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第一話
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次にアマンダが目を覚ますと、液体の中に浮かんでいた。完全に浮き切らないよう、腰をベルトで固定されている。円柱形の巨大な水槽の中にいるようだ。
どうして生きているのか不思議だった。すると白衣に身を包んだ、長身の痩せた男が近づいて来た。三十代半ばくらいだろうか。銀縁眼鏡が冷たく光る。その男の目は蛇を思わせた。
アマンダと目が合うと、男はニタリと冷たく笑った。思わず背筋が寒くなる。
男は背後を振り返ると、背が低く恰幅の良い、グレーのスーツを着たごましお頭の初老の男と談笑を始めたようだ。耳を澄ましてみる。
『……ええ、姉の心臓移植の為に人工受精で試験管の中で生まれた子です。姉の手術が成功した後は、死体をどうしようがお好きにどうぞ、との事で。タダで引き取ってきました』
……そっか。やっぱりお姉ちゃんの為に生まれて、それで殺されたんだ。パパもママも、アマンダの事なんかどうでも良かったんだ。お姉ちゃんのさえ元気になれば……
ぼんやりと思った。
『また実験か?』
恰幅の良い男は呆れたように苦笑する。
『新しい実験を思い付いてね。ちょうどね、人間の子供が欲しかったんですよ。実験が成功したら、高く売れるかもしれませんし。売れなかったら、廃棄処分にするだけですから。また再利用するかもしれませんけど』
『主も悪よのぅ』
『何をおっしゃいますか! 池本様ほどではございませんよ』
はっはっはっは わっはっは
下品な笑い声を響かせ、二人は去って行った。
……実験が成功したら、今度は誰か、ほんの少しでもいいから、愛してくれる人に出会えるかな……
アマンダは虚ろな眼差しで俯き、両膝を両手で抱え込むようにして座った。
次に目が覚めた時は、薄暗くて時々ガタガタ揺れる細長い部屋の中だった。手足を黒い鎖で縛られ、白い木綿の布に首と手を出す部分だけくり抜き、くるぶしあたりまでの長さの服を着ている。よく見たら、アマンダだけでは無い。ひしめきあうようにして、沢山の子供たちが座っていた。歳の頃はおよそ5歳から15歳、男女混合である。みな、諦めたようにして膝を抱えて座っていた。
……まだ、生きていたんだ。実験、て言ってた。何をされたのかな……
ぼんやりと思いながら、膝を抱えた。ふと、隣にいる女の子と目が合う。同じくらいの歳だろうか。色白で物憂げな大きな目を持つ可愛らしい少女だ。
アマンダは微笑みかけてみた。少女も、遠慮がちに笑みを返す。
『私たち、これからどうなるの?』
小声で聞いたみた。少女はびっくりしたように目を大きく見開く。
『何も聞かされないでここにいるの?』
『うん。目が覚めたらここにいたの』
少女は悲しそうに微笑むと、
『私たちはね、これから売られにいくのよ。AI専門のショップに』
……AI? 人口知能。じゃぁ、私は賢く生まれ変わったのかな。全然、そんな感じしないけど。でも、そしたら今度は誰か可愛がって貰えるかな……
『そこで、どんな人に買われるかで私たちの運命が決まるの。見た目が良い子や特別な能力がある子は、早く売れるし破格の待遇らしいわ』
『有難う。大体理解出来た』
二人の少女は微笑みあった。そしてそれぞれがまた、膝を抱えて座った。
……そっか。そしたら私はまた、売れ残りかな。廃棄処分か再利用か……
アマンダは、自分の未来が早くもわかった気がした。
その「AI専門店『Dorothy(神の贈り物)』」は、アンドロイド、またはヒューマノイドロボット或いは一昔前の言葉で『人造人間』と呼ばれるものを専門に扱っていた。少々値は張るが、ルックスと性能が良いモノを扱うと評判のお店らしい。
買い手は富裕層がほとんどで、個人的趣味の目的で買う者、有能なメイドや執事にしたくて買うもの、コレクター、または実験目的、企業家などは従業員が欲しくて、などなど、目的は様々である。一度購入したら、返品返金は不可。それさえ了承していれば特に何も問われなかった。
2200年代、AIはかなり見た目と言動は人間に近づき、知能や身体能力は人間の中でも天才と呼ばれる者をはるかに凌ぐものになっていた。特筆すべきは、AIに喜怒哀楽の感情を持たせることに成功した事である。されど、意思・意志の力だけは持たせぬようにしていた。……と言うよりは、そこまではまだ到達出来ていない、と表現すべきか。
また、AIに意思・意志の力を持たせることが成功してしまえば、文字通り「人造人間」の出来上がりである。「神への挑戦か?」「人間はまさに神の領域に到達したのか?」など、宗教や国柄、倫理などが絡み、結論は出せないでいた。
