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第四話
Power of healing
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リヒトの書斎にて、
「あの子は目が不自由な子を選んだのだな」
「ええ、意外でした」
「……自分と重ね合わせたのだろうな」
「恐らく……」
セバスチャンは声を詰まらせる。リヒトとセバスチャンは、庭で植物の手入れをしながら白い子犬と戯れるアマンダを見下ろしながら会話をしていた。
「ちょうど良い。あの子は想いが治癒の力となるように作られのだ。それを伸ばす良い機会かも知れぬ」
「想い、ですか?」
「あぁ。法律では特に何の違法ともされていない。古来より民間療法の分野だからな。あの男も良いところを突いたものだ。AIに意思の力を持たせる事は法律で禁じられているし、まぁ、まだ誰も成功していないと表向きには言われているが。しかしあの男は、アマンダに意思の力を持たせる事に成功した。意思の力は持つが主《あるじ》の命令には絶対服従という機能をつける事で、違法に問われる事を避けた。大したものだ」
リヒトは冷たい笑みを浮かべた。セバスチャンはなまじ、並外れた美貌の持ち主の為にその笑みは妖じみていて背筋を凍らせる。50年以上仕えてきても、未だにその本心が読めなくなる瞬間だった。けれども、主人が敢えて開示しない事には追求しない。セバスチャンはその姿勢を崩すことはなかった。
「あの男を呼んでくれるか? アポを取って話がしたい」
「畏まりました」
セバスチャンは丁寧に頭を下げ、指示をこなす為その場を辞した。
くぅうん、くぅん、と白い子犬は甘えた声で鳴き、アマンダの右手をなめる。
「うふふ、ジョイ。くすぐったいよ」
アマンダは笑顔で子犬に話かけた。子犬はJoy(喜び)と名付けた。
「ジョイ、こんなに可愛いのに……」
アマンダはいつもジョイの閉じたままの右目に優しく手を当てる。何となくそうすると良いような気がしたのだ。
そして三週間ほどが過ぎたある朝……。
ワン、ワンワン、早朝、庭に出て来たアマンダにジョイが早速まとわりつく。
「おはよう、ジョイ。……え? ジョイ?」
アマンダは子犬の異変に気付き、
「ジョイ! やっぱり、可愛い」
と感慨深気に抱きしめた。そして慌てたように邸内へと戻っていく。
「マスター! セバスチャンさん!」
間もなくジョイを抱えたアマンダが、慌てたように小走りをしながら二人の名を呼ぶ声が響いた。
「こらこら、邸内で走るのではありませんよ」
セバスチャンはすぐに姿を現し、穏やかに、されどきっぱりと窘めた。
「はい、申し訳ございません。あの、でもジョイが!」
彼はアマンダの腕の中の小さない子犬を見た途端、
「おぁ! これは何と!」
と感嘆の声を上げた。ほどなくしてリヒトが姿を現す。
「どうした? アマンダ。何の騒ぎだ?」
「マスター、申し訳ございませんでした。その、ジョイが……」
「ほぉ! アマンダ、よくやった。お前の本来の力が目覚める時が来たようだな」
リヒトはJジョイを見るなり、アマンダを労い、彼女の頭を撫でた。ジョイの閉じられたままの右目が、左目と同じようにぱっちりと開かれ、巨峰を思わせる紫紺に輝いていたのである。
「私の、能力……ですか?」
アマンダは遠慮がちにリヒトに問いかけた。
「そうだ。『想い』がそのまま『治癒』の力に変わるのだ。まぁ、だからと言って死者を甦らせる事は不可能だが。鍛え方次第で素晴らしい成果をあげる事が出来る。病や怪我のみでなく、メンタルの分野にまで及ぶかもしれない……」
彼は恍惚とした表情で応じた。それはアマンダを通して誰か別の人を見つけている。そんな遠くを見るような眼差しだった。
……この方にはきっと、深い闇を抱えてらっしゃる。もし、私なんかで何かのお役に立てるなら、精一杯努めさせて頂こう……
改めてそう感じた。
「お前には動物の世話も頼もう。実はね、お前がジョイに出会ったお店にいたような、ああいった事情の動物たちがまだまだ沢山いるのだ。そう言った動物達を引き取って、少しでも哀れな目に合う動物達が少なくなれば良いな、と思っていてね」
「はい! 承知致しました!」
アマンダは迷わず即答した。彼の役に立てる事がただただ嬉しかった。
「沢山食べて、大きくおなり」
アマンダは笑みを浮かべながら、牧草をモリモリ食べる羊たちに声をかける。そこは庭の一部に、およそ50m四方のミニ動物園が出来ていた。リヒトは様々な動物を引き取り、アマンダに任せていた。中にはライオン、トラ、ワシなどもいて、まさにミニ動物園と呼ぶに相応しい場所となっていた。
