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第二十話
決断と再出発Ⅳ
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「え?」
何の事か分からなくて聞き返す。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
彼はあたしを見つめた。
「色々……考えてみたら、俺は随分と萌恵に曖昧な態度を取ってきたし。恐らく他の女子達にもそうなんだ。俺にそのつもりは無くても、勘違いされる言動をしてきたんだと思う」
声のトーンを落とし、淡々と語る当麻。素直に疑問を口にしてみよう。もう、変に気を回すのは辞めないと。
「どうしてそう思ったの?」
「萌恵がさ、友達の姉さんが俺と同じクラスで、お前の噂の話、したろ?」
……なるほど、それか……
納得して頷く。
「帰って色々、相手の立場になって考えてみたんだ。俺はとんでもない優柔不断でチャラい男だったんだな」
困ったように笑った。あたしは思わず吹き出してしまった。怪訝そうに見る彼。今のはあたしが無神経だった。
親しき中にも礼儀あり。自分軸と自己中心的は別モノだ。
「ごめんごめん。当麻がさ、相手の立場にって言ったから、ついね、頭の中で相手の女子になった当麻を想像しちゃってね」
と正直に説明する。
「アハハ、まぁな」
と笑った。この笑顔、好きだ。真っ直ぐで飾らない。少年みたいな笑顔。今まで聞きたくても聞けなかった事を聞いてみる。
「当麻は、萌恵が好きなんだ。気付いてないだけで。……て。あたし、ずっと思ってきた。それでも、怖くて聞けなかった。当麻が好きだったから」
話していく内に、喉の奥がツーンと痛くなって。涙が溢れてきた。驚いたように大きく目を見開き、あたしを見つめる彼。
「なんでそんな事?」
本当にびっくりしている。こういうとこ、天然なんだな。そして右手を伸ばして、あたしの頭を撫でた。
「萌恵の事、とっても優しい目で見るから。あたし、そんな風に見つめて貰った事、なかったから……」
涙が堰を切ったように流れた。聞きながら、頭を撫で続ける彼。そしてあたしが何を言おうとしているのか、必死で探っているみたいだった。そして、あぁ、と少し照れたように笑う。どういう事だろう? 胸に不安が過る。
「あー、なんだかさー。その、例えば、例えば! だぞ!」
彼は少し顔を赤くして、念を押す。なんだかわからないけど、例えばなのか、と頷くあたし。
「その、なんだ、お前と結婚したら、だ。萌恵が俺の義理の妹になる訳じゃん。可愛い妹が出来るんだなぁ。
て妄想……が走ったかも、というか。俺、一人っ子だからさ」
真っ赤になった当麻。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
あんなに不安に思って、色々心配していた事の真相は、とてもシンプルなものだった。
「そっか、安心したよ」
涙を拭いて、彼に笑みを見せた。彼は頭を撫でていた手を肩に移動させ、そのまま胸に引き寄せた。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
地球の鼓動と、当麻の鼓動が溶け合って潮騒のメロディを奏でる。彼の腕の感触、引き締まった胸におさまる安心感。当麻と付き合って初めて感じる、安定した感情だった。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
潮騒のメロディにのって、あたしも正直に言おう。
「あのね、当麻。今回萌恵との話し合いで、改めて当麻ってカッコイイな。好きだな。て惚れ直したよ」
彼は照れたように目を伏せた。今、ここで言わないと!