ただ、子供が出来ない夫婦や、高齢夫婦、同性同士の夫婦の子供や、身寄りの居ない老人の介護。人手不足の保育・介護施設などに、非常にAIは重宝された。基本的に食事や水、排泄、病気や怪我の心配がなく、喜怒哀楽の感情は持っていても意思・意志の力はない為、主人の命令には従順だからである。
月に一度の定期メンテナンス、一日一回の栄養補助剤の注入。故障があれば直し、または廃棄処分にして新しいAIを。安くはないが、値段以上に便利で重宝されていた。
ちなみに、AIは人型だけでなくペット型も人気であった。
……あーあ。せっかく友達になれそうだったのに、あの子、可愛いから真っ先に買われていっちゃったな。まぁいいや。名前も知らない女の子、幸せにね……
見るからに穏やかで人の良さそうな老夫婦に買われていった女の子の後ろ姿をアマンダは寂しげに見送った。あの薄暗い部屋で、色々教えてくれた女の子は、店内に並んだ途端に買われていったのだった。
AIの子供たちはみな、三畳ほどの広さのガラスケースの中に入れられ、来店客の要望があれば鍵が開けられ、外に出される。そして自由に会話が出来るシステムだ。ガラスケースには各AIの名前と、誕生日、その特徴を紹介するポップが貼られている。
拘束は特にされておらず、むしろガラスケースの中はゆったりとした広さだ。パソコンが置かれており、それでテレビや読書、音楽鑑賞、などが好きに出来るようになっている。各自自由に過ごせるようになっていた。寝顔を見たがる客もいるので、仮眠を取ることも可能である。人間ほどに睡眠は必要ではなかったが、より人間に近づける為、ある程度の睡眠を取ることで故障による寿命を延ばせるつくりになっていた。
また、スタッフがAIに対して何か指示をすることもない。入荷してから半年ほどで、売れ残ったものは廃棄処分にすれば良いからだ。廃棄処分にされてまた再利用復活したものも引き受けるので、廃棄に関して金額もかからない。
今日で一週間が経つ。来店客は皆、アマンダを素通りして両隣のガラスケースに興味を示していく。
……ここでも、誰も必要としてくれる人は居ないみたいだ。あの眼鏡の人、私に何か実験したみたいだけど、あの人の自己満足の道具に一役かった、てくらかな。役に立ったのは。考えてみれば、お姉ちゃんに心臓もあげたし。役に立ってるじゃん、私……
膝を抱えて、眠りにつく。いつもの仕草だ。
……AIか。どんな機能をつけたんだろう。全く、人間だった頃と変わらないのだけど……
ぼんやりと思いながら。
どうして生きているのか不思議だった。すると白衣に身を包んだ、長身の痩せた男が近づいて来た。三十代半ばくらいだろうか。銀縁眼鏡が冷たく光る。その男の目は蛇を思わせた。
アマンダと目が合うと、男はニタリと冷たく笑った。思わず背筋が寒くなる。
男は背後を振り返ると、背が低く恰幅の良い、グレーのスーツを着たごましお頭の初老の男と談笑を始めたようだ。耳を澄ましてみる。
『……ええ、姉の心臓移植の為に人工受精で試験管の中で生まれた子です。姉の手術が成功した後は、死体をどうしようがお好きにどうぞ、との事で。タダで引き取ってきました』
……そっか。やっぱりお姉ちゃんの為に生まれて、それで殺されたんだ。パパもママも、アマンダの事なんかどうでも良かったんだ。お姉ちゃんのさえ元気になれば……
ぼんやりと思った。
『また実験か?』
恰幅の良い男は呆れたように苦笑する。
『新しい実験を思い付いてね。ちょうどね、人間の子供が欲しかったんですよ。実験が成功したら、高く売れるかもしれませんし。売れなかったら、廃棄処分にするだけですから。また再利用するかもしれませんけど』
『主も悪よのぅ』
『何をおっしゃいますか! 池本様ほどではございませんよ』
はっはっはっは わっはっは
下品な笑い声を響かせ、二人は去って行った。
……実験が成功したら、今度は誰か、ほんの少しでもいいから、愛してくれる人に出会えるかな……
アマンダは虚ろな眼差しで俯き、両膝を両手で抱え込むようにして座った。
次に目が覚めた時は、薄暗くて時々ガタガタ揺れる細長い部屋の中だった。手足を黒い鎖で縛られ、白い木綿の布に首と手を出す部分だけくり抜き、くるぶしあたりまでの長さの服を着ている。よく見たら、アマンダだけでは無い。ひしめきあうようにして、沢山の子供たちが座っていた。歳の頃はおよそ5歳から15歳、男女混合である。みな、諦めたようにして膝を抱えて座っていた。
……まだ、生きていたんだ。実験、て言ってた。何をされたのかな……
