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04. 【side:H】②
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急いで行った市村家には、オレ宛ての小さな荷物が届いていた。
「突然届いたからびっくりしたけど、遥香が頼んだものなのね?」
「うん。明日は諒也の誕生日だから」
「ああ、なるほど。そういうことね」
ガサガサと包みを開けながら言えば、静香は納得してくれる。そしてその中身を見た静香は、あら、と小さく呟いた。
「ペアリング?」
「うん」
「じゃあ、いよいよ付き合うのね」
「そうしたいと、思ってる」
静香には、諒也とのことは全部話してある。まだ気持ちの整理がつかなくて付き合えないと待ってもらっている事も、オレが本当は諒也を好きなことも。
「諒也は本当に遥香のことが好きよね……」
しみじみと静香が言うから、オレは思わず苦笑した。
まだ、諒也がオレを好きでいてくれるといいんだけど。
ここ数日は主にオレが挙動不審で、たぶん諒也はいろいろと考えてしまっているはずだ。それもこれも、オレが2年半前に交際を保留にしたせいなんだけど。
それでも、あの頃と比べてオレも少しは成長したと思うし、何より諒也と付き合いたいと思えるようになった。前は罪悪感でいっぱいだったのに。汚してしまうと思っていた。傷痕だらけの身体を見せることは、今でも不安だけれど。
オレは指輪をパッケージには入れずにそのままポケットに突っ込んで静香にお礼を言うと、慌ただしく諒也が待つ家に帰った。
「ただいま!」
「おかえり、遥香」
「諒也、さっきは話の途中でごめん」
「大丈夫だよ。それで、何だったの?」
「んーと……。寝る前に、話がしたい」
少し考えて、明日ではなく今日のうちに話してしまおうと思った。
先延ばしにしたら、勇気も消えてしまいそうだった。今のうちに。ペアリングがちょうどのタイミングで届いた、今日この日に。頑張って伝えようと思った。
「寝る前? 今じゃダメなの?」
「今はまだダメ。夜がいい」
「よく分からないけど、了解。寝る前なら、風呂から上がったら声かける」
「うん。待ってる」
にこり、と。笑ったつもりの顔は上手く笑えていただろうか。
それからいつも通りにダラダラ過ごして諒也が作った夕食を食べてのんびりしてから風呂に入る。
鏡に映ったオレの身体。相変わらず傷痕だらけの身体は貧相で見せられるものではないと思う。
こんな身体を目の当たりにしたら、やはり諒也も引くだろうな、と。思ったら怖くなってくる。
やっぱりなかったことにしよう、と。
そう言われるのが怖い。怖くて、あの時のオレはとても酷い事を言ったのだと、今更ながらに後悔した。
シャンプーをして身体を洗ってから浴槽に浸かると、ほうっと息を吐いた。
約束通り諒也が部屋に来てくれた時の切り出し方を考えようとするけれど、心臓がバクバクし過ぎて何も考えられない。
のぼせてしまいそうになって、急いで浴槽から出るとバスタオルで水気を拭う。長袖のパジャマを着込んで、リビングの諒也に声をかけた。
「じゃあ、先に行ってる」
「うん」
諒也が頷くのを見て、オレは2階に上がって自分の部屋に入ると大きく吐息した。
ベッドの上に座り、サイドテーブルに置いたふたつの指輪に手を触れる。
シルバーのリングで、シンプルな中に『R』のアルファベットがデザインされたものと、それと同じ『H』がデザインされたもの。内側にも刻印が出来るということだったので、両方ともに『R & H』と彫ってもらった。
重い、だろうか。
あの日以来、お互いの気持ちは確認していない。オレが『待ってほしい』と言ったことに対して『待つ』と答えてくれた諒也。ただそれだけを信じて、この指輪を渡すしかない。
うるさいほどの心臓の音が聞こえる中、ドアをノックする音がして、オレは立ち上がった。
「突然届いたからびっくりしたけど、遥香が頼んだものなのね?」
「うん。明日は諒也の誕生日だから」
「ああ、なるほど。そういうことね」
ガサガサと包みを開けながら言えば、静香は納得してくれる。そしてその中身を見た静香は、あら、と小さく呟いた。
「ペアリング?」
「うん」
「じゃあ、いよいよ付き合うのね」
「そうしたいと、思ってる」
静香には、諒也とのことは全部話してある。まだ気持ちの整理がつかなくて付き合えないと待ってもらっている事も、オレが本当は諒也を好きなことも。
「諒也は本当に遥香のことが好きよね……」
しみじみと静香が言うから、オレは思わず苦笑した。
まだ、諒也がオレを好きでいてくれるといいんだけど。
ここ数日は主にオレが挙動不審で、たぶん諒也はいろいろと考えてしまっているはずだ。それもこれも、オレが2年半前に交際を保留にしたせいなんだけど。
それでも、あの頃と比べてオレも少しは成長したと思うし、何より諒也と付き合いたいと思えるようになった。前は罪悪感でいっぱいだったのに。汚してしまうと思っていた。傷痕だらけの身体を見せることは、今でも不安だけれど。
オレは指輪をパッケージには入れずにそのままポケットに突っ込んで静香にお礼を言うと、慌ただしく諒也が待つ家に帰った。
「ただいま!」
「おかえり、遥香」
「諒也、さっきは話の途中でごめん」
「大丈夫だよ。それで、何だったの?」
「んーと……。寝る前に、話がしたい」
少し考えて、明日ではなく今日のうちに話してしまおうと思った。
先延ばしにしたら、勇気も消えてしまいそうだった。今のうちに。ペアリングがちょうどのタイミングで届いた、今日この日に。頑張って伝えようと思った。
「寝る前? 今じゃダメなの?」
「今はまだダメ。夜がいい」
「よく分からないけど、了解。寝る前なら、風呂から上がったら声かける」
「うん。待ってる」
にこり、と。笑ったつもりの顔は上手く笑えていただろうか。
それからいつも通りにダラダラ過ごして諒也が作った夕食を食べてのんびりしてから風呂に入る。
鏡に映ったオレの身体。相変わらず傷痕だらけの身体は貧相で見せられるものではないと思う。
こんな身体を目の当たりにしたら、やはり諒也も引くだろうな、と。思ったら怖くなってくる。
やっぱりなかったことにしよう、と。
そう言われるのが怖い。怖くて、あの時のオレはとても酷い事を言ったのだと、今更ながらに後悔した。
シャンプーをして身体を洗ってから浴槽に浸かると、ほうっと息を吐いた。
約束通り諒也が部屋に来てくれた時の切り出し方を考えようとするけれど、心臓がバクバクし過ぎて何も考えられない。
のぼせてしまいそうになって、急いで浴槽から出るとバスタオルで水気を拭う。長袖のパジャマを着込んで、リビングの諒也に声をかけた。
「じゃあ、先に行ってる」
「うん」
諒也が頷くのを見て、オレは2階に上がって自分の部屋に入ると大きく吐息した。
ベッドの上に座り、サイドテーブルに置いたふたつの指輪に手を触れる。
シルバーのリングで、シンプルな中に『R』のアルファベットがデザインされたものと、それと同じ『H』がデザインされたもの。内側にも刻印が出来るということだったので、両方ともに『R & H』と彫ってもらった。
重い、だろうか。
あの日以来、お互いの気持ちは確認していない。オレが『待ってほしい』と言ったことに対して『待つ』と答えてくれた諒也。ただそれだけを信じて、この指輪を渡すしかない。
うるさいほどの心臓の音が聞こえる中、ドアをノックする音がして、オレは立ち上がった。
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