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第185話 野営

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夕方になり、炊き出しをしていた広場に、
小型から中型のテントをいくつかはり、
大型のテント5つに、保護をする予定の
子どもを、連れて来ていた。
「ここから、馬車で4日から5日の距離の
場所に、保護施設がある。そこで、
成人するまで、自分のしたい事など、
見つけて欲しい。衣食住は、保証する。」
「ここに、残りたいものは、残ってもいい、
強制では、ないから、自由に、将来の事を
真剣に、考えて欲しい。」

「夢の街?職業紹介してくれる街の人?」
「君は、アールの、知り合いか?」
「アール、アール兄ちゃんら、たどり
着いたの?本当に、ある街なの?」
「あぁ。今、アーザ領の、俺の家にいるよ。
他の子ども達も、一緒に、過ごしてるよ。」
わぁ。子ども達から、歓声が、上がった。

「あ、あの、働く事できるの?」
「子どもは、無理して働く必要はない。
未成年を正式に雇う事が出来ない。
見習いという形や、お手伝いとしてなら、
付き添いや、同行はできる。」
「僕は、カイザ。あと数ヶ月で、成人するけど、
未成年だよ。見習いの獣騎隊だよ。」

アーザ領で、先に行ったスラム出身者の人が、
どうゆう事を、しているか、話をしながら、
夜の、炊き出し準備をしていた。

先発隊の一部と、狩りに一緒に、ついて
行った男の子がいた。
焦げ茶色の髪色に、青い目。
魔力を宿した弓矢を持っていた。
「隊長、この子、すごいんです。」
「獲物を弓矢で、3回とも、急所を狙って
しとめてます。風の魔力を使って
弓矢を操ってるみたいです。」
「そりゃーすごいね。名前は?」
ジョルジュが、聞くと、
「名前なんか、ない。お偉いさんの、
暗殺なんか、しない。利用されない。」
……。
「誰かに、言われたのか?」
おれが睨むと、少しひいたみたいだが、
じっと、見つめてきた。
「言われてない。だけど、皆んなに、
役立つ食べ物なら、あの、果実、甘くて、
美味しくなるんだろ?
甘くて、美味しかったから、また、
獲物狩って、皆んな、喜んだら、
また、甘いの食べれるって思ったの。」
不思議種が、成長した木、不思議の実。
「甘かったのか。」
「うん。」
俺は、子どもの頭を撫でて、不思議の実を
子どもを、肩車し、実を採らせた。
「かじってみろ。」
子どもは、俺と果実を見比べ、
にっこり笑って、果実にかじりついた。
「甘い。すごく甘い。美味しい。あっはい。」
一口、かじった果実を、俺に分けるように、
差し出してきた。
「全部食べていいぞ。」
「ありがとう。」
頭をなぜると、また、嬉しそうに、
果実を、かじっていた。

「さっき、"なぜお偉いさんの暗殺"
って言ってたんだ?」
食べ終わった頃、問いかけると、
「偉そうな人が、たまに来て、駄賃あげる
から、魔物狩りや、明らかに人っぽいのを、
狩り?暗殺させられそうになったんだ。」
「何度か、続いたから、そんな狩りしたく
ないから、ここに、逃げてきたの。」
……。
「父母は、四年前、そいつ達に、殺された。
私を逃した罪って、あとで知ったんだ。」
「すまない、つらい過去を、
思い出させたな。」
「ううん。過去は戻らないし、私も、
あと少しで、成人だけど、弓矢だけじゃ、
また、目立つし、やりたい事、
わからない。ここでだと、狩りをして、
分け与えると、喜んで貰えるんだ。」
「君なら、弓矢などの腕をみがげば、
弓師、騎士とかに、なれそうだが
あまり、興味はないのか?」
「女の子でも、なれるの?」
えっ?
「女の子?」

女の子の目が、半眼になった。
「やっぱり、間違えてたんだ。最近は、
髪の毛伸ばして、言葉遣いも、なおして
言ってたんだけど。間違えてた?」
「ご、ゴメン。」
「すまなかった。」
よくある事と、笑って許してくれたが、
ズボン姿に、髪も短めだった。
女の子と言われれば、たしかに、
そう見えてきた。
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