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19 瞳を閉じて
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俺達が四人パーティになって一か月が過ぎた。
この一か月は、炎の魔人を倒すための連携の確認や、魔人の城近辺の魔物の調査および討伐、情報収集に新しい武器防具の購入など、様々な事に時間を費やした。
そして明日はいよいよ炎の魔人を討伐する日だ。
「よし、じゃあお前が魔人の注意を引きつけて、魔法使いが氷魔法で援護。僧侶は状況を見ながら回復と補助魔法を使い分けるって事でいいな?俺は僧侶と魔法使いを護りながら、攻撃に参加する」
勇者の友が仕切る形で戦術をまとめた。
総合力では友が一番だが、パワーとタフネスは俺が友の上をいく。俺が前に出るのはいつもの事だ。
「炎の魔人は、いくつもの岩が集まった集合体という話しだが、それならお前の雷魔法も効くんじゃないのか?」
俺が友にそう話しを向けると、友もそれは考えていたようで頷いて見せた。
「あぁ、話しに聞いた通りなら有効だろうな。雷で焼くというより、砕くイメージだな。いけそうな時はもちろん使う。巻き込まれねぇように気を付けろよ」
「あぁ、注意するさ」
この時期の俺と友の関係は、魔法使い達の加入もあったからか、意外にも上手くいっていた。
村にいた頃のようにくだらない話しで笑いあったりはできないし、二人で食事をしたりはしないが、こういう作戦会議では以前のようにじっくり話し合えるし、お互いの言葉に棘もない。
僧侶と魔法使いの二人も、一か月前にパーティを組んだ時より、俺達の雰囲気が良くなっている事は感じているようだ。
前は四人で食事をする時には、考えながら話している節があったのだ。
俺と友を関連付けるような話はさけて、俺との会話は俺とだけ、友との話しは友とだけ。
そうやって場には四人いるけれど、独立した空間ができていたのだ。
だけどここ最近はそれが無く、二人とも全員が参加できる話題を振るようになり、パーティの空気はずいぶん良いものになっていた。
俺と友も積極的に会話はしない。けれど、話しの内容によっては俺と友が中心に話す事もある。
まるで昔に戻ったような感覚を覚える事もあり、戸惑ったりもするけれど、俺と友の遺恨に僧侶と魔法使いまで巻き込んでは駄目だと思うし、できれば俺も今の雰囲気を大事にしたいと思っている。
ただ・・・やはり雪女の事は頭から離れない。
あの日、俺の腕の中で消えてしまった雪女・・・
彼女の事を思い出す度に、友への激しい憎悪の感情が燃え上がる。
許す事はできないだろう。
だが、今は見ないようにしよう。俺は魔王を倒す。それだけだ。
それが終わった時、友をどうしたいのか・・・・・それはその時考えればいい。
「うおッ!」
打ち合わせが終わり、俺は女性達が泊っている宿の外のベンチに座ってぼんやりしていた。
すると突然首筋に冷たい何かを当てられ、思わず裏返った声を上げてしまう。
「あっはははは!驚いた驚いた!」
振り返ると魔法使いが、両手に透明なグラスを持って立っていた。
「お前なぁ~」
俺が恨めしい目で見やると、魔法使いは右手に持ったグラスを俺に手渡してきた。
「ごめんごめん!奢るから怒んないでよ」
いたずらっ子のような笑みを見せて、魔法使いは俺の隣に腰を下ろした。
「うーん!やっぱりこの宿のオレンジは最高ね!」
「うん、本当に美味いよな」
今では俺もすっかりオレンジジュースにはまっている。
酒を飲むときには酒を頼むが、それ以外はオレンジだ。
食事の時、魔法使いが注文をまとめて店員さんに伝える事が多いのだが、俺の飲み物は自動的にオレンジジュースになっている。
最初は、あんたは何飲む?とか、あんたもオレンジでいい?とか聞いてくれたのだが、今では何も聞かれない。
僧侶はそんな俺達を、なんかいつも一緒だよね?と言って意味深な目を向けて来る。
