深紅の愛「Crimson of love」~モブキャラ喪女&超美形ヴァンパイアの戀物語~

大和撫子

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第十二話

まさかまさかの三角関数???・その二

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「薔子嬢様、お帰りなさいませ」
「あ、寺本さん、ただ今」
「今日も後でハウスに行かれますかな?」
「うん、そのつもり」
「畏まりました。温かくしてお湯もセットしておきます」
「あ、有難う。あとね、モグも連れて行くから」
「ケージのご用意ですね、お任せを」
「助かるわ、じゃ、あと30分後くらいに」

 寺本は丁寧に頭を下げ、学校から帰宅した薔子を見送った。そのまま薔子ハウスに足を運ぶ。窓を開けて空気を入れかえ、床を掃きテーブルや窓を拭く。そして出窓に設置されたモルモットのケージの床に牧草を敷き詰め、水差しに水を入れる。そして餌皿に固形の餌を入れた。牧草や固形餌はハウスの棚に予め用意されているようだ。

 全ての作業が流れるように自然で素早く、無駄が無い。薔薇や水仙をはじめとしたミニ花壇の状態やクリスマスローズや胡蝶蘭等の鉢植えの花々を素早くチェックする。

(このところ、お嬢様がとても楽しそうで。花々も影響を受けて生き生きとしておるわい。……誰ぞ、気になる御方でも出来たのかもしれんな)

 彼は嬉しそうな笑みを浮かべると、満足そうに頷きその場を後にした。

 それからおよそ20分後、ハウスのドアが開く。スマホと薄緑色の手帳を抱え青いスエット上下にグレーのダウンジャケットを羽織った薔子だ。その腕の中に、ちょこんとおさまっているモグ。

 薔子はテーブルにスマホと手帳を置くと、モグをケージに入れた。そして

「さて、次のデート先の候補かぁ。気になるのは、小野篁とか小野小町の真相とか、アーサー王の真実とかだけど……タイムスリップとかはまた異世界と違うだろうしねぇ。歴史を狂わせるのはダメ、て言うし。どうしようかなぁ」

 と呟き、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。

「うーん……他にはゲームの世界へ行ってみるとか。勇者とかウィッチとかヒーラーとかになりきってみるのもいいなぁ……。ゲームの世界に転生、て少し前に流行ったよね」

「なるほどねぇ。それも楽しそうだね」

 突然目の前から柔らかな声が響く。耳に心地よく、密かに心のどこかで待ち望んでいた声。

「あ、志門先生!」

 自然に声が弾む。向かい側の席に、彼が微笑んでいた。

「来て頂けたんですね。……でも、今日はまだ心療内科のお仕事の時間じゃ……」
「うん、そうなんだけどね。休憩時間なんだ。40分ほどなんだけど、どうしても顔が見たくなってね」
「そんな……」

 薔子は気恥ずかしくなってそのまま俯いた。頬が火照る。

「ゲームの世界にね。それは構わないけど……それだと他にパーティーを組まないといけないだろ? 女の子限定でもいいかい?」
「……別に構わないですけど、どうして女子限定なんですか?」
「うん? うん……それは……その……」

 志門にしては珍しく、目を反らして上を向く。なんだかとても言いにくそうだ。不思議に思って薔子は小首を傾《かし》げる。

「そ、それはさ。男の子と一緒に組んで、協力し合うの見るの……それを穏やかに見守るほどには、自信ないから……だから……ね」

 しどろもどろに理由を述べ、へへへ、と照れくささを誤魔化すようにして笑う彼。何の事か分からずキョトンと彼を見つめる薔子であったが、ふと思い当たる。

(……まさか、これって、これって……これってさ、いわゆるヤ・キ・モ・チ、てヤツ??? キャーーーーーッ照れるわ薔子ったらぁ)

 一気にボッと顔に火がついた。視線がかち合い、同時に互いの顔が茜色染まっているのを見て弾かれたように目を反らしあう。

 花々が楽しそうに彼らを見つめていた。
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