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隣に座るフィンリー・エバンズから、丁寧に両手で手渡された羽ペン。
渡された時にもれなく手を包み込まれて、俺は無言でその手を振り解いた。
そして【羽ペン】を見て、思い出したことがある。
「そういや俺の羽ペン返せよ。盗ったのお前だろ。」
「贈った物は気に入らなかった?アルの好きなアンティークブラウンを選んだんだけど。」
何で俺の好み知ってんだよ。
・・・そういや俺の物が無くなった後、必ず同じような物が数日以内に置いてあったな。しかも俺のより何倍も価値のありそうな上等な物。
不審には思ったけど、そんな金も無いし、そうポイポイ新しい物も買えないから有難く頂戴してたっけ。
・・・その時点でイジメでもないな。完全にストーカーからの贈り物じゃん。早々に気付けよ、俺。
「・・・・・・俺のはあんな上等なやつじゃなかっただろ。」
「んー・・・、僕のことフィンって呼んでくれるなら考えてもいいかな。」
「・・・・・・要らねーだろ。あんな俺が使い古した羽ペン。」
「羽ペンが良いんじゃなくて、アルが使っていた物が欲しいんだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
不毛な会話はフィンリー・エバンズの妖艶な笑みを残しただけだった。
俺はその笑みを無視して、高級そうな羊皮紙に羽ペンで自分の名前を書く。
俺が書いたすぐ上の欄には、美しい字で【フィンリー・エバンズ】とすでに書かれてあった。
字まで美しいって、何なんだよ。
そんなこと考えている間にガチャリと部屋のドアノブを回す音がした。
「少し席を外すよ」と言って、居なくなっていたこの部屋の主が戻ってきたようだ。
「署名できたかな、二人とも。待たせてしまってすまないね、魔法省の知り合いが顔を出してきたものだから挨拶だけしてきたんだ。」
「お気になさらないでください、ダシュリー先生。二人で話も出来ましたのでとても楽しい時間でした。」
「・・・・・・・・・?!」
「おや、私は逆にお邪魔だったかな?いやぁ~、それにしても私は嬉しいよ。やっとエバンズ君のこれに判子を押せるんだから。」
「・・・やっと運命の相手に巡り逢えたのです。そう言っていただけると僕達も大変嬉しく思います。」
「・・・・・・・・・・・たちぃ・・?(超小声)」
「・・・君は確か二年生だったね。私の受け持ちは今四年生だけだから・・・。エバンズ君をよろしく頼むよ、ベンジャミン君。」
「・・・・・・・・・・・・・・はい。」
「・・・っ、嬉しいよ、アル!」
「ちょっ、おまっ!先生の前で抱き付くんじゃねぇよ!!」
年季の入った重厚な教務机と椅子。
そこに腰掛けていたダシュリーという先生は、その風貌と魔力の質からかなり立場が上の先生だと言うことはすぐ分かった。
その先生の前でもお構いなく抱きついて来たフィンリー・エバンズを引き剥がすのは、古代魔法学の授業より難易度が高かった。
ダシュリー先生は何やら嬉しそうににこにこしてそのやりとりを見てたけど・・・。
「あとはパートナーと共に鍛錬あるのみ。期待しているよ。今年のパートナー達は豊作なんだ。来月の大会が実に楽しみだよ。」
「期待していてください、ダシュリー先生。大会優勝とGPの座は僕達が戴きますから。ね、アル。」
「・・・・・・・・・・・・・・・優勝は、な。」
「はっはっは!それは実に楽しみだ。さ、そろそろ練習に行きなさい。君達は他のパートナー達より少し出遅れているからね。頑張りなさい。」
「はい!頑張ります。では、失礼します。」
「・・・失礼します。」
俺より先に立ち上がったフィンリー・エバンズはごく自然に俺の椅子を引き、腕を目の前に出して来た。
・・・淑女じゃねぇよ、俺は。
ちらりと視線でそう訴えたけど、にこりと笑うだけだった。
はあ、とため息をついて渋々そのフィンリー・エバンズの腕を取る。
