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第一章 謎の組織、異世界へ行く
悪事5 黒竜王の悪夢、寄り道編
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飛翔する黒竜王ニッグの頭から地上を見下ろす『統領』は、通りすがりの4人から仕入れた情報を元にニブルタール王国の様子を観察していた。
「ふむ、あまり文明的な国とは思えんな。自分たちの国なのに街道の整備が行き届いていないし、土地の使い方も良くない。それに辺境領と言ったか? あんな街が王都に次ぐ大都市だと? 時代錯誤にもほどがあるだろ。概ね、あの3人から聞いた通り、か」
「人間の国なんて大なり小なりあんなものじゃないんです? 昔、僕が行ったことがある国もあんな感じでしたよ。もうちょっと大きかったですけど」
「そうなのか? だとすると、この国には大した成果は期待できないな。もうちょっと観回ったら、他の国にもいくべきだろうか……」
「どこに行くかは、ボスにお任せですー」
石壁に囲まれた街。
住居も石材や砂レンガや木材を使われたものが大多数を占めていて金属を使った施設はほぼ皆無だった。さらに言えば、あの戸数ではどれだけ高く見積もっても人口2万~3万人くらいが関の山だろう。
『統領』たちの故郷では、1戸で10万人を収容できる総合生産型複合居住施設が存在するのだ。そもそも、彼らの星間航行船ですら1船で数百人は養える規模がある。こことの文明の差は歴然だった。
さらに『統領』の観点からすると、想定されるあらゆる災害に対応するために住居や星間航行船と言った重要施設は、特殊思念流動金属体で作成することが当たり前なのだ。火災や地震に対する強度が脆弱な木材や石材を使用していることが信じられなかった。
それ以外には、かなり離れた間隔でぽつりぽつりと田畑を有する村々が存在する程度。
そっちに至っては木の柵が申し訳ない程度にある中に、気密性の皆無の家々が無秩序に乱立している村落といったイメージ。まるで大昔の映像作品を見ているようだった。
「それに、あの魔獣とか言う生き物は何だ? 生態系として、あんなのがいたらおかしいだろ。それこそあのトカゲ1匹で下手したら街や村が壊滅するぞ」
「ヨロイトカゲくらいなら弱いですから大丈夫じゃないんです? ボスだって1撃で倒してましたし。あの人たちだって、万全なら倒せるような話でしたよね?」
「お前、あの会話が聞こえてたのか? あんなに距離が離れてて?」
「ふふん、僕、耳は良いんですよ! 魔力使ってますけどね!」
「それも不思議なんだよなぁ。何だよ、魔力って。『教授』と『医者』にそのことを教えたら、本気で解剖してでも調べそうだな」
「ひぃぃぃぃ、秘密! 秘密でお願いします! 僕は魔力なんて知りません!」
相変わらず、緊張感のない2人組であった。
王都では黒竜王対策会議の真っ最中であった。
円卓には、この王国の最高戦力を統率する者達が集結していた。
「現在、黒竜王は、理由は不明ですが王国西端のウエストバーン辺境伯領に留まっているようです。一時は街への接近も危惧しましたが、現時点では近づく気配は見られません。進行速度は著しく低下し、蛇行や旋回などを繰り返している状況です」
「ご苦労、引き続き魔水晶の監視を頼む。定期連絡以外にも、何か不審な動きがあれば、どのタイミングであっても報告せよ」
「は! 了解しました! 失礼いたします!」
ローブを着た連絡員風の男が状況報告を読み上げてから退出していく。
「さて、ここで断定するには早計かもしれないが、黒竜王は街や王都を襲いにきたわけではないようだ。しかし、そうなると何が目的なのかがわからない。どうする? ウエストバーン」
『は! 私の領内に留まっているならば、まずは様子を確認したいと思っています。姿を直接見てから方針を決めたいと存じます。かの黒竜王はとても知性的と謳われております。過去報復されたのも人間が身勝手に神の島に攻め入ったためだと。許されるならば、交渉を試みてもよろしいでしょうか?』
「しかし、それはおとぎ話では? 実際がどうなのかは誰も知り得ないはずですが……」
『一定の根拠が無ければ、そんな話は何十年も言い伝えられませぬ。私が子供の頃から伝えられていることです。姿と称号にそぐわないほどに優しき竜であると』
王様風の男が円卓の中央に座り、宰相風の男がその後ろに立つ。
円卓には6個の水晶が設置されており、それぞれに違う風貌の人物が映し出されていた。
