19 / 37
第十三話
夏祭りⅤ
しおりを挟む
萌恵は、相変わらず当麻の左腕に抱き付いたままだ。そしてあたしに、挑戦的な眼差しを向ける。
「遅くなってゴメン。萌恵が、彼とフラれた。死にたい、てLINERがあったから、話を聞いてたんだ。連絡出来なくてゴメン」
……ウソダ……
当麻はゆっくりと説明した。気のせいか、あたしを見つめる眼差しが冷たい。
……ウソダ、モエハトウマノキヲヒクタメニウソヲエンジタ……
そう直感した。
「……花火、あと少しで終わるみたい。せっかく皆集まったんだし、皆で見ましょ! 萌恵ちゃんだっけ。私は咲喜、彼は山内、私の彼よ。こっちへいらっしゃい」
咲喜は気まずい空気を変え、あたしと当麻が話せるよう、気をきかせてくれる。
「俺は玉岡君と話したいな」
と山内さん。
「話しましょう」
とすぐに応じる玉岡先輩。
「相沢萌恵です。宜しくお願いします。突然押しかけてごめんなさい」
萌恵はぺこりと頭を下げ、恥ずかしそうに微笑んだ。白い木槿が綻ぶみたいに、可愛い笑顔だ。白を基調にした青と水色、藤色の朝顔が描かれた浴衣が萌恵の儚げな美しさをより引き立てる。萌恵は素直に咲喜の隣に座った。当麻から離れる時、チラりとあたしに挑戦的な眼差しを向けて。それには気づかないふりをして、あたしは当麻と向き合った。
「とにかく、ゴメン。今夜、話そう」
当麻の言葉に無言で頷いた。心なしか、当麻の視線が鋭く感じる。敢えて気が付かないふりをして
「……萌恵、送って行かないと。それか、父に迎えに来させるか……」
腕時計を見ながら、大切な事を切り出す。当麻一人で送って、と萌恵が駄々をこねるのが分かっていながら。当麻も腕時計を見る。
「そろそろ送って行かないと、電車が混むな。迎えに来て貰うなら、もう電話しないと」
と淡々と伝えて来た。花火を見ている山内さんと玉岡先輩の後ろを周り、萌恵の右隣に回り込むと、腰を屈めて萌恵の肩にそっと触れた。
「……萌恵、遅くなると電車混むし、送ってくわ。それか、お父さんにここの最寄り駅に迎えに来て貰う?」
と選択肢を投げかける。萌恵は一瞬にして、不満げな表情を浮かべ
「萌恵、当麻だけに送って貰うか、当麻のお家に二人だけでお泊まりがいい」
と答えた。予想通りだ。えっ? と言う眼差しで萌恵を見つめる咲喜。恐らく山内さんと先輩もそうだろう。
「そりゃダメだよ、当麻君が未成年者拉致監禁罪になっちゃう」
会話を目の当たりにしていた山内さんが、お道化ながらもきっぱりした口調で諭した。
「迎えに来て貰えるなら、それが一番安心かな」
にこやかに、山内さんに同調する玉岡先輩。萌恵は瞬時に、パッと花が綻ぶような笑顔を向け、
「うふふ、まさか。冗談ですよ。萌恵、迎えに来て貰うよう電話しまーす」
と言うと、巾着から携帯を取り出し、その場で自宅に連絡をした。父はすぐに応じ、最寄り駅まで迎えに来るそうだ。相変わらず、萌恵には甘い父親だ。あたしたちは、全員で萌恵を最寄り駅まで送ることになった。父親はすぐに駅ロータリーにやってきた。自宅からそう遠くないのと、まだラッシュ時になっていない為、早かったのだろう。萌恵は父親の車に乗り込む瞬間、私にチラリと挑戦的な眼差しを向け、笑顔で皆に別れを告げた。
その後あたし達は、ファミレスで少しお茶をしてから帰ることとなった。
「今日はすみませんでした」
全員の飲み物が届き、落ち着いてから当麻は謝罪の言葉を口にし、頭を下げる。
「すみませんでした」
あたしも続いて謝罪し、頭を下げた。
「やだ、謝る程の事じゃ無いわよ」
「そうだよ、気にしないで」
と咲喜と山内さん。
「謝らなくても良いけど、ちゃんと話し合った方が良いね。妹さんの事」
と玉岡先輩は当麻を見つめた。いつも柔らかな笑みを絶やさない先輩にしては珍しく、冷ややかに当麻を見つめている。当麻は真っ直ぐにその視線を受け止め、
「ええ、そのつもりです」
とハッキリと答えた。
「……差し出がましいようだけど……その、ちょっと萌恵ちゃん、 当麻君にベタベタし過ぎかも…」
……デモ、トウマモモエガ……
咲喜は遠慮がちに口を開く。
「あの年頃の子は難しいけど……。でも、だからこそ一線を引く必要があるんじゃないかな?」
と山内さんはやんわりと意見する。あたしはただ、彼らに頭を下げるしか出来なかった。何か話したら、不安から泣き出してしまいそうだった。
……トウマモモエガスキナノカモ……
打ち消しても打ち消しても、そんな気持ちが頭をもたげる。
「そうですよね。わかりました」
当麻は至って冷静に応じた。その淡々とした態度が、あたしの不安に拍車をかけた。
「遅くなってゴメン。萌恵が、彼とフラれた。死にたい、てLINERがあったから、話を聞いてたんだ。連絡出来なくてゴメン」
……ウソダ……
当麻はゆっくりと説明した。気のせいか、あたしを見つめる眼差しが冷たい。
……ウソダ、モエハトウマノキヲヒクタメニウソヲエンジタ……
