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第十三話
夏祭りⅢ
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色とりどりの花が咲き乱れる。色とりどりの花。即ち浴衣だ。浴衣、浴衣、浴衣の波だ。ざわめきと笑い声の音の波が押し寄せる。まるで浴衣の海のようだ。浴衣とざわめきと笑い声の波が交互に訪れ、あたしたちはその中を歩く。
皆、楽しそうだ。だからあたしも、楽しそうな仮面を被る。 混雑しているし、とりあえず何か買って座って食べよう、と言うことになった。本当は、食欲なんか湧かない。でも楽しそうにしなければ。これ以上、二人に心配掛ける訳にいかない。
咲喜は焼きイカ、山内さんは焼きそば。あたしは冷やしキュウリを買ってみる。冷やしキュウリなら、するりと喉を通りそうだ。ところどころに設けられた椅子とテーブルが置かれた休憩場。あたしたちはそこに座って、
それぞれが買った物を食べることにした。思いの外、空席が多くすぐに座れた。巾着袋にしまってある携帯。
着信でも受信でも、バイブと音が鳴るように設定してある。でも、未だにその機能を示さない。それは大人しく眠ったままだ。
……当麻……
彼は今、萌恵とどこで何をしているのだろう。浴衣姿の萌恵は、さぞかし可愛らしいに違いない。花も恥じらうお年頃だ。色香も加わって、更に……
「あれ?相沢さん?」
斜め右前方から、思いがけない声が響き思考を中断する。
「玉岡先輩……」
声の主の名を呼んだ。先輩は淡いブルーの地に紺色のストライプの浴衣を着ていた。色白でも色黒でもない中間的な肌の色、細身で筋肉質の高身長の彼に、よく似合っている。黒褐色の短髪に、アーモンド型の優しい目をした美形故に、浴衣が妙にサマになっていた。玉岡先輩は、咲喜と山内さんに軽く頭を下げるとそっと私に近づいた。
「……当麻君は?」
遠慮がちに聞いてくる。
「それが、色々立て込んでいるみたいでまだ来て居ないんです。遅れて来る、て話しなのですが。もう一時間以上経ってるんですよね」
私は努めて何でもない事のように笑みを浮かべて答えた。
「……そうなんだ」
何と反応すべきか迷っている様子の先輩。ここは気を遣わせないように明るく自然に振る舞わないと!
「先輩は待ち合わせですか?」
すると彼は少し困ったような表情を見せ、
「それがさぁ。友達と来てたんだけど。偶然、ソイツが前から好きな女の子が一人で祭りに来ててさ。なんだか寂しそうだから、ソイツに声をかけさせたんだ。そしたらその子、彼に振られたばっかりだったらしくて。一人じゃ危ないから、とかなんとか、ソイツはチャンス!とばかりにその子についていっちゃったんだよ。お陰で、寂しい一人祭りさ」
と照れたように笑った。
「先輩が、後押ししたんじゃないですか?その友達の」
と切り返す。優しい人だから。
「まぁね。このチャンスをモノにできるかどうかは、彼次第だけどね」
と微笑んだ。
「良かったら、一緒にどうですか?これから花火を見てから帰るんですけど」
あたし達のやり取りを見ていた咲喜は、唐突に言い出した。
「お、おい……」
小声で遠慮がちに、山内さんは咲喜の右腕を軽く突っつく。
「いいじゃない。当麻君には知らせておけばいいし。大勢の方が楽しいもの」
何故か少しムキになる咲喜。
「いや、でも……」
遠慮する先輩。私は咲喜につられるようにして
「先輩も、良かったら!」
と笑顔で応じていた。何かに縋っていないと、不安に押しつぶされそうだった。そして心のどこかに、
嘘をついてまで、萌恵と二人でいる当麻への当てつけもあったかもしれない。あたし達は、4人で花火大会の会場に向かう事になった。
