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第十三話
夏祭りⅡ
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…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
海を思い浮かべ、必死に気持ちを落ち着かせる。時刻は15時05分。まだ、既読にならない。萌恵と何があったのだろう? 二人で会う約束? いつから? 萌恵に地元のお祭りに誘われたけど断る口実が出来た……て、今日の事楽しみにしていたみたいなのに。約束、破るような人じゃないし、遅れる時は必ず連絡が来たのに。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
更に5分経過した。これ以上、咲喜達を待たせるのは申し訳ない。あたしは電話をしてみる事にした。
「ごめん、ちょっと電話してみるね」
二人に断って、外に出る。外は、浴衣を着たカップルや家族連れで賑わって来ていた。
『おかけになった電話は、電波の届かないところにいるか、電源が入っていない為、繋がりません』
……当麻……
電話に応じたのは、冷たく無機質な機械の声だった。
……萌恵と、何があったの?……
愕然としつつ、疑念が湧き起こる。それは赤黒く、醜い感情の波となって、あたしに襲い掛かる。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
慌てて海をイメージする。咲喜達を巻き込む訳にはいかない。波の音に合わせて、懸命に気持ちを落ち着かせる。店内に戻る。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
波をイメージしながら。
「ごめん、当麻は電波の届かないところにいるらしい。繋がらなかった。ラインも既読にすらならないし。その内連絡来ると思う。後から追いかけるわ。先に行って」
努めて明るく、何でも無い事のようにして伝えた。二人は心配そうに顔を見合わせ、頷き合うと
「待つよ、先に行ったって心配で楽しめないしさ」
と咲喜は言うと
「ね!」
と隣の彼に相槌を求める。
「あぁ、勿論。…とりあえず、なんか軽く頼もうよ」
と山内さんはメニュー表を開く。
「やっぱフライドポテトじゃね?」
すぐに咲喜が答える。
「露店にもありそうじゃん」
すかさず突っ込む山内さん。結局、野菜サラダを大盛りで頼む事にした。
「有難う」
あたしは二人に頭を下げる。
「あんまり早く行っても暑いし、埃だらけになるし」
「汗だくにんるだけだよな」
二人は声を揃えて笑う。有り難かった。二人の気遣いが。時刻は15時13分。まだ、既読にならない。更に5分が経過した。まだ既読にならない。
「お待たせ致しました」
頼んだ野菜サラダが来る。小皿が3つついてくる。あたしはトングを取ると、野菜サラダを取り分け始めた。何かしていないと、不安に押し潰されてしまいそうだ。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
必死に潮騒のメロディを思い描く。
「夏祭りと言えば林檎飴、杏飴」
「綿アメ、焼そば」
……モエトフタリデナニヲシテルノ……
拭っても拭っても、胸の奥から湧き出てくる赤黒い感情。赤は血の色だ。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
それを、イメージのナイフで抉り取る。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
地球の鼓動にその醜く腐敗した塊を載せて、浄化して貰うのだ。
「水風船、チョコバナナ」
何でもないように笑みを浮かべ、二人の会話に加わる。さり気なく携帯画面を見ながら。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
更に5分が経過した頃、漸く既読になった。バイブ音と共に、携帯画面に『当麻』の名前が映し出される。ずっと、待ち望んでいた瞬間。同時に恐れの感情が、胸の片隅にしこりを作る。
「当麻からだ。電話して来るね」
二人に声をかけ、急いで外に向かいつつ携帯画面をタップし、右耳を当てる。
「もしもし、当麻?今どこ?」
待ちきれずに、話し出す。
『ゴメン、部活で先輩にしごかれてた』
……ウソツキ、ドウシテウソヲイウノ?……
当麻の開口一番は、明らかな嘘からだった。
『ちょっと遅れそうだけど、後から行くから。先に行ってて。ゴメンな。……山内さんに代わって貰えるか?』
いつもハキハキ話す当麻。電話越しの声は酷く歯切れの悪いものだった。
……ウソツキ。モエトフタリデイルクセ二……
そう叫びたい気持ちを押し殺し
「わかった。気をつけて来てね。山内さんに代わるね」
と素直に答えつつ、席へと戻る。心配そうに待つ二人。
「当麻が、山内さんに代わって欲しいそうです」
と言って彼に携帯を差し出した。山内さんは受け取ると、そのまま右耳に当てた。
「もしもし、代わりました。山内です」
当麻と話し始めた。二言三言交わし、
「わかったよ。着いたら連絡して」
と言って私に携帯を差し出した。軽く頭を下げ、携帯を右耳にあてる。
「当麻?」
『必ず行くから、山内さん達と先に楽しんでてな……ゴメン』
プツッ…ツーツーツー…
一方的に切れた。冷酷で無機質な機械音が流れる。
「そろそろ行こうか」
山内さんが声をかける。二人の邪魔をする訳にいかない。二人はあたしを気遣って、心から祭りを楽しめない。
「私はここで少し待ちます。先に……」
「一緒に行こう!」
「一緒に行くよ!」
山内さんと咲喜が同時に遮る。
「ダメだよ。当麻君に頼まれたし。一人にしといて変なヤツに絡まれたら大変だ。一緒に行こう。皆で当麻君を待とう」
