「磨爪師」~爪紅~

大和撫子

文字の大きさ
4 / 65
第四帖 中宮定子様

宮中に咲き誇る一輪の花

しおりを挟む
 993年、桜の蕾が微かな笑みを浮かべ始める頃。優しく淡い水色の空、穏やかな朝日が降り注ぐ中、カタカタと軽快な走りを見せる牛車ぎっしゃが一台。中流貴族がよく使用している網代車あじろぐるまと呼ばれるものだ。

 牛飼い童と四名の侍従たちが慎重に車を走らせていた。引き手と車輪は黒、車体は深い緑色を基調にし、白の鳳仙花を簡略化して丸い図案にしたものが屋根と四隅に規則的に描かれている。入口は内側を焦げ茶色のすだれが。外側は薄茶色の簾がしっかりとかけられており、風などで簾がめくれ、うっかり中の人を見ていまう事が出来ぬよう、裾のほうがしっかりと結ばれている。車体の横に設けられている小窓の部分にも、やはり二重に簾がかけられているという徹底ぶりだ。

 車内は意外に広く六畳ほどあろうか。陽射しが柔らかく指し込み、思いの外明るい。梅の花を思わせる甘い香りが空間を包み込んでいる。車内で寛いでいるのは、白を基調にした十二単に、淡い緑色から深めの緑色を重ねた『柳のかさね』に身を包んだ紅。
 そして白を基調にしたあこめ(※①)に、淡い桃色から鮮やかな紅を重ねた『桜の襲』に身を包んだ鳳仙花がいた。通常は向かい合って座るのだが、車体が傾かぬよう、二人とも車内の中央に寄り添うようにして座っている。 

「どう? やんごとなき姫君のお忍びの旅の気分は……」

 紅は悪戯っ子みたいな笑みを浮かべながら問いかける。鳳仙花は嬉しそうに、されどほんの少し恥ずかしそうに笑顔で応じながら

「うん。今はいいけど、真夏は暑くて大変そう」

 と応えた。黒々とした髪は、腰の辺りまでふさふさと伸びてきている。いよいよ、内密に中宮定子の元にお逢いしに参るのである。内密と言っても、帝も了承して頂いているので、何も隠れて行く必要はない。

「せっかく牛車で二人だけで行くのだし、やんごとなき姫様気分を味わいたいなぁ。この日の為に一生懸命学んで、いっぱいお洒落もするのだし。ねぇ、いいでしょ?」

 と鳳仙花がお願いしたのである。いわゆる姫様ごっこである。

「そうね。常にお洒落で綺麗でいる事って、耐え忍ぶ事も多いのよ。すごく暑くても、平然と優雅にしてたりね」

 紅は遊びの中にも、教訓を交えるようにしていた。

「えー? なんだか体に悪そ……」
「これこれ、しーっ!」
「あ、そうか……」
「もう、気をつけなさいよ」
「はーい」

 明るい笑い声が車内に響く。

……凄い、平安京って一つの町がいくつもいくつも。碁盤の目みたいに区切られて出来てるんだ。何々殿とか、何々舎、とか。ヒャー、広くて迷路みたいで、迷子になりそう。やんごとなき方々が牛車で移動するの、分かる気がするなぁ……

 平安京に着いたと母から聞いて、外が見たくなった鳳仙花は、母親に小窓の内側の簾を開けてもらい、一重の簾越しに外を眺めている。あちらも覗き見ようと凝視しない限りは、外からは見えにくいそうだ。

 興味津々で外を眺める娘に、紅は満足そうな笑みを浮かべる。そして囁くように小声で

「門にも一つ一つ名前がつけられていてね。ある門を通る時は歩いて、とか。行きはこの門、帰りは別の門、とか細かく決まってる箇所もあるのよ。しっかりとうらないで導き出して緻密な造りになっているのですって」
「えぇー? 何それ? 覚えるの大変そう……」

 内心では『また卜か……』といささかうんざりしながら素直な気持ちを母に合わせて小声で吐露する。

「まぁ、まず私たちは牛車で移動する場所だし。もし必要に迫られたらその都度教えられるだろうし」

 と娘を安心させる。

「そっか。なら、良かった」

 鳳仙花は安心したように笑顔を見せた。

 牛車はゆっくりとした速度に変わる。やがて完全に停止した。

「あ、着いたようよ」

 トクン、鳳仙花の鼓動が一気に高鳴った。いよいよ、中宮定子様にお逢い出来るのだ。 

 牛車は邸内のほぼ入口で下して貰えるので、事前に母親と乳母に仕込まれた通り、牛車が完全に止まるまで待つ。そして扇で顔を隠す。

「失礼致します、到着致しました」

 侍従が外から声をかけ、簾をゆっくりと開ける。そしてまだ少女の鳳仙花は、ほぼ抱き上げられるような形で侍従の手を借り牛車を降りる。そして優雅にくつを脱いで長い渡廊をしずしずと歩く。扇で上手く顔を隠しながら。重厚な焦げ茶色の廊下もまた、碁盤の目のよう褐色の御簾みすで仕切られた部屋沿いに造られていた。

……やっぱり迷路だ。お部屋間違えそう……

 と思いながら必死に母の後を追った。

「ここよ」

 ついに母は歩みを止めた。ドキンと心臓が跳ね、鼓動が激しくなる。

「失礼致します。紅でございます。娘も連れて参りました」

 御簾越しに声をかける母親。どうやらそこは御簾の内側に几帳で部屋を囲っているようだ。ほどなくして衣擦れの音が近づいて来る。

「いらっしゃい。お待ちしていましたよ」

 しっとりと落ち着いた声とともに、御簾をかき上げる鮮やかな山吹色の濃淡を重ねた袖が見えた。微かにの菊の花を思わせる上品な香りが漂う。山吹の襲を身に着けているらしい。 

「赤染衛門さん、有難うございます」
「鳳仙花と申します。宜しくお願いします」

 女性は赤染衛門と呼ばれる方らしい。鳳仙花は緊張で声が上ずりながらも挨拶をし、ぺこりと頭を下げた。

「宜しくね。お逢い出来るのを皆楽しみにしていました。中に入れば、扇は外して大丈夫ですからね」

 その女性は優しく声をかけてくださる。

「はい、有難うございます」

 だが鳳仙花は緊張していて練習した通りのことしか言の葉に紡げない。母親が差し出した右手に夢中で左手を伸ばし、手を引かれて室内にへと入る。赤染衛門が御簾をあげ几帳をずらして中に入れてくれる。そして几帳を元の位置に戻すと、再び先に立って室内の奥へと誘導してくれた。菊の花を思わせる上品な香りが、少しずつ色濃くなって行く。

「皆さん、紅さんとその娘さんがいらっしゃいましたよ」

 赤染衛門はそう声をかけると、

「扇を取って大丈夫ですよ」

 と鳳仙花の右肩に軽く触れた。全身が心臓になったかのように激しく鼓動が高鳴る。苦しいくらいだ。母親がキュッと繋いだ手に力を入れる。顔の前に掲げた扇を

「し、失礼、します!」

 緊張のあまりつかえながら扇を外した。思わず息を飲んだ。女房たちの色とりどりの十二単に。 

 皆、とても綺麗にお化粧をし、髪も艶々だ。立っている女性、座っている女性とまちまちではあるが、皆にこにこと鳳仙花を見つめる。

「いらっしゃい」
「お逢いするの、楽しみにしていたのよ」

 そして口々に歓迎の言の葉を述べた。ドキドキと鼓動が激しい。頭がクラクラしそうだ。母親が繋いでいる手を優しく引き、自らの前に立たせる。そして両手を鳳仙花の両肩のそっと添えた。少し落ち着きを取り戻す。

「初めまして。鳳仙花と申します。宜しくお願いします」

 とペコリと頭を下げた。

「よく来たわね。嬉しいわ」

 その時、部屋の奥から凛として澄んだ声が響いた。ドキッと再び鼓動が跳ね上がる。部屋の奥に一段高くなった場所があり、そこは焦げ茶色の御簾で別室のように四隅を囲っている。

……定子様だ!……

 鳳仙花はすぐに悟った。そして尋常では無い程に緊張が全身を支配した。それは恐怖に似た感情だった。

「さぁ、こちらにいらっしゃい」

 有り難いお言葉をかけて頂く。母親に半ば強制的に押されるようにして進んだ。御簾越しに薄っすらと浮かび上がる御姿。あり得ないくらいに整ったお顔立ちである事が窺い知れる。きっと、髪も黒光するほどに艶やかであるに違いない。御簾の隙間から見える限りでも、髪の艶が輝いて見えるのだから。 

 ドキドキドキ……痛いくらいに鼓動が早い。御簾が近づくにつれて、

……怖い、母様とは似ていない愚かな子、と思われたらどうしよう!?……

 という恐ろしい考えが脳内を駆け巡る。もう手を伸ばせば御簾をかき上げられる距離まで近づいてしまった。そこで妙案を思いついた! 背後の母親を見上げる。そして右手を口元に添えた。いぶかしげに右耳を傾ける紅。

『あのね、どうしても我慢出来ないの。遠方(※②)……』

 と耳打ちした。

『全くもう、この子は。仕方ないわね』

 娘が異常なほど緊張している事が分かっていた紅は、軽く右手で娘の頭を叩きながら耳打ちで応じる。そして立ち止まると、御簾に向かって深々と頭を下げた。

「大変申し訳ございません。娘が緊張のあまり……」
「遠方であろう?」

 御簾越しにころころと笑いながら澄んだ声が響く。

「あ、は、はい。申し訳ございません」
「謝ることでは無い。まだ子供で、慣れない場に来てさぞ不安であろう。仕方の無いことじゃ。さ、誰かこの子を遠方へ」
「とんでもないです! 私めが連れて参ります」

 慌てて申し出る紅。

「そなたにはお爪の状態を見て欲しいのじゃ」

 柔らかく答える声。

「私が、連れて行きましょう!」

 その時、一人の女房が名乗りを上げた。

「宜しくお願いします。清少納言さん。お手数をおかけします」

 名乗り出た女房に母親は深々と頭を下げた。

……清少納言さん、て呼ばれてるんだ。この方、珍しい髪の色。そして波打っている……

「さ、行きましょうか」

 彼女は右手を差し出した。

「有難うございます」

 鳳仙花は清少納言に歩みより、左手を差し出した。しっかりと手を握って遠方へと誘導する。清少納言に補助されつつ几帳をずらし御簾を掻き分けて外に出ると、二人ほど女房が控えており、連れ立って遠方へと向かう。やんごとなき女性たちは、十二単を着込んでいる為、複数の侍従が衣装を汚さぬよう手助けが必要なのである。


……肌の色が濃くて目が大きい。みんな、切れ長のお目めと真っ黒い直毛の髪に憧れてお化粧でそう見せたり、かつらを被ったりするのに……

 とても不思議な人に見えた。同時に強烈に惹かれた。あまり凝視してはお行儀が悪いので気を付けているつもりではあるが……。清少納言は意味有り気に笑みを浮かべたが、特に何も言わず、皆黙々と歩き続ける。

 しばらく歩くと、ツーンと独特の匂いが鼻をついた。外側に簾《すだれ》、内側に金色の屏風で仕切られた一畳程の間で、樋殿《ひどの》と呼ばれる遠方の空間である。

「じゃ、ここで待ってるわ」

 清少納言は部屋の前で待つ。鳳仙花は侍女二人に付き添われ、その空間へと足を運んだ。そこに縦長の木箱のようなものが設けられており、これを樋箱《ひばこ》と呼んだ。それには鳥居のような取ってがついている。この部分を「絹隠し」と呼び、ここを背にして用をたす。侍女が打掛を取り、袴を脱がせる。そしてもう一人の侍女が髪をまとめて前に回し、帯の間に挟む。そして絹隠しに十二単の裾を掛ける。そこにしゃがんで用を足すのだ。身分により、侍女は一人の場合もある。鳳仙花は、いつもは付き添いの侍女は一人だけなのでなんだか照れくさい。

 樋箱の管理は身分の低い樋洗《ひすまし》と呼ばれる人々が担当した。排泄物が溜まったら川まで捨てに行くのだ。故に、平安貴族には薫物《たきもの》は欠かせないのである。高額過ぎて、庶民には手が届かない代物であったが……。

「有難う」

 用を済ませると、侍女たちにお礼を言って外に出る。

「お待たせしました」

 と清少納言に声をかけた。笑顔で右手を伸ばす彼女の手を取って、一同は部屋に戻る。文壇に戻ると、侍女二人は頭を下げて別の部屋へと去って行った。

「私のお化粧の仕方と髪型が珍しいのでしょ?」

 几帳をずらして部屋に踏み入れる瞬間に、清少納言は耳打ちする。鳳仙花は返事に窮するも、

「いつか、色々お話ししましょう。定子様、気づいてた? あなたに話しかける時、口調を親しげに変えてらっしゃるの。あなたはあなたらしく振舞って大丈夫よ」

 と更に耳打ちすると、几帳の位置を元に戻して何ごともなかったかのように鳳仙花の手を引き、歩いて行った。

 ……色々お話し出来る日が早く来ないかな……

 鳳仙花はそう感じた。

「ただいま戻りました」

 清少納言はそう声をかけ、女房達の輪に戻って行く。そっと鳳仙花の背を、定子様と母親、そして定子様に影のように寄り添う次女のいる部屋に向けて軽く押しながら。

「戻りました」

 やはり緊張で声が上ずるものの、御簾越しに定子様に声をかける。

「綺麗な薄桃色の爪じゃ。何やらうきうきするのぅ。そなたに任せると心地良く至福のときを味わえる」

 お琴の高い音みたいに柔らかく澄んだ声だ、と鳳仙花は感じた。母親を労う言の葉を耳にし、誇らしく思った。
 御簾みす越しからでも分かるくらい、艶々した真っ黒い髪、涼やかな目元のお色は、『漆黒』と呼ぶのだと後に母様から教えて頂いた。

「身に余るお言葉、光栄でございます」

 母様は深々と頭を下げている。

「お帰り。こちらにいらっしゃいな」

 定子様がお声をかけて下さるのと同時に、お付きの侍女が御簾を開けにやって来た。ドキン、心臓が壊れるかと思うほどに跳ね、瞬間的に文壇の部屋の御簾と、隣の部屋を仕切る御簾の間に隠れてしまった。極度の緊張と不安に押しつぶされそうだった。

「そなたの娘御、鳳仙花と言うたか?」
「はい。申し訳ございません。恥かしがってあのようなところに隠れてしまいまして……」

 母様はそう言って、ちらりと私の方を見やると、定子様に再び頭を下げているのが薄っすらと御簾越しに見える。

……マズイ、どこかに隠れないと!……

 焦った。こちらから見えるということは、あちらからも見えてしまうと言う事だからだ。さて、どこに隠れよう!? 慌てふためいているうちに、ふわりと桜色の衣が鳳仙花を包み込む。それはしっとりとまろやかな甘さと高貴な香りがした。

「どうした? 何を恥ずかしがっておる?」

 定子様は笑ってらっしゃるようだ。艶々した髪が、さらさらと頬に触れて気持ち良い。

「そなたも、母君のように優れた磨爪師まそうしになりたいのであろう?」

 と、こっそり囁くようにして問いかけて下さる。あの定子様が、優しく背後から抱き締めてくださっている事が夢のようだ。

「はい!」

 迷わず肯定の意を示した。定子様は抱きしめる両手に力を込めて

「よしよし、よう言うた! 良い返事じゃ」

 と嬉しそうに鳳仙花の頭を撫でてくださった。

「あ、あの、定子様、申し訳ございません。あの、よく言って聞かせますから」

 おろおろとひたすら恐縮している紅。定子様はそっと立ち上がり、鳳仙花の右手を引きながら定位置に戻る。御簾を挟んで一段高い場所へと。そして途中でしっかりと紅に引き渡されていた。母様と御簾越しにその美しい人を見つめる。中宮定子様。才色兼備で帝の御寵愛を一心に受けてらっしゃるという。

