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第七話
文豪、恋の手ほどき?! その二
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夜の休憩時、芥川と太宰が見守る中タロットを展開している真帆。鑑定結果を見ながら口を開く。
「う-ん、やっぱりどの方向から占っても『彼の自主性に任せよ』と出ますねぇ。占い抜きにしても、お二人のプライベートな問題ですし、あまり口を突っ込むのは気がすすみません。『二人を見守り、必要な時が来たら協力を惜しまない体制を整える』タロットもそう示しています」
『私も同意見だよ。二人がもどかしくて何とかしてやりたくなる気持ちは分からんでもないけど、こればっかりはねぇ。まぁ、何をどうやってもくっつく時はくっつくし、離れる時は何をしても離れる。御縁てそんなもんさ』
芥川は太宰に半ば諭すように話した。大ファンの芥川に言われたとあって、首を縦に振るしかできない太宰。だが、何かを言いたそうだ。
『だけど、どうしてそんなに世話を焼きたがるんだい?』
芥川は不思議そうに問いかけた。
「あ、私もそれずっと感じてました。確か生前は……」
真帆はそこまで言いかけてハッと気付いたように言葉を止める。
『生前は、自分勝手で周りに甘えまくってた、て言いたいんだろ?』
太宰は苦笑しながら、真帆が言いかけた言葉を続けた。
「あ、いえ、そんな……」
『隠さなくてもいいよ。卒論の件で僕の事調べながら、散々言ってたじゃないか』
「あ、その、それは……」
『いいよ。別に。他にも言ってる奴沢山いるしさ。今にして考えたら、そう言われても仕方ないと思うし。だから……』
今度は太宰がそこまで言いかけて、何かに気付いたように口をつぐんだ。そして取り繕うように芥川と真帆に笑顔を向ける。
『じゃ、この件は様子見だね。僕、気になる本見つけたから、行くね。じゃ、芥川先生、また』
と早口で言うとスッと消えた。
『彼も訳あり、か』
芥川は太宰が消えたあたりを見つめながらポツリと言うと、真帆に笑いかける。
「私も暫くここにご厄介になりそうだ。気になる本が沢山あるから、片端から読ませて頂きたい。今日のラストの時に、オ-ナ-夫妻にキチンとご挨拶するよ」
と言うと彼もまたスッと消えた。
「『何をどうやってもくっつく時はくっつくし、離れる時は何をしても離れる。御縁てそんなもんさ』か。確かに! だから、みのり先輩の恋は実ると良いなぁ。せっかく両思いなんだもの」
真帆はほんの少し寂しそうに呟いた。
それから数日が過ぎた。芥川龍之介はしっかりとオーナー夫妻とスタッフ全員に挨拶をし、堂々と店内の本を読み漁る日々が続いている。本好きの従業員たちばかりが集まっているのだ。オーナー夫妻始め全員が歓喜して大歓迎だったのは言うまでもない。幽霊であるのは、太宰の件で既に慣れてしまっていたのもあるだろう。
芥川によると、このタイミングで現れたのはここ何年かで文豪人気の波がやって来て、新たに作品にも注目が集まった事。あちらの世界で少しゆっくりしていたのだが、そろそろまた新しい作風に挑戦してみたくなったらしい。そこで、現在はどのような小説が讀まれたり書かれたりしているのか? キャラクター小説やライトノベルとはどのようなものかを調べに来たという。調べた結果、「本源郷」の『世界でたった一冊の本』というフレーズが気に入ったのと、本当に書く事が好きな人が溢れる情熱のまま純粋な気持ちで書いたものに無性に惹かれた、との事だった。
(……何だかここのところ蒼介先輩、元気ない気がするなぁ。どうしたのかなぁ)
昼休憩中、食事を済ませてボーッとしながら、彰仁は何となく気になっていた事を思う。
(どうしたのか、て言えば太宰先生も、芥川先生が幽霊で出現した訳を皆に説明している時「僕もそんな感じです」なんて話合わせたけど……なーんか嘘臭いんだよなぁ。訳有り、て感じ。太宰先生……)
『僕が、何だって』
「う、うわぁっ!」
ちょうど思い出していた張本人が突如として目の前に出現し、驚いた拍子に椅子から転げ落ちそうになる。
「あ、太宰先生。すみません、ボーッととりとめのない事を考えていたから、びっくりしちゃって……」
『とりとめの無い事、ねぇ……。ま、いいや。それより蒼介君の事なんだけどさ、何だか元気ないよね』
「あ、はい。思いました」
『タイミング見てさ。こっそり話聞いてあげてよ』
「え? あ、あぁ、はい。でも太宰先生、何かご存知なんですか? 急にそんな事言って」
『えっ? い、いや、何も知らないけど、男は男同士、しかも仕事仲間の君の方が、彼も心を開き易いかなー、と思ってさ。ま、頼むよ』
太宰は少し慌てたようにそう言うと、スッと消えた。
