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第7話 ~婚約者? 早くね?

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俺に婚約者と騒ぎだした母上、何かブツブツ言っていると思ったらソレ? 何故に突然婚約者という言葉が飛び出したの? 困惑する俺を置いといて…、



「ミュゼちゃんは十二属性だからね? このことが知られたら大変なことになるのよ? 手近な女の子を押し付けてくることは確実、その前に先手を打っておくの。素質調べで多属性と判明したら婚約者を決めるのは一般的、多属性はエリートだからね? そんな人と婚約、結婚に至ったら人生勝ち組よ? 女の子もそうだけど、親も揃って肉食よ? 三属性と偽っても、ミュゼちゃんはとても良い獲物だわ。だって私達の可愛い息子だもの!」



母上が饒舌に語る。十二属性とバレたら女の子を押し付けられる? 女の子とその両親は肉食で俺が良い獲物? …よくは分からないけど、…まだ五歳の俺に婚約者は早くね?













一人興奮し、納得している母上を父上と共に落ち着かせる。落ち着いたとしても、この話を振れば再び興奮しかねない。ならば父上に聞くのがいいだろう、そう思って母上の言っていたことを聞いてみたら、



「多属性はエリート故に競争が激しい、男女共に多くの者が婚約を求めて押し寄せてくる。そうなれば混乱は必死、それを未然に防ぐ為…多属性と判明したら直ぐに婚約者を決めるのが常識なのだ。婚約者さえ決めれば、押し寄せてくることはなくなる。」



多属性は男であれば精霊騎士団へ、女であれば精霊術士団に入るのが一般的。精霊術士団は初耳だがその二つの団は国のエリート、上手く立ち回れば国の重役になることが可能。重役になれなくても、団にいる限り安泰であることは言える。故に一属性の者達は何とか多属性の者と婚約を結びたい、後の生活と一族の為に。



そして婚約を結んだ者達への干渉は極力避けるように、相手の属性数に伴った人数にもよるらしいけど。…ん? 人数? 少し引っ掛かるけど説明が続くから流すか。とにかく、婚約者がいる相手にちょっかいを出すなってこと。即ち後は若い者達で、他者は野暮なことをしないと言うわけ…だよね? もしそれを破ったら爪弾き、他貴族達から敬遠されるらしい。例え腐れ貴族でも敬遠は厳しい、故にそれだけは守るようにしているらしい。そうなってしまったら全てが終わる、故に破る者はいないという。…まぁそんなの関係ねぇっ! という馬鹿中の馬鹿はいるっぽいが、少数だから大丈夫…っと。



だから早めにってことね、…そう聞けば婚約者を決めるのに反対はない。俺…面倒なのは嫌だし、そんなのに時間を取られるより鍛練をしたい。













後…女の子とその両親が肉食と言うけれど、然程のものではないだろう。…何て思っていると、



「…肉食系の親子は凄いからな。どうにかして二人きりにし、その事実を持って婚約を結ぶ者もいる。部屋…或いは馬車、密室に二人きりという事実が重要でな。それ即ち既成事実と呼ばれるもので……。」



……肉食というからには堂々と突撃してくるものと思ったが、なかなかどうして…策を弄してくるんかい。…これは危険だ、…もしハニートラップを仕掛けられたら俺はヤられる。何せ前世を含めて二十年以上恋人無しの童貞だ、…言い寄られたりでもしたらオチる。色仕掛けなんかされた日にゃ一発だ、鋼の精神は色恋沙汰の女絡みにゃ効果を発揮せんのだよ。…ぶっちゃけメイドの二人、ネムとダリアだっけ? …歳上のお姉様に毎日ドキドキしとるんですぜ?



父上の話を聞けば聞く程、母上が言うように早々と婚約者を決めた方がいいような気がしてきた。…がしかし、ここで一つの問題が浮上する。俺の婚約者探しって上手くいくのか? 自分で言うのもアレだが、五歳児にして強面だぞ? 世間一般的の愛らしい五歳児とは違う。五歳児特有の丸顔ではなく歳のわりには引き締まっており、まん丸つぶらなお目目? 何それ美味しいの? って感じの切れ長三白眼。前世の癖で眉間に若干の皺が寄っていて、基本の口型はへの字。鍛練のお陰か身体は五歳児にしてはがっちり体型、全体を見て総評すれば可愛いげのない男の子、それがこの俺ミュゼ・ロゼッタなのである。父上と母上は身内贔屓で可愛いと言うが、ショタマフィアである俺が可愛いなんてあり得ない。



…そんな内心が顔に出るらしく、



「そんな顔をするなミュゼ、お前ほど良い男はこの国にはいない。自信を持つんだ、…その歳でそれほどの面構えは将来有望なんだぞ? 軟弱よりも精悍さがモテると知れ。」



と父上がフォローをしてくれた。モノクルを光らせるナイスミドル、インテリヤクザな父上が言うと説得力がある。だけど小さい時は愛らしかったんだろ? …と思ってみたり。そして母上も、



「そうよミュゼちゃん、あなたは将来イケメンになるの! 無駄にカッコつけたりキザったらしかったり、ただのナルシストで弱っちぃガキンチョなんて目じゃないわ! 時代は強い男を求めているの! だからこそミュゼちゃんは獲物と認識されちゃう、だって既にミュゼちゃんは強者の風格があるもの!!」



…凄く前のめりで熱弁してきた。…というか少なからず今の若者かどうかは分からんけど、男に対して私怨が入っていませんかね? そんなことを思っていると更に母上が…、



「ミュゼちゃんが世間で奇人と呼ばれ始めたのはガキンチョのせいなのよ! 私とクルゼイ、我が男爵家の使用人達が褒めちぎるからそれに妬んで! …でも安心してちょうだい、私の調べではミュゼちゃん…ご令嬢方には人気よ! 未婚約のご令嬢方にモテモテ、…やったねミュゼちゃん!!」



一人盛り上がっている。…母上の話をまとめるに、男には嫌われていて歳上の女の子にモテてるってこと? 未婚約の女の子って同世代はいるの? …まぁ歳上でもモテているならいいけど、…問題があるわけじゃないよね? …ショックを受けたのは男に嫌われてるってこと。…友達出来ないんじゃあないかい?













…思うところは色々あるけれど、



「…母上の言うように、早々と婚約者を決めればいいんですよね? そうすれば平穏無事に日常生活が…「甘いわよミュゼちゃん! メイプルシロップに浸ったパンケーキをお砂糖たっぷりココアと共に食べるくらい激甘だわっ!!」……おぇっ…!」



母上の被せてきた言葉に悶える俺。何その激甘兵器! 想像しただけで口の中が……!



…つーか何故に被せたの? …母上。
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