夏の夜空ナーシャ

カウ

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始まりの夏(1)

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>第1章<       始まり
    太陽が照りつけ梅雨から夏に変わるこの蒸し暑い時期の中、この坂道を歩くのは酷だ。
    さっき家を出たばかりだというのに、もう汗だくになりながら歩いている。
    だいたい、学校が山に上にあってのも如何なものだと思う。 

「暑い」
    ふと、思った事を口に出した瞬間隣を歩いている男が言った。
「さっき暑いは禁止って言ったろ」
「ごめん、つい口が滑った」
「まぁ確かに、最近めっぽう暑くなったよな」 

    今、隣を歩いている男の名は、中村 琉(なかむら りゅう )。
    幼稚園からの幼なじみで、臆病な僕とは違い昔から人前に出ることが得意で、周りの人からも人気がある。 

「そういや、優は来週の日曜日暇?」
「んー、暇かな」
「そっか」

    おかしい、いつもの琉の誘い方じゃない。
    いつもは用件を先に言うのに、日程を先に言うのはらしくない。
    この聞き方は、何か躊躇っている聞き方だ。

「何で?」
「いや、夏祭り一緒に行かないかなぁって」
「あー、別に良いけど」
    来週の日曜日は、町の夏祭りがある。
    夏祭りには、毎年二人で一緒に行っており、今まで約束なんてしたこと無く、当日いきなり誘われるのがセオリーだったのに、今年は約束してくるなんてどうしたんだろう。 
    そんな事を考えていたら、重ぶろに口を開いた。

「女子達もいるけどいい?」
「え?」
    予想外の言葉に、僕は思わず驚くと同時に躊躇していた理由を悟った。 

「クラスの女子達から誘われた、今年も断るのは申し訳ないし、優はどうするかなって」
「ん、今年も!?」 

    いや考えてみれば、こんなに周りから人気あるのに、今まで女子達から誘われなかったのはおかしいと思ったんだ。 
    きっと、僕を一人にしないと気を使ってくれていたんだろう。 

「遠慮しとくよ、僕誘われてないし」
「いや、それは俺が困る」
「え、どうして?」
「女子達が優も誘えって」
「は!?」 
    予想外の言葉に、僕はまた驚きを隠せない。
「一体なんで」
「分からん」
「でも、優も来てくれないと俺が困るのは確か」
「えぇぇ、そんな…」 

    いったい僕が何をしたというんだ。
    琉以外の人と話すのも緊張するのに、女子と夏祭りなんて難易度が高すぎる。
    でも、女子達からの誘いを断ると後で何をされるか分かんないし、結局のとこ行くという選択肢しか無いじゃないか。 

「分かったよ、行くよ」
    僕は渋々了承した。
「すまん、助かる」
「極力離れないで居るようにする」
「そうしてくれると助かるよ」
    そう言って、僕らは足速に学校へ向かった。
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