ソリティア 転生者の望まぬ隠遁生活

蒼村嬉享

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第一章 一人ぼっち

第一話 誰にも気づかれないのはとても寂しい

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 今、僕は朝の街を歩いている。

 そこは僕の見知った世界……ではない。文化レベルはちょっと進んでいてずっと空気が澄んでいる。


 神様から聞いたこの『セカイ』の名前は【カルムンド】。今居る国の名前はまだわからないけど、現代日本にソックリで言葉も文字も同じで文化も似通っている。

 それでも別の『セカイ』──僕はそれをひしひしと感じていた。

「痛いっ!」
「あ……悪い」

 ……。サラリーマン風の人とぶつかった。

 僕の名前は安岐川アユム──元の世界では高校生だったんだけど、『震災』ならぬ『神災』とやらで死んじゃった転生者。

 うん。記憶はしっかり残ってる。

「グハッ!」
「おや……ゴメンよ」
「い、いえ……」

 今度は配達業の人の手荷物が僕の腹部にぶつかった。人通りが多いな……流石は商店街。

 この『セカイ』は異世界だ……なんて言うとパラノイアを疑われそうだし証明手段も無いけど、やっぱり僕には異世界だという確信がある。


 前世の記憶を持ち越したから判るんだ。この『セカイ』は前のセカイと大きく違う点があることが……。

 何と言っても視界に入る緑の量が違う。元の世界では地域差はあるものの、商店街や住宅地は建物の比率が増えるのが当たり前だ。
 でも、このセカイでは緑の比率が高い。建物よりも自然の方が多いのが一目で判る程だ。

 商店街でさえ外壁や店先が緑。壁には蔦が絡んでいて、庭先には必ず花がプランターに入れられている。雑草が少ないことから、多分意図して取り組んでるんだと思う。

 建築物は高層ビル等は殆どない。建築基準が違うんだと思うけど、高さが低めの建物が多いかな……。

 地面をちょっと確認したらアスファルト製じゃなかった。何となく近い材質で出来た別物……このセカイの技術なのかな?見るものの多くが何て言うか自然に優しいって感じがする。

 ボス……じゃなかった、神様の事前説明では、この【カルムンド】っていう『セカイ』は世界規模で自然崇拝傾向にあるんだって。その為の法律があって、技術もかなり進んでいるそうだ。
 だから戦争というものも大規模破壊兵器は開発されないって言ってた。

 中には守らない国もあるみたいだけど、国連みたいな機関の規定に『破壊した自然の面積に比例した制裁を課す』というのがあるそうだ。破ったら国が借金苦、守らないと世界から孤立、元々自然崇拝思想が強いらしいからそこまでやる国もないみたいだった。

「って、痛っつぅ!?」
「あぁ! ゴメン、ゴメン!」

 何か怪しげな民族衣装の人に足を踏まれた……。

 時折……というか普通に通行人の中に混じってるけど、あの人達は何だろ?誰も気にしてる様子もないし……。
 具体的にはアイヌの民族衣装をカラフルにしたような……このセカイならではの宗教かな?

「ギャッ!」
「あぁ? テメェ、どこ見てやがる! 気を付けやがれ!」
「ス、スミマセン、スミマセン! ゴメンナサイ!」
「チッ!」

 ガラの悪そうなチンピラさんは、道に唾を吐いて去っていった。

 …………。

 今ので確信したけど、どうも僕は他の人から見えていないみたいだ。

 正確には気付かれていない……かな?肩が触れた、手を触った程度じゃ全く気付かれない。強めの体当たりでようやく気付くみたいだ……。

 …………。

 これはマズイ……。車に撥ね飛ばされて死んじゃう。

 今は歩道を歩いているから良いけど、それでもこれだけぶつかる訳だし……絶対にヤバイ。現状確認の探索も程々にして安全地帯へ避難しないと……。

 というか、何コレ……?確か神様は『恩恵を』って言ってたのに呪いの間違いかな?恩恵が何もない方がマシとか酷すぎる。確かに悪目立ちは嫌だと言ったけど、目立たないを通り越して『空気』にされるとは思わなかった。

 そもそも目覚めた時点で色々おかしいとは思ったんだ。転生って言ってたのに赤ン坊からじゃないし。もしかして記憶継続の副作用なのかな……?

 そして……ここでもう一つ問題があった。

 このセカイに来た僕が持っているものは今着ている服だけ。着替えもない、お金もない、住まいもないの無い無い尽くしだ。やったね!

 ………。

 ハァ~………。成る程……不幸って一度押し寄せると死んだ後も続くんだ。罰ゲームを受けるような生き方してなかったんだけどなぁ。

 『ホームレス転生』……いや、『転生したらホームレスだった件』、か……。


 あの神様、見た目はともかく気さくだった気がしたんだけど邪神様だったのかなぁ……。それで色々と交渉した結果が現状ってこと?

 アハハハ……何か涙が出てきた。




 
  
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