海を見ていた「潮騒のメロディ」

大和撫子

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第十三話

夏祭りⅤ

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 萌恵は、相変わらず当麻の左腕に抱き付いたままだ。そしてあたしに、挑戦的な眼差しを向ける。

「遅くなってゴメン。萌恵が、彼とフラれた。死にたい、てLINERがあったから、話を聞いてたんだ。連絡出来なくてゴメン」

……ウソダ……

 当麻はゆっくりと説明した。気のせいか、あたしを見つめる眼差しが冷たい。

……ウソダ、モエハトウマノキヲヒクタメニウソヲエンジタ……

 そう直感した。

「……花火、あと少しで終わるみたい。せっかく皆集まったんだし、皆で見ましょ! 萌恵ちゃんだっけ。私は咲喜、彼は山内、私の彼よ。こっちへいらっしゃい」

 咲喜は気まずい空気を変え、あたしと当麻が話せるよう、気をきかせてくれる。

「俺は玉岡君と話したいな」

 と山内さん。

「話しましょう」

 とすぐに応じる玉岡先輩。

「相沢萌恵です。宜しくお願いします。突然押しかけてごめんなさい」

 萌恵はぺこりと頭を下げ、恥ずかしそうに微笑んだ。白い木槿むくげが綻ぶみたいに、可愛い笑顔だ。白を基調にした青と水色、藤色の朝顔が描かれた浴衣が萌恵の儚げな美しさをより引き立てる。萌恵は素直に咲喜の隣に座った。当麻から離れる時、チラりとあたしに挑戦的な眼差しを向けて。それには気づかないふりをして、あたしは当麻と向き合った。

「とにかく、ゴメン。今夜、話そう」

 当麻の言葉に無言で頷いた。心なしか、当麻の視線が鋭く感じる。敢えて気が付かないふりをして

「……萌恵、送って行かないと。それか、父に迎えに来させるか……」

 腕時計を見ながら、大切な事を切り出す。当麻一人で送って、と萌恵が駄々をこねるのが分かっていながら。当麻も腕時計を見る。

「そろそろ送って行かないと、電車が混むな。迎えに来て貰うなら、もう電話しないと」

 と淡々と伝えて来た。花火を見ている山内さんと玉岡先輩の後ろを周り、萌恵の右隣に回り込むと、腰を屈めて萌恵の肩にそっと触れた。

「……萌恵、遅くなると電車混むし、送ってくわ。それか、お父さんにここの最寄り駅に迎えに来て貰う?」

 と選択肢を投げかける。萌恵は一瞬にして、不満げな表情を浮かべ

「萌恵、当麻だけに送って貰うか、当麻のお家に二人だけでお泊まりがいい」

 と答えた。予想通りだ。えっ? と言う眼差しで萌恵を見つめる咲喜。恐らく山内さんと先輩もそうだろう。

「そりゃダメだよ、当麻君が未成年者拉致監禁罪になっちゃう」

 会話を目の当たりにしていた山内さんが、お道化ながらもきっぱりした口調で諭した。

「迎えに来て貰えるなら、それが一番安心かな」

 にこやかに、山内さんに同調する玉岡先輩。萌恵は瞬時に、パッと花が綻ぶような笑顔を向け、

「うふふ、まさか。冗談ですよ。萌恵、迎えに来て貰うよう電話しまーす」

 と言うと、巾着から携帯を取り出し、その場で自宅に連絡をした。父はすぐに応じ、最寄り駅まで迎えに来るそうだ。相変わらず、萌恵には甘い父親だ。あたしたちは、全員で萌恵を最寄り駅まで送ることになった。父親はすぐに駅ロータリーにやってきた。自宅からそう遠くないのと、まだラッシュ時になっていない為、早かったのだろう。萌恵は父親の車に乗り込む瞬間、私にチラリと挑戦的な眼差しを向け、笑顔で皆に別れを告げた。


 その後あたし達は、ファミレスで少しお茶をしてから帰ることとなった。


「今日はすみませんでした」

 全員の飲み物が届き、落ち着いてから当麻は謝罪の言葉を口にし、頭を下げる。

「すみませんでした」

 あたしも続いて謝罪し、頭を下げた。

「やだ、謝る程の事じゃ無いわよ」
「そうだよ、気にしないで」

 と咲喜と山内さん。

「謝らなくても良いけど、ちゃんと話し合った方が良いね。妹さんの事」

 と玉岡先輩は当麻を見つめた。いつも柔らかな笑みを絶やさない先輩にしては珍しく、冷ややかに当麻を見つめている。当麻は真っ直ぐにその視線を受け止め、

「ええ、そのつもりです」

 とハッキリと答えた。

「……差し出がましいようだけど……その、ちょっと萌恵ちゃん、 当麻君にベタベタし過ぎかも…」

……デモ、トウマモモエガ……

 咲喜は遠慮がちに口を開く。

「あの年頃の子は難しいけど……。でも、だからこそ一線を引く必要があるんじゃないかな?」

 と山内さんはやんわりと意見する。あたしはただ、彼らに頭を下げるしか出来なかった。何か話したら、不安から泣き出してしまいそうだった。

……トウマモモエガスキナノカモ……

 打ち消しても打ち消しても、そんな気持ちが頭をもたげる。

「そうですよね。わかりました」

 当麻は至って冷静に応じた。その淡々とした態度が、あたしの不安に拍車をかけた。

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