『偶然、玉岡先輩と一緒になったよ。咲喜と山内さん4人で、花火大会の会場に行くね。なるべく早く来てね』
と当麻にLINERをした。会場につき、席を確保。30分経過しても、既読にはならなかった。
皆、楽しそうだ。だからあたしも、楽しそうな仮面を被る。 混雑しているし、とりあえず何か買って座って食べよう、と言うことになった。本当は、食欲なんか湧かない。でも楽しそうにしなければ。これ以上、二人に心配掛ける訳にいかない。
咲喜は焼きイカ、山内さんは焼きそば。あたしは冷やしキュウリを買ってみる。冷やしキュウリなら、するりと喉を通りそうだ。ところどころに設けられた椅子とテーブルが置かれた休憩場。あたしたちはそこに座って、
それぞれが買った物を食べることにした。思いの外、空席が多くすぐに座れた。巾着袋にしまってある携帯。
着信でも受信でも、バイブと音が鳴るように設定してある。でも、未だにその機能を示さない。それは大人しく眠ったままだ。
……当麻……
彼は今、萌恵とどこで何をしているのだろう。浴衣姿の萌恵は、さぞかし可愛らしいに違いない。花も恥じらうお年頃だ。色香も加わって、更に……
「あれ?相沢さん?」
斜め右前方から、思いがけない声が響き思考を中断する。
「玉岡先輩……」
声の主の名を呼んだ。先輩は淡いブルーの地に紺色のストライプの浴衣を着ていた。色白でも色黒でもない中間的な肌の色、細身で筋肉質の高身長の彼に、よく似合っている。黒褐色の短髪に、アーモンド型の優しい目をした美形故に、浴衣が妙にサマになっていた。玉岡先輩は、咲喜と山内さんに軽く頭を下げるとそっと私に近づいた。
「……当麻君は?」
遠慮がちに聞いてくる。
「それが、色々立て込んでいるみたいでまだ来て居ないんです。遅れて来る、て話しなのですが。もう一時間以上経ってるんですよね」
私は努めて何でもない事のように笑みを浮かべて答えた。
「……そうなんだ」
何と反応すべきか迷っている様子の先輩。ここは気を遣わせないように明るく自然に振る舞わないと!
「先輩は待ち合わせですか?」
すると彼は少し困ったような表情を見せ、
「それがさぁ。友達と来てたんだけど。偶然、ソイツが前から好きな女の子が一人で祭りに来ててさ。なんだか寂しそうだから、ソイツに声をかけさせたんだ。そしたらその子、彼に振られたばっかりだったらしくて。一人じゃ危ないから、とかなんとか、ソイツはチャンス!とばかりにその子についていっちゃったんだよ。お陰で、寂しい一人祭りさ」
と照れたように笑った。
「先輩が、後押ししたんじゃないですか?その友達の」
と切り返す。優しい人だから。
「まぁね。このチャンスをモノにできるかどうかは、彼次第だけどね」
と微笑んだ。
「良かったら、一緒にどうですか?これから花火を見てから帰るんですけど」
あたし達のやり取りを見ていた咲喜は、唐突に言い出した。
「お、おい……」
小声で遠慮がちに、山内さんは咲喜の右腕を軽く突っつく。
「いいじゃない。当麻君には知らせておけばいいし。大勢の方が楽しいもの」
何故か少しムキになる咲喜。
「いや、でも……」
遠慮する先輩。私は咲喜につられるようにして
「先輩も、良かったら!」
と笑顔で応じていた。何かに縋っていないと、不安に押しつぶされそうだった。そして心のどこかに、
嘘をついてまで、萌恵と二人でいる当麻への当てつけもあったかもしれない。あたし達は、4人で花火大会の会場に向かう事になった。
『偶然、玉岡先輩と一緒になったよ。咲喜と山内さん4人で、花火大会の会場に行くね。なるべく早く来てね』
と当麻にLINERをした。会場につき、席を確保。30分経過しても、既読にはならなかった。
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