異世界に来ちゃったよ!?

いがむり

文字の大きさ
44 / 75
第2章

(38)決行、そして別れのとき…

しおりを挟む
────足音が聞こえる。淀んだ気配が近づく。時刻は現在12時を過ぎだ頃。

「いひひひっ…来たぞ、ソフィア」

豚貴族が錆び付いた音を立てながら扉を開ける。部屋は薄暗く、埃っぽさと静寂さだけがそこにあった。

「寝てしまったのか?」

豚貴族が部屋に1歩踏み入れる。すると月光が差し込み天蓋付きのベッドを照らした。そこには、黒く、薄いランジェリーワンピース姿のソフィアが寝ていた。

「触れただけで壊れそうな美しさ……やはり手に入れて正解だったわい……へへへへっ!」

「……ご主人様?」

ソフィアは寝ていた体がを起こす。

「お待ちしておりました。こちらへおいでくださいな」

ソフィアは自身の隣に手を置く。豚貴族は導かれるように隣に座った。

「ソフィア、今夜は寝かさぬぞ?」

「ふふふっ、お戯れを」

「戯れではないぞ…ソフィアよ。ひひひひひ」

笑いながら豚貴族はソフィアの太ももを撫でる。

「ご主人様」

ソフィアは置かれた手を払うどころかその上に手を乗せ、絡め始めた。

「んひひひ…何だ?ソフィア」

「ご主人様には日々のお務めの疲れを私で取って貰いたいのです。なので──」

ソフィアは手を絡ませたまま自分の頬まで持ってくる。

「おやすみなさい!ご主人様」

「ど、どういうこ……と……」

豚貴族はベッドに倒れ、そのまま眠った。ミーヒャは青年の姿で物陰から現れて、ソフィアは豚貴族が寄りかかりそうになるのをかわしながら立ち上がる。

「ありがとう!ミーヒャ」

「もう、ヒヤヒヤしたよ」

「失礼します。ソフィア様、参りました」

「入って入って~!」

ちょうどいいタイミングで奴隷の5人が入る。ソフィアは全員が横一列に並ぶのを待って、

「では、外しますね!」

と言うと、ソフィアから見て右端の人の枷に手を触れた。その途端に枷が外れ、他の人も目を真ん丸にしていた。

「次々行くよ~!」

4人の枷もあっという間に外し、ソフィアはすぐにカーペットの方に移動した。

「皆さんここに立って下さい!あっ、それから…」

ソフィアは椅子にかけていたシュゼット王妃からのドレスを1人の女の人に渡す。

「転移した後で捕まったりしたら大変なので、これを。フェアリーデイのソフィアからって国営騎士団の隊長さんの誰かに言ったら分かってくれると思いますので!」

「そ、それではあなた様が……!」

「皆さん、いきますよ!はあっ!」

ソフィアの合図で陣は白く輝く。5人は涙を流しながら何度も感謝していた。刹那、強い光を放ったかと思うと次の瞬間には5人が消えていた。

「これで何とかなるといいな」

「ソフィアがやったんだから、大丈夫だよ。絶対───ソフィア!」

ソフィアは自らの魂を削って魔法を使ったため、魔力を使うより体力も精神的にもかなり疲弊していた。

「大丈夫大丈夫。魔力の同調でちょっと気持ち悪いだけだから……」

ソフィアはミーヒャに寄りかかる。

「本当にありがとう、ミーヒャ」

「どういたしまして」

ソフィアの腕は震えていた。ミーヒャはそれに気づき、ソフィアを優しいく抱き寄せた。

「ミーヒャ、温かいよ」

「ソフィア、僕もだよ」





















ソフィアが転移させた5人は教会内のプリニティーバ像の前にいた。

「こ、ここは……教会?」

「私達……助かったの…よね」

「ソフィア様のお陰よ!!」

すると、誰かの足音が聞こえた。5人はソフィアから渡されたドレスを庇うように身構えるが…………

「何者!!」

「───ひぃっ!!!」

気弱な声と何かを落とした金属音が聞こえた。

「わわわ、私はっ…ここの神父をしております!!」

「「「「「し、神父様!!」」」」」

「は、はいっ!!」

現れたのは神父だった。腰を抜かした神父の周りに5人は囲む。

「こ、これは何かの儀式ですか……?」

「何のことか分かりませんが、騎士団の隊長にこれを渡さなければならないのです!」

「神父様、我々を隊長の元へ連れて行って下さい!!」

「ソフィア様が危ないのです!」

「ソフィア様が……!!分かりました、ついてきて下さい!!」

「「「「「はい!」」」」」









その1時間後、王城に神父と5人が着いた。

「失礼します!プリニタリア教会の神父です」

「こんな夜更けに何用ですか?」

「ソフィア様の重要な情報を手に入れました!どうか騎士団隊長……いえ、国王様にお目通しを……!」

