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第八話
テリハノイバラ
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雨が降る…。雨が降る…。霧のような、雨が降る…。霧雨。まさにこれがピッタリの表現だ。
その日は朝から雨が降っていた。辺りには霧が立ち込めている。風は、強くない。ほとんど体に感じないくらいだ。一限が休講。朝練無しの今朝、あたしは予定通り、海に向かって歩いている。モヤモヤと明確に表現出来ない感情を抱えている時は、只管歩く。そして海を見る。
これが、あたしにとってベストなやり方だ。
歩く時は出来る限り大股で。腕は軽く曲げてリズムよく。そして早歩きで。只管歩く事に集中する。足の裏が、
しっかりと地に触れている事を意識して。そうやってリズミカルに歩いていると、いつの間にか自分が、地球の一部であるかのように錯覚してくる。さながら歩くリズムは波の音。それは陸の鼓動を刻む音だ。言わば、地球と一体化する感覚に等しい。だからあたしは傘を差さず、合羽を来て歩いている。
……海が見えてきた。沖の方は霧で見えない。いつもの場所に向かう。砂浜は雨を吸って、いつもよりしっとりと重々しい。波は少し荒い。浄化効果抜群に思えた。
岩にシートを敷いて腰をおろす。やはり、周りには誰も居ない。当然だ。平日の午前中。雨が降り、霧まで立ち込めているのだ。
あたしだけだ。あたしだけの、貸切の空間。何という贅沢だろう。大きく深呼吸をした。そして目を閉じ、胸に燻るモヤモヤに集中する。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
地球の鼓動、潮騒のメロディ。いつもより少し荒い。少し雨の音も加わって。湿り気を帯びた音色。しばしそのメロディに、耳を傾ける。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
胸のモヤモヤは、闇の色。モヤモヤ蠢く無数の蛇。
「ヒッ!」
ゾクリとして、思わず悲鳴を上げた。蛇は大嫌いだった。蛇に罪は無いのが、どうしても苦手だった。自分の中に、そのような恐ろしいモノを飼っていたなんて。ショックだ。とても。蛇は『嫉妬』『欺き』の象徴。そんなモノを飼っているたら、モヤモヤして当たり前だ。無数にいるがまだ小さな蛇。大蛇にならないうちに、根こそぎ追い出さねば。再び目を閉じ、胸の中の無数の蛇に意識を集中させた。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
「こんな雨の日に来たのかい?」
突然、背後から柔らかな声が響いた。
「あ、あなたは……」
吃驚して振り返ったあたしの目に飛び込んだのは、
「日曜日に会ったばかりだね。まだ名前を言ってなかったよね。僕の名前は、『ひおき かいと』この間、名乗ろうと思ったんだけど、彼が来ちゃったみたいだからね」
そう言って、彼は笑みを浮かべた。
…何て、透明感のある微笑みだろう…
思わず見惚れてしまうくらい、無邪気な笑顔だった。まるで、生まれたばかりの赤子の微笑みのように無垢だった。そして彼は、差していた藍色の傘をあたしに差し出す。何の抵抗も無く素直に受け取ってしまう程に、それは自然な流れだった。
必然的に彼は雨に濡れてしまうので、受け取った傘を彼に差しかける。彼はデニムパンツのポケットから携帯を取り出すと、何やら文字を打ち始めた。そして私に携帯の画面を見せる。
『日沖 海斗』と書かれており。
「ひおき かいと。皆はカイとかカイトとか呼んでるよ」
と言ってあたしを見つめた。
…緑豊かな森の中、木漏れ日の差し込む茶色の泉…
初めて彼の瞳を見た時、そう感じた。今も、それは同じ印象だ。けれどもふと、
…どこかで見た事がある…ような…
そんな不思議な既成感を覚えた。
「ウェブデザイナーを目指して、この春から専門学校に通ってるんだ」
と彼は続けた。ここまで礼儀正しく名乗っている彼に、名乗らないでいるのは失礼だと思う。そう思ったあたしは
「私は相沢菜々子。この春短大に入学しました。保育士になれたらな、と思っています」
と笑顔で軽く自己紹介をした。彼は嬉しそうに微笑むと
「じゃぁ、きっと同じ歳だね! 菜々ちゃん、て呼んで良いかな?」
と眩しそうにあたしを見つめる。特に断る理由も見つからないので、
「はい、お好きにどうぞ。じゃぁ私は、海斗君、て呼びますね!」
と答えた。彼は本当に嬉しそうに笑って頷いた。きっと、素直な人なのだろう。彼は預けていた傘を受け取ると、あたしの隣に腰をおろした。そしてあたしに傘を差しかける。言わば、相合傘のような感じだ。
…当麻!!…
瞬間的に当麻の顔が浮かび、思わず立ち上がってしまった。こんな時どうしたら良いかまるで分らない。異性の友達も、それほど親しい人は居ない。けれども、付き合っても居ない異性との相合傘は気が引けた。それは恐らくは、時代錯誤な感覚かもしれないけれども。
「ごめん。ちょっと馴れ馴れしかったね。深い意味は無かったんだけど」
と彼は寂しそうに笑った。途端に、自意識過剰が恥ずかしくなる。慌てて
「い、いいえ。すみません、私の方こそ。なんか、その、自意識過剰ってヤツです。こめんなさい!」
と謝罪した。そんなあたしに、一瞬吃驚した眼差しで見つめると、フフフ、と小さく笑う。
「いや、今のは僕の軽率さが悪いんだ。むやみに謝ったらダメだよ。男は益々つけあがる」
とやんわりと窘めた。どう反応して良いのか戸惑う。
「ところで、どうしてこんな雨の中ここに来ていたの?」
と矢継ぎ早に質問してきた。その時突然、
『ピピッピピピッピピピピ…』
にわかに、携帯の目覚ましが鳴る。そろそろ、学校に向かわないと講義に間に合わない時間らしい。
「あ、ごめんなさい。それそろ学校に行かないと……」
「そうか、残念。もっと話したかったけど。また話そう。僕は海が好きで、大雨風の時以外はチョコチョコここにいるから」
と微笑んだ。
「はい、また宜しくお願いします!」
と笑顔で答えると学校に向かうべく、道路に向かって歩き始めた。あたしが道路の反対側に渡るまで、見送ってくれた彼。
「気を付けてね、またね」
と彼は大きく手を振った。
「有難うございます。また」
と、軽く手を振りながら答えた。
気が付いたら、雨は止んでいた。
…ザザザー…ザブン…ザザザザー…ザブン…
心なしか、潮騒のメロディがいつもより長めに聞こえてくる気がした。歩きながらふと、道路脇に咲く小さな白い花に目が止まる。雨に濡れて鮮やかな緑色の葉。枝にはまばらに鍵状の棘。地面に這うようにして生える茎。海辺に咲く花の一つ、『テリハノイバラ 』だ。一重の五枚花で、白い花びらに黄色い雄しべがとても可憐だ。重なり合うようにして幾つも咲いていると、とても華やいで見える。濡れてなお一層、色濃く艶めいて見える深い緑の葉に、可憐な白い花々はヤケに目についた。雨上がりでモノトーンな光景の中、その白さは妙に目立つ。まるであたしに、何かを忠告するかのように……。
テリハノイバラ の花言葉は『独り善がり』。まるで警告してくれているかのようだ。更に、大股で歩みを速めた。ただ、無心で歩く事に集中した。
その日は朝から雨が降っていた。辺りには霧が立ち込めている。風は、強くない。ほとんど体に感じないくらいだ。一限が休講。朝練無しの今朝、あたしは予定通り、海に向かって歩いている。モヤモヤと明確に表現出来ない感情を抱えている時は、只管歩く。そして海を見る。
これが、あたしにとってベストなやり方だ。
歩く時は出来る限り大股で。腕は軽く曲げてリズムよく。そして早歩きで。只管歩く事に集中する。足の裏が、
しっかりと地に触れている事を意識して。そうやってリズミカルに歩いていると、いつの間にか自分が、地球の一部であるかのように錯覚してくる。さながら歩くリズムは波の音。それは陸の鼓動を刻む音だ。言わば、地球と一体化する感覚に等しい。だからあたしは傘を差さず、合羽を来て歩いている。
……海が見えてきた。沖の方は霧で見えない。いつもの場所に向かう。砂浜は雨を吸って、いつもよりしっとりと重々しい。波は少し荒い。浄化効果抜群に思えた。
岩にシートを敷いて腰をおろす。やはり、周りには誰も居ない。当然だ。平日の午前中。雨が降り、霧まで立ち込めているのだ。
あたしだけだ。あたしだけの、貸切の空間。何という贅沢だろう。大きく深呼吸をした。そして目を閉じ、胸に燻るモヤモヤに集中する。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
地球の鼓動、潮騒のメロディ。いつもより少し荒い。少し雨の音も加わって。湿り気を帯びた音色。しばしそのメロディに、耳を傾ける。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
胸のモヤモヤは、闇の色。モヤモヤ蠢く無数の蛇。
「ヒッ!」
ゾクリとして、思わず悲鳴を上げた。蛇は大嫌いだった。蛇に罪は無いのが、どうしても苦手だった。自分の中に、そのような恐ろしいモノを飼っていたなんて。ショックだ。とても。蛇は『嫉妬』『欺き』の象徴。そんなモノを飼っているたら、モヤモヤして当たり前だ。無数にいるがまだ小さな蛇。大蛇にならないうちに、根こそぎ追い出さねば。再び目を閉じ、胸の中の無数の蛇に意識を集中させた。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
