【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ

文字の大きさ
116 / 122

【番外編】皆とバレンタイン6

 すっかり茜色に染まってしまった練習場。人影はもうまばらで、冷や水をかけられたみたいに背筋が冷たくなってしまう。

 しまったなぁ……部活の後に二人きりで会えないかって、登校中にサルファー先輩と約束していたのに……

 つい居心地が良すぎて長居してしまった……先生の膝の上という誘惑には勝てなかったよ……至近距離には豊満な雄っぱいがあるしさ……

 うだうだ考えていても仕方がない。一縷の望みをかけ、剣術部が修練している奥の練習場を目指す。

 もし先輩が居なかったら電話して、帰ってるんだったら三年の寮まで行って謝ろう。

 事情は……詳しくは説明しづらいけど、誠心誠意謝れば許してくれるはずだ。

 大股で地面を蹴って進む俺の視線の先にベンチが映る。そこには、今朝見たばかりの明るい黄色の頭が見えて、思わず大きな声で呼びかけていた。

「サルファー先輩!」

 弾かれるように振り向いた先輩の表情は明るく微笑んでいた。ホッとしたせいだろう。少し涙ぐみそうになってしまった。


「ごめんなさい、遅くなってしまって……」

「いや、俺も丁度着替え終わったところだったからな。気にしないでくれ」

 あんなに走って疲れただろう? と俺の手を取るとベンチに座らせ、息が整うまで背中を撫でてくれた。

 優しい……さっきとは違う理由で心臓が騒がしくなってしまったんだが。

「……ありがとうございます。ところで、何の用事だったんですか? やっぱり部活関係ですか?」

 と聞いてはみたものの、俺はあくまで部員としては下っ端。それどころか体験入部の延長で、先輩が都合のいい時に指導してもらってるだけだもんなぁ……それ関係のお話だと、とても役に立てるとは思えないんだけど。

「いや、すまない……非常に言いにくいんだが……」

 困ったように笑う先輩の黄色の瞳が、ひっきりなしに左右に泳いでいる。なにかよっぽど深刻なことなんだろうか?

「……なんでも言ってください。俺、頼りないかもしれないけど、先輩の力になりたいです」

「ありがとう……シュン。だが、そんなにおおごとではなくてな……ただ、君に会いたかっただけなんだ」

「へ?」

「いや、渡したい物も有るんだぞ! ちゃんと! ただ、俺は、料理は出来ないし……かといってセンスがあるわけでも無くてな……だからこんな物しか用意出来なくて……」

 思わず間の抜けた声を出してしまった俺を見て、先輩が慌てたように弁解し始める。

 頬を真っ赤に染め、決まりが悪そうにガタイのいい身体を折り曲げるその姿には、普段の頼もしい先輩の面影は一ミリもない。へにょんと垂れ下がった犬の耳と尻尾の幻覚まで見えてくるくらいだ。

 可愛いな……めっちゃ頭、撫でたい……よしよししてあげたい……

 いやいや、先輩に対してなに失礼なことを考えているんだ俺は。

「だが、君を想う気持ちだけは他の誰よりも負けないつもりだ……受け取ってくれないか?」
感想 2

あなたにおすすめの小説

俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵
BL
 主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。  この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。  そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!     ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。  友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?  オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。 ※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※

続・聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
『聖女の兄で、すみません!』(完結)の続編になります。 あらすじ  異世界に再び召喚され、一ヶ月経った主人公の古河大矢(こがだいや)。妹の桃花が聖女になりアリッシュは魔物のいない平和な国になったが、新たな問題が発生していた。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

ギャルゲー主人公に狙われてます

一寸光陰
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。 自分の役割は主人公の親友ポジ ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。