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17、白銀の狼
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*黒沢 茉莉(くろさわ まり)目線*
犬じゃなく、大きなもふもふな銀色の狼。
不思議と怖くない優しげな瞳。
透き通る様なアクアマリンのような瞳。
銀色にアクアマリン色の……まさか
"おまえは、かなり思い込みが激しいとか勘違いしやすいのか?"
「えっ?」
"我は狼だが、神狼とも呼ばれている"
「……っ?」
"……フェンリルとも呼ぶのもいるが、まあ、大きな犬ではないことは確かだ。なぜ犬と狼を間違えれるのか、こちらが聞きたいくらいだ。"
「なぜ、ここに?」
"……………。"
銀色の神狼、フェンリルは言いづらいのか目をそらしてしまった。
ぐグゥーぅー、キュゥ~
「!!!」
可愛いのか可愛くないのかよくわからない、お腹の音が静まりかえった場所に響いていた。
"人間は、確か何か食べらないと弱ったり死んだりするんだよなぁ?おまはえは、この世界の者ではないのに、やはりお腹はすくものなのか?"
「えっえぇ、ええぇーーー!!」
"うるさい、叫ぶな。ついてこい。"
「は、はい。」
いやいや、流されてはダメだけど、なぜバレたの?
フェンリルだから?
神の御使(みつかい)だから?
私も、なぜこの世界にいるのかわからないけど、フェンリルにどう答えていいのかすら、わからなかった。
ふわぁと立ち上がるフェンリルは私の身長より大きかった。
「わぁ、おっきい。」
"……。"
何か言いたげな視線をチラッとこちらに向けたあと、
ゆっくり歩いてくれた。
遅い!とでも言いたげに、こちらをチラチラ振り返っていたが、歩き疲れた私の足はかなり遅かったのか、途中で"乗れ"と言われ、気づいた時には、私はフェンリルの背中に乗り、景色がグングン変わっていた。
ふわふわの毛に埋もれるように、乗っているだけなのに激しい揺れなどはなく、気づいた時には目的地に辿(たど)り着いていた。
ムワッと湿度の高い場所。
湯気がたつ場所。
私を乗せたまま、ゆっくりその場所に入って行った。
溺(おぼ)れるぅー、と思ったのは一瞬で身体は温かなお湯に包まれ痛みも疲れもとれていった。
「温泉?」
"人はそう呼んでいたな。"
「あなた……フェンリルさん?はどう呼んでいたの?」
"特に何とも呼び名はない。ただここは、怪我や疲れが治るから、気が向けば入りにくるだけだ。食べ物も、あの木にあるから好きに食べろ。"
「ありがとうございます。」
"……。"
温泉のような出水(いずみ)から上がると、不思議な事に服のまま入っていたにもかかわらず、服は濡れていなかった。
木の実は、まるで桃の様にピンク色に色付いており、皮ごと食べているフェンリルのように、私もそのままかじってみた。
実は柔らかくさっぱりとした甘さで、いくらでも食べれそうだった。
「美味しい。」
リアム様やマシューさん、メアリーさんにも食べさせてあげたい。
温泉?も、最近庭師の方が腰が痛いとか言ってたし、この温泉ならなおりそうなのに……。
公爵邸の人たちの事を考えていたら、自然と涙が止まらなくなってしまっていた。
泣いていてはダメだと思えば思うほど、涙は流れていった。
仕事して、お金を稼いで今までお世話になった分やそれ以上の何かお返ししなきゃ……。
泣いてる場合じゃないわ。
私は、フェンリルにお金を稼げる場所を聞いた。
"お金…なぜ必要なんだ?"