「ソフィア様の!!どうぞ、中へ!」

門が開くと急いで国王の部屋に向かった。中には国王とエリック、それからマイルがいた。

「国王様、国王様ーっ!!」

「神父か、どうした?それに後ろのメイド達は……」

「彼女達がこれを……」

神父はメイドを前に出し、ドレスを見せる。

「こ、これは……!」

「シュゼット王妃から頂いたドレス…!」

「神父よ、これをどこで……」

「私ではありません。教会に突然現れた彼女達が持っていたものです」

「では尋ねるが、そのドレスを手に入れた経緯は何だ?」

「はい。我々はベイフロー公国財務大臣、トンジョン・カーターの元奴隷です」

「「「!」」」

ベイフロー公国では奴隷の売買、仲介、所持諸々奴隷に関するものは法で禁止され、少しでも罪を犯せば、最悪死罪にもなる重いものだ。

「ソフィア様は現在、カーター邸の一室に閉じ込められています。それに、奴隷の首枷もつけられております。しかし、ソフィア様は黒髪の魔法使い様と協力して私達を転移の陣で教会に転移させて下さって、そのときにこれを騎士団の隊長様に“ソフィア様と言えば分かってくれる”とお預かりしました」

「お願いします!!ソフィア様をお助け下さい!!」

「「「「お願いします!!」」」」

5人は床に頭を擦り付けて土下座する。 

「頭を上げてくれ。すぐに兵を向かわせるぞ」

「「「「「ありがとうございます!!!」」」」」

「エリック、マイル、お前達も行け。ソフィアを必ず取り戻すのだ!!」

「「はっ!!」」

「神父よ、彼女達に着替えと食事をな」

「はい」






















ソフィアとミーヒャは日が昇るまでしばらく肩寄せ合いながらあれこれと話していた。

「っていうのがあって………楽しかったよ」

「そうなんだ…」

「ねぇ、ミーヒャ」

「…なに、ソフィア」

「私の家族に…なってくれない?」

ミーヒャは何も返さない。

「私、ミーヒャともっと仲良くなりたい。楽しくお話したい。こうやって、私の傍にいて欲しい」

「…………ごめんね、ソフィア。僕…僕ね」

「うん」

ミーヒャはソフィアの前に立つ。

「…本当はこの世界にいてはいけないんだ。でも、会いたかった人がいたの。ずっと、ずぅっと探してやっと見つけた。だから、神様にお願いしてその会いたかった人の家にいるなら良いって。でも、会いたかった人はもういなかった。あの豚貴族が殺してたんだ。僕はここに来た目的が無くなって、どこにも行けなかったし帰れなかった。そういう約束だから。そのとき、ソフィアを見つけたんだ。ソフィアは会いたかった人と似てた……おかしいよね?ソフィアとその人じゃ全く違うのに」

「ううん、私は嬉しいよ」

「ソフィアに会えたから……もう行かなきゃ」

ミーヒャがそういうと、日が差し込むと共にミーヒャの姿が変わる。黒髪は金髪に黒い翼は白い翼に。黒いもやもなくなったその姿はまるで──

「天使……」

「うん、僕は天使。プリニティーバ様からお許しが貰えたみたい。僕、帰れるよ!」

ソフィアは笑顔だった。ミーヒャが今までに見たことないほど明るく、心から笑っていたから。

「僕、帰らなきゃ……ソフィア」

ミーヒャはソフィアを抱きしめる。

「ありがとう。本当に、ありがとう…!」

「また、会えるかな…?」

「分からない。でも、いつかきっと……!」

言い切らないうちにミーヒャは光に包まれて消えた。
























「……ミーヒャ、またね」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。 辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

神様 なかなか転生が成功しないのですが大丈夫ですか

佐藤醤油
ファンタジー
 主人公を神様が転生させたが上手くいかない。  最初は生まれる前に死亡。次は生まれた直後に親に捨てられ死亡。ネズミにかじられ死亡。毒キノコを食べて死亡。何度も何度も転生を繰り返すのだが成功しない。 「神様、もう少し暮らしぶりの良いところに転生できないのですか」  そうして転生を続け、ようやく王家に生まれる事ができた。  さあ、この転生は成功するのか?  注:ギャグ小説ではありません。 最後まで投稿して公開設定もしたので、完結にしたら公開前に完結になった。 なんで?  坊、投稿サイトは公開まで完結にならないのに。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

処理中です...