「それでね、当麻。あたしたち、別れよう」
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
彼はあたしを解放すると、ビックリしたようにあたしを見る。それはそうだ。突然過ぎるもの。
「は? 別れる? 何でだよ?」
寝耳に水の様子の彼。だけど実は、ずっと考えていた事だったのだ。
「あのね、当麻の事大好きだよ。ずっとこのまま一緒に、て思う」
「じゃぁ、なんで???」
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
前から考えていた事、潮騒のメロディに乗せて話そう。
「あたし、今日帰るんだ。もうほとんど実家には帰って来ないと思う。両親と萌恵の事で話しあったんだけど、分かり合えなかった」
「……何となく、わかるさ。異常なくらい、萌恵を溺愛してるから」
……第三者にもわかるくらいだったのか……
「それでね、あたし。早く自立したいの。卒業したらすぐに就職したい。もう来月保育実習で、短大って短期間で凝縮されるから。これからものすごく忙しくなるの。あたしは不器用だから。同時進行は出来なくて。今はね、勉強と就活に専念したいの」
……言えた!……
あたしは自分を褒めてあげたい。
…ザザ―…ザブン…ザザー…ザブン…
しばらくあたしを見つめ続ける彼。ここから先の答えは、彼に委ねよう。やがて彼は微かなため息と共にこう切り出した。
「……お前、言い出したら聞かないからな……。それなら別れるんじゃなくて、一旦お休み。就活したら再開しよう、これでいいじゃないか」
……有難う、当麻……
「そうしたいんだけどさ。あたし、当麻を縛りつけたくないんだ。もしかしたら、当麻には色んなチャンスがあるかもしれないのに」
他の色んなチャンス。他の女性との恋愛、という意味だ。敢えてこう表現した。だって、本当は別れたくなんかないし。束縛したくない、なんて建て前、綺麗事だ。だけど、こうでもしないと、あたしは勉強や就活を疎かにして、どんどん当麻にのめり込みそうだったから……。
…ザザ―…ザブン…ザザー…ザブン…
「……わかったよ。だけどこうしよう。一旦別れる。だけど、就活成功したらまた付き合う! な、いいだろう?」
当麻は屈託無い笑顔を見せた。いや、魅せたのだ。あたしが大好きな笑顔だった。
…ザザ―…ザブン…ザザー…ザブン…
結局、話し合いの末こう決まった。短大の卒業式の前日。午前11時に。大学の方の海辺で。雨だったら、大学近くのファミレスで。当日行けなくなった時以外は、その日その場所で会うまで一切連絡はしない。
翌日からあたしは、就活の情報集めを始めた。
何の事か分からなくて聞き返す。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
彼はあたしを見つめた。
「色々……考えてみたら、俺は随分と萌恵に曖昧な態度を取ってきたし。恐らく他の女子達にもそうなんだ。俺にそのつもりは無くても、勘違いされる言動をしてきたんだと思う」
声のトーンを落とし、淡々と語る当麻。素直に疑問を口にしてみよう。もう、変に気を回すのは辞めないと。
「どうしてそう思ったの?」
「萌恵がさ、友達の姉さんが俺と同じクラスで、お前の噂の話、したろ?」
……なるほど、それか……
納得して頷く。
「帰って色々、相手の立場になって考えてみたんだ。俺はとんでもない優柔不断でチャラい男だったんだな」
困ったように笑った。あたしは思わず吹き出してしまった。怪訝そうに見る彼。今のはあたしが無神経だった。
親しき中にも礼儀あり。自分軸と自己中心的は別モノだ。
「ごめんごめん。当麻がさ、相手の立場にって言ったから、ついね、頭の中で相手の女子になった当麻を想像しちゃってね」
と正直に説明する。
「アハハ、まぁな」
と笑った。この笑顔、好きだ。真っ直ぐで飾らない。少年みたいな笑顔。今まで聞きたくても聞けなかった事を聞いてみる。
「当麻は、萌恵が好きなんだ。気付いてないだけで。……て。あたし、ずっと思ってきた。それでも、怖くて聞けなかった。当麻が好きだったから」
話していく内に、喉の奥がツーンと痛くなって。涙が溢れてきた。驚いたように大きく目を見開き、あたしを見つめる彼。
「なんでそんな事?」
本当にびっくりしている。こういうとこ、天然なんだな。そして右手を伸ばして、あたしの頭を撫でた。