それぞれが、人間に虐待を受けたり、捨てられたりして心身共に傷ついている動物たちが集められている。アマンダが心を込めてお世話をする事で、少しずつ傷が癒えていくのであった。
そんなある日、門から見慣れない大きな黒い車が飛んで来るのを見かけた。来客があるとは聞いていないが、アマンダは客を迎える為に玄関へと走った。既にセバスチャンが玄関で待っている。
「セバスチャンさん、すみません!」
何とか間に合わせた。
「おや、あなたはそのまま動物のお世話をしていて大丈夫でしたのに。ですから、声をかけなかったのですよ」
彼は優しく笑った。
「でも……」
「では、一緒にお迎えしましょう」
そして車はゆっくりと玄関先で止まった。セバスチャンとアマンダは出迎えに行く。車のドアは滑るように上に開くと、灰色のスーツ姿の男が降り立った。まだ顔はこちらを向けていないが、どうやら高身長の痩せた男のようである。
男が顔をこちらに向けた瞬間、日の光に照らされて彼の銀縁眼鏡がギラッと光った。アマンダは一目見た瞬間に恐怖に身を強張らせた。
……あ、あの人は……
アマンダが姉に心臓を差し出した後最初に目覚めた時、培養液のようなものの中から見たあの男だった。銀縁眼鏡、蛇を思わせる細く鋭い眼差し。
……どうして、この人が?……
アマンダの様子がおかしい事にすぐに気づいたセバスチャンは、小声で素早く声をかける。
『アマンダ、どうしました? 例えどのような事があっても、仕事は仕事。しっかりと線引きしなさい!』
ハッと我に返ったアマンダは、慌てて笑顔を取り繕った。マスターに恥をかかせる訳にはいかない! セバスチャンと共に男に歩よると、
「ようこそいらっしゃいました」
と深々と頭を下げる。コツコツと革靴の音をさせたゆっくりと歩いて来る男。セバスチャンは男の鞄を両手で受け取ります。アマンダはサッと玄関に素早く行くと、ドアを開けて男が入るのを待った。男は笑顔でアマンダを見つめ入り口に入ると、深々と頭を下げているアマンダに
「見違えるように成長しましたね、アマンダ。私も鼻が高いですよ」
と声をかけた。呆然と男を見つめるアマンダ。
「マスターがお待ちかねでございます」
セバスチャンはすかさず男を誘導した。アマンダはただその場に佇み続けた。
……あの人とマスターと、何の関係があるのだろう?……
アマンダは気になって仕方がなかった。あの男とマスターの目的が分かれば、自分の役割がハッキリするような気がしていた。
……私みたいな出来損ないを、マスターが雇ってくださった意味。恐らく、公に出来ない何か。少なくとも明るい理由ではないと思う。でも、マスターが望むならなんだってやるつもりでいる。だから、知りたい。盗み聞きなんてはしたないし、してはいけない事だけれど。私もAIの端くれならきっと、意識を集中すればあの二人の会話が聞こえる筈……
アマンダは目を閉じ、マスターと銀縁眼鏡の男に意識を集中した。
……マスターの声だ。あの人の声も……
徐々に、会話の内容まで聞きとれるようになって行く。
「……それにしても、あの子の成長ぶりには驚きましたよ。喜怒哀楽に意思の力。人間である時と同じように作りましたからね。あの自信なさげでオドオドびくびくしていた子が、あんなに生き生きとしていて……」
男は言った。この男の名前は鬼道晃。通称ドクター・レオン。AI博士と言う肩書を持つ。
「世間ではあなたの事をマッドサイエンティスト、などと呼んでいるようですが、私はあなたを全面的に指示しますよ、鬼道晃さん」
「それは光栄ですな」
……あの人、鬼道晃、て名前なんだ……
少しずつ、脳内に二人の様子も浮かんで来ている。まるで200年ほど前の2D映画のような感じで、アマンダの瞼の裏に映し出されていた……
「あの子は目が不自由な子を選んだのだな」
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「……自分と重ね合わせたのだろうな」
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「ちょうど良い。あの子は想いが治癒の力となるように作られのだ。それを伸ばす良い機会かも知れぬ」
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「うふふ、ジョイ。くすぐったいよ」
