深紅の愛「Crimson of love」~モブキャラ喪女&超美形ヴァンパイアの戀物語~

大和撫子

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第四話

これは夢か現実か? その一

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『そうか。どうもそなたは自分の魅力が分かっていないようだな。そこまで思い込んでしまうと、『私と恋をしてみないか? 焦らなくて良い、ゆっくり私を好きになってくれれば』……と言っても信じないどころか、私は不審者扱いだろう?』

(ため息混じりに言う志門様も素敵)

『はい、信じません。姉か妹、または家の金が目当て、または両親に取り入ろうとする俳優志望者とか。というより夢ですもーん』
(恥ずかしいくらいの願望夢じゃんか……)

『やはりな。一筋縄ではいかないと覚悟はしていたが。今日はこれ以上探しても堂々巡りだ。またゆっくり話そう。私は、来週からそなたの通う学園のスクールカウンセラーとして週3日配属される。ゆっくり、私を知っていけば良いさ』

 薔子はゆっくりと目を覚ました。目に飛び込むのは白い天井。

「素敵な夢だったわ。来栖志門様、ベジタリアンなヴァンパイア。憂いを秘めた紫の瞳も素敵。乙女ゲームのヒロインになった夢かぁ」

 甘い余韻に浸りながら、ゆっくりとベッドをおりる。

「薔子ハウスに行ったつもりが、寝てしまったのかしら。あら、そしたら寺本さん待ちぼうけ食らわされたかしらね」

 クローゼットの中から慌ててコートを羽織り、部屋を出て足早にハウスに向かう。ドアを開けてみる。

「あら、鍵は閉めてある。窓の戸締まりも良し。じゃ、帰ってきたらすぐに寝ちゃったんだわ」

 納得したように呟くと、再び自室を目指した。

「ごきげんよう」
「ごきげんよう」

 挨拶を交わして席に着く。目立たないようにひっそりと。前後左右から見てちょうどど真ん中の位置だ。薔子によれば、ここには漫画やドラマやゲームの世界ではクラスの中心人物が座ったりして、常に周りに人が集まってワイワイキャピキャピする場所らしい。

(漫画やアニメなんかでは、お坊ちゃんお嬢ちゃま学校では『ごきげんよう』なんて交わすもんだけど、現実もそうだもんねー。で、イケメン美少女ばかりの集団だったりするんだけど、現実はそういう訳でもない。ジャガイモやキュウリ、タマネギや里芋、ゴボウもいる訳よ。当然私みたいなモブキャラ、喪女、喪男もいるけど……みんなそれを悟られないようにというか、自分で自分を認めたくなくて必死で徒党を組む訳よね)

 更に気配を消し、空気と一体化しつつ薔子的(偏見に満ちた)人間分析を楽しむ。担任が来るまでの間の楽しみだ。今、彼女の前の席にいる男子は成績もトップクラス、アイドル系イケメン、サッカー部の人気者だ。その周りに7.8人の男女がいつも群がっている。当然、薔子の前に男女が笑い合う。故に机と椅子の位置を少し後ろにずらしている。担任が来て皆が去った後にさり気なく戻すのだ。

「でさー、アイツ……」

(おっと! 危ないっ)

 会話に夢中になっている男子が身振り手振りで話している際、左手が薔子の額にぶつかりそうになった事を察知して未然に首を左にかしげて避けたのだ。下手にぶつかると、存在を認識されて互いに余計な会話に費やさなければならない。それが面倒くさいので未然に防ぐようにしていた。

「そういや、スクールカウンセラーが来るらしいぜ」
「まじ? 男? 女?」
「噂だと男らしい。イケメンて話だ」
「えー、ホントかなぁ」

(スクールカウンセラー?)

 目の前の男女のグループの会話が耳に入る。

(まさか……ね)

 夢で見た来栖志門の事が頭をぎった。慌てて打ち消す。

(う、嘘……。どこまでが夢でどこからが現実なの? ていうか、一部正夢、えーと、つまりなんだ、えーと……名前と容姿だけ正夢というか、予知夢?)

 表面上はいつもと変わらず沈着冷静無表情、気配はひっそり空気と同化しつつ、薔子は内心動揺しまくっていた。

『凄いカッコ良くない?』
『やべー、イケメンだ』
『独身かな?』
『彼女はいそうじゃね?』
『いくつぐらいだろ?』

 壇上には漆黒の長い髪を後ろに一つに束ね、恐ろしいほど整った顔立ちの美貌の若い男。深く澄んだ紫色の瞳が神秘的で、白いワイシャツに黒のスーツが長身細身、長い手足を引き立てる。そんな彼を見てざわめく生徒たち。
 朝のホームルームの後、臨時で全生徒たちは体育館に集合させられたのだ。

「こちらは来栖志門先生。産休でお休みに入った宮野久枝先生の代わりに来てくださいました。基本的に月金土の週三回いらして頂きます。来栖先生は心療内科の先生でもあります」

 やや小太りの、人の良さそうな中年男という雰囲気を持つ教頭が、彼を紹介する。

「ただ今紹介に預かりました来栖志門と申します。何でもお気軽にご相談くださいね」

 落ち着いて深みのある、よく通る声、とろけるような笑顔で、彼は優雅に会釈をした。

『キャー! 素敵』

 とあちこちで女子の黄色い声がこだまする。

(やっぱり、名前と容姿と声、でスクールカウンセラー、という部分だけ予知夢……て事よね)

 薔子は無理矢理自分を納得させる。
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