「恩返ししたいからです。」
***
一方その頃、公爵邸ではかなりの大騒ぎになっていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リアム・ノア・クロート様
リアム様、そして公爵邸の皆様、見知らぬ私に優しく接して下さりありがとうございました。
柔らかな寝床に、美味しいご飯、綺麗な服、皆様の優しい心遣い、本当に幸せでした。
皆様の優しさに甘え長々とお世話になり、恩返しすら出来ないままで、本当に申し訳ございませんでした。
仕事を見つけ少しずつになってしまいますが、必ずお返ししますので、厚かましいお願いで申し訳ございませんが、服や下着、靴などお借りします。
色々ご迷惑をおかけし本当にすみませんでした。
色々ありがとうございました。
黒沢 茉莉
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
何度も何度も繰り返し読んだ手紙。
穴が開くほど読み返した。
マリは、ここを出て行ったのか?
誰かに唆(そそのか)されたり、誘拐されたりしたのではないのか?
いつ?
早めに寝たはずのマリ、私の部屋を通らなければ廊下には出れないはず。
窓も開けた形跡はない。
歓迎会の為、張り切っていた使用人たちはマリが置き手紙一つ残して忽然(こつぜん)と消えた事に、消沈した。
何か嫌なことあったのか?
気持ちは伝わっていたハズ……。
出来上がったばかりのドレスやその他の物をそのままに、マリを探す為外に出た。
黒目黒髪で小柄なマリは、絶対狙われる。
しかも女性なのに、なぜ1人で外に出たんだ?
あれほど危険だと伝えたハズ……。
明け方、早朝から公爵邸総出で、公爵邸内はもちろん周辺など探したが夕暮れになっても見つからなかった。
いつこの公爵邸から出たのか、どうやって出たのかもわからなかった。
ベットの下、クローゼットの中、なぜかじゅうたんの下まで探し尽くした。
夜の帷(とばり)がおりても見つかる事はなかった。
日に日に痩せていくリアムに、家令であるマシューやその他多くの使用人たちも心配した。
1週間が経ち、さらに1週間。
気づけば1ヶ月が過ぎていた。
両隣の領主などにも新しい者を雇った形跡はあるか探りを入れたりしたが、マリらしき人物は見つからなかった。
犬じゃなく、大きなもふもふな銀色の狼。
不思議と怖くない優しげな瞳。
透き通る様なアクアマリンのような瞳。
銀色にアクアマリン色の……まさか
"おまえは、かなり思い込みが激しいとか勘違いしやすいのか?"
「えっ?」
"我は狼だが、神狼とも呼ばれている"
「……っ?」
"……フェンリルとも呼ぶのもいるが、まあ、大きな犬ではないことは確かだ。なぜ犬と狼を間違えれるのか、こちらが聞きたいくらいだ。"
「なぜ、ここに?」
"……………。"
銀色の神狼、フェンリルは言いづらいのか目をそらしてしまった。
ぐグゥーぅー、キュゥ~
「!!!」
可愛いのか可愛くないのかよくわからない、お腹の音が静まりかえった場所に響いていた。
"人間は、確か何か食べらないと弱ったり死んだりするんだよなぁ?おまはえは、この世界の者ではないのに、やはりお腹はすくものなのか?"
「えっえぇ、ええぇーーー!!」
"うるさい、叫ぶな。ついてこい。"
「は、はい。」
いやいや、流されてはダメだけど、なぜバレたの?
フェンリルだから?
神の御使(みつかい)だから?