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「ジョイ、こんなに可愛いのに……」
アマンダはいつもジョイの閉じたままの右目に優しく手を当てる。何となくそうすると良いような気がしたのだ。
そして三週間ほどが過ぎたある朝……。
ワン、ワンワン、早朝、庭に出て来たアマンダにジョイが早速まとわりつく。
「おはよう、ジョイ。……え? ジョイ?」
アマンダは子犬の異変に気付き、
「ジョイ! やっぱり、可愛い」
と感慨深気に抱きしめた。そして慌てたように邸内へと戻っていく。
「マスター! セバスチャンさん!」
間もなくジョイを抱えたアマンダが、慌てたように小走りをしながら二人の名を呼ぶ声が響いた。
「こらこら、邸内で走るのではありませんよ」
セバスチャンはすぐに姿を現し、穏やかに、されどきっぱりと窘めた。
「はい、申し訳ございません。あの、でもジョイが!」
彼はアマンダの腕の中の小さない子犬を見た途端、
「おぁ! これは何と!」
と感嘆の声を上げた。ほどなくしてリヒトが姿を現す。
「どうした? アマンダ。何の騒ぎだ?」
「マスター、申し訳ございませんでした。その、ジョイが……」
「ほぉ! アマンダ、よくやった。お前の本来の力が目覚める時が来たようだな」
リヒトはJジョイを見るなり、アマンダを労い、彼女の頭を撫でた。ジョイの閉じられたままの右目が、左目と同じようにぱっちりと開かれ、巨峰を思わせる紫紺に輝いていたのである。
「私の、能力……ですか?」
アマンダは遠慮がちにリヒトに問いかけた。
「そうだ。『想い』がそのまま『治癒』の力に変わるのだ。まぁ、だからと言って死者を甦らせる事は不可能だが。鍛え方次第で素晴らしい成果をあげる事が出来る。病や怪我のみでなく、メンタルの分野にまで及ぶかもしれない……」
彼は恍惚とした表情で応じた。それはアマンダを通して誰か別の人を見つけている。そんな遠くを見るような眼差しだった。
……この方にはきっと、深い闇を抱えてらっしゃる。もし、私なんかで何かのお役に立てるなら、精一杯努めさせて頂こう……
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「お前には動物の世話も頼もう。実はね、お前がジョイに出会ったお店にいたような、ああいった事情の動物たちがまだまだ沢山いるのだ。そう言った動物達を引き取って、少しでも哀れな目に合う動物達が少なくなれば良いな、と思っていてね」
「はい! 承知致しました!」
アマンダは迷わず即答した。彼の役に立てる事がただただ嬉しかった。
「沢山食べて、大きくおなり」
アマンダは笑みを浮かべながら、牧草をモリモリ食べる羊たちに声をかける。そこは庭の一部に、およそ50m四方のミニ動物園が出来ていた。リヒトは様々な動物を引き取り、アマンダに任せていた。中にはライオン、トラ、ワシなどもいて、まさにミニ動物園と呼ぶに相応しい場所となっていた。
それぞれが、人間に虐待を受けたり、捨てられたりして心身共に傷ついている動物たちが集められている。アマンダが心を込めてお世話をする事で、少しずつ傷が癒えていくのであった。
そんなある日、門から見慣れない大きな黒い車が飛んで来るのを見かけた。来客があるとは聞いていないが、アマンダは客を迎える為に玄関へと走った。既にセバスチャンが玄関で待っている。
「セバスチャンさん、すみません!」
何とか間に合わせた。
「おや、あなたはそのまま動物のお世話をしていて大丈夫でしたのに。ですから、声をかけなかったのですよ」
彼は優しく笑った。
「でも……」
「では、一緒にお迎えしましょう」
そして車はゆっくりと玄関先で止まった。セバスチャンとアマンダは出迎えに行く。車のドアは滑るように上に開くと、灰色のスーツ姿の男が降り立った。まだ顔はこちらを向けていないが、どうやら高身長の痩せた男のようである。
男が顔をこちらに向けた瞬間、日の光に照らされて彼の銀縁眼鏡がギラッと光った。アマンダは一目見た瞬間に恐怖に身を強張らせた。
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徐々に、会話の内容まで聞きとれるようになって行く。
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男は言った。この男の名前は鬼道晃。通称ドクター・レオン。AI博士と言う肩書を持つ。
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