異世界で邪神を拾ってしまった

ミナヅキ@jasin

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ラスティアの街

魔物氾濫

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「たっ大変です! 魔物氾濫まものはんらんが発生しました!!!」

そう言いながら、駆け込んで来たのは兵士然とした若者だった。
息を切らすほどの勢いで、駆け込んできた兵士の言葉に
先ほどまで、肩身の狭そうにしていた冒険者達も、声を荒げて騒ぎ始める
前の、スタンピード魔物氾濫からほとんど間が空いていないとか、そういった声が目立つ。

「落ち着け! 発生しただけじゃわからん、どこで起きたんだ?」

「は、はい、発生場所は妖精の森ですっ!」

「なんだとっ!? それは確かなんだな?」

ふむ、妖精の森というのは、魔の森の事で間違いないだろう。

魔の森というのは通称で、プレイヤーが迷い込んできた時期から
森から、魔の存在が出てくるようになり、魔の森と呼ばれるようになった。
という事をNPCが話してくれる、妖精の森なんて呼ぶプレイヤーは居なかった。

どうやら、話を聞いていると今すぐにでも、人を集めて対処しに行くようだ。

スタンピード魔物氾濫というのは名前通りに、大量の魔物がポップ出現する現象の事だ。
まるで川が氾濫したように大量に沸いて出てくるので
そう呼ばれている、特に1人のプレイヤーの逸話がある。

一度のスタンピードで20分以上、戦い続けていた動画だ
その動画では魔物相手に奮闘したが、次第に魔物の波に飲まれて押されていった。
撮影主は最後にデスポーン死に戻りして理不尽を叫ぶというオチがついたのだが…………

今回のスタンピードの規模はどれくらいなんだろうか。
20分以上続くとすれば、彼らは無事に帰ってくるのか?
彼らがどの程度、継続して戦えるのか、わからない。
少なくとも、実戦経験で言えば、彼らの方があるだろうが……

もし、スタンピードを止める事ができなければ、安全な場所がなくなる。

それは困るし、殺す覚悟は決めたんだ、規模が想定外なだけだ。
いつか直面する問題だった、モンスターが闊歩かっぽしているこの状況で
戦えないヤツはいつ殺されてしまうかもわからないのだから。

自分の意思で、戦いに身を投じるため討伐隊の集合場所、北門へと向かっていく。

「ビビるんじゃねぇぞ!? ラスティアはオレらの手で守るんだ!」

そこではリーダーらしき人物が、周りを鼓舞していた。
それなりの数の人間が、近くの相手とパーティーを組んでいるのが見える。
作戦としては街から離れた場所まで向かい、そこで迎撃するようだ。

「パーティーは作り終わったな? 行くぞおおおおおお!」

「「うおおおおおおおおおお!!」」

街の外へと走りだした集団に、置いていかれないように
追随して走る、パーティーは組めてないが。

魔術陣を重ねて威力を上げるスタイルのオレにとっては、都合もよかった。
10分程度走っただろうか、先頭のペースが落ちてきて
戦闘領域が近い事を予感させる。

「フォレストウルフだ! 全員、固まって動け!」

厄介だな、元々が個ではなく群で戦うモンスターだ。
かなり素早く、相手が死ぬまで追いかけてくる。
しかも乱戦の時は森に紛れて、死角からも不意打ちされる。

ふと茂みに違和感を覚えてよく見ると。

既にウルフ共に囲まれていた、こちらの集団の中ほどに
今にも飛び掛って来そうな、個体が居たので魔術を放つ。

「マジックバレット」

放った魔術が当たるのを見ずに近くにいるウルフへ向けて走る。

「もう囲まれてるぞっ! 対処しろ!」

わかりやすく声を掛けて、戦闘へと思考を切り替える。

突然、距離を詰められて反応できていないウルフを切りつける
次に近い相手に対して、3重に重ねたマジックバレットを放つ。
狙い違わず直撃し、頭からくりぬかれたように体を貫通していた。

「フィジカルブースト」

支援術式を発動させ、即座に場所を移動する。

奇襲に失敗したのがオレのせいだと気づいてるのか、かなりの数に囲まれてる。

こちらに向かって、正面から飛び掛ってきた相手に全力で剣を振りぬく。
ウルフを真っ二つに切り裂いて、そのままの勢いで反転してから横に飛び退く。

返り血を浴びる事なく、凄まじい速度で距離を空けて、驚く
一般的な身体能力ではありえない事象に、けれど戦闘中だと思い出す。

直前まで居た場所に飛びかかってきていたのも居たが無視する。
別方向から、3匹同時に向かって来た相手をマジックバレットで処理する。
次第に、感覚が鋭くなっていく、動きの無駄が無くなっていく。
(2匹は魔術で処理、右後ろに飛び退いてから、切り払う)

「ッ! マジカルバレット!」

死体に足を取られたが、即座に魔術を放ちカバーする、次はそうならないように
位置を常に変えながら戦っていると、視界に別のモンスターが目に入ってきた。

グリズリーと呼ばれるそいつは茶色の毛に
立てば6メートルにはなりそうな巨体。
でかい図体のくせに、フォレストウルフと同じ速度で動けるし
とにかくタフである事と、一撃の重さがあるモンスターだ。

周りに冒険者達が居ないことを確認したオレは。

確実に倒す為に、6重のマジカルバレットをグリズリーに向けて放つ。
避けれずに直撃したグリズリーは、原型を残さずに四散した。

呆けている暇も無く、フォレストウルフがこちらに向かって来る。
死体で動きが阻害される前に、場所を移動する。

そうして、辺り一帯を赤色に染めながら、ウルフを倒していった。
周囲を殲滅せんめつし終わった後は、人の声が聞こえてくる方へと向かっていく

「クソッ! いつまで出てくるんだよ!!!」

「後少しの辛抱だ! 体を動かせッ!」

こっちもかなり数が減っている、悪態をつきながらも
危なげなく戦っているので、問題は無さそうだと思っていたら
ウルフを仕留められなくて、危うい動きをしているヤツが見えた。