ぼんやりと思いながら、膝を抱えた。ふと、隣にいる女の子と目が合う。同じくらいの歳だろうか。色白で物憂げな大きな目を持つ可愛らしい少女だ。
アマンダは微笑みかけてみた。少女も、遠慮がちに笑みを返す。
『私たち、これからどうなるの?』
小声で聞いたみた。少女はびっくりしたように目を大きく見開く。
『何も聞かされないでここにいるの?』
『うん。目が覚めたらここにいたの』
少女は悲しそうに微笑むと、
『私たちはね、これから売られにいくのよ。AI専門のショップに』
……AI? 人口知能。じゃぁ、私は賢く生まれ変わったのかな。全然、そんな感じしないけど。でも、そしたら今度は誰か可愛がって貰えるかな……
『そこで、どんな人に買われるかで私たちの運命が決まるの。見た目が良い子や特別な能力がある子は、早く売れるし破格の待遇らしいわ』
『有難う。大体理解出来た』
二人の少女は微笑みあった。そしてそれぞれがまた、膝を抱えて座った。
……そっか。そしたら私はまた、売れ残りかな。廃棄処分か再利用か……
アマンダは、自分の未来が早くもわかった気がした。
その「AI専門店『Dorothy(神の贈り物)』」は、アンドロイド、またはヒューマノイドロボット或いは一昔前の言葉で『人造人間』と呼ばれるものを専門に扱っていた。少々値は張るが、ルックスと性能が良いモノを扱うと評判のお店らしい。
買い手は富裕層がほとんどで、個人的趣味の目的で買う者、有能なメイドや執事にしたくて買うもの、コレクター、または実験目的、企業家などは従業員が欲しくて、などなど、目的は様々である。一度購入したら、返品返金は不可。それさえ了承していれば特に何も問われなかった。
2200年代、AIはかなり見た目と言動は人間に近づき、知能や身体能力は人間の中でも天才と呼ばれる者をはるかに凌ぐものになっていた。特筆すべきは、AIに喜怒哀楽の感情を持たせることに成功した事である。されど、意思・意志の力だけは持たせぬようにしていた。……と言うよりは、そこまではまだ到達出来ていない、と表現すべきか。
また、AIに意思・意志の力を持たせることが成功してしまえば、文字通り「人造人間」の出来上がりである。「神への挑戦か?」「人間はまさに神の領域に到達したのか?」など、宗教や国柄、倫理などが絡み、結論は出せないでいた。
ただ、子供が出来ない夫婦や、高齢夫婦、同性同士の夫婦の子供や、身寄りの居ない老人の介護。人手不足の保育・介護施設などに、非常にAIは重宝された。基本的に食事や水、排泄、病気や怪我の心配がなく、喜怒哀楽の感情は持っていても意思・意志の力はない為、主人の命令には従順だからである。
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ちなみに、AIは人型だけでなくペット型も人気であった。
……あーあ。せっかく友達になれそうだったのに、あの子、可愛いから真っ先に買われていっちゃったな。まぁいいや。名前も知らない女の子、幸せにね……
見るからに穏やかで人の良さそうな老夫婦に買われていった女の子の後ろ姿をアマンダは寂しげに見送った。あの薄暗い部屋で、色々教えてくれた女の子は、店内に並んだ途端に買われていったのだった。
AIの子供たちはみな、三畳ほどの広さのガラスケースの中に入れられ、来店客の要望があれば鍵が開けられ、外に出される。そして自由に会話が出来るシステムだ。ガラスケースには各AIの名前と、誕生日、その特徴を紹介するポップが貼られている。
拘束は特にされておらず、むしろガラスケースの中はゆったりとした広さだ。パソコンが置かれており、それでテレビや読書、音楽鑑賞、などが好きに出来るようになっている。各自自由に過ごせるようになっていた。寝顔を見たがる客もいるので、仮眠を取ることも可能である。人間ほどに睡眠は必要ではなかったが、より人間に近づける為、ある程度の睡眠を取ることで故障による寿命を延ばせるつくりになっていた。
また、スタッフがAIに対して何か指示をすることもない。入荷してから半年ほどで、売れ残ったものは廃棄処分にすれば良いからだ。廃棄処分にされてまた再利用復活したものも引き受けるので、廃棄に関して金額もかからない。
今日で一週間が経つ。来店客は皆、アマンダを素通りして両隣のガラスケースに興味を示していく。
……ここでも、誰も必要としてくれる人は居ないみたいだ。あの眼鏡の人、私に何か実験したみたいだけど、あの人の自己満足の道具に一役かった、てくらかな。役に立ったのは。考えてみれば、お姉ちゃんに心臓もあげたし。役に立ってるじゃん、私……
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