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第五話
顔が見えない世界での絆やご縁って? その一
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火曜日の午前9時頃、早乙女みのりは自然に目が覚めた。ベッドからおりて窓を開けてみる。
「いい天気だなぁ」
思わずそう呟くほど、澄み切った蒼天だ。雲一つない。日の光が少しひんやりした空気を柔らかくさせている。9月後半、世間ではシルバーウィークがどうのとか浮かれている頃だ。今年は暦上では9月中に二回ほど土日月休みとなっている。
けれども今年の「フォーチュン喫茶『本源郷』」は平常通り、6時から21時まで。定休日は火曜水曜のままだ。今日は久々に何の予定も入っていないオフの日だった。今日は職場から借りて来た本を読んだり、趣味で書いているブログを気ままに更新したりしてのんびりと過ごすつもりだ。
キッチンに行ってまずはお湯を沸かす。レトルトのコーンスープにトーストに蜂蜜をつけて食べようと、冷蔵庫から食パンを取り出す。
よく見ると、みのりの部屋にはあちこちにイカのフライやいくら寿司や、オムライスなどの食品サンプルが飾られている。結構な数だ。みのりは食品サンプルを作る事を趣味にしていた。それにハマっていることをたまたま行きつけの喫茶店で話したところ、アルバイトに誘われたのがきっかけで「本源郷」で働くようになった。今では調理担当の小椋蒼介《おぐらそうすけ》が作ったものを、美しく美味しそうに盛り付けてく事を主に担当している。現在25歳、初めて「本源郷」を訪れたのは大学2年の頃だ。
『世界でたった一冊の本を、あなたのお悩みに合わせてお選びします』
というキャッチフレーズが気になって、思い切って予約して訪れたのが切っ掛けだ。当時付き合っている彼氏に二股をかけられていた事が発覚。それも相手はみのりと仲の良い子だっただけに激しいショックを受けた。初対面で感じた友達のオーラが暗く濁っている点、彼氏のオーラの影の理由が分かった気がした。
みのりはその人と波長が合ったり、メンタルや体調面が調子良い時、その人の持つオーラが視えるという体質を持っていた。
みのりによれば、オーラは人によって色が異なる。一色の人もいれば数色の人もいるようだ。みのりが視た範囲でいえばオーラの色は15色ほどで、色によってその人の性質やメンタルの状態が推測出来るらしい。そもそもオーラとはスピリチュアルの分野であり、科学のメスが届き切っていない分野である。まだまだ未知のものだ。その為、様々な流派によって解釈も色の種類も異なるのだ。
故に、ここではみのりの視点を通しての解釈とさせて頂こう。
そもそもオーラとは、生命体の内面から湧き出て体全体を囲むようにして覆われているエネルギーの事を指す。それは七層に分かれており、一番外側の部分の色で何色か判断する。これらは、電磁波や波動、または生体エネルギー、或いは波長と表現される事もあり、その人全体の雰囲気を現している。
それぞれと初対面の際、オーナーのオーラは情熱溢れるオレンジ色、華乃子は冷静で世話好きな青、真帆は慈愛に満ちた藍色、彰仁は癒しの緑色、小椋蒼介《おぐらそうすけ》は穏やかな水色、そして幽霊太宰は芸術と神秘の紫色だろう、と感じとったようだ。尤も、このオーラの色は本人の生活環境などで色が変わったりする事は大いに有り得る。例えば、ある子育て中の母親のオーラの色はバイタリティー溢れる赤だったとする。しかし、子供が手のかからない時期に来たらオーラの色は落ち着いた青色に変化していたりなど、よくある事だ。
(太宰先生がオーナーから紹介された時は本当に驚いたなぁ。幽霊なんて生まれて初めて視たし。体は透けているけれど結構はっきり視えるんだもの。紫色のオーラまで視えちゃうくらいに)
そう思いながら、みのりはふと、最近ほとんど放置していたSNSのサイトを開いてみた。
(そういえば最近、美恵子と話してないなぁ。元気かなぁ)
と思いながら。恵美子は食品サンプル作りの趣味を共通に持つSNS上の友達の事である。そもそも食品サンプル作りは、みのりがオーラの視える体質を変えたくて始めてみた紙粘土で動物などを作っていた事が切っ掛けだった。
携帯でSNSの画面を開きながら、ふと過去を振り返る。
幼い頃は、オーラなど知らなかったし、なんだか人によって色で覆われている人、何も覆われていない人。この二つに分かれる事を不思議に思いつつも、「大人になれば分かるだろう」と特に気にもせず、それどころかそれが普通の感覚なのだと思っていた。
けれども、保育園に行って初めてみんなでお絵描きをした際に自分の視覚は普通とは異なるという事を思い知った。担任の保育士さんと自分を描いたのだ。目に映る通りに担任の全身に、上半身は水色、下半身は緑色が覆うようにして。自分自身には何も視えないので色は塗らずに。すると
「おまえへんだよ。なんでせんせいにいろなんかついてんだよ」
それを見た子たちが口々におかしいと言い始めた。
「え? へんじゃないよー。みんなだっていろはついてる子いるじゃん」
不思議そうに言い返す。
「うそつき-! こいつおかしいぞ」
「うん、おかしい」
「やーい、へーんたーい」
「いやん、こいつへんたーい」
口々に囃し立てられ、みのりの周りをクラス中の子たちが取り囲んだ。ショックだった。そこで初めて、自分の視覚は普通とは違うらしい、と気づいたのだ。すぐに先生がやってきてその場はおさまったが、みのりにはトラウマとして残った。その担任と一対一で話し合う。