「萌恵の事、とっても優しい目で見るから。あたし、そんな風に見つめて貰った事、なかったから……」
涙が堰を切ったように流れた。聞きながら、頭を撫で続ける彼。そしてあたしが何を言おうとしているのか、必死で探っているみたいだった。そして、あぁ、と少し照れたように笑う。どういう事だろう? 胸に不安が過る。
「あー、なんだかさー。その、例えば、例えば! だぞ!」
彼は少し顔を赤くして、念を押す。なんだかわからないけど、例えばなのか、と頷くあたし。
「その、なんだ、お前と結婚したら、だ。萌恵が俺の義理の妹になる訳じゃん。可愛い妹が出来るんだなぁ。
て妄想……が走ったかも、というか。俺、一人っ子だからさ」
真っ赤になった当麻。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
あんなに不安に思って、色々心配していた事の真相は、とてもシンプルなものだった。
「そっか、安心したよ」
涙を拭いて、彼に笑みを見せた。彼は頭を撫でていた手を肩に移動させ、そのまま胸に引き寄せた。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
地球の鼓動と、当麻の鼓動が溶け合って潮騒のメロディを奏でる。彼の腕の感触、引き締まった胸におさまる安心感。当麻と付き合って初めて感じる、安定した感情だった。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
潮騒のメロディにのって、あたしも正直に言おう。
「あのね、当麻。今回萌恵との話し合いで、改めて当麻ってカッコイイな。好きだな。て惚れ直したよ」
彼は照れたように目を伏せた。今、ここで言わないと!
「それでね、当麻。あたしたち、別れよう」
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
彼はあたしを解放すると、ビックリしたようにあたしを見る。それはそうだ。突然過ぎるもの。
「は? 別れる? 何でだよ?」
寝耳に水の様子の彼。だけど実は、ずっと考えていた事だったのだ。
「あのね、当麻の事大好きだよ。ずっとこのまま一緒に、て思う」
「じゃぁ、なんで???」
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
前から考えていた事、潮騒のメロディに乗せて話そう。
「あたし、今日帰るんだ。もうほとんど実家には帰って来ないと思う。両親と萌恵の事で話しあったんだけど、分かり合えなかった」
「……何となく、わかるさ。異常なくらい、萌恵を溺愛してるから」
……第三者にもわかるくらいだったのか……
「それでね、あたし。早く自立したいの。卒業したらすぐに就職したい。もう来月保育実習で、短大って短期間で凝縮されるから。これからものすごく忙しくなるの。あたしは不器用だから。同時進行は出来なくて。今はね、勉強と就活に専念したいの」
……言えた!……
あたしは自分を褒めてあげたい。
…ザザ―…ザブン…ザザー…ザブン…
しばらくあたしを見つめ続ける彼。ここから先の答えは、彼に委ねよう。やがて彼は微かなため息と共にこう切り出した。
「……お前、言い出したら聞かないからな……。それなら別れるんじゃなくて、一旦お休み。就活したら再開しよう、これでいいじゃないか」
……有難う、当麻……
「そうしたいんだけどさ。あたし、当麻を縛りつけたくないんだ。もしかしたら、当麻には色んなチャンスがあるかもしれないのに」
他の色んなチャンス。他の女性との恋愛、という意味だ。敢えてこう表現した。だって、本当は別れたくなんかないし。束縛したくない、なんて建て前、綺麗事だ。だけど、こうでもしないと、あたしは勉強や就活を疎かにして、どんどん当麻にのめり込みそうだったから……。
…ザザ―…ザブン…ザザー…ザブン…
「……わかったよ。だけどこうしよう。一旦別れる。だけど、就活成功したらまた付き合う! な、いいだろう?」
当麻は屈託無い笑顔を見せた。いや、魅せたのだ。あたしが大好きな笑顔だった。
…ザザ―…ザブン…ザザー…ザブン…
結局、話し合いの末こう決まった。短大の卒業式の前日。午前11時に。大学の方の海辺で。雨だったら、大学近くのファミレスで。当日行けなくなった時以外は、その日その場所で会うまで一切連絡はしない。
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