尽くした男に捨てられ悪に堕ちた令嬢は悪役ハーレムを築き上げ復讐する

秋風ゆらら

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ルーハドルツ編

作戦開始よ

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「ハーイ!闇魔女ちゃん!
本部の職員さん、みんな帰ったから始めるよー!」
 

 それから少し経って、ローラからパワークリスタルを通して合図が来た。パワークリスタルに込められたテレパシーの魔力で、ローラの甲高い声が頭に直接響く。


「了解。作戦開始よ。」


 アンナはカルムから預かったパワークリスタルを発動させた。

 学園本部には魔術阻害の術が張り巡らされていて通常、本部の建物内へ魔法で入ることはできない。ただ、本部に頻繁に出入りするシュナン家の人間だけは魔術阻害の対象から外れた瞬間移動のパワークリスタルを持っていた。


 学園本部二階、倉庫の近くの廊下にアンナ達は瞬間移動した。建物内の明かりは消えていて、外から差し込む月明かりだけが頼りだった。

 ロキが剣を抜いた。それより少し遅れてミレイが空を切るように手を振り下ろす。すると、どこから現れたのか、その手には細身の剣が握られていた。

 ミレイは魔法を剣に宿して戦う。とはいっても剣で直接切り付けるのではなく、剣から発せられる衝撃波で攻撃するのだ。舞を踊るような戦闘エフェクトがファンの間では好評だった。
 単純に戦闘の面から見ても、相手と距離を取って戦えるし、斬撃がどこへ飛んでくるのか予想されにくいという利点がある。

 廊下の突き当たりを曲がれば倉庫の入り口の扉に着く。
 先頭に立つロキがアンナとミレイに目配せする。アンナ達は敵からの攻撃に警戒しながら廊下を曲がった。幸いにもいきなり攻撃されるということはなかったが、倉庫の扉の前にいかにも魔法使いという見た目の黒いローブを着た二人組の男がいた。


「おいおい、誰かと思えば学園のガキじゃねぇか。」


「迷子なら帰んな。この先は立ち入り禁止だ。」


 アンナもロキも制服を着ているから生徒と見分けがつかないのだろう。男達はこちらの動きを警戒していたが、襲ってくる様子はなかった。


「こいつらがアイツが言ってた魔術師だな。」


 ここを通してくれと言っても素直に応じることはないだろう。無駄な会話をする必要はない。

 ロキが男達に斬りかかろうとすると岩壁が現れた。ロキがそれを斬って前に進もうとすると、蔦が現れてロキに襲い掛かろうとした。ロキは進行方向を変えてそれを避ける。


「おいおい、なんで俺の魔法が切られてるんだ?普通の剣で切れるような硬さじゃないはずだ。」


「確かに普通じゃあり得ねぇな。……あの剣の力か。」


 ロキの剣、レーヴァテインは魔法で創造した物を切ることに特化した魔剣だ。そして切った魔法の魔力の一部を剣の中に溜め込むことができるという性質も持つ。

 ロキは足を止めない。ロキが近づくと、その進行を阻むように男の一人が鋭い葉をロキに向かって飛ばしてきたが、ミレイが斬撃でそれを弾く。そのままロキは魔術師の一人を蹴飛ばした。男は廊下の壁に付けられたランプに頭を打ち付け、そのまま倒れた。


「……まず一人。」


「おいおい。こんな化け物じみた奴がいるなんて聞いてねぇよ。」


 残された男はローブからパワークリスタルを取り出す。


「させないわ!」


 ミレイの斬撃がパワークリスタルを砕く。男から数メートル距離がある中でパワークリスタルだけを砕く芸当。ミレイの実力の高さがわかる。


闇の鞭ダーク・ウィップ


 アンナは魔法で鞭を出現させ、男がパワークリスタルに気を取られた隙をついて縛り上げる。そのまま闇の蝶を召喚し、男を眠らせた。

 アンナは安堵の息を吐く。
 カルムは心配していたけれど、ロキやアンナが並の魔術師に負けるようなことはない。

 今のところ他に敵はいないようだが安心はできない。焦る気持ちを押さえながらアンナは倉庫の扉に手を伸ばした。その瞬間、廊下の明かりがついてアンナは動きを止めた。


「やれやれ。なにやら騒がしいからと様子を見にきてみれば、困ったものだね。」


 アンナが驚いて振り向くと、さっきまではこの場にいなかったはずの男がいた。その手にはカルムから借りたものと同じ色のパワークリスタルが握られている。
 歳の頃は30代後半といったところか。カルムと同じ髪の色をしていて、顔立ちもよく似ている。


「……!貴方、ダミク・シュナンね?」


 アンナの問いかけに、ダミク・シュナンは微笑みをたたえて頷いた。
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