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03. 【side:R】②
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遥香の様子が何かおかしい。
美行と話し込むことが増え始めた頃に比べて、明らかにソワソワしている感じが見て取れる。
GWに入って大学が休みになると、遥香はスマホを肌身離さず持つようになった。今まで、家では部屋に置きっぱなしのことが多かったのに、だ。
何かあると思わない方がおかしいだろう。
それでも、それ以外はいつも通りで、聞くに聞けないでいる。
特に誰かと連絡を取っている様子もないのだ。美行からは時々メッセージが入るようだけれど、それもいつもの事で。何回かやり取りをして終了になるからやはりいつも通り。
俺の思い過ごしだろうか。
「遥香、コーヒー飲むか?」
「飲むー」
昼食後にコーヒーでも淹れようとして聞いたのだが、無邪気に答えてくるところはやっぱりいつも通りだった。
自分の分はブラックで、遥香のマグカップにはミルクを入れてリビングに運んだ。ソファに座る遥香に渡してやれば、ありがとうと微笑まれる。その笑顔はやっぱり綺麗で。
ああ、この笑顔を俺以外には向けて欲しくないな、と改めて思う。
『幼なじみ以上、恋人未満』とはいえ、あの日から遥香の気持ちを確認したことはない。信じて待っている、ただそれだけだ。
待ってほしいと言った、遥香の言葉を。ただ信じて。遥香を好きだと思う気持ちは日ごとに募り、我慢できずにキスをしたことだって何度もある。始めは微かに抵抗されたりもしたけれど、いつの頃からか自然に受け止めてくれるようになった。
その事で、少し安心していたのだ。
「なぁ、遥香」
「んー?」
「お前、俺に隠してることない?」
「んっ!?」
遥香が動揺するのを目の当たりにして、自分も動揺するのが分かった。
何気なく聞いたつもりが、こんな反応をされるなんて。やはり何かあるのか。
他に誰か好きな人ができた、とか。
そんな事を言われたら俺は遥香に何をするか分からない。そんな気がする。
せめて振られるなら明日は嫌だと思って、つい聞いてしまった自分を呪った。
最悪の誕生日にはしたくなかった。
だけど、遥香は動揺を押さえ込んで、けほんと咳払いをすると、少し考えるような仕草をした。
「んー、隠してる、というか。内緒にしてることならある」
「それ、どう違うの」
「そうだなぁ。隠してるって言うと、なんか嫌なイメージだろ? でも内緒なんだよ。まだ言えない。もう少し待って」
「嫌なことではないってこと?」
「たぶん」
たぶん、嫌なことではない。
自己評価が低すぎる遥香にそう言われても、全く安心できないのはなぜだろう。
そう思っているのが顔に出ていたのかもしれない。遥香は、笑って言葉を付け加える。
「美行は、諒也なら喜んでくれるって言ってた」
「……その言葉が複雑なんだけど」
「え?」
「美行は知ってるのに、俺には内緒とか……」
少し拗ねて見せれば、遥香はアワアワと言い訳を始めようとするけれど、ちょうどそのタイミングで遥香のスマホに着信がある。
「ちょっと待って諒也。……はい、もしもし静香?」
俺を手で制して、遥香は通話に出る。静香さんかららしい。相変わらず仲のいい姉弟だな、と思う。
「あ、ホント? ……うん、……いや、そっち行く。ちょっとそのまま待ってて」
プツリと通話を切ると、遥香は俺に待っているように言って静香さんたちの部屋へと向かった。
先程の電話の様子からはとても安心したような嬉しそうな感じが読み取れた。
もう少し待て、と言った遥香の言葉は、2年半前のことを思い起こさせる。
俺のことを好きだけれど、まだ付き合えないと言った遥香。もう少し待ってほしいと、そう言われて俺は待ち続けている。
まだ、待っていてもいいのだろうか。
最近は、それをずっと悩んでいる。