(うーん、天才作家先生だけあって、何を考えてらっしゃるのかよく分かんないや)
彼が消えた後を見つめながら、彰仁は苦笑した。
「う-ん、やっぱりどの方向から占っても『彼の自主性に任せよ』と出ますねぇ。占い抜きにしても、お二人のプライベートな問題ですし、あまり口を突っ込むのは気がすすみません。『二人を見守り、必要な時が来たら協力を惜しまない体制を整える』タロットもそう示しています」
『私も同意見だよ。二人がもどかしくて何とかしてやりたくなる気持ちは分からんでもないけど、こればっかりはねぇ。まぁ、何をどうやってもくっつく時はくっつくし、離れる時は何をしても離れる。御縁てそんなもんさ』
芥川は太宰に半ば諭すように話した。大ファンの芥川に言われたとあって、首を縦に振るしかできない太宰。だが、何かを言いたそうだ。
『だけど、どうしてそんなに世話を焼きたがるんだい?』
芥川は不思議そうに問いかけた。
「あ、私もそれずっと感じてました。確か生前は……」
真帆はそこまで言いかけてハッと気付いたように言葉を止める。
『生前は、自分勝手で周りに甘えまくってた、て言いたいんだろ?』
太宰は苦笑しながら、真帆が言いかけた言葉を続けた。
「あ、いえ、そんな……」
『隠さなくてもいいよ。卒論の件で僕の事調べながら、散々言ってたじゃないか』
「あ、その、それは……」
『いいよ。別に。他にも言ってる奴沢山いるしさ。今にして考えたら、そう言われても仕方ないと思うし。だから……』
今度は太宰がそこまで言いかけて、何かに気付いたように口をつぐんだ。そして取り繕うように芥川と真帆に笑顔を向ける。
『じゃ、この件は様子見だね。僕、気になる本見つけたから、行くね。じゃ、芥川先生、また』
と早口で言うとスッと消えた。
『彼も訳あり、か』
芥川は太宰が消えたあたりを見つめながらポツリと言うと、真帆に笑いかける。
「私も暫くここにご厄介になりそうだ。気になる本が沢山あるから、片端から読ませて頂きたい。今日のラストの時に、オ-ナ-夫妻にキチンとご挨拶するよ」
と言うと彼もまたスッと消えた。
「『何をどうやってもくっつく時はくっつくし、離れる時は何をしても離れる。御縁てそんなもんさ』か。確かに! だから、みのり先輩の恋は実ると良いなぁ。せっかく両思いなんだもの」
真帆はほんの少し寂しそうに呟いた。
それから数日が過ぎた。芥川龍之介はしっかりとオーナー夫妻とスタッフ全員に挨拶をし、堂々と店内の本を読み漁る日々が続いている。本好きの従業員たちばかりが集まっているのだ。オーナー夫妻始め全員が歓喜して大歓迎だったのは言うまでもない。幽霊であるのは、太宰の件で既に慣れてしまっていたのもあるだろう。
芥川によると、このタイミングで現れたのはここ何年かで文豪人気の波がやって来て、新たに作品にも注目が集まった事。あちらの世界で少しゆっくりしていたのだが、そろそろまた新しい作風に挑戦してみたくなったらしい。そこで、現在はどのような小説が讀まれたり書かれたりしているのか? キャラクター小説やライトノベルとはどのようなものかを調べに来たという。調べた結果、「本源郷」の『世界でたった一冊の本』というフレーズが気に入ったのと、本当に書く事が好きな人が溢れる情熱のまま純粋な気持ちで書いたものに無性に惹かれた、との事だった。
(……何だかここのところ蒼介先輩、元気ない気がするなぁ。どうしたのかなぁ)
昼休憩中、食事を済ませてボーッとしながら、彰仁は何となく気になっていた事を思う。
(どうしたのか、て言えば太宰先生も、芥川先生が幽霊で出現した訳を皆に説明している時「僕もそんな感じです」なんて話合わせたけど……なーんか嘘臭いんだよなぁ。訳有り、て感じ。太宰先生……)
『僕が、何だって』
「う、うわぁっ!」
ちょうど思い出していた張本人が突如として目の前に出現し、驚いた拍子に椅子から転げ落ちそうになる。
「あ、太宰先生。すみません、ボーッととりとめのない事を考えていたから、びっくりしちゃって……」
『とりとめの無い事、ねぇ……。ま、いいや。それより蒼介君の事なんだけどさ、何だか元気ないよね』
「あ、はい。思いました」
『タイミング見てさ。こっそり話聞いてあげてよ』
「え? あ、あぁ、はい。でも太宰先生、何かご存知なんですか? 急にそんな事言って」
『えっ? い、いや、何も知らないけど、男は男同士、しかも仕事仲間の君の方が、彼も心を開き易いかなー、と思ってさ。ま、頼むよ』
太宰は少し慌てたようにそう言うと、スッと消えた。
(うーん、天才作家先生だけあって、何を考えてらっしゃるのかよく分かんないや)
彼が消えた後を見つめながら、彰仁は苦笑した。
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