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びゅん、と俺の腰あたりに飛んできた風の球。
結構な威力に「ぐふっ」と堪らず声が出て、俺はその場に倒れ込んだ。
するとすぐにフィンリー・エバンズの声が飛んでくる。

・・・意外と奴はスパルタだった。



「アル、何か考え事してたでしょう?そこで引いたら駄目。すぐ体勢を整えて・・・そう!そしたら次の攻撃の構えだよ!」

「・・・・・・ゴホッ・・・クソッ、何でそんなケロっとしてんだよ・・・お前強すぎんだよ・・・ゲホッ・・・」

「も~・・・体力ないのは知ってたけどさ。体づくりは食事も大事なんだから。毎回Cランチばかり頼むのも良くないよ。お肉を食べなくちゃ。」

「な、んで・・・俺が・・・Cランチたのんで、」
「見てたからに決まってるでしょ。はい、水飲んで。少し回復魔法掛けてあげるから。じっとしてて。」

「・・・・・・・・・お、おう・・・」



複数ある練習場の中でもここは一際広い所だ。
そして何人かの実習助手の人達が魔法で擬似的に敵に見立てた物を創り出してくれる。
今回は魔兎を何匹も創ってもらい、それを全て捕捉するか殺せば終了。
創り出された魔兎は口から風の球をボコっと吐き出して攻撃してくるからそれを対処しながらだけど。

似たような実践形式の授業はこれまでにも受けたことある。
・・・だけどここまで敵(今回は魔兎)の数は多くないし、チームを組んで臨んだから、こんなに・・・こんなに・・・しんどくはなかったぞ・・・!
何だこの夥しい魔兎の数は・・・!
思わずゾワっとする数居んだよ!
こんなに創る必要あったか?!


「・・・どんな課題が出されるかは当日しかわからないからね。徹底的に体を動かして複合的に、かつ実践練習だよ、アル。」

「・・・まだ何も言ってないだろ。」

「アルが考えそうなことは大体わかるの。はい、体の感じはどう?動けそう?」

「・・・・・・大丈夫、だ。あ、りがと・・・」

「どういたしまして。素直なアルも愛おしいね。」

「~~~っ、クソッ!続きやんぞ!んで俺はさっさと寮に帰る!!」

「・・・・・・帰る、ねぇ。」

「・・・?」



フィンリー・エバンズは、ふふっと含みのある笑いをこぼした後、瞬時に防御魔法で堰き止めていた魔兎を解放した。
うげぇ~・・・と思わず鳥肌がたつ数の魔兎がこっちに向かってくるのが見える。
少なくとも大会が終わるまで、兎は可愛がれそうにない。



はぁ~・・・やられっぱなしも、舐められっぱなしも、腹立つな。


何よりこいつについていけない自分に一番腹が立つ。


気力を振り絞り、ぶわり、と魔力を纏うと俺の周りをバチ、パチ、と電光が走るのが見えた。



「お前、あっちの群れやれよ。俺はこっち全部引き受けるから。」

「・・・いいね。分かった。頼んだよ、愛しのパートナーさん。」

「・・・・・・・・・チッ」




そのうち俺一人でも何とかできるようになってやるよ。

足に魔力を集めて、勢いよく魔兎の群れに飛び込んで、俺はこの日一番の雷を落としてやった。




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