遥香の重荷にはなっていないだろうか、と。
それだけが、心配だった。
美行と話し込むことが増え始めた頃に比べて、明らかにソワソワしている感じが見て取れる。
GWに入って大学が休みになると、遥香はスマホを肌身離さず持つようになった。今まで、家では部屋に置きっぱなしのことが多かったのに、だ。
何かあると思わない方がおかしいだろう。
それでも、それ以外はいつも通りで、聞くに聞けないでいる。
特に誰かと連絡を取っている様子もないのだ。美行からは時々メッセージが入るようだけれど、それもいつもの事で。何回かやり取りをして終了になるからやはりいつも通り。
俺の思い過ごしだろうか。
「遥香、コーヒー飲むか?」
「飲むー」
昼食後にコーヒーでも淹れようとして聞いたのだが、無邪気に答えてくるところはやっぱりいつも通りだった。
自分の分はブラックで、遥香のマグカップにはミルクを入れてリビングに運んだ。ソファに座る遥香に渡してやれば、ありがとうと微笑まれる。その笑顔はやっぱり綺麗で。
ああ、この笑顔を俺以外には向けて欲しくないな、と改めて思う。
『幼なじみ以上、恋人未満』とはいえ、あの日から遥香の気持ちを確認したことはない。信じて待っている、ただそれだけだ。
待ってほしいと言った、遥香の言葉を。ただ信じて。遥香を好きだと思う気持ちは日ごとに募り、我慢できずにキスをしたことだって何度もある。始めは微かに抵抗されたりもしたけれど、いつの頃からか自然に受け止めてくれるようになった。
その事で、少し安心していたのだ。
「なぁ、遥香」
「んー?」
「お前、俺に隠してることない?」
「んっ!?」
遥香が動揺するのを目の当たりにして、自分も動揺するのが分かった。
何気なく聞いたつもりが、こんな反応をされるなんて。やはり何かあるのか。
他に誰か好きな人ができた、とか。
そんな事を言われたら俺は遥香に何をするか分からない。そんな気がする。
せめて振られるなら明日は嫌だと思って、つい聞いてしまった自分を呪った。
最悪の誕生日にはしたくなかった。
だけど、遥香は動揺を押さえ込んで、けほんと咳払いをすると、少し考えるような仕草をした。
「んー、隠してる、というか。内緒にしてることならある」
「それ、どう違うの」
「そうだなぁ。隠してるって言うと、なんか嫌なイメージだろ? でも内緒なんだよ。まだ言えない。もう少し待って」
「嫌なことではないってこと?」
「たぶん」
たぶん、嫌なことではない。
自己評価が低すぎる遥香にそう言われても、全く安心できないのはなぜだろう。
そう思っているのが顔に出ていたのかもしれない。遥香は、笑って言葉を付け加える。
「美行は、諒也なら喜んでくれるって言ってた」
「……その言葉が複雑なんだけど」
「え?」
「美行は知ってるのに、俺には内緒とか……」
少し拗ねて見せれば、遥香はアワアワと言い訳を始めようとするけれど、ちょうどそのタイミングで遥香のスマホに着信がある。
「ちょっと待って諒也。……はい、もしもし静香?」
俺を手で制して、遥香は通話に出る。静香さんかららしい。相変わらず仲のいい姉弟だな、と思う。
「あ、ホント? ……うん、……いや、そっち行く。ちょっとそのまま待ってて」
プツリと通話を切ると、遥香は俺に待っているように言って静香さんたちの部屋へと向かった。
先程の電話の様子からはとても安心したような嬉しそうな感じが読み取れた。
もう少し待て、と言った遥香の言葉は、2年半前のことを思い起こさせる。
俺のことを好きだけれど、まだ付き合えないと言った遥香。もう少し待ってほしいと、そう言われて俺は待ち続けている。
まだ、待っていてもいいのだろうか。
最近は、それをずっと悩んでいる。
遥香の重荷にはなっていないだろうか、と。
それだけが、心配だった。
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