私も、なぜこの世界にいるのかわからないけど、フェンリルにどう答えていいのかすら、わからなかった。
ふわぁと立ち上がるフェンリルは私の身長より大きかった。
「わぁ、おっきい。」
"……。"
何か言いたげな視線をチラッとこちらに向けたあと、
ゆっくり歩いてくれた。
遅い!とでも言いたげに、こちらをチラチラ振り返っていたが、歩き疲れた私の足はかなり遅かったのか、途中で"乗れ"と言われ、気づいた時には、私はフェンリルの背中に乗り、景色がグングン変わっていた。
ふわふわの毛に埋もれるように、乗っているだけなのに激しい揺れなどはなく、気づいた時には目的地に辿(たど)り着いていた。
ムワッと湿度の高い場所。
湯気がたつ場所。
私を乗せたまま、ゆっくりその場所に入って行った。
溺(おぼ)れるぅー、と思ったのは一瞬で身体は温かなお湯に包まれ痛みも疲れもとれていった。
「温泉?」
"人はそう呼んでいたな。"
「あなた……フェンリルさん?はどう呼んでいたの?」
"特に何とも呼び名はない。ただここは、怪我や疲れが治るから、気が向けば入りにくるだけだ。食べ物も、あの木にあるから好きに食べろ。"
「ありがとうございます。」
"……。"
温泉のような出水(いずみ)から上がると、不思議な事に服のまま入っていたにもかかわらず、服は濡れていなかった。
木の実は、まるで桃の様にピンク色に色付いており、皮ごと食べているフェンリルのように、私もそのままかじってみた。
実は柔らかくさっぱりとした甘さで、いくらでも食べれそうだった。
「美味しい。」
リアム様やマシューさん、メアリーさんにも食べさせてあげたい。
温泉?も、最近庭師の方が腰が痛いとか言ってたし、この温泉ならなおりそうなのに……。
公爵邸の人たちの事を考えていたら、自然と涙が止まらなくなってしまっていた。
泣いていてはダメだと思えば思うほど、涙は流れていった。
仕事して、お金を稼いで今までお世話になった分やそれ以上の何かお返ししなきゃ……。
泣いてる場合じゃないわ。
私は、フェンリルにお金を稼げる場所を聞いた。
"お金…なぜ必要なんだ?"
「恩返ししたいからです。」
***
一方その頃、公爵邸ではかなりの大騒ぎになっていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リアム・ノア・クロート様
リアム様、そして公爵邸の皆様、見知らぬ私に優しく接して下さりありがとうございました。
柔らかな寝床に、美味しいご飯、綺麗な服、皆様の優しい心遣い、本当に幸せでした。
皆様の優しさに甘え長々とお世話になり、恩返しすら出来ないままで、本当に申し訳ございませんでした。
仕事を見つけ少しずつになってしまいますが、必ずお返ししますので、厚かましいお願いで申し訳ございませんが、服や下着、靴などお借りします。
色々ご迷惑をおかけし本当にすみませんでした。
色々ありがとうございました。
黒沢 茉莉
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
何度も何度も繰り返し読んだ手紙。
穴が開くほど読み返した。
マリは、ここを出て行ったのか?
誰かに唆(そそのか)されたり、誘拐されたりしたのではないのか?
いつ?
早めに寝たはずのマリ、私の部屋を通らなければ廊下には出れないはず。
窓も開けた形跡はない。
歓迎会の為、張り切っていた使用人たちはマリが置き手紙一つ残して忽然(こつぜん)と消えた事に、消沈した。
何か嫌なことあったのか?
気持ちは伝わっていたハズ……。
出来上がったばかりのドレスやその他の物をそのままに、マリを探す為外に出た。
黒目黒髪で小柄なマリは、絶対狙われる。
しかも女性なのに、なぜ1人で外に出たんだ?
あれほど危険だと伝えたハズ……。
明け方、早朝から公爵邸総出で、公爵邸内はもちろん周辺など探したが夕暮れになっても見つからなかった。
いつこの公爵邸から出たのか、どうやって出たのかもわからなかった。
ベットの下、クローゼットの中、なぜかじゅうたんの下まで探し尽くした。
夜の帷(とばり)がおりても見つかる事はなかった。
日に日に痩せていくリアムに、家令であるマシューやその他多くの使用人たちも心配した。
1週間が経ち、さらに1週間。
気づけば1ヶ月が過ぎていた。
両隣の領主などにも新しい者を雇った形跡はあるか探りを入れたりしたが、マリらしき人物は見つからなかった。
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