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猿ときび団子
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太郎は竹と蔓でできたカバンから、竹の皮に包まれたおむすびを取り出しました。3分の1程の大きさにちぎると、包んであった竹の皮に乗せてハナの前に置きました。ハナが食べ始めたのを見ると、太郎もおむすびを食べようとしました。その瞬間、太郎は頭上に気配を感じ上を向くと、猿が飛び降りてきていました。太郎はとっさにおむすびを胸に引き寄せ守ろうとしましたが、猿の素早さがわずかに上回り、おむすびを最初の3分の1ほど取られました。猿は着地をして太郎達と4m程度の距離を取り対峙しました。
猿は視線を太郎に合わせたままおむすびを食べ始めました。太郎も猿から視線をそらさずに残ったおむすびを食べ、太郎、ハナ、猿で同じ量を分け合った形になりました。全て食べ終わった太郎はチラッと横目でハナを見ると、もう食べ終わって地面に伏せて休んでいました。「コイツは猿が来ても無視か。肝がすわってるわ」そう思い、太郎は苦笑しました。
猿もおむすびを食べ終わりましたがその場から動こうとはせず太郎を睨むように見ています。余程お腹が空いているのだろうと太郎は思いましたが、もうおむすびは無かったので、カバンの中を見せて「もう、ないよ」と言いました。
すると、猿はトトトッと近付いて来て1m手前で立ち止まり「キキッ」と鳴いて太郎の腰にある巾着を指さしました。
「へぇ、ここに食べ物があるってわかっとるんか・・・。あ、せや、猿もこのきび団子を食べたら喋れるようになるのか試してみよ」太郎はそう言って巾着からきび団子を1つ取り出して、猿に向かって投げました。猿は上手にキャッチすると、両手でモグモグと食べてあっという間に無くなりました。
「この白いやつうまっ!」猿は言いました。
「あ、やっぱり喋った」太郎がそう言うと、ハナも起き上がり猿を見ました。
「え、何?」猿は戸惑っている。
「その団子食べたら人間と喋れるようになんねん」ハナが言いました。
「今の団子?え、犬も喋ってるやん!」猿は驚きました。
「同じやつ食べたからな。凄いやろ、その団子」ハナはなぜか得意げに言いました。
「うん。凄い。こんな体験したことないし。でも、なんで団子食べたら会話できるようになるん?」猿は太郎に聞きました。
「さぁ。お母はんが作ってくれた団子やからわからん。せやけど、こんなもん作れるって聞いた事なかったけどなぁ」
「ふーん。理由はわからんのか。まぁ、わからんくても困らんけど。で、あんたらはこの山に何しに来たんや?」猿は言いました。
「山には用ないで。この先の上子村ってとこに行く途中なんや」太郎は答えました。
「あぁ、あの村か。」と猿。
「知ってんのか。この辺りに詳しいんやな」太郎は言いました。
「当たり前や。ここで生きていく為には山も村も人も動物も知っとかなあかん」
「うんうん」ハナは頷きました。
「ちなみに、この道を行くと山賊がひそんどるで」猿が道の先を指さしながら言いました。
「やっぱりそういうのがおるか。人数は?」太郎は猿がさした方を見ながら問いました。
「まぁ10人くらいやな・・・。あんたまさか、戦うつもりちゃうやろな」
「そのつもりはないけど、襲われたら戦わなしゃーないやろ」太郎は答えました。
「10人相手に戦うて、あんたそんな強いんか」
「さぁ、知らん」
「はぁ?知らんて・・・。何人くらい斬ってきたんや?」
「人を斬った事は無い」
「なんや。知らぬが故の自信か。なら、やめとき。死にに行くようなもんや」
「なんでそう決めつける」
「山賊は生きるか死ぬかを知っとる。それだけや」
実戦の経験がない太郎は何も言えませんでした。日々の厳しい稽古を乗り越えてきた自信はありましたが、確かに生き死にの戦いの経験はない。その差がありながらさらに10人を相手にする可能性を考えれば、死にに行くと言われるのも無理はない。太郎はそう感じました。