そう言う話しになると、魔法使いはよく慌てた感じで否定をして、そこをまた僧侶がいじってくるのだ。
正直に言うと、俺も悪い気はしていない。
魔法使いには好感をもっているし、二人で一緒に過ごす時間はとても楽しく感じている。
だけどそれ以上に雪女を想っている自分がいる。
うぬぼれかもしれないが、魔法使いは俺に好意を持っていると感じている。
そうだとすると、遅かれ早かれ決断しなければならない時が来る。
今の関係が心地よい。だからこのままで。
そう思う自分もいるが、それはあまりに自分勝手で不誠実だろう。
いつまでもこの状態ではいられない。
いつかは・・・・・
「ねぇ、ねぇってば!なにぼけっとしてんのよ!」
「うぉぉッツ!」
突然首筋から背中にかけて冷たい物が走り、思わず立ち上がった。
「あははははははは!」
「お、お前!うわっ、冷てっ!このっ、氷入れやがったな!」
慌てふためきながらシャツをめくり上げ氷を落とす。
魔法使いはそんな俺のリアクションがツボだったようで、手足をバタバタさせながら大笑いしている。
通行人が何事かと視線を送ってくるが、全く気にしていない。
「ふ~・・・お前なぁ~」
「あ~おかしい・・・まったく、あんたって最高ね」
「なにが最高だ!このっ、うわっ!」
文句を言ってやろうと魔法使いに向き直ったところで、足がもつれて俺は魔法使いに覆いかぶさるように倒れてしまった。
「・・・っはぁ~・・・びっくりした・・・ごめん、だいじょう・・・!」
「・・・・・」
そう、俺は魔法使いに覆いかぶさっていた。
ベンチに座っている魔法使いの両脇に手を付いて、顔はかなり近い。
拳一個分の距離があるかどうかだ。お互いの息がかかる。
魔法使いもさすがに言葉を失っている。顔は赤く、唇は少し震えているように見える。
だけど俺からは目を離さないでじっと見つめてくる。
何か言わなければ・・・でも言葉が出てこない。心臓の音がやけにハッキリと耳に届く。
魔法使いが俺を見る様に、俺も魔法使いから目が離せない。
・・・・・やがて、魔法使いは目を瞑った。
この一か月は、炎の魔人を倒すための連携の確認や、魔人の城近辺の魔物の調査および討伐、情報収集に新しい武器防具の購入など、様々な事に時間を費やした。
そして明日はいよいよ炎の魔人を討伐する日だ。
「よし、じゃあお前が魔人の注意を引きつけて、魔法使いが氷魔法で援護。僧侶は状況を見ながら回復と補助魔法を使い分けるって事でいいな?俺は僧侶と魔法使いを護りながら、攻撃に参加する」
勇者の友が仕切る形で戦術をまとめた。
総合力では友が一番だが、パワーとタフネスは俺が友の上をいく。俺が前に出るのはいつもの事だ。
「炎の魔人は、いくつもの岩が集まった集合体という話しだが、それならお前の雷魔法も効くんじゃないのか?」
俺が友にそう話しを向けると、友もそれは考えていたようで頷いて見せた。
「あぁ、話しに聞いた通りなら有効だろうな。雷で焼くというより、砕くイメージだな。いけそうな時はもちろん使う。巻き込まれねぇように気を付けろよ」
「あぁ、注意するさ」
この時期の俺と友の関係は、魔法使い達の加入もあったからか、意外にも上手くいっていた。
村にいた頃のようにくだらない話しで笑いあったりはできないし、二人で食事をしたりはしないが、こういう作戦会議では以前のようにじっくり話し合えるし、お互いの言葉に棘もない。
僧侶と魔法使いの二人も、一か月前にパーティを組んだ時より、俺達の雰囲気が良くなっている事は感じているようだ。
前は四人で食事をする時には、考えながら話している節があったのだ。
俺と友を関連付けるような話はさけて、俺との会話は俺とだけ、友との話しは友とだけ。
そうやって場には四人いるけれど、独立した空間ができていたのだ。
だけどここ最近はそれが無く、二人とも全員が参加できる話題を振るようになり、パーティの空気はずいぶん良いものになっていた。
