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大天使サリエルの視点より
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私は『天使』と呼ばれる存在である。
我々天使の役割は唯一神の意を汲み様々な仕事を熟すことである。時に悪魔と戦い、時に人を助け、時に人に試煉を与え、時に世界に災害を齎すこともある。
私はその中に在って天使を管理する地位にある者……名を大天使サリエルという。
天使は神の意こそが存在意義。故に感情というものは滅多に表に出すことはなく、たとえ人間の感情に触れたとしても冷静に役割を果たすことを義務付けられていた。そして天使自身もそれを誇りとして己が存在意義を日々全うしている。
しかし……ある日のこと──。
「失礼します、サリエル様」
天界。私の執務室に一人の天使が現れた。
「何か用か?」
「実は……天使の中に己の存在に惑う者がありまして……。サリエル様の御判断を仰ぎたく相談に伺いました」
「……わかった。話を聞かせて貰おう」
私が促すと来訪した赤髪の天使は報告を始めた。内容はある者が明らかに個人感情に流されているというものだ。信じられぬことだが天使の一体が『地上の人間から大きな影響を受け、天使としての役割を放棄しようとしている』と説明を受けた。
「その者の名は?」
「レルエルと申します」
「それで……【惑う】とは具体的にどのような状態なのか?」
「それが……泣き続けているのです」
「…………」
天使が涙を流すことは殆んどない。天使とて感情が無い訳ではない。ただ役割の妨げになるので感情を抑える術があるだけに過ぎない。
しかし……それにしても泣いてばかりというのは少々過剰である。それほどの哀しみに暮れては堕天する危険性も考慮せねばなるまいか。
「その者の役割は何だったのだ?」
「聖女に至る可能性のあった者の【守護天使】の役割を担っていました」
「ふむ……では、その者は聖女に?」
「いえ……残念ながら人としての生を選び天寿を全うしました」
「………そうか」
【聖女】は神の威光の証……その精神性を神が認め一度でも天啓を下せば天使同様の『奇跡の代行者』として扱われる。しかし、候補として守護天使が付く者さえ稀有で殆どは候補のままその生涯を終えている。
ここ数百年単位でも誕生したのは片手の指の数程だった。
子である人間が父なる神に認められ聖女となれば確かに喜ばしきことではある。だが、只人の生もまた大事な生き方。残念という言葉が正しいかは私にも判らないが、候補で終わることがその人物を否定している訳では無い。
「その守護天使の役割は、聖女候補が神の元へ召されるまで果たされたのか?」
「はい。正確には生誕から始めた守護の役割を八十七年の月日をかけ全うしました」
「成る程……。それ程の時を守護していたならば多少の感情の移入はやむを得まいな。そうとなれば、判断する為にも少し調べねばならぬだろう」
天使に影響を与える程の人生か、否か……。前者であるならば堕天に繋がる可能性は低い。長らく役目に就いていたとなれば天使にも休養を与えらるべきであり、そうすれば何れ感情も落ち着き再び役割へ邁進すると思われる。その際は神より許しを得て役割を変えることも可能である。
だが、後者ならば怠惰……または弱き心が原因である可能性が高い。それは天使に相応しいものではないと判断し“人に転生する”か”堕天する前に処罰“……最悪世界に仇為す前に存在を抹消される。
しかしながら、彼の天使が感じたものを知らぬまま判断するのでは正しい結論には至れまい。私は管理者として権限を用い『聖女になり得た者』の情報を確認する必要があるのだ。
大天使たる私は人の魂の護り手でもある。記録されたその生を見ることが可能であり、結果がどうあれ感情に流されるようなことは無いだろう。
『聖女になり得た者』の名はアビゲイル・フォスター。そして私は、判断の為に守護に付いていた天使の記録からその一生を追体験することにした──。
我々天使の役割は唯一神の意を汲み様々な仕事を熟すことである。時に悪魔と戦い、時に人を助け、時に人に試煉を与え、時に世界に災害を齎すこともある。
私はその中に在って天使を管理する地位にある者……名を大天使サリエルという。
天使は神の意こそが存在意義。故に感情というものは滅多に表に出すことはなく、たとえ人間の感情に触れたとしても冷静に役割を果たすことを義務付けられていた。そして天使自身もそれを誇りとして己が存在意義を日々全うしている。
しかし……ある日のこと──。
「失礼します、サリエル様」
天界。私の執務室に一人の天使が現れた。
「何か用か?」
「実は……天使の中に己の存在に惑う者がありまして……。サリエル様の御判断を仰ぎたく相談に伺いました」
「……わかった。話を聞かせて貰おう」
私が促すと来訪した赤髪の天使は報告を始めた。内容はある者が明らかに個人感情に流されているというものだ。信じられぬことだが天使の一体が『地上の人間から大きな影響を受け、天使としての役割を放棄しようとしている』と説明を受けた。
「その者の名は?」
「レルエルと申します」
「それで……【惑う】とは具体的にどのような状態なのか?」
「それが……泣き続けているのです」
「…………」
天使が涙を流すことは殆んどない。天使とて感情が無い訳ではない。ただ役割の妨げになるので感情を抑える術があるだけに過ぎない。
しかし……それにしても泣いてばかりというのは少々過剰である。それほどの哀しみに暮れては堕天する危険性も考慮せねばなるまいか。
「その者の役割は何だったのだ?」
「聖女に至る可能性のあった者の【守護天使】の役割を担っていました」
「ふむ……では、その者は聖女に?」
「いえ……残念ながら人としての生を選び天寿を全うしました」
「………そうか」
【聖女】は神の威光の証……その精神性を神が認め一度でも天啓を下せば天使同様の『奇跡の代行者』として扱われる。しかし、候補として守護天使が付く者さえ稀有で殆どは候補のままその生涯を終えている。
ここ数百年単位でも誕生したのは片手の指の数程だった。
子である人間が父なる神に認められ聖女となれば確かに喜ばしきことではある。だが、只人の生もまた大事な生き方。残念という言葉が正しいかは私にも判らないが、候補で終わることがその人物を否定している訳では無い。
「その守護天使の役割は、聖女候補が神の元へ召されるまで果たされたのか?」
「はい。正確には生誕から始めた守護の役割を八十七年の月日をかけ全うしました」
「成る程……。それ程の時を守護していたならば多少の感情の移入はやむを得まいな。そうとなれば、判断する為にも少し調べねばならぬだろう」
天使に影響を与える程の人生か、否か……。前者であるならば堕天に繋がる可能性は低い。長らく役目に就いていたとなれば天使にも休養を与えらるべきであり、そうすれば何れ感情も落ち着き再び役割へ邁進すると思われる。その際は神より許しを得て役割を変えることも可能である。
だが、後者ならば怠惰……または弱き心が原因である可能性が高い。それは天使に相応しいものではないと判断し“人に転生する”か”堕天する前に処罰“……最悪世界に仇為す前に存在を抹消される。
しかしながら、彼の天使が感じたものを知らぬまま判断するのでは正しい結論には至れまい。私は管理者として権限を用い『聖女になり得た者』の情報を確認する必要があるのだ。
大天使たる私は人の魂の護り手でもある。記録されたその生を見ることが可能であり、結果がどうあれ感情に流されるようなことは無いだろう。
『聖女になり得た者』の名はアビゲイル・フォスター。そして私は、判断の為に守護に付いていた天使の記録からその一生を追体験することにした──。
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