すると花が咲いたような顔で奴は笑い、意気揚々と部屋を後にした。
渡された時にもれなく手を包み込まれて、俺は無言でその手を振り解いた。
そして【羽ペン】を見て、思い出したことがある。
「そういや俺の羽ペン返せよ。盗ったのお前だろ。」
「贈った物は気に入らなかった?アルの好きなアンティークブラウンを選んだんだけど。」
何で俺の好み知ってんだよ。
・・・そういや俺の物が無くなった後、必ず同じような物が数日以内に置いてあったな。しかも俺のより何倍も価値のありそうな上等な物。
不審には思ったけど、そんな金も無いし、そうポイポイ新しい物も買えないから有難く頂戴してたっけ。
・・・その時点でイジメでもないな。完全にストーカーからの贈り物じゃん。早々に気付けよ、俺。
「・・・・・・俺のはあんな上等なやつじゃなかっただろ。」
「んー・・・、僕のことフィンって呼んでくれるなら考えてもいいかな。」
「・・・・・・要らねーだろ。あんな俺が使い古した羽ペン。」
「羽ペンが良いんじゃなくて、アルが使っていた物が欲しいんだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
不毛な会話はフィンリー・エバンズの妖艶な笑みを残しただけだった。
俺はその笑みを無視して、高級そうな羊皮紙に羽ペンで自分の名前を書く。
俺が書いたすぐ上の欄には、美しい字で【フィンリー・エバンズ】とすでに書かれてあった。
字まで美しいって、何なんだよ。
そんなこと考えている間にガチャリと部屋のドアノブを回す音がした。
「少し席を外すよ」と言って、居なくなっていたこの部屋の主が戻ってきたようだ。
「署名できたかな、二人とも。待たせてしまってすまないね、魔法省の知り合いが顔を出してきたものだから挨拶だけしてきたんだ。」
「お気になさらないでください、ダシュリー先生。二人で話も出来ましたのでとても楽しい時間でした。」
「・・・・・・・・・?!」
「おや、私は逆にお邪魔だったかな?いやぁ~、それにしても私は嬉しいよ。やっとエバンズ君のこれに判子を押せるんだから。」
「・・・やっと運命の相手に巡り逢えたのです。そう言っていただけると僕達も大変嬉しく思います。」
「・・・・・・・・・・・たちぃ・・?(超小声)」
「・・・君は確か二年生だったね。私の受け持ちは今四年生だけだから・・・。エバンズ君をよろしく頼むよ、ベンジャミン君。」
「・・・・・・・・・・・・・・はい。」
「・・・っ、嬉しいよ、アル!」
「ちょっ、おまっ!先生の前で抱き付くんじゃねぇよ!!」
年季の入った重厚な教務机と椅子。
そこに腰掛けていたダシュリーという先生は、その風貌と魔力の質からかなり立場が上の先生だと言うことはすぐ分かった。
その先生の前でもお構いなく抱きついて来たフィンリー・エバンズを引き剥がすのは、古代魔法学の授業より難易度が高かった。
ダシュリー先生は何やら嬉しそうににこにこしてそのやりとりを見てたけど・・・。
「あとはパートナーと共に鍛錬あるのみ。期待しているよ。今年のパートナー達は豊作なんだ。来月の大会が実に楽しみだよ。」
「期待していてください、ダシュリー先生。大会優勝とGPの座は僕達が戴きますから。ね、アル。」
「・・・・・・・・・・・・・・・優勝は、な。」
「はっはっは!それは実に楽しみだ。さ、そろそろ練習に行きなさい。君達は他のパートナー達より少し出遅れているからね。頑張りなさい。」
「はい!頑張ります。では、失礼します。」
「・・・失礼します。」
俺より先に立ち上がったフィンリー・エバンズはごく自然に俺の椅子を引き、腕を目の前に出して来た。
・・・淑女じゃねぇよ、俺は。
ちらりと視線でそう訴えたけど、にこりと笑うだけだった。
はあ、とため息をついて渋々そのフィンリー・エバンズの腕を取る。
すると花が咲いたような顔で奴は笑い、意気揚々と部屋を後にした。
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