3 / 16
第一話
捨てられ妻の娘③
しおりを挟む
次第に気持ちが落ち着いて来たのを感じた。サイラスとユリアナの二人が完全に立ち去るまで、このままじっと待つのは時間が勿体ない気がした。ふと思い立ち、ポーチの中か携帯用魔術通信機器を取り出す。それは魔法水晶で出来た掌サイズのもので、この時代の携帯電話だ。色や形、大きさは様々な種類がある。魔法を使えば打ち込みの作業をしなくても思い浮かべるだけで機能が果たせるという非常に便利なものだ。
私が持っているのは乳白水晶で出来ており、白く煙るような優しい色合いをしている。この優しい色合いが、大好きな銀梅花を彷彿とさせて一目で気に入ってしまったのだ
因みに、魔法が全く扱えない場合も用途に応じて『魔法石』を使用すれば誰でも簡単に「生活魔法」が使えるようになっている。
ミルティアは匿名掲示板を思い浮かべた。
……私とサイラスとユリアナが最初に話題になった日を見てみよう……
_____テネーブル小国国立学園のスレッド_____
名無し 3xxx年 4月x日 01:06分
13 中等部の魔術科B組のSyラス様って素敵だよね。やっぱりお付き合いしている彼女いるよね?
>>13
14 確かC組のJuリアナだったんじゃないかな?
>>14
15 え? A組のMyルティアじゃなくて?
>>15
16 え? だって休日の度にJuリアナとSyラスが一緒のところよく見掛けるからてっきり……
親密そうに手を繋ぎ合って歩いているから
>>16
17 でも昼休みとか休憩時間はいつもSyラス様とMyルティアが一緒に居るじゃない?
>>18
19 あ、なんか元々JuリアナとSyラスが付き合っていたところ、Myルティアが金と権力を振りかざして強引に奪い取ったらしいよ?
>>19
20 うわ、最低! Myルティアって何か偉そうだよね。アイツ嫌い。ちょっとばかり成績が良くて可愛いからって上から目線でさ。親の地位が少し高いからってそれがどうした! て感じ。
>>21
22 え? 大して可愛くないと思う。成績だって学年で10位程度じゃ誰だってなれるし。
_______________
名無し 3xxx年 4月x日 12:46分
>>34
35 あ、わかる。なんかいつも上から目線だよね。Myルティアって。ラインゲルト辺境伯様御夫妻と仲良いとか威張ってるし。
>>35
36 そうそう、たまたま運よく知り会えて目をかけて貰ってるだけの話だよね。
_______________
名無し 3xxx年 4月x日 22:58分
>>41
42 なるほどねぇ、何でSyラスほど人気ある人がMyルティアなんかと付き合ったのか不思議だったんだ。Juリアナから無理やり奪い取ったんだ、最低!
>>42
43 無理矢理引き裂かれた二人が、コッソリ逢ってるだけらしいよ。
_______________
今からおよそ二か月ほど前の書き込みだ。もはや突っ込みどころ満載過ぎてどう反応すべきか迷うほどだった。先ず、『匿名掲示板』は匿名ではない事。何かあればすぐに身元がバレてしまう事など、1000年以上前からの常識となっているのに警戒心が無さ過ぎる点。しかも学園に関してのスレッドなど、誰が書き込んだのか推測も簡単に出来てしまう。
サイラスとユリアナが最初から付き合っていただの、私が奪い取っただの、そういう流れに持っていきたい誰かの書き込み。恐らくユリアナとサイラスの演出だろう。二人で何役もこなしてスレッドを埋めていたとしたら…………何とも滑稽だ。
私の事を偉そうだとか上から目線だとか感じている奴らが一定数居るだろう事は認める。やられたらやり返すし、言いたい事ははっきり言うタイプだからだ。ただ、母親の地位やら権力やら振りかざした事は一切無い。今後も持ち出すつもりもない。
エクオール一族……過去何回かに帝国の皇后や側妃を選出した実績、原始の水の精霊と一体化を成功させた名門である事……らしい。私に言わせたら「ふーん。ご先祖様がそうだったんだ」で終わってしまう話だ。そもそもそれがどれほどの効果があるのか私には理解し難い上に、仮に何かしら効果があったとしても親の権力を武器にするような腑抜けにはなりたくない。
……さて、この掲示板の書き込みの特定を依頼しよう……
と決めた。今はインターネット専用の警察『サイバーポリス』に相談すればすぐに身元が判明してしまうのだ。但し、悪質だと判断されたら、という条件がつくが。もし門前払いでも、無料ではないが弁護士に依頼すれば済む話だ。相手を特定して、反撃に出る事にしよう。もうサイラスともユリアナともお別れするつもりだが、奴らが喜ぶような展開にはしたくない。
ラインゲルト辺境伯御夫妻と知り合えた事は、書き込まれている通り本当に身に余る光栄だと思う。ディスティニー・キアラ様とジルベルト・ジャスティス様、まさに美男美女の御夫婦で神々しいくらいだ。
私が持っているのは乳白水晶で出来ており、白く煙るような優しい色合いをしている。この優しい色合いが、大好きな銀梅花を彷彿とさせて一目で気に入ってしまったのだ
因みに、魔法が全く扱えない場合も用途に応じて『魔法石』を使用すれば誰でも簡単に「生活魔法」が使えるようになっている。
ミルティアは匿名掲示板を思い浮かべた。
……私とサイラスとユリアナが最初に話題になった日を見てみよう……
_____テネーブル小国国立学園のスレッド_____
名無し 3xxx年 4月x日 01:06分
13 中等部の魔術科B組のSyラス様って素敵だよね。やっぱりお付き合いしている彼女いるよね?