山内さんは、ゆっくりと説得するようにして話した。
「あたし達に、気遣いは無用よ」
咲喜はそう言って、笑みを浮かべた。
海を思い浮かべ、必死に気持ちを落ち着かせる。時刻は15時05分。まだ、既読にならない。萌恵と何があったのだろう? 二人で会う約束? いつから? 萌恵に地元のお祭りに誘われたけど断る口実が出来た……て、今日の事楽しみにしていたみたいなのに。約束、破るような人じゃないし、遅れる時は必ず連絡が来たのに。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
更に5分経過した。これ以上、咲喜達を待たせるのは申し訳ない。あたしは電話をしてみる事にした。
「ごめん、ちょっと電話してみるね」
二人に断って、外に出る。外は、浴衣を着たカップルや家族連れで賑わって来ていた。
『おかけになった電話は、電波の届かないところにいるか、電源が入っていない為、繋がりません』
……当麻……
電話に応じたのは、冷たく無機質な機械の声だった。
……萌恵と、何があったの?……
愕然としつつ、疑念が湧き起こる。それは赤黒く、醜い感情の波となって、あたしに襲い掛かる。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
慌てて海をイメージする。咲喜達を巻き込む訳にはいかない。波の音に合わせて、懸命に気持ちを落ち着かせる。店内に戻る。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
波をイメージしながら。
「ごめん、当麻は電波の届かないところにいるらしい。繋がらなかった。ラインも既読にすらならないし。その内連絡来ると思う。後から追いかけるわ。先に行って」
努めて明るく、何でも無い事のようにして伝えた。二人は心配そうに顔を見合わせ、頷き合うと
「待つよ、先に行ったって心配で楽しめないしさ」
と咲喜は言うと
「ね!」
と隣の彼に相槌を求める。
「あぁ、勿論。…とりあえず、なんか軽く頼もうよ」
と山内さんはメニュー表を開く。
「やっぱフライドポテトじゃね?」
すぐに咲喜が答える。
「露店にもありそうじゃん」
すかさず突っ込む山内さん。結局、野菜サラダを大盛りで頼む事にした。
「有難う」
あたしは二人に頭を下げる。
「あんまり早く行っても暑いし、埃だらけになるし」
「汗だくにんるだけだよな」
二人は声を揃えて笑う。有り難かった。二人の気遣いが。時刻は15時13分。まだ、既読にならない。更に5分が経過した。まだ既読にならない。
「お待たせ致しました」
頼んだ野菜サラダが来る。小皿が3つついてくる。あたしはトングを取ると、野菜サラダを取り分け始めた。何かしていないと、不安に押し潰されてしまいそうだ。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
必死に潮騒のメロディを思い描く。
「夏祭りと言えば林檎飴、杏飴」
「綿アメ、焼そば」
……モエトフタリデナニヲシテルノ……
拭っても拭っても、胸の奥から湧き出てくる赤黒い感情。赤は血の色だ。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
それを、イメージのナイフで抉り取る。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
地球の鼓動にその醜く腐敗した塊を載せて、浄化して貰うのだ。
「水風船、チョコバナナ」
何でもないように笑みを浮かべ、二人の会話に加わる。さり気なく携帯画面を見ながら。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
更に5分が経過した頃、漸く既読になった。バイブ音と共に、携帯画面に『当麻』の名前が映し出される。ずっと、待ち望んでいた瞬間。同時に恐れの感情が、胸の片隅にしこりを作る。
「当麻からだ。電話して来るね」
二人に声をかけ、急いで外に向かいつつ携帯画面をタップし、右耳を当てる。
「もしもし、当麻?今どこ?」
待ちきれずに、話し出す。
『ゴメン、部活で先輩にしごかれてた』
……ウソツキ、ドウシテウソヲイウノ?……
当麻の開口一番は、明らかな嘘からだった。
『ちょっと遅れそうだけど、後から行くから。先に行ってて。ゴメンな。……山内さんに代わって貰えるか?』
いつもハキハキ話す当麻。電話越しの声は酷く歯切れの悪いものだった。
……ウソツキ。モエトフタリデイルクセ二……
そう叫びたい気持ちを押し殺し
「わかった。気をつけて来てね。山内さんに代わるね」
と素直に答えつつ、席へと戻る。心配そうに待つ二人。
「当麻が、山内さんに代わって欲しいそうです」
と言って彼に携帯を差し出した。山内さんは受け取ると、そのまま右耳に当てた。
「もしもし、代わりました。山内です」
当麻と話し始めた。二言三言交わし、
「わかったよ。着いたら連絡して」
と言って私に携帯を差し出した。軽く頭を下げ、携帯を右耳にあてる。
「当麻?」
『必ず行くから、山内さん達と先に楽しんでてな……ゴメン』
プツッ…ツーツーツー…
一方的に切れた。冷酷で無機質な機械音が流れる。
「そろそろ行こうか」
山内さんが声をかける。二人の邪魔をする訳にいかない。二人はあたしを気遣って、心から祭りを楽しめない。
「私はここで少し待ちます。先に……」
「一緒に行こう!」
「一緒に行くよ!」
山内さんと咲喜が同時に遮る。
「ダメだよ。当麻君に頼まれたし。一人にしといて変なヤツに絡まれたら大変だ。一緒に行こう。皆で当麻君を待とう」
山内さんは、ゆっくりと説得するようにして話した。
「あたし達に、気遣いは無用よ」
咲喜はそう言って、笑みを浮かべた。
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