気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

文字の大きさ
374 / 645
細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

好きってパワー

しおりを挟む
 困ったような、照れたような顔をして鏡に映っている男は、間違いなく俺だ。普段と違って、ちゃんとヘアスタイルも。ソレイユ先輩の手によって、ふわっとしつつもカッコいい髪型にしてもらっているけれども。

 でも、印象は全然違う。着る服を変えるだけでこうも変われるものなんだろうか。

 普段の俺が、ファッションのファの字も知らないもんだから、余計にそう感じているのかもしれない。でも、やっぱり一番の決め手は、選んでくれている先輩のセンスが良いからだろう。

 先輩曰く、ルーズシルエットにしてみたという俺の格好は、系統で言えば完全に可愛い系だろう。

 すっぽりと上から被るだけで着れた白い七分丈のシャツは明らかに大きめのサイズ。袖の部分も浴衣みたいにふわりと広がっている。ただ、下に合わせている薄茶色のズボンは逆にピッタリサイズ。足のラインが分かるくらいにフィットしてしまっている。

 俺も、先輩みたいに足が長くて筋肉質だったらな。抜群にカッコよかっただろうに。

 俺の場合、上の服のふわっとした印象もあってか、余計に足の細さが、その貧弱さが目立ってしまっている。

 ……大丈夫かな。折角、先輩に選んでもらったのに。

「しゅーんちゃん、着替え終わった?」

「は、はぃっ」

「そっか、開けてもいい?」

「はい、どうぞ……」

 鏡に背を向け待っていると、俺と先輩とを隔てていたカーテンがゆっくりと開かれていく。

 まるで時間の流れが遅くなったみたい。鼓動はどんどん駆け足になっているってのに、全然先輩の姿が見えてきやしない。

「……っ」

 ようやく見ることが出来た人の良さそうな笑顔。俺の大好きな笑顔が、目が合った途端にぱぁっと眩しく輝いた。

「シュンちゃん可愛い! いつもの服も可愛いけど、とびきり可愛いよ! 絶対にコッチも似合うと思ってたんだよねー」

「あ、ありがとうございます……」

 好きってパワーはスゴい。滲みかけていた不安なんてなんのその。あっという間に吹き飛ばしてくれて、喜びで満たしてくれるんだから。

 心の底からの笑顔になれるんだから。



 ことの発端は、お出掛け前。堂々と胸を張って先輩の隣に並べるようにと、慌ててクローゼットを漁っていた時のことだった。

「……どうしよう……デートに着ていく服も事前にライに相談すべきだったな……」

 先輩と恋人同士になれる前は、少しでも先輩との接点を持とうと、お話しがしたいと、毎日あのベンチで待っていた。念願叶って恋人同士になれたらなれたで、少しでも先輩と一緒に居たいってことしか頭になかった。

 その結果が、お出掛け用に着るような服が一切ない。どれだけ探してみても、トレーナーとTシャツしか出てこないっていう現状なんだけどさ。

 まぁ、一応とっておきはあるんだけれども。それも、先輩との思い出がある特別な服が。でも……

「しゅーんちゃんっ」

「どわっ」

 背中に感じた温もりと程よい弾力、お腹の前にするりと回された長い腕。急に後ろから抱きつかれて、俺は間の抜けた声を上げてしまった。大げさに全身を跳ねさせてしまっていた。犯人なんて一人しかいない。振り向かなくても分かる。

「ソレイユ先輩……おかえり、なさい……」

「フフ、ただいま、シュンちゃん」

 一緒にシャワーを浴びてから、ちょっと着替えてくるね、と先輩は自分の部屋へ。俺の寮のすぐ近くにある先輩の寮へと一旦戻ったハズ。念の為にと合い鍵は渡していたけれども、一体いつの間に戻ってきて。

「ゴメンね、びっくりさせちゃって。鍵を使う前にピンポンも鳴らしたし、何度も声を掛けたんだけどさ……」

 マジか……全然気付けなかった……俺、先輩に悪いことを。

「ご、ごめんなさ……んっ」

 顔だけ振り向いたところで、口に柔らかな温もりが触れた。視界を占めている先輩の笑顔が、どこか悪戯っぽく微笑んでいて。

「……全然気付いてくれないから、寂しくなっちゃった」

 優しく肩を掴まれて、身体ごと振り向かされる。そのままの勢いで、俺の身体は先輩の逞しい腕の中へとすっぽりと収まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜

小屋瀬
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。 主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。 他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆ 〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定) アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。 それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 【超重要】 ☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ) また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん) ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな! (まぁ「長編」設定してますもん。) ・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。 ・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。 ・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

転生したらBLゲームのホスト教師だったのでオネエ様になろうと思う

ラットピア
BL
毎日BLゲームだけが生き甲斐の社畜系腐男子凛時(りんじ)は会社(まっくろ♡)からの帰り、信号を渡る子供に突っ込んでいくトラックから子供を守るため飛び出し、トラックに衝突され、最近ハマっているBLゲームを全クリできていないことを悔やみながら目を閉じる。 次に目を覚ますとハマっていたBLゲームの攻略最低難易度のホスト教員籠目 暁(かごめ あかつき)になっていた。BLは見る派で自分がなる気はない凛時は何をとち狂ったのかオネエになることを決めた オチ決定しました〜☺️ ※印はR18です(際どいやつもつけてます) 毎日20時更新 三十話超えたら長編に移行します メインストーリー開始時 暁→28歳 教員6年目 凛時転生時 暁→19歳 大学1年生(入学当日) 訂正箇所見つけ次第訂正してます。間違い探しみたいに探してみてね⭐︎ 11/24 大変際どかったためR18に移行しました 12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

処理中です...