そう直感した。
「……花火、あと少しで終わるみたい。せっかく皆集まったんだし、皆で見ましょ! 萌恵ちゃんだっけ。私は咲喜、彼は山内、私の彼よ。こっちへいらっしゃい」
咲喜は気まずい空気を変え、あたしと当麻が話せるよう、気をきかせてくれる。
「俺は玉岡君と話したいな」
と山内さん。
「話しましょう」
とすぐに応じる玉岡先輩。
「相沢萌恵です。宜しくお願いします。突然押しかけてごめんなさい」
萌恵はぺこりと頭を下げ、恥ずかしそうに微笑んだ。白い木槿が綻ぶみたいに、可愛い笑顔だ。白を基調にした青と水色、藤色の朝顔が描かれた浴衣が萌恵の儚げな美しさをより引き立てる。萌恵は素直に咲喜の隣に座った。当麻から離れる時、チラりとあたしに挑戦的な眼差しを向けて。それには気づかないふりをして、あたしは当麻と向き合った。
「とにかく、ゴメン。今夜、話そう」
当麻の言葉に無言で頷いた。心なしか、当麻の視線が鋭く感じる。敢えて気が付かないふりをして
「……萌恵、送って行かないと。それか、父に迎えに来させるか……」
腕時計を見ながら、大切な事を切り出す。当麻一人で送って、と萌恵が駄々をこねるのが分かっていながら。当麻も腕時計を見る。
「そろそろ送って行かないと、電車が混むな。迎えに来て貰うなら、もう電話しないと」
と淡々と伝えて来た。花火を見ている山内さんと玉岡先輩の後ろを周り、萌恵の右隣に回り込むと、腰を屈めて萌恵の肩にそっと触れた。
「……萌恵、遅くなると電車混むし、送ってくわ。それか、お父さんにここの最寄り駅に迎えに来て貰う?」
と選択肢を投げかける。萌恵は一瞬にして、不満げな表情を浮かべ
「萌恵、当麻だけに送って貰うか、当麻のお家に二人だけでお泊まりがいい」
と答えた。予想通りだ。えっ? と言う眼差しで萌恵を見つめる咲喜。恐らく山内さんと先輩もそうだろう。
「そりゃダメだよ、当麻君が未成年者拉致監禁罪になっちゃう」
会話を目の当たりにしていた山内さんが、お道化ながらもきっぱりした口調で諭した。
「迎えに来て貰えるなら、それが一番安心かな」
にこやかに、山内さんに同調する玉岡先輩。萌恵は瞬時に、パッと花が綻ぶような笑顔を向け、
「うふふ、まさか。冗談ですよ。萌恵、迎えに来て貰うよう電話しまーす」
と言うと、巾着から携帯を取り出し、その場で自宅に連絡をした。父はすぐに応じ、最寄り駅まで迎えに来るそうだ。相変わらず、萌恵には甘い父親だ。あたしたちは、全員で萌恵を最寄り駅まで送ることになった。父親はすぐに駅ロータリーにやってきた。自宅からそう遠くないのと、まだラッシュ時になっていない為、早かったのだろう。萌恵は父親の車に乗り込む瞬間、私にチラリと挑戦的な眼差しを向け、笑顔で皆に別れを告げた。
その後あたし達は、ファミレスで少しお茶をしてから帰ることとなった。
「今日はすみませんでした」
全員の飲み物が届き、落ち着いてから当麻は謝罪の言葉を口にし、頭を下げる。
「すみませんでした」
あたしも続いて謝罪し、頭を下げた。
「やだ、謝る程の事じゃ無いわよ」
「そうだよ、気にしないで」
と咲喜と山内さん。
「謝らなくても良いけど、ちゃんと話し合った方が良いね。妹さんの事」
と玉岡先輩は当麻を見つめた。いつも柔らかな笑みを絶やさない先輩にしては珍しく、冷ややかに当麻を見つめている。当麻は真っ直ぐにその視線を受け止め、
「ええ、そのつもりです」
とハッキリと答えた。
「……差し出がましいようだけど……その、ちょっと萌恵ちゃん、 当麻君にベタベタし過ぎかも…」
……デモ、トウマモモエガ……
咲喜は遠慮がちに口を開く。
「あの年頃の子は難しいけど……。でも、だからこそ一線を引く必要があるんじゃないかな?」
と山内さんはやんわりと意見する。あたしはただ、彼らに頭を下げるしか出来なかった。何か話したら、不安から泣き出してしまいそうだった。
……トウマモモエガスキナノカモ……
打ち消しても打ち消しても、そんな気持ちが頭をもたげる。
「そうですよね。わかりました」
当麻は至って冷静に応じた。その淡々とした態度が、あたしの不安に拍車をかけた。
0
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
紙の上の空
中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。
容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。
欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。
血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。
公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる