ソリティア 転生者の望まぬ隠遁生活

蒼村嬉享

文字の大きさ
6 / 34
第一章 一人ぼっち

第二話 ホームレス転生って現代基準で考えるとシビアだよね

しおりを挟む
 さてと……泣いてても仕方無い。けど、実際どうしよう?

 こんな呪い……じゃなかった、恩恵を与えられた身としては何とかしなくちゃならないんだけど、恩恵とか超能力とか何の知識もないからなぁ。手探りで行くしかないかな……。


 ともかく、腹は減るし寝るところもない。試しに街を歩いてみたものの、僕に気付くのは激突する人達ばかり。これじゃ直ぐに神様に合う前の暗闇に戻ることに……。
 見えないんだから盗みもやりたい放題と考える人も居るかもしれないけど……でも、それは最後の最後まで我慢しよう。

 それよりアルバイトでもしようかと思うんだけど認識されないんじゃ接客できないし、そもそも身元も怪しいんだよね……『どうも、転生者です!』は絶対通じないだろうし。

 という訳で先ず検証を──。

 体育会系の人に体当たりして実験したんだけど、しばらくすると僕のことは認識から消えちゃうらしい。だから再度体当たりしてみたら、前にぶつかったことさえ記憶に残っていなかった。つまり肉体労働も無理。だって、労働の成果も伝わらないし、仕事の様子も相手の記憶から消えちゃうみたいだから……。

 ………。正直、詰んだ。

 僕、何の為に転生したんだろ?いつまで生きられるんだろうか?地上に出た蝉だって実は数ヶ月生きるのにね……ハハハ。


 犯罪だけはどうしてもやりたくない。一度妥協すると当たり前になって罪の意識すら無くなっちゃう可能性があるから。だけど、限界が来たら自我を保てる自信がない。飢餓って地獄だって言うし何より僕は根性がある方じゃない。


 ともかく……人通りが多いところに居ると危険が目白押しなので、トボトボとこの『セカイ』で最初に目が覚めた神社へと向かう。街外れにあるちょっとだけ高台に建立された神社は、小さくてソコソコ古いけど割としっかりした造りだ。お陰で雨風は凌げると思う。布団も何もないけどね。

 石製の大きな鳥居と木製の小さな赤い鳥居があって、敷地内には大きな岩が幾つか置かれていた。あとは桜の樹が植えてあるみたいだけど季節外れで花は咲いていない。
 一応、賽銭箱もある。覗いてみたら何か手紙みたいなのが入ってたけど、誰かの気持ちが書かれていると思うと勝手に見れないので放置。他にもお金が入ってたけどもギリギリまで……本当にギリギリまで我慢しようと思う。

 そんな神社の社──入り口に一匹の灰色の……サバトラ猫が横たわっていた。

「…………」
「…………」
「………あの~……通して貰えないかな?」

 僕は無駄だと知りながら猫に問い掛けた。すると、まるで聞こえているかの様に尻尾が反応を示した。

 お、おお……これは、このセカイで初めて僕に気付いてくれてるのかな?

「も、もしかして聞こえてる? お話ししないかい?」

 今度の問い掛けには反応を示さない。

 やはり気のせい……そう思い項垂れた時、猫は面倒そうな溜め息を吐いて“のそり”と起き上がる。お前は太ったオバチャンか。

 起き上がった猫はしばらく僕を眺めた後、アクビをして社の扉が開く位置に避けてくれた。やっぱり言葉を理解してる気がする……。

「……ね、ねぇ? 言葉通じてる? というか喋れる? いや……流石に喋れないか……。そ、そうだ! もし僕が見えて言葉が分かるなら尻尾で答えられない? イエスなら縦、ノーなら横で……」

 最早なりふり構っていられない。これは孤独から脱する貴重な機会……猫でも何でも触れ合いが欲しいんだ。じゃないと心が世知辛い現実に押し潰される。

 猫は僕の問いに対して早速尻尾を縦に振った。これで会話が通じていることは確信した。

 そうとなれば仲良くなれるかもしれない。ずっと一人ぼっちでいるのが実は一番辛い。僅かな間でも意思が通じないのは地獄に落とされた気分だった。

「き、君はもしかして……転生者?」

 猫の尻尾は左右に動く。ノー……つまり転生者じゃないみたいだ。

「この『セカイ』……【カルムンド】ってもしかして不思議な力を持つ生き物が居るの?」

 今度は縦……。どうやら猫は不思議な力を持っているから意思疎通が可能なのかも……。

「僕、異世界から神様に送られて……あ、異世界転生って分かる?」

 イエスの反応……カルムンドでは異世界転生って割とポピュラーなのかな?

「あ、あのね? 僕は他の『セカイ』から異世界転生したんだけど、どういう訳か誰にも気付いて貰えなくて……は、恥ずかしいんだけど凄く怖くてさ……」

 猫の尻尾は円を描くように動いている。この場合は……どっちだろ?

「改めてお願いなんだけど、君が誰かに飼われているんじゃないなら僕の家族になって一緒に居てくれないかな?」

 しばらく尻尾を不規則に振った猫は再び溜め息を吐いた後、“イエス”の意思を見せた。

 その瞬間、僕は……嫌がる猫に縋り付いて大声で泣いた──。

 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。

いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。 「僕には想い合う相手いる!」 初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。 小説家になろうさまにも登録しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

処理中です...