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第十二話

まさかまさかの三角関係???・その四

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「何か方法があるのですか?」

 薔子は瞳を輝かせた。眼鏡越しに見える瞳も、キラキラして見えるほどに。

「うん。直接タイムスリップしちゃえば、予想しているように、歴史を狂わせる事になりかねない。髪の毛一つ落としただけで駄目だと言われているくらいだからな。だけど、過去に遡って時空を一つ隔てれば、直接触れたりする心配はないんだ」

「それってつまり……」

「つまり、時空を一つ隔てるとは『透明のバリア』越しに過去の出来事を見る、と言う感じな。そうだな、体感的には、3D映画を見ているような感じか。至ってリアルに体感するが、実際は『透明のバリア』つまり時空を一つ隔てて見ているだけだから、触れる事は不可能」

「時空が違うから、実質はただ見ているだけ。という事ですね!」

「そういう事。それでも良いかい?」

「勿論です! わぁ……そうだったら良いな、なんて思ってる事が現実になるなんて! 生きてて良かったですっ」

「ハハハ、大袈裟な。じゃあ、改めて聞くけど何処に行きたい?」

「んー……迷いますねぇ。どうしようかなぁ」

「じゃあ、決まったら連絡して。そろそろ仕事場に戻るよ」

「もうそんな時間ですか! はい、分かりました」

「じゃ、またね。少しの時間だけど、楽しかったよ」

「私もです、有難う御座います」

 志門は微笑みながら軽く右手を振る。薔子も右手を降って笑顔で応じた。彼はそのまま空気に溶け込むようにしてスッと消えた。

「ほんの5分くらいの時間のつもりだった。楽しい時間は過ぎるの早いわね」

 薔子は満足そうに呟いた。



(さて、一か八か……行ってみるか)

 その頃、仕事が一段落ついたアドニスは薔子の元に行こうとしていた。

 
 サラサラサラと川のせせらぎの音が携帯から響く。linerの着信音だ。誰だろう? と携帯を手に取ってみる。

「あれ? 志門先……志門さん?」

『そうそう、モルモットの子を飼ったんだね。可愛いね』

 キュルキュル、と窓辺に置いたケージの中からモグが甘えたように鳴く。

「あ、忘れてた訳じゃないのよ、モグ」

 携帯を左手にもったいないまま、ケージへと近づいた。モグは興味深そうに薔子を見上げる。

「可愛いな。ちょこん、てお座り出来るんだ」

 ケージの扉を開け、モグの頭を撫でた、

「ふかふかスベスベな手触り」

 口元を綻ばせる。そして返信を入力し始めた。

『はい。つい先日、家の近くに捨てられてたんです。「モグ」て名付けました。モグモグ食べるから』

 送信するとすぐに既読になった。

『へぇ? 捨てられてたモルモットなんて珍しいね。じゃ、仕事戻るね。またね!』
『モルモットが捨てられてるのなんて珍しいですよね。はい、お仕事頑張ってください。ではまた』

 既読にならないところをみると、仕事に入ったのだろう。linerての細やかなやり取りが嬉しくて、ふわふわと宙に浮いてるような気分だった。

 その頃、アドニスが薔子ハウスのドアの前に佇んでいた。

(何だよ、あのモルモットの使い魔。これみよがしに僕にあの子と志門のlinerのやり取りの映像を見せるなんて!)

 どうやら、モグが彼の脳裏に二人のlinerのやり取りの映像を魔術を使って送ったようである。

(わざわざあの子が拾うように演出した癖に、白々しい)

 忌々しげに思う。ドアをノックすべきか、立ち去るべきか考えあぐねながら。
 
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