これは遠距離通信用の魔水晶と呼ばれるもので、携帯電話も真っ青なロストテクノロジーであった。
『実は、先ほど領内のギルドから面白い情報が入りましてな。ギルドは眉唾な話だから、念のため報告しておくが真に受けては危険だと念押しされました。しかし、どうも気になりましてな、直接呼び出して話を聞かせてもらいました』
「ほう、それほどなのか。して、内容は?」
『それが……ふふふ、おっと失礼、その時のことを思い出してしまいました。A級パーティの真実の剣をご存知でしょうか? 彼らが西端の海岸付近でメタルアーマーリザードの成体に遭遇したそうです。そして、対応できる仲間が負傷したため、やむなく街へ逃げようとしたと』
ウエストバーン辺境伯が噴き出した時には訝し気な様子を見せた宰相風の男だったが、魔獣の名前が挙がると真っ青な顔をして慌て始めた。
「何!? メタルアーマーリザードと言ったら災害級ではないか!? 辺境伯の街に被害は出なかったのか!? それに真実の剣は大丈夫なのか!?」
『宰相殿、問題はありません。10メートル程の個体でしたが、現在は既に討伐を確認済みです。街に運び込まれた際に若干の騒ぎになりましたが』
「そうだったのか、いや、さすがは真実の剣だ。我が王国が誇るトップチームの1つだけありますな。いや、本当に頼もしい。メタルアーマーリザードは良質な素材の宝庫ですからな、領内も潤うでしょう」
そこまで聞いて、宰相風の男はうんうんと自己完結していたが、ウエストバーン辺境伯の報告はそれだけではなかった。
『直接聞いた話では、討伐したのは彼らではないそうです。自分たちは助けられたと言っておりました。そして、助けた人物はたった1人。異様な格好であったもののA級の自分たちよりも確実に強いとも』
「それは、彼らの勘違いではないのか? A級は我が王国内にも片手しか存在しないトップ戦力だぞ? 彼ら4人よりも、その1人のほうが強いなんぞ、とても現実的ではないのだが……」
『私もそれだけ聞けば疑うでしょう。しかし、現実にメタルアーマーリザードは急所を的確に1撃で仕留められているのです。あの体力がケタ違いな魔獣を物理攻撃で1撃。これがどのレベルで異常なことか。綺麗に原型を留めていた素材を見た時には我が目を疑いましたぞ』
「確かに、物理攻撃が効かないため、かの魔獣を仕留めるのは魔術士を総動員して物量で押し切るのがセオリー。しかしそれ故に素材が傷だらけで使えなくなる部分が多くなると聞く」
『その通りです。そして、最後にこれは私の胸の中にだけと教えてくれたのですがな。助けてくれた人物は、天空から現れた黒き竜を従え、その竜に跨って去っていった、と』
「「は?」」
ウエストバーン辺境伯の発言を聞いた王様風の男と、宰相風の男は揃って呆けた顔になった。内容が現実離れしすぎていて理解できなかったようだ。
『黒竜王が我が領内に留まっている点、この謎の人物の目撃談。勘ですが、何か関係がある気がしましてな。仮に、黒竜王を従えている人物が実在するならば、話し合いができると思いまして、当初の提案の話に戻るわけです』
「ふむ、とても興味深い。上手くいけば最小限で脅威を回避できるか。よし、ウエストバーン辺境伯に命じる。渦中の人物の捜索と接触を許可する。追って、こちら側からの要求内容を記した書を貴殿宛てに送る。交渉の際の裁量権は辺境伯に一任するが、特級事項以外であれば辺境伯の判断で裁可する権限を持たす。ニブルタール王国への被害を最小限に食い止めよ」
『は! ありがとうございます。必ずや御身のご期待に添える様、尽力いたします』
「では、これにて一度解散とする。緊急に備えて各自自領に待機せよ。いつでも連絡がとれるように、当面の間は本人もしくは代官を配置することとする」
『『『『『『御意』』』』』』
まさか暢気に空中散歩しているだけとは夢にも思ってもいない王国側は、今後の対応に僅かな希望を見出すのだった。
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さらに『統領』の観点からすると、想定されるあらゆる災害に対応するために住居や星間航行船と言った重要施設は、特殊思念流動金属体で作成することが当たり前なのだ。火災や地震に対する強度が脆弱な木材や石材を使用していることが信じられなかった。
それ以外には、かなり離れた間隔でぽつりぽつりと田畑を有する村々が存在する程度。
