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剣とユニコーン。
それはエバンズ家の紋章だ。
上等な羊皮紙に刻まれているそれは、一種の魔法なのか、魔力を込めるとその紋章が光りだし、神々しさがあった。
「・・・えーっと?んん?こっちの、超控えめな紋章、ベンジャミン家のじゃん。」
「ほら、言った通りでしょ?当主のサインもちゃんとある。」
「・・・・・・マジか・・・・・・」
目の前の輝く羊皮紙。
それは間違いなく、俺、アルフレッド・ベンジャミンとこの泣き虫男、フィンリー・エバンズの婚約誓約書だった。
「・・・お前まさかこのためにマレーナに・・・?!」
「うん?僕が卒業する前までに、とは思ってたんだけど、まさかアルからも・・・、ああ、どうしよう。嬉し過ぎて・・・はあ、堪んない・・・。僕今日寝られない・・・」
「おっ、おまっ、お前!!よ、用意周到過ぎんだろ!!」
「何言ってんの、アル。」
「はへ?」
ぐん、と体が浮き、一瞬思考が止まる。
姫抱っこされてると認識した時にはもうベッドに寝かされ、目の前にはいつもの・・・、まーーー、いつもの。
弧を描く菫色が見えた。
「僕がアルを逃がすわけ、ないでしょ。」
「・・・・・・っ、俺は、狩られる鹿か?」
「駄目。言い直し。」
「???」
俺の耳元にフィンが近づく。
ふわふわの髪の毛がくすぐったい。
ところでさっきまでの泣き虫で可愛いお前はどこ行った。
「アルは僕の、婚約者。」
色気を孕んだ声が耳に響いて、ぞくぞくする。
急いで耳を手で押さえて前を見ると、欲望が溢れ出す、男の顔がドアップだった。
「~~~っ、急に囁くな!!」
「ええ?どうして?アルの"その顔"が見れるんだから、やめられないよ。」
「俺は別に変な顔してない!!」
「変な顔じゃなくて、愛しくてたまらない婚約者の顔、だから。」
「・・・ぐぅ・・・っ!この!変態!ストーカー!!」
「・・・光栄だね。」
そう言って俺を挑発するような目をして不敵に微笑むフィンが、俺の髪を指で梳く。
こんな風に誰かに気を許すことになろうとは、夢にも思わなかった。
人生何が起こるか分からんもんだな、ほんと。
「・・・この状況で何か別のこと考えてるよね?」
「うあっ!お、おま、え!!!どこに手ぇ入れ、ひょっ、うわああああ!馬鹿ぁぁあ!!」
「ああ・・・本当好き。大好き。食べたい。舐めた、」
「こらこらこらこら!くそっ!俺も好きだっつーの!馬鹿フィン!!!止まれ!!」
「・・・・・・・・・もう、無理。」
「・・・え?ちょ、何が無理?!ちょ、ちょっと?目が据わっ、あうっ、!!?えええ?フィ、フィンさぁあああん!!!?」
俺が贈ったカフスボタン。
『わたしを、抱きしめて』という意味があるそうだ。
「僕もアルに贈ろうかな。どんな物がいい?」
「?一緒に選びに行けばいいだろ。」
「・・・・・・っ、これが婚約者の破壊力・・・っ!」
「んなっ!?べ、べ、別に、大したことは言ってな、んむっ!」
急にくっついた唇は頭がくらくらするまで離れず、俺が胸元をどんどん叩いたところで効果はなかった。
たぶん、俺とフィンは最初から最後まで、ずっとこんな感じ。
それが『しあわせ』だということに、実は気づいているのだが、口に出さない俺も俺で、そんな変わった俺が好きなこいつは、やっぱり、俺のストーカーでいいと思う。
おしまい
------------------------
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
フィン×アルは、『俺のものに手ぇ出したらぶっ殺す』という作者の好きなシチュを書きたいがあまり始まった話です。
書き始めた当初は、まさかここまで長くなるとは思ってもなかったのですが、書いてるうちにあれもこれも・・・と詰め込んでしまいました。
R18要素はどこ~~~~?となった方、もしいらっしゃいましたらお知らせください。
番外編を検討します。笑
本編にはあまり入れられませんでした、ごめんなさい。
どうやらN2Oは執着心の強い攻めを泣かせるのが好きらしい。
そんな性癖に、気づかせてくれたフィンさんありがとう。
では、また。
N2O
それはエバンズ家の紋章だ。
