ツクヨミ様の人間見習い

大和撫子

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第七話

マジですかぁ? 時には、人ではないクライアントも??? 【七】

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 「…とある集団とは…」

 粋蓮は長い睫毛を伏せ、目の前に置かれた水晶玉に両手の平を翳す。ここから見ても彼の睫毛の艶やかさと密度の濃さが分かる。最早天然の睫毛エクステンション、という感じか。水晶玉を使って霊視やら透視やら…というのはパフォーマンスなのだそうだ。道具を使わなくても出来るけれど、水晶玉というアイテムを通した見た目にも説得力にも差が出るそうだ。彼女は相変わらず「呪」と書かれた霊符を全身に貼り付けたままだ。

 見慣れてきたせいなのか、或いは隣にいる日比谷の存在に安心したのか、不思議な事にもうさほど恐怖を感じない。

 粋蓮はゆっくりと目を開けた。薄茶色とオリーブグリーンが混じり合った、ちょうどオーロラみたいな色合いになる。

 ……本当に、宝石の『アンダリュサイト』みたいだ……

 とつくづく思う。あたしなら、ただただその瞳に見惚れて悩み事なんか頭からぶっ飛びそうだ。そもそもそこまで悩む前に諦める癖がついてしまったから、ある意味楽観的と言えるのかもしれない。

 粋蓮は静かに語り始めた。

「……それは、天使など所謂と呼ばれる存在をこよなく崇拝する集団でしょうか?」

 かなりボカしてはいるけれど、何となくどういった集団を示すのか分かった気がした。クライアント自らが話易いように敢えてそうしているのだ。

「え? あ、はい。そうなんです。最初は、普通に置物として生まれただけだったんです。どなたか、大切にしてくださる方の元に行けたら良いな……と思ってたんですけど。最初の頃はとても穏やかだったんです。でも、どういう訳か一人増えて。二人、三人、と。気付いたら何だかよく分からない事になっていて」

 彼女はぽつりぽつりと話し始めた。どうやら彼女は置物としてこの世に誕生したらしい。

『よく目を凝らして見てみな。何か変化して視えるかもしれんぞ』

 脳内に、日比谷の声が響く。言われるままに、彼女を凝視した。話す事に夢中で、こちらを振り返る心配も無さそうだ。

「気づいたら、何故かこのように感じで、人型になっていて。それで、体中が重くて仕方無いんです」

 あっ! と声をあげそうになるのを辛うじて抑えた。呪と描かれた霊符が張り巡らされた彼女の体がスーッと透け、椅子の上には高さ20cmほどの白い天使をかたどった置物が置かれているように見えて来たのだ。

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