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第十三話
夏祭り
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夏休みだ。そして夏祭り当日。
沙喜とあたしは、美容室で浴衣を着せて貰い、髪を結い上げ、軽くメイクをして貰っている。色とりどりの浴衣を着た女の子でいっぱいだ。皆生き生きとしていて、美容室内はまるで花の競演のようだ。
それにしても、プロって本当に凄いと改めて思う。あたしの凛々しい顔立ちが、少しは女の子らしく、弱々しく見えるのだもの。
「咲喜、可愛い!」
美容室から出た後、改めて咲喜を見て思わず声をあげる。白地にパステル調のピンク、黄色、オレンジの鞠が描かれた浴衣は、彼女の活発でキュートな魅力を存分に引き立てている。深緑色の帯に、淡い緑のシースルーのリボンがまた可愛らしい。オレンジ色花の髪飾りが、彼女のみずみずしい少女の魅力を際立たせる。
「えへへ、有難う。菜々子も超綺麗!絶対、当麻君惚れ直すよ!」
と咲喜は嬉しそうに笑った。
「あ、有難う……。当麻、どうかなぁ」
思わず照れてしまう。あたしは、手放しで褒められる事に慣れていない。どう反応して良いのか分からず、体が硬直してしまうのだ。つい、否定したくなってしまう。けれども、人間関係を円滑にする為のハウツー本を読んだのだが……。否定は褒めて頂いた方に失礼なので、まずはお礼を言う事。とあった。言われてみれば、なるほどな。と思ったあたしはそれ以来、褒められたらまずお礼を述べる事にしている。けれども、そのお礼もぎこちなくなってしまうのだ…。
あ! 今は楽しむ時間だ! 考えるのはいつでも出来る。当麻と咲喜の彼とは、この美容室近くのカフェで待ち合わせだ。今の時刻は14時を回ったところだ。約束の時間まで後一時間弱。
あたし達は、喫茶店で待つ事にした。
席に案内されてから、咲喜はレモンスカッシュ、あたしはアイスミントティーを頼み、互いの彼に待ち合わせ場所についてLINERをした。
「あ! 彼、少し早めに到着しそうだって!」
嬉しそうに咲喜は言った。彼はすぐに既読になり、返事が来たようだ。当麻はまだ既読にならない……。ほんの少しだけ、不安が過った。
「相沢さん、こんにちは。今日は宜しく」
そう言って、彼は笑顔でやってきた。咲喜が連絡をしてから20分程経った頃だ。彼の名前は『山内陽介』という。咲喜の隣に座り、アイスコーヒーを注文する。
「二人とも可愛いじゃん」
サラリと褒める山内さん。さすが大人だ。
「お前は馬子にも衣装、だけどな」
と、左隣の咲喜の頭を、軽くポンと叩く。
「なによ、もう!」
咲喜はプイっと横を向き、拗ねて見せる。可愛くて仕方ない、と言う表情で彼女を見る彼。拗ねたふりをしながらも、嬉しそうな彼女。
……ご馳走さま……
あたしは心でそう呟く。見ているこちらまで、笑顔になる二人のやりとりだ。
携帯を見る。当麻とのやり取りの画面のままだ。
……まだ、既読にならない……
あたしの胸に、不安という名のシミが浮かび上がる。
「そういえば、駅の改札出た付近で、当麻君を見かけたよ。当日待ち合わせが遅れた時の為に自分の顔を写メ交換しあってたから気付いたんだけどさ。何か、急いでたみたいだけど大丈夫かな?」
……えっ?……
思い出したようにあたしに問いかける山内さん。山内さんと当麻は、もしもの時の為にお互いにラインと顔写真を交換しあっていた。当日何があるかわからないので、待ち合わせ場所でスムーズに対面するためである。
ドクンと、あたしの胸に疑念という名の風が吹く。
「妹さん、萌恵ちゃんだっけ?確か」
山内さんは更に続ける。
……萌恵?…どうして、いきなり?……
「は、はい」
あたしは辛うじてこたえる。
「何か、血相を変えて萌恵! と叫んで妹さんを追いかけて行った感じだったから」
彼は理由を告げた。
……どうして……
ドクン、ドクンと、不安から鼓動が早くなる。
……萌恵と会うなんて、聞いてない……
けれども、必死で笑顔の仮面を被った。
「あら、そうなんですか? どうしたのかな」
何でもないような感じで、彼に応ずる。
……まだ、既読にならない……
…ザザー…ザブン…ザサーザブン…
気持ちを落ち着かせる為、海を思い浮かべる。
…ザザー…ザブン…ザサーザブン…
けれども約束の時間になっても、既読にはならなかった。
沙喜とあたしは、美容室で浴衣を着せて貰い、髪を結い上げ、軽くメイクをして貰っている。色とりどりの浴衣を着た女の子でいっぱいだ。皆生き生きとしていて、美容室内はまるで花の競演のようだ。
それにしても、プロって本当に凄いと改めて思う。あたしの凛々しい顔立ちが、少しは女の子らしく、弱々しく見えるのだもの。
「咲喜、可愛い!」
美容室から出た後、改めて咲喜を見て思わず声をあげる。白地にパステル調のピンク、黄色、オレンジの鞠が描かれた浴衣は、彼女の活発でキュートな魅力を存分に引き立てている。深緑色の帯に、淡い緑のシースルーのリボンがまた可愛らしい。オレンジ色花の髪飾りが、彼女のみずみずしい少女の魅力を際立たせる。
「えへへ、有難う。菜々子も超綺麗!絶対、当麻君惚れ直すよ!」
と咲喜は嬉しそうに笑った。
「あ、有難う……。当麻、どうかなぁ」
思わず照れてしまう。あたしは、手放しで褒められる事に慣れていない。どう反応して良いのか分からず、体が硬直してしまうのだ。つい、否定したくなってしまう。けれども、人間関係を円滑にする為のハウツー本を読んだのだが……。否定は褒めて頂いた方に失礼なので、まずはお礼を言う事。とあった。言われてみれば、なるほどな。と思ったあたしはそれ以来、褒められたらまずお礼を述べる事にしている。けれども、そのお礼もぎこちなくなってしまうのだ…。
あ! 今は楽しむ時間だ! 考えるのはいつでも出来る。当麻と咲喜の彼とは、この美容室近くのカフェで待ち合わせだ。今の時刻は14時を回ったところだ。約束の時間まで後一時間弱。
あたし達は、喫茶店で待つ事にした。
席に案内されてから、咲喜はレモンスカッシュ、あたしはアイスミントティーを頼み、互いの彼に待ち合わせ場所についてLINERをした。
「あ! 彼、少し早めに到着しそうだって!」
嬉しそうに咲喜は言った。彼はすぐに既読になり、返事が来たようだ。当麻はまだ既読にならない……。ほんの少しだけ、不安が過った。
「相沢さん、こんにちは。今日は宜しく」
そう言って、彼は笑顔でやってきた。咲喜が連絡をしてから20分程経った頃だ。彼の名前は『山内陽介』という。咲喜の隣に座り、アイスコーヒーを注文する。
「二人とも可愛いじゃん」
サラリと褒める山内さん。さすが大人だ。
「お前は馬子にも衣装、だけどな」
と、左隣の咲喜の頭を、軽くポンと叩く。
「なによ、もう!」
咲喜はプイっと横を向き、拗ねて見せる。可愛くて仕方ない、と言う表情で彼女を見る彼。拗ねたふりをしながらも、嬉しそうな彼女。
……ご馳走さま……
あたしは心でそう呟く。見ているこちらまで、笑顔になる二人のやりとりだ。
携帯を見る。当麻とのやり取りの画面のままだ。
……まだ、既読にならない……
あたしの胸に、不安という名のシミが浮かび上がる。
「そういえば、駅の改札出た付近で、当麻君を見かけたよ。当日待ち合わせが遅れた時の為に自分の顔を写メ交換しあってたから気付いたんだけどさ。何か、急いでたみたいだけど大丈夫かな?」
……えっ?……
思い出したようにあたしに問いかける山内さん。山内さんと当麻は、もしもの時の為にお互いにラインと顔写真を交換しあっていた。当日何があるかわからないので、待ち合わせ場所でスムーズに対面するためである。
ドクンと、あたしの胸に疑念という名の風が吹く。
「妹さん、萌恵ちゃんだっけ?確か」
山内さんは更に続ける。
……萌恵?…どうして、いきなり?……
「は、はい」
あたしは辛うじてこたえる。
「何か、血相を変えて萌恵! と叫んで妹さんを追いかけて行った感じだったから」
彼は理由を告げた。
……どうして……
ドクン、ドクンと、不安から鼓動が早くなる。
……萌恵と会うなんて、聞いてない……
けれども、必死で笑顔の仮面を被った。
「あら、そうなんですか? どうしたのかな」
何でもないような感じで、彼に応ずる。
……まだ、既読にならない……
…ザザー…ザブン…ザサーザブン…
気持ちを落ち着かせる為、海を思い浮かべる。
…ザザー…ザブン…ザサーザブン…
けれども約束の時間になっても、既読にはならなかった。
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