上等な羊皮紙に刻まれているそれは、一種の魔法なのか、魔力を込めるとその紋章が光りだし、神々しさがあった。
「・・・えーっと?んん?こっちの、超控えめな紋章、ベンジャミン家のじゃん。」
「ほら、言った通りでしょ?当主のサインもちゃんとある。」
「・・・・・・マジか・・・・・・」
目の前の輝く羊皮紙。
それは間違いなく、俺、アルフレッド・ベンジャミンとこの泣き虫男、フィンリー・エバンズの婚約誓約書だった。
「・・・お前まさかこのためにマレーナに・・・?!」
「うん?僕が卒業する前までに、とは思ってたんだけど、まさかアルからも・・・、ああ、どうしよう。嬉し過ぎて・・・はあ、堪んない・・・。僕今日寝られない・・・」
「おっ、おまっ、お前!!よ、用意周到過ぎんだろ!!」
「何言ってんの、アル。」
「はへ?」
ぐん、と体が浮き、一瞬思考が止まる。
姫抱っこされてると認識した時にはもうベッドに寝かされ、目の前にはいつもの・・・、まーーー、いつもの。
弧を描く菫色が見えた。
「僕がアルを逃がすわけ、ないでしょ。」
「・・・・・・っ、俺は、狩られる鹿か?」
「駄目。言い直し。」
「???」
俺の耳元にフィンが近づく。
ふわふわの髪の毛がくすぐったい。
ところでさっきまでの泣き虫で可愛いお前はどこ行った。
「アルは僕の、婚約者。」
色気を孕んだ声が耳に響いて、ぞくぞくする。
急いで耳を手で押さえて前を見ると、欲望が溢れ出す、男の顔がドアップだった。
「~~~っ、急に囁くな!!」
「ええ?どうして?アルの"その顔"が見れるんだから、やめられないよ。」
「俺は別に変な顔してない!!」
「変な顔じゃなくて、愛しくてたまらない婚約者の顔、だから。」
「・・・ぐぅ・・・っ!この!変態!ストーカー!!」
「・・・光栄だね。」
そう言って俺を挑発するような目をして不敵に微笑むフィンが、俺の髪を指で梳く。
こんな風に誰かに気を許すことになろうとは、夢にも思わなかった。
人生何が起こるか分からんもんだな、ほんと。
「・・・この状況で何か別のこと考えてるよね?」
「うあっ!お、おま、え!!!どこに手ぇ入れ、ひょっ、うわああああ!馬鹿ぁぁあ!!」
「ああ・・・本当好き。大好き。食べたい。舐めた、」
「こらこらこらこら!くそっ!俺も好きだっつーの!馬鹿フィン!!!止まれ!!」
「・・・・・・・・・もう、無理。」
「・・・え?ちょ、何が無理?!ちょ、ちょっと?目が据わっ、あうっ、!!?えええ?フィ、フィンさぁあああん!!!?」
俺が贈ったカフスボタン。
『わたしを、抱きしめて』という意味があるそうだ。
「僕もアルに贈ろうかな。どんな物がいい?」
「?一緒に選びに行けばいいだろ。」
「・・・・・・っ、これが婚約者の破壊力・・・っ!」
「んなっ!?べ、べ、別に、大したことは言ってな、んむっ!」
急にくっついた唇は頭がくらくらするまで離れず、俺が胸元をどんどん叩いたところで効果はなかった。
たぶん、俺とフィンは最初から最後まで、ずっとこんな感じ。
それが『しあわせ』だということに、実は気づいているのだが、口に出さない俺も俺で、そんな変わった俺が好きなこいつは、やっぱり、俺のストーカーでいいと思う。
おしまい
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ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
フィン×アルは、『俺のものに手ぇ出したらぶっ殺す』という作者の好きなシチュを書きたいがあまり始まった話です。
書き始めた当初は、まさかここまで長くなるとは思ってもなかったのですが、書いてるうちにあれもこれも・・・と詰め込んでしまいました。
R18要素はどこ~~~~?となった方、もしいらっしゃいましたらお知らせください。
番外編を検討します。笑
本編にはあまり入れられませんでした、ごめんなさい。
どうやらN2Oは執着心の強い攻めを泣かせるのが好きらしい。
そんな性癖に、気づかせてくれたフィンさんありがとう。
では、また。
N2O
応援ありがとうございます!
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