そっちに至っては木の柵が申し訳ない程度にある中に、気密性の皆無の家々が無秩序に乱立している村落といったイメージ。まるで大昔の映像作品を見ているようだった。
「それに、あの魔獣とか言う生き物は何だ? 生態系として、あんなのがいたらおかしいだろ。それこそあのトカゲ1匹で下手したら街や村が壊滅するぞ」
「ヨロイトカゲくらいなら弱いですから大丈夫じゃないんです? ボスだって1撃で倒してましたし。あの人たちだって、万全なら倒せるような話でしたよね?」
「お前、あの会話が聞こえてたのか? あんなに距離が離れてて?」
「ふふん、僕、耳は良いんですよ! 魔力使ってますけどね!」
「それも不思議なんだよなぁ。何だよ、魔力って。『教授』と『医者』にそのことを教えたら、本気で解剖してでも調べそうだな」
「ひぃぃぃぃ、秘密! 秘密でお願いします! 僕は魔力なんて知りません!」
相変わらず、緊張感のない2人組であった。
王都では黒竜王対策会議の真っ最中であった。
円卓には、この王国の最高戦力を統率する者達が集結していた。
「現在、黒竜王は、理由は不明ですが王国西端のウエストバーン辺境伯領に留まっているようです。一時は街への接近も危惧しましたが、現時点では近づく気配は見られません。進行速度は著しく低下し、蛇行や旋回などを繰り返している状況です」
「ご苦労、引き続き魔水晶の監視を頼む。定期連絡以外にも、何か不審な動きがあれば、どのタイミングであっても報告せよ」
「は! 了解しました! 失礼いたします!」
ローブを着た連絡員風の男が状況報告を読み上げてから退出していく。
「さて、ここで断定するには早計かもしれないが、黒竜王は街や王都を襲いにきたわけではないようだ。しかし、そうなると何が目的なのかがわからない。どうする? ウエストバーン」
『は! 私の領内に留まっているならば、まずは様子を確認したいと思っています。姿を直接見てから方針を決めたいと存じます。かの黒竜王はとても知性的と謳われております。過去報復されたのも人間が身勝手に神の島に攻め入ったためだと。許されるならば、交渉を試みてもよろしいでしょうか?』
「しかし、それはおとぎ話では? 実際がどうなのかは誰も知り得ないはずですが……」
『一定の根拠が無ければ、そんな話は何十年も言い伝えられませぬ。私が子供の頃から伝えられていることです。姿と称号にそぐわないほどに優しき竜であると』
王様風の男が円卓の中央に座り、宰相風の男がその後ろに立つ。
円卓には6個の水晶が設置されており、それぞれに違う風貌の人物が映し出されていた。
これは遠距離通信用の魔水晶と呼ばれるもので、携帯電話も真っ青なロストテクノロジーであった。
『実は、先ほど領内のギルドから面白い情報が入りましてな。ギルドは眉唾な話だから、念のため報告しておくが真に受けては危険だと念押しされました。しかし、どうも気になりましてな、直接呼び出して話を聞かせてもらいました』
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ウエストバーン辺境伯が噴き出した時には訝し気な様子を見せた宰相風の男だったが、魔獣の名前が挙がると真っ青な顔をして慌て始めた。
「何!? メタルアーマーリザードと言ったら災害級ではないか!? 辺境伯の街に被害は出なかったのか!? それに真実の剣は大丈夫なのか!?」
『宰相殿、問題はありません。10メートル程の個体でしたが、現在は既に討伐を確認済みです。街に運び込まれた際に若干の騒ぎになりましたが』
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「それは、彼らの勘違いではないのか? A級は我が王国内にも片手しか存在しないトップ戦力だぞ? 彼ら4人よりも、その1人のほうが強いなんぞ、とても現実的ではないのだが……」
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『その通りです。そして、最後にこれは私の胸の中にだけと教えてくれたのですがな。助けてくれた人物は、天空から現れた黒き竜を従え、その竜に跨って去っていった、と』
「「は?」」
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『は! ありがとうございます。必ずや御身のご期待に添える様、尽力いたします』
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