「じゃあ、夜になるまで待とう。暗闇に紛れてなら通れるやろ」太郎は言いました。
「いや、そんな必要はないで。人が通らん道があるから、そこを使えば抜けていける」猿はニヤッと笑いました。
「案内してくれるんか?」
「おむすびと団子のお礼や」
猿は視線を太郎に合わせたままおむすびを食べ始めました。太郎も猿から視線をそらさずに残ったおむすびを食べ、太郎、ハナ、猿で同じ量を分け合った形になりました。全て食べ終わった太郎はチラッと横目でハナを見ると、もう食べ終わって地面に伏せて休んでいました。「コイツは猿が来ても無視か。肝がすわってるわ」そう思い、太郎は苦笑しました。
猿もおむすびを食べ終わりましたがその場から動こうとはせず太郎を睨むように見ています。余程お腹が空いているのだろうと太郎は思いましたが、もうおむすびは無かったので、カバンの中を見せて「もう、ないよ」と言いました。
すると、猿はトトトッと近付いて来て1m手前で立ち止まり「キキッ」と鳴いて太郎の腰にある巾着を指さしました。
「へぇ、ここに食べ物があるってわかっとるんか・・・。あ、せや、猿もこのきび団子を食べたら喋れるようになるのか試してみよ」太郎はそう言って巾着からきび団子を1つ取り出して、猿に向かって投げました。猿は上手にキャッチすると、両手でモグモグと食べてあっという間に無くなりました。
「この白いやつうまっ!」猿は言いました。
「あ、やっぱり喋った」太郎がそう言うと、ハナも起き上がり猿を見ました。
「え、何?」猿は戸惑っている。
「その団子食べたら人間と喋れるようになんねん」ハナが言いました。
「今の団子?え、犬も喋ってるやん!」猿は驚きました。
「同じやつ食べたからな。凄いやろ、その団子」ハナはなぜか得意げに言いました。
「うん。凄い。こんな体験したことないし。でも、なんで団子食べたら会話できるようになるん?」猿は太郎に聞きました。
「さぁ。お母はんが作ってくれた団子やからわからん。せやけど、こんなもん作れるって聞いた事なかったけどなぁ」
「ふーん。理由はわからんのか。まぁ、わからんくても困らんけど。で、あんたらはこの山に何しに来たんや?」猿は言いました。
「山には用ないで。この先の上子村ってとこに行く途中なんや」太郎は答えました。
「あぁ、あの村か。」と猿。
「知ってんのか。この辺りに詳しいんやな」太郎は言いました。
「当たり前や。ここで生きていく為には山も村も人も動物も知っとかなあかん」
「うんうん」ハナは頷きました。
「ちなみに、この道を行くと山賊がひそんどるで」猿が道の先を指さしながら言いました。
「やっぱりそういうのがおるか。人数は?」太郎は猿がさした方を見ながら問いました。
「まぁ10人くらいやな・・・。あんたまさか、戦うつもりちゃうやろな」
「そのつもりはないけど、襲われたら戦わなしゃーないやろ」太郎は答えました。
「10人相手に戦うて、あんたそんな強いんか」
「さぁ、知らん」
「はぁ?知らんて・・・。何人くらい斬ってきたんや?」
「人を斬った事は無い」
「なんや。知らぬが故の自信か。なら、やめとき。死にに行くようなもんや」
「なんでそう決めつける」
「山賊は生きるか死ぬかを知っとる。それだけや」
実戦の経験がない太郎は何も言えませんでした。日々の厳しい稽古を乗り越えてきた自信はありましたが、確かに生き死にの戦いの経験はない。その差がありながらさらに10人を相手にする可能性を考えれば、死にに行くと言われるのも無理はない。太郎はそう感じました。
「じゃあ、夜になるまで待とう。暗闇に紛れてなら通れるやろ」太郎は言いました。
「いや、そんな必要はないで。人が通らん道があるから、そこを使えば抜けていける」猿はニヤッと笑いました。
「案内してくれるんか?」
「おむすびと団子のお礼や」
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