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3、ベルウッド侯爵家

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あの日の俺たちは、崖(がけ)から落ちた衝撃よりも
もっとすごい衝撃を受けてしまった。
前世でも俺たちは双子だったのだが、今
この世界でも俺たちは双子だ。
たぶん一卵性双生児。コワイほど似過ぎていた。
まぁ、双子が忌み嫌われる時代や
閉鎖的な場所に生まれなくて良かったと
ホッとしたのは言うまでもない。
両親たちも優しく、どちらかと言えば
過保護だし親バカだった。
双子の兄姉がいるし、2回連続双子を
出産した母親はすごく美人で可愛い。
ちなみに一つ上の双子の兄姉は、
二卵性双生児だと思う。たぶん。
母上の年齢はわからないが、若いし
プロポーションもバッチリ。
少し年の離れた姉上と言っても
差し支えなさそうだ。
ボン・キュッ・ボンで、まり姉は、
「私も母上の様になるのねー!」と
喜んでいた。前世では、まなイッ……痛ッ!!
まり姉のヒジテツが、まともに入った…ゴフッ!
「可愛い可愛い弟のキオナ君?!
何かよからぬこと考えたわよね?!」
「……!!」
コワッ!!!俺の姉、こわっ!!
前世でも、ま、まり姉…か、可愛いかった。
うん、可愛いし美人だ。ヨシ!
アレ?まり姉とそっくりだった俺も
可愛くて、美人って事になってしまう…
……まり姉を褒めると、自動的に自分自身をも
褒める事となり、なんだか俺自身が
ナルシストになってるみたいで
とても、いやかなり複雑な心境だ。
前世の記憶、転生のチートとやらで
まり姉は、まさかとは思うが
人の考えとかよめるんじゃないかと思った。

父上もどこのハリウッ○スターだよ!って
ツッコミたいくらい超イケメン。
あと"スパダリ"っとかいうやつだった。
"スパダリ"とは、“スーパーダーリン”の略称だ。 
前世風にいうと整った容姿、つまりイケメン、
父上はイケメンの上の超イケメン。
高身長、高学歴、高収入、大人の余裕と
包容力があるといった高スペックな
"攻め"への称賛の言葉だ。
しかも侯爵という高位貴族様だ。
俺は次男"だった"からスペア扱いが
当たり前の貴族社会、それなりに
厳しい習い事やひと通りのマナーは
幼少期からこなしている。
父上や母上たちも「私たちもしたわねー。」
と言いながら俺たちの勉強姿や
剣術の時など見ていた。
この侯爵家には父上の一つ年下の妹夫婦とも
一緒に住んでいる。
母上は父上と同じ学園で知り合い
母上の家系は多産で、不思議なことに
双子が多いのだった。
母上と母上の弟もまた双子だった。
その母上の双子の弟と父上の妹は
婚姻関係を結んでいた。
父上たちの妹夫婦にも双子が産まれている。
5歳の双子の女の子と双子ではないが
3歳の男の子だ。
俺たちと"いとこ"関係なのだが、かなり
似ているし、腹違いの異母兄弟姉妹の
可能性もあるのだ。
「……。」
この世界は同性婚もあるのだが男性が
妊娠するということはない世界だ。
父上と母上は妹(弟)夫婦と仲が良く
4人とも、とても"仲が良い"のだ。
うふふで、あははな関係だ。
父上と母上の弟とビーエル的な関係でも
母上と父上の妹は、いわゆる腐女子(ふじょし)
という者らしく、ある意味すごい
関係性の4人だった。

ベルウッドは侯爵家であり、身分階級は
王族、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵
騎士、平民となり、上から数えた方が
早い身分の高さだ。
奴隷もあるのだが、借金奴隷や戦犯奴隷
あと犯罪奴隷があるのだが、まだ
10歳であるまり姉と俺はこの世界の事を
ほとんど何も知らなかった。
そしてなぜ"侯爵"という身分なのかという
理由もこの時は知らなかったのだ。

俺たちの容姿の事だが10歳のぴちぴちお肌に
ゆるくカールした髪の毛は美味しそうな
ミルクチョコレート色で、お目めは
何の宝石だろうか?いや、俺、宝石は
ダイヤモンドやルビーとかの有名な
宝石の名前しかわからないから……
とにかく青い澄んだ色で、青空の色?
宝石に例えたかったんだけど、え~と
頭を振ったりして捻り出したのが
ブルー…サファイア、かな?
まあ、とにかくキレイな青い色の目だ。
お人形のように可愛い子ども、それが
俺たち双子の特徴だった。
そんな俺たちは、社交界へと進まなければ
いけないのだが……。
「"キオナ"のその水色系のすっごく
可愛いドレスだね。似合うね。」
「……えっ?!」
うん、確かに可愛いドレスだし着心地も
悪くないというか着心地もバッチリな
高級なドレスだ。
採寸では"ほぼ同じ体型"のまり姉と俺。
俺様のスーツは、何の問題もなく
まり姉"も"着れるのだ。
アレコレ考えていたら、いつのまにか
俺のフリをしたまり姉は、俺が着るはずだった
水色と濃い青のスーツを着ていた。
「……可愛い!」
心からの俺の言葉だ。
「ありがとう。"マリー姉上"も可愛いです!!」
満面の笑みを浮かべながら、俺は
まり姉ことマリー姉上に言われたのだった。
「……。」
ドレス姿を姉に可愛いと言われてしまった。

間違ってはいないが間違ってる?!
そう俺とまり姉はあの日、中身だけ
入れ変わったのだ。
まり姉は俺の身体つまり男の身体、
俺はまり姉の身体…女の身体になったのだ。
入れ替わってしまった原因として
あの日崖(がけ)から落ちてしまった事、
それしか考えれなかった。さらに
俺…というか、まり姉の身体に入ってしまった
俺にふりかかった最大の悲劇?災難?
また、まり姉に怒られそうだが
とある生理現象が起きた。
いつも通りに"普通に"トイレに行くと
あるべきものがなくて非常に焦ってしまった。
慌ててトイレの便座に座ったものの、
俺の俺、つまり男として大切なナニがなくて
困ってしまった。困ったついでにお腹と腰、
ついでになんだか身体が重苦しく
少し痛みを感じたのだった。
トイレが血だらけになり、青ざめたのと
見慣れない下半身に恥ずかしい思いをした。
ほぼ同時にまり姉は、「うわぁ、ナニ……ある!!」
と叫び声を上げ、慌ててとんできた使用人に
「おめでとうございます。」と言われていた。
意味がわからなかったので、まり姉付きの
侍女が教えてくれたことによると
10歳で精通があったそうだ。
早くないか?しかも、俺の身体だったはず?!
姉に精通を見られてしまった!!
まあ俺も俺で、初潮があり(初めての生理)
姉の初めてを見てしまったわけだが
大変複雑な心境だった。
あと、下半身の不快指数は100%だった。
ナニかが出る感触があり、立っているのも
なんだか辛いし座るとナニかが漏れて
しまいそうで、姉の淡いドレスが
汚れそうで怖かった。
まり姉も俺も、淡い色の服装が
多かったのだ。こういう時、原色の
濃い色の服が欲しいと思った。
うー、それにしても腰とお腹痛いし重苦しい。
さらに更になんだか眠い。
これが毎月来るのか……。嫌だよー。
早く元の身体に戻りたい。
毎月というか、しょっちゅうイライラしていた
姉の気持ちがわかった気がした。
まり姉付きの侍女(今はある意味俺の侍女)たちと
なぜか母上と姉上たちからも懇切丁寧に
生理の処置の仕方など教えてもらったのだ。
生理用品の吸収パットには、スライムが原料に
使われていた。
女物のいまだに履き慣れないパンツに
挟んでつかうのだが、その作業だけで
俺の精神的なモノがガリガリと削られてしまった。
それが数日前の出来事なのだが、
問題は今日だ。
身体がまり姉の俺と、俺の身体のまり姉は
王宮で開かれる王妃主催のお茶会に
参加する事になったのだ。
忘れてたというか、お茶会は数ヶ月前から
決まっていたことなのだが、姉と俺は
凄まじくすごい出来事が次々と
味わっってしまいそれどころじゃなかった。
崖から落ちて中身が入れ替わったり
前世を思い出し、現世?もまた
男女の双子だった事、ほぼ同時に
精通と初潮がきたりと、まり姉と俺は
目まぐるしい日々を過ごしながらも
前世と今の記憶を必死に合わせていたのだ。
「2人とも、ここ数日大人しいわね。」
「まだ、体調悪いんじゃないのか?」
父上と母上どころか、1つ上の双子の
兄上と姉上まで心配させてしまったのだ。

心配した母上とマリー姉上(中身は俺)で
お風呂に入ってしまったり、付きっきりで
看病されたり初潮の事も母上と姉上、
さらに侍女たちも懇切丁寧に指導されたのだ。
母上は素晴らしい体型に素晴らしい胸、
姉上も11歳なのに女性らしい膨らみがあり
目のやり場に困ってしまった。
それに比べ、まり姉の胸はまな……イッ!!
殺気?!
やはり、まり姉はチートで俺の心をよめるのか?

定期的に父上と母上は非公式での
お茶会をしてるらしい。
何でも、王妃と国王もまた父上と母上の
学友らしくとても仲が良いらしい。
*もちろん身体関係はない。
ただ悪友というか、同じ生徒会に
入ってたらしく気があうらしいのだ。
王族には珍しく、国王は側妃を持たず
王妃だけを娶り、愛妻家だと国王自ら
宣言していた。
国王と王妃には同じ歳の王太子殿下と
1つ年下と5歳年下の王女殿下がいる。
つまり10歳の王太子殿下と9歳と5歳の
王女殿下だ。
俺たちは学園に通う時には、10歳の
王太子殿下と同学年となるのだった。
友好を深める為、将来の学友作りの為なのか
10歳前後の貴族や商人の子どもを
お茶会にほぼ強制参加させられることに
なったのだった。
俺たちの一つ年上の長男長女の兄姉も
強制参加だ……あはは。

なんだか背中がゾクゾクする。
生理が終わりかけだけど、腰とお腹の
重苦しさや痛みはやわらいだ。それなのに
なんだかふわふわするし、胃のあたりに
ちがう痛みがきた様な気がした。
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