「こんな雨の日に来たのかい?」
突然、背後から柔らかな声が響いた。
「あ、あなたは……」
吃驚して振り返ったあたしの目に飛び込んだのは、
「日曜日に会ったばかりだね。まだ名前を言ってなかったよね。僕の名前は、『ひおき かいと』この間、名乗ろうと思ったんだけど、彼が来ちゃったみたいだからね」
そう言って、彼は笑みを浮かべた。
…何て、透明感のある微笑みだろう…
思わず見惚れてしまうくらい、無邪気な笑顔だった。まるで、生まれたばかりの赤子の微笑みのように無垢だった。そして彼は、差していた藍色の傘をあたしに差し出す。何の抵抗も無く素直に受け取ってしまう程に、それは自然な流れだった。
必然的に彼は雨に濡れてしまうので、受け取った傘を彼に差しかける。彼はデニムパンツのポケットから携帯を取り出すと、何やら文字を打ち始めた。そして私に携帯の画面を見せる。
『日沖 海斗』と書かれており。
「ひおき かいと。皆はカイとかカイトとか呼んでるよ」
と言ってあたしを見つめた。
…緑豊かな森の中、木漏れ日の差し込む茶色の泉…
初めて彼の瞳を見た時、そう感じた。今も、それは同じ印象だ。けれどもふと、
…どこかで見た事がある…ような…
そんな不思議な既成感を覚えた。
「ウェブデザイナーを目指して、この春から専門学校に通ってるんだ」
と彼は続けた。ここまで礼儀正しく名乗っている彼に、名乗らないでいるのは失礼だと思う。そう思ったあたしは
「私は相沢菜々子。この春短大に入学しました。保育士になれたらな、と思っています」
と笑顔で軽く自己紹介をした。彼は嬉しそうに微笑むと
「じゃぁ、きっと同じ歳だね! 菜々ちゃん、て呼んで良いかな?」
と眩しそうにあたしを見つめる。特に断る理由も見つからないので、
「はい、お好きにどうぞ。じゃぁ私は、海斗君、て呼びますね!」
と答えた。彼は本当に嬉しそうに笑って頷いた。きっと、素直な人なのだろう。彼は預けていた傘を受け取ると、あたしの隣に腰をおろした。そしてあたしに傘を差しかける。言わば、相合傘のような感じだ。
…当麻!!…
瞬間的に当麻の顔が浮かび、思わず立ち上がってしまった。こんな時どうしたら良いかまるで分らない。異性の友達も、それほど親しい人は居ない。けれども、付き合っても居ない異性との相合傘は気が引けた。それは恐らくは、時代錯誤な感覚かもしれないけれども。
「ごめん。ちょっと馴れ馴れしかったね。深い意味は無かったんだけど」
と彼は寂しそうに笑った。途端に、自意識過剰が恥ずかしくなる。慌てて
「い、いいえ。すみません、私の方こそ。なんか、その、自意識過剰ってヤツです。こめんなさい!」
と謝罪した。そんなあたしに、一瞬吃驚した眼差しで見つめると、フフフ、と小さく笑う。
「いや、今のは僕の軽率さが悪いんだ。むやみに謝ったらダメだよ。男は益々つけあがる」
とやんわりと窘めた。どう反応して良いのか戸惑う。
「ところで、どうしてこんな雨の中ここに来ていたの?」
と矢継ぎ早に質問してきた。その時突然、
『ピピッピピピッピピピピ…』
にわかに、携帯の目覚ましが鳴る。そろそろ、学校に向かわないと講義に間に合わない時間らしい。
「あ、ごめんなさい。それそろ学校に行かないと……」
「そうか、残念。もっと話したかったけど。また話そう。僕は海が好きで、大雨風の時以外はチョコチョコここにいるから」
と微笑んだ。
「はい、また宜しくお願いします!」
と笑顔で答えると学校に向かうべく、道路に向かって歩き始めた。あたしが道路の反対側に渡るまで、見送ってくれた彼。
「気を付けてね、またね」
と彼は大きく手を振った。
「有難うございます。また」
と、軽く手を振りながら答えた。
気が付いたら、雨は止んでいた。
…ザザザー…ザブン…ザザザザー…ザブン…
心なしか、潮騒のメロディがいつもより長めに聞こえてくる気がした。歩きながらふと、道路脇に咲く小さな白い花に目が止まる。雨に濡れて鮮やかな緑色の葉。枝にはまばらに鍵状の棘。地面に這うようにして生える茎。海辺に咲く花の一つ、『テリハノイバラ 』だ。一重の五枚花で、白い花びらに黄色い雄しべがとても可憐だ。重なり合うようにして幾つも咲いていると、とても華やいで見える。濡れてなお一層、色濃く艶めいて見える深い緑の葉に、可憐な白い花々はヤケに目についた。雨上がりでモノトーンな光景の中、その白さは妙に目立つ。まるであたしに、何かを忠告するかのように……。
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