背後から迫るウルフに気づかずに、目の前しか見ていない。

「バウンス」

上空に魔術壁を作り、そこに弾を当てる事で真下へと叩きつける魔術
発動速度が速く、威力もそんなにでなくて使い勝手のいい魔術だ。
わざわざ、助けられるのに見逃して、怪我させるのも良心が痛むしな。

助けた相手はウルフを仕留め、後ろにもう一匹居た事に驚きながらも倒していた。

「グリズリーが出やがった! フォレストウルフを近寄らせるな!!」

こちら側はもう数も少ないので、声がした方へと向かう

グリズリーと、危なげなく戦っている集団や
フォレストウルフを近づけさせないように、戦っている者。
ウルフを近づかせないほうが良さそうだと思い、手伝う。
グリズリーを倒したメンバーも加わりあっというまに殲滅した。

「氾濫が終わったぞ!」

戦闘が終わってから暫く、その場で警戒を続けていたが
向かって来る敵が居ないので、ようやく終了した。
安堵感から、お互いの無事を喜び合っている。

「やっと終わったな」

「ああ、今日はもう一日、宿で寝ていたいぐらいだ」

そこらの冒険者に話しかけたりした、討伐隊が全員弛緩しかんしきっている。

「は、氾濫はまだ終わってない! グリズリーが三匹出たぞっ!!!」

声のした方へ目を向けると確かにモンスターが居た。

ただのグリズリーではない、体長が一回りほど小さい。
グリズリーというのは小さい個体ほど強い固体だ。

そして、通常よりも小さい個体に挟まれているのは更に小さく。
5メートルあるかないかの大きさで、毛並みが
森に紛れる為なのか、緑と茶が混ざった色をしている。

魔の森の表ダンジョンボス、クレイジーベア。
先ほどのグリズリーとの戦闘を見た限りでは
クレイジーベアの側近すら、まともに戦えるかどうかわからない。
先頭集団が戦い始める前に、アイツらを引き離さなければ

「アイツはただのグリズリーじゃない、死にたくなかったら下がれ」

「あ!? どう見てもグリズリーだろうが! 分かれて戦うぞ!」

先頭集団に忠告はしたが、すぐさまクレイジーベアへと足を向ける。

後ろから声を掛けられるが、対処を間違えれば全滅すらありえる。
クレイジーベアだけでも引き離さなければできない。

10メートルは離れている距離を詰めていく。
途中、側近がこちらに向かって腕を振り下ろしてきた
剣でその腕を跳ね上げさせながら、奥に向かってマジックバレットを放つ。

それはクレイジーベアに命中したが、すぐさま位置を入れ替えて
冒険者達が背後に、いないようにする。

クレイジーベアとの距離は現在4メートルほど。
このモンスターと戦う時の注意点がいくつかあるのだが
一つはこの距離だ、死にたくなければ、戦うときは
決して、4メートル以上距離を空けるな――死にたくなければ――

突然に眼前まで迫るクレイジーベア。
腕を振り上げていたその相手に対して
ので剣を跳ね上げ、その巨体を軽々と打ち上げる。

4メートル以上離れた場合、恐ろしい速度で接近し。
必殺の一撃を繰り出してくる、という厄介な行動持ちだ。

バインドの魔術も使い、できる限りの足止めをして元の場所へと走る。

戻る途中にまたも側近が邪魔をしてくるが
足を切りつけ通り過ぎ、魔術で足止めをしておく。

冒険者達の叫び声がこちらまで届いてくる。

今にも、攻撃を受けそうになっていたヤツを助けるため。
腕を高く掲げている側近に対し、マジカルバレットを放つ。

「ソイツもオレが受け持つ! 退避しろ!」

間一髪で間に合ったが、呆然としていて動こうとしていない。

オレは確実に時間を稼ぐ為に、剣の間合いで打ち合う。
相手は二本の腕でこちらを狙ってくる。
跳ね上げ、回避し、鍔迫つばぜり合い、時間を稼ぐ。
足を止めて打ち合っているせいで、余裕が無くなっていく。

「退避できたぞ!」

その声を聞き、飛び退きながら魔術で牽制する。

クレイジーベアの方を見れば、そろそろ拘束が解けそうだった。

冒険者集団から離れるように、移動しながら考える。
表のボスとは言え、この程度なら三匹同時に相手しても
やられる事はないだろう、どうやって倒すかが問題だ。

一撃で仕留める必要がある、その上で考える。
これまで魔術の影響は考えていなかった。

ホーリーレイでは四散、マジカルバレットでは貫通、あるいは四散。
それでも、全力で放った魔術ではないのだ、もし大規模魔術を使えば
辺り一帯が、消し飛ぶ可能性だってある。

ゲームではいくら凶悪な魔術を使おうが、被害は無かった。
後先考えずに放ち、自分も含めて消し去るわけにはいかない。

少しでも被害が少なそうな魔術を重ねて放つのが一番マシか?
そうして、条件に合う魔術は無いかを必死に考えている。

考えが纏まり、念の為に魔術防御を上げる術符を使い。
魔術を構築していく、倒せないのが一番困るので6重まで重ねる。

先ほどまでと違う雰囲気を感じ取ったのか、距離を空けてきた。

偶然にもクレイジーベアと、側近2匹の距離は近い。
こちらにとって、都合が良かったのでそのまま発動まで持っていく。

「バウンスα」

――――光が周囲一帯に広がり、轟音が鳴り響いた――――
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