「いい天気だなぁ」
思わずそう呟くほど、澄み切った蒼天だ。雲一つない。日の光が少しひんやりした空気を柔らかくさせている。9月後半、世間ではシルバーウィークがどうのとか浮かれている頃だ。今年は暦上では9月中に二回ほど土日月休みとなっている。
けれども今年の「フォーチュン喫茶『本源郷』」は平常通り、6時から21時まで。定休日は火曜水曜のままだ。今日は久々に何の予定も入っていないオフの日だった。今日は職場から借りて来た本を読んだり、趣味で書いているブログを気ままに更新したりしてのんびりと過ごすつもりだ。
キッチンに行ってまずはお湯を沸かす。レトルトのコーンスープにトーストに蜂蜜をつけて食べようと、冷蔵庫から食パンを取り出す。
よく見ると、みのりの部屋にはあちこちにイカのフライやいくら寿司や、オムライスなどの食品サンプルが飾られている。結構な数だ。みのりは食品サンプルを作る事を趣味にしていた。それにハマっていることをたまたま行きつけの喫茶店で話したところ、アルバイトに誘われたのがきっかけで「本源郷」で働くようになった。今では調理担当の小椋蒼介《おぐらそうすけ》が作ったものを、美しく美味しそうに盛り付けてく事を主に担当している。現在25歳、初めて「本源郷」を訪れたのは大学2年の頃だ。
『世界でたった一冊の本を、あなたのお悩みに合わせてお選びします』
というキャッチフレーズが気になって、思い切って予約して訪れたのが切っ掛けだ。当時付き合っている彼氏に二股をかけられていた事が発覚。それも相手はみのりと仲の良い子だっただけに激しいショックを受けた。初対面で感じた友達のオーラが暗く濁っている点、彼氏のオーラの影の理由が分かった気がした。
みのりはその人と波長が合ったり、メンタルや体調面が調子良い時、その人の持つオーラが視えるという体質を持っていた。
みのりによれば、オーラは人によって色が異なる。一色の人もいれば数色の人もいるようだ。みのりが視た範囲でいえばオーラの色は15色ほどで、色によってその人の性質やメンタルの状態が推測出来るらしい。そもそもオーラとはスピリチュアルの分野であり、科学のメスが届き切っていない分野である。まだまだ未知のものだ。その為、様々な流派によって解釈も色の種類も異なるのだ。
故に、ここではみのりの視点を通しての解釈とさせて頂こう。
そもそもオーラとは、生命体の内面から湧き出て体全体を囲むようにして覆われているエネルギーの事を指す。それは七層に分かれており、一番外側の部分の色で何色か判断する。これらは、電磁波や波動、または生体エネルギー、或いは波長と表現される事もあり、その人全体の雰囲気を現している。
それぞれと初対面の際、オーナーのオーラは情熱溢れるオレンジ色、華乃子は冷静で世話好きな青、真帆は慈愛に満ちた藍色、彰仁は癒しの緑色、小椋蒼介《おぐらそうすけ》は穏やかな水色、そして幽霊太宰は芸術と神秘の紫色だろう、と感じとったようだ。尤も、このオーラの色は本人の生活環境などで色が変わったりする事は大いに有り得る。例えば、ある子育て中の母親のオーラの色はバイタリティー溢れる赤だったとする。しかし、子供が手のかからない時期に来たらオーラの色は落ち着いた青色に変化していたりなど、よくある事だ。
(太宰先生がオーナーから紹介された時は本当に驚いたなぁ。幽霊なんて生まれて初めて視たし。体は透けているけれど結構はっきり視えるんだもの。紫色のオーラまで視えちゃうくらいに)
そう思いながら、みのりはふと、最近ほとんど放置していたSNSのサイトを開いてみた。
(そういえば最近、美恵子と話してないなぁ。元気かなぁ)
と思いながら。恵美子は食品サンプル作りの趣味を共通に持つSNS上の友達の事である。そもそも食品サンプル作りは、みのりがオーラの視える体質を変えたくて始めてみた紙粘土で動物などを作っていた事が切っ掛けだった。
携帯でSNSの画面を開きながら、ふと過去を振り返る。
幼い頃は、オーラなど知らなかったし、なんだか人によって色で覆われている人、何も覆われていない人。この二つに分かれる事を不思議に思いつつも、「大人になれば分かるだろう」と特に気にもせず、それどころかそれが普通の感覚なのだと思っていた。
けれども、保育園に行って初めてみんなでお絵描きをした際に自分の視覚は普通とは異なるという事を思い知った。担任の保育士さんと自分を描いたのだ。目に映る通りに担任の全身に、上半身は水色、下半身は緑色が覆うようにして。自分自身には何も視えないので色は塗らずに。すると
「おまえへんだよ。なんでせんせいにいろなんかついてんだよ」
それを見た子たちが口々におかしいと言い始めた。
「え? へんじゃないよー。みんなだっていろはついてる子いるじゃん」
不思議そうに言い返す。
「うそつき-! こいつおかしいぞ」
「うん、おかしい」
「やーい、へーんたーい」
「いやん、こいつへんたーい」
口々に囃し立てられ、みのりの周りをクラス中の子たちが取り囲んだ。ショックだった。そこで初めて、自分の視覚は普通とは違うらしい、と気づいたのだ。すぐに先生がやってきてその場はおさまったが、みのりにはトラウマとして残った。その担任と一対一で話し合う。
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