに意識失っているため、今襲われたら何の抵抗もできずに殺されてしまう。
そのためフィゲロアはアゲハの傍を離れる事ができない。必然的に戦い方は待ちの一手になる。
自分から攻めに行く事ができないフィゲロア対し、帝国兵はいくらでも時間を使って体勢を整えられる。尚且つ今までは体力型がガンガン攻めてきたが、ここからは距離を取って、弓でも魔法でも安全圏からの攻撃に切り替える事ができるのだ。
そしてアゲハにはあまり時間が残されていない事も、フィゲロアを焦らせていた。
早くここを抜けなければならない。だが現実的にどうすればいいのか方法が思いつかない。
アゲハを背負い、この包囲網を抜けるにはどうすればいいのか?
焦りと苛立ちがフィゲロアの思考を鈍らせる。
これらの悪環境が、フィゲロアを追い詰めていた。
「おい!お前!そこに寝ている女、もしやアゲハか?帝国軍第二師団長だったアゲハか?」
打開策を見出すためにフィゲロアが頭を回転させていると、敵の部隊長らしき男がふいに声を飛ばしてきた。フィゲロアのすぐ隣で横たわっているアゲハの顔を見たのだろう。確信に近いものは持っているのだろう、断定めいた口調にフィゲロアは口の端を持ち上げて言葉を返した。
「だったらなんだ?敵である俺に聞いてねぇで、こっちに来てしっかりと顔を見てみたらどうだ?それとも一人じゃ怖くてこれねぇか?」
「ッ!なん、だと!この状況でよくもそんな口がきけたな!その女が裏切り者のアゲハであるなら大人しく身柄を渡せ!そうすれば貴様も捕虜として命だけは助けてやる!」
フィゲロアに嘲笑された部隊長は、怒りに顔を歪めて怒声をあげた。
さも自分が格上だと言わんばかりの台詞。そして命が惜しければプライドも仲間も捨てろと告げられたフィゲロアは、込み上げて来るものを抑えきれず、大口を開けて笑った。
クセの強い茶色の髪をかき上げ、天を仰ぐようにして高らかに声を上げる。
「・・・ククク・・・ハハハハハ・・・ハーッハッハッハッハッハ!」
「なっ!き、貴様!何がおかしい!」
突然笑い出した目の前の魔法使いに一瞬驚かされた部隊長だが、すぐに険しい顔で怒鳴りつける。
だがフィゲロアは細い目に強く力を込めて睨み返すと、ぶつけられた怒声をかき消すくらい、大きな声を張り上げた。
「見くびられたもんだぜ!身柄を渡せだぁ?瀕死の女を差し出して自分は命乞いをしろってのか!?
俺はクインズベリー国の守護者と呼ばれる四勇士だ!舐めんじゃねぇぞォォォォーーーーーッツ!」
フィゲロアの体から青く輝く魔力が溢れ出し、右手に握る炎の杖の赤い石が、大きく強く輝きだした!
「なにっ!?こ、これはッ!?」
突然フィゲロアから発せられた凄まじい魔力の圧に、部隊長を始め帝国兵達がたじろいだ。
赤い石の輝きは強烈な魔力の波動を放ち、フィゲロアを囲む帝国兵達に、ビリビリとしたプレッシャーをぶつけて来る。
そしてフィゲロアが炎の杖を頭上高く掲げると、上空に無数の炎の塊が出現した。
「裁きの炎を受けてみろ!」
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