俺と友も積極的に会話はしない。けれど、話しの内容によっては俺と友が中心に話す事もある。
まるで昔に戻ったような感覚を覚える事もあり、戸惑ったりもするけれど、俺と友の遺恨に僧侶と魔法使いまで巻き込んでは駄目だと思うし、できれば俺も今の雰囲気を大事にしたいと思っている。
ただ・・・やはり雪女の事は頭から離れない。
あの日、俺の腕の中で消えてしまった雪女・・・
彼女の事を思い出す度に、友への激しい憎悪の感情が燃え上がる。
許す事はできないだろう。
だが、今は見ないようにしよう。俺は魔王を倒す。それだけだ。
それが終わった時、友をどうしたいのか・・・・・それはその時考えればいい。
「うおッ!」
打ち合わせが終わり、俺は女性達が泊っている宿の外のベンチに座ってぼんやりしていた。
すると突然首筋に冷たい何かを当てられ、思わず裏返った声を上げてしまう。
「あっはははは!驚いた驚いた!」
振り返ると魔法使いが、両手に透明なグラスを持って立っていた。
「お前なぁ~」
俺が恨めしい目で見やると、魔法使いは右手に持ったグラスを俺に手渡してきた。
「ごめんごめん!奢るから怒んないでよ」
いたずらっ子のような笑みを見せて、魔法使いは俺の隣に腰を下ろした。
「うーん!やっぱりこの宿のオレンジは最高ね!」
「うん、本当に美味いよな」
今では俺もすっかりオレンジジュースにはまっている。
酒を飲むときには酒を頼むが、それ以外はオレンジだ。
食事の時、魔法使いが注文をまとめて店員さんに伝える事が多いのだが、俺の飲み物は自動的にオレンジジュースになっている。
最初は、あんたは何飲む?とか、あんたもオレンジでいい?とか聞いてくれたのだが、今では何も聞かれない。
僧侶はそんな俺達を、なんかいつも一緒だよね?と言って意味深な目を向けて来る。
そう言う話しになると、魔法使いはよく慌てた感じで否定をして、そこをまた僧侶がいじってくるのだ。
正直に言うと、俺も悪い気はしていない。
魔法使いには好感をもっているし、二人で一緒に過ごす時間はとても楽しく感じている。
だけどそれ以上に雪女を想っている自分がいる。
うぬぼれかもしれないが、魔法使いは俺に好意を持っていると感じている。
そうだとすると、遅かれ早かれ決断しなければならない時が来る。
今の関係が心地よい。だからこのままで。
そう思う自分もいるが、それはあまりに自分勝手で不誠実だろう。
いつまでもこの状態ではいられない。
いつかは・・・・・
「ねぇ、ねぇってば!なにぼけっとしてんのよ!」
「うぉぉッツ!」
突然首筋から背中にかけて冷たい物が走り、思わず立ち上がった。
「あははははははは!」
「お、お前!うわっ、冷てっ!このっ、氷入れやがったな!」
慌てふためきながらシャツをめくり上げ氷を落とす。
魔法使いはそんな俺のリアクションがツボだったようで、手足をバタバタさせながら大笑いしている。
通行人が何事かと視線を送ってくるが、全く気にしていない。
「ふ~・・・お前なぁ~」
「あ~おかしい・・・まったく、あんたって最高ね」
「なにが最高だ!このっ、うわっ!」
文句を言ってやろうと魔法使いに向き直ったところで、足がもつれて俺は魔法使いに覆いかぶさるように倒れてしまった。
「・・・っはぁ~・・・びっくりした・・・ごめん、だいじょう・・・!」
「・・・・・」
そう、俺は魔法使いに覆いかぶさっていた。
ベンチに座っている魔法使いの両脇に手を付いて、顔はかなり近い。
拳一個分の距離があるかどうかだ。お互いの息がかかる。
魔法使いもさすがに言葉を失っている。顔は赤く、唇は少し震えているように見える。
だけど俺からは目を離さないでじっと見つめてくる。
何か言わなければ・・・でも言葉が出てこない。心臓の音がやけにハッキリと耳に届く。
魔法使いが俺を見る様に、俺も魔法使いから目が離せない。
・・・・・やがて、魔法使いは目を瞑った。
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