【完結】数学教員の 高尾 さん

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優秀な同僚

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花村くん、改め、常勤講師の花村先生は、病休に入ったあの先生の代わりに半年程勤務してくれる人だった。毎日ヒィヒィ言っていた俺は、心から感謝したし、花村先生も「お役に立てて嬉しいです」と嬉しそうに微笑んでいた。

花村先生は最近25歳になったばかりだと言う。教員として勤務するのは今回が初めてらしく、それまでは別の仕事をしていていたが、この学校が数学の講師を探している、という話をどこかで聞き、その仕事を辞めてまで、働きに来てくれた、とのことだった。

まさに救世主、花村様である。

そして花村先生は恐ろしく仕事ができた。その童顔で可愛らしい見た目から、生徒に舐められるんじゃ無いか、と最初余計な心配をしていたのだが、全く問題なかった。
生徒との距離の取り方が非常にうまく、授業もとても分かりやすい、とすこぶる評判である。
授業が分かりやすいということは、話も上手いので、最早俺より人気があるんじゃないか?まだ11月だ。来てから1ヶ月しか経ってないぞ。

そしてよく周りを見て、気配りを忘れない。特に数学科の準備室ではいつも日本茶を入れてくれるし、その横に小さなチョコレートまで添えられている
俺は見た目によらず甘いものが大好きだ。いつもありがたくいただいている。

「高尾先生、次の授業この資料使うって言ってましたよね?準備しておきました。」
「あ、それまだ印刷してないんですか?俺次空きなんで、印刷しておきますよ!」
「日本茶お好きでしたよね?この鹿児島のお茶美味しかったんで、持ってきました。後で入れますね。今日は小さな饅頭もありますよ。」


もう、天使だ。目の前に天使がいる。
ふわふわの髪を揺らしながら、自分の仕事もきっちりこなし、10歳近く歳上の俺の面倒まで見てくれている。色んな意味で涙が出そうだ。
花村先生のおかげで、帰りもぐん、と早くなって18時には学校を出られることが多くなった。
もたれ気味だった胃も、疲れすぎて眠れなかった夜もだいぶ改善してきたのである。隈も薄くなってきた。



そんなある金曜日、俺は花村先生から夕飯に誘われたのである。何でも、料理が趣味で、作り過ぎてしまった、とのことだった。俺は最初「俺みたいなおっさんより同年代の友達を誘えばいいんだよ」とやんわり断ったが、花村先生は頑なに俺がいい、と主張した。
毎日のように助けてもらってる挙句、飯までご馳走になっていいのか?とも思ったがあまりの必死さに「俺でよければありがたくいただくよ」と了承したのである。
その時の花村先生の周りには間違いなく花が飛んでいた。それぐらい嬉しそうだった。


そして俺は忘れていたのである。


『美しい人には裏の顔がある』というあの苦ーい教訓を。
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