「気にするな。まだ幼い子どもではないか」

 と定子様は微笑んだ。

……凄いなぁ。母様は、定子様を始めとした宮中の女房たちのお爪のお手入れをする『磨爪師』として活躍しているんだ!……

 鳳仙花は改めて母を偉大に感じ、並々ならぬ感動を覚えた。そしてとても誇らしかった。 






(※① 衵《あこめ》……十二単の子供用。少し重ねるのが少ない程度でほとんど大人のものと変わらない) 

(※② 遠方……お手洗いの隠語) 


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【読者賞】江戸の飯屋『やわらぎ亭』〜元武家娘が一膳でほぐす人と心〜

旅する書斎(☆ほしい)
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 読者賞(読者投票1位)受賞】 文化文政の江戸・深川。 人知れず佇む一軒の飯屋――『やわらぎ亭』。 暖簾を掲げるのは、元武家の娘・おし乃。 家も家族も失い、父の形見の包丁一つで町に飛び込んだ彼女は、 「旨い飯で人の心をほどく」を信条に、今日も竈に火を入れる。 常連は、職人、火消し、子どもたち、そして──町奉行・遠山金四郎!? 変装してまで通い詰めるその理由は、一膳に込められた想いと味。 鯛茶漬け、芋がらの煮物、あんこう鍋…… その料理の奥に、江戸の暮らしと誇りが宿る。 涙も笑いも、湯気とともに立ち上る。 これは、舌と心を温める、江戸人情グルメ劇。

【時代小説】 黄昏夫婦

蔵屋
歴史・時代
 江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。  そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。  秋田藩での仕事は勘定方である。  仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。 ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。   そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。  娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。  さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。    「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。  今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。  この風習は広く日本で行われている。  「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。  「たそかれ」という言葉は『万葉集』に 誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」 — 『万葉集』第10巻2240番 と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。  「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に 「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」 — 『源氏物語』「夕顔」光源氏 と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。  なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。  またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。 漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。  「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。  この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。  それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。  読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。  作家 蔵屋日唱    

楽将伝

九情承太郎
歴史・時代
三人の天下人と、最も遊んだ楽将・金森長近(ながちか)のスチャラカ戦国物語 織田信長の親衛隊は 気楽な稼業と きたもんだ(嘘) 戦国史上、最もブラックな職場 「織田信長の親衛隊」 そこで働きながらも、マイペースを貫く、趣味の人がいた 金森可近(ありちか)、後の長近(ながちか) 天下人さえ遊びに来る、趣味の達人の物語を、ご賞味ください!!

江戸の夕映え

大麦 ふみ
歴史・時代
江戸時代にはたくさんの随筆が書かれました。 「のどやかな気分が漲っていて、読んでいると、己れもその時代に生きているような気持ちになる」(森 銑三) そういったものを選んで、小説としてお届けしたく思います。 同じ江戸時代を生きていても、その暮らしぶり、境遇、ライフコース、そして考え方には、たいへんな幅、違いがあったことでしょう。 しかし、夕焼けがみなにひとしく差し込んでくるような、そんな目線であの時代の人々を描ければと存じます。

大和型重装甲空母

ypaaaaaaa
歴史・時代
1937年10月にアメリカ海軍は日本海軍が”60000トンを超す巨大戦艦”を”4隻”建造しているという情報を掴んだ。海軍はすぐに対抗策を講じてサウスダコタ級戦艦に続いてアイオワ級戦艦を12隻建造することとした。そして1941年12月。日米は戦端を開いたが戦列に加わっていたのは巨大戦艦ではなく、”巨大空母”であった。 表紙はNavalArtというゲームの画像で、動画投稿者の大和桜花さんに作っていただきました

処理中です...