>>13
14 確かC組のJuリアナだったんじゃないかな?
>>14
15 え? A組のMyルティアじゃなくて?
>>15
16 え? だって休日の度にJuリアナとSyラスが一緒のところよく見掛けるからてっきり……
親密そうに手を繋ぎ合って歩いているから
>>16
17 でも昼休みとか休憩時間はいつもSyラス様とMyルティアが一緒に居るじゃない?
>>18
19 あ、なんか元々JuリアナとSyラスが付き合っていたところ、Myルティアが金と権力を振りかざして強引に奪い取ったらしいよ?
>>19
20 うわ、最低! Myルティアって何か偉そうだよね。アイツ嫌い。ちょっとばかり成績が良くて可愛いからって上から目線でさ。親の地位が少し高いからってそれがどうした! て感じ。
>>21
22 え? 大して可愛くないと思う。成績だって学年で10位程度じゃ誰だってなれるし。
_______________
名無し 3xxx年 4月x日 12:46分
>>34
35 あ、わかる。なんかいつも上から目線だよね。Myルティアって。ラインゲルト辺境伯様御夫妻と仲良いとか威張ってるし。
>>35
36 そうそう、たまたま運よく知り会えて目をかけて貰ってるだけの話だよね。
_______________
名無し 3xxx年 4月x日 22:58分
>>41
42 なるほどねぇ、何でSyラスほど人気ある人がMyルティアなんかと付き合ったのか不思議だったんだ。Juリアナから無理やり奪い取ったんだ、最低!
>>42
43 無理矢理引き裂かれた二人が、コッソリ逢ってるだけらしいよ。
_______________
今からおよそ二か月ほど前の書き込みだ。もはや突っ込みどころ満載過ぎてどう反応すべきか迷うほどだった。先ず、『匿名掲示板』は匿名ではない事。何かあればすぐに身元がバレてしまう事など、1000年以上前からの常識となっているのに警戒心が無さ過ぎる点。しかも学園に関してのスレッドなど、誰が書き込んだのか推測も簡単に出来てしまう。
サイラスとユリアナが最初から付き合っていただの、私が奪い取っただの、そういう流れに持っていきたい誰かの書き込み。恐らくユリアナとサイラスの演出だろう。二人で何役もこなしてスレッドを埋めていたとしたら…………何とも滑稽だ。
私の事を偉そうだとか上から目線だとか感じている奴らが一定数居るだろう事は認める。やられたらやり返すし、言いたい事ははっきり言うタイプだからだ。ただ、母親の地位やら権力やら振りかざした事は一切無い。今後も持ち出すつもりもない。
エクオール一族……過去何回かに帝国の皇后や側妃を選出した実績、原始の水の精霊と一体化を成功させた名門である事……らしい。私に言わせたら「ふーん。ご先祖様がそうだったんだ」で終わってしまう話だ。そもそもそれがどれほどの効果があるのか私には理解し難い上に、仮に何かしら効果があったとしても親の権力を武器にするような腑抜けにはなりたくない。
……さて、この掲示板の書き込みの特定を依頼しよう……
と決めた。今はインターネット専用の警察『サイバーポリス』に相談すればすぐに身元が判明してしまうのだ。但し、悪質だと判断されたら、という条件がつくが。もし門前払いでも、無料ではないが弁護士に依頼すれば済む話だ。相手を特定して、反撃に出る事にしよう。もうサイラスともユリアナともお別れするつもりだが、奴らが喜ぶような展開にはしたくない。
ラインゲルト辺境伯御夫妻と知り合えた事は、書き込まれている通り本当に身に余る光栄だと思う。ディスティニー・キアラ様とジルベルト・ジャスティス様、まさに美男美女の御夫婦で神々しいくらいだ。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
一般人になりたい成り行き聖女と一枚上手な腹黒王弟殿下の攻防につき
tanuTa
恋愛
よく通っている図書館にいたはずの相楽小春(20)は、気づくと見知らぬ場所に立っていた。
いわゆるよくある『異世界転移もの』とかいうやつだ。聖女やら勇者やらチート的な力を使って世界を救うみたいな。
ただ1つ、よくある召喚ものとは異例な点がそこにはあった。
何故か召喚された聖女は小春を含め3人もいたのだ。
成り行き上取り残された小春は、その場にはいなかった王弟殿下の元へ連れて行かれることになるのだが……。
聖女召喚にはどうも裏があるらしく、小春は巻き込まれる前にさっさと一般人になるべく画策するが、一筋縄では行かなかった。
そして。
「──俺はね、聖女は要らないんだ」
王弟殿下であるリュカは、誰もが魅了されそうな柔和で甘い笑顔を浮かべて、淡々と告げるのだった。
これはめんどくさがりな訳あり聖女(仮)と策士でハイスペック(腹黒気味)な王弟殿下の利害関係から始まる、とある異世界での話。
1章完結。2章不定期更新。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる