ソリティア 転生者の望まぬ隠遁生活

蒼村嬉享

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第一章 一人ぼっち

第五話 生き物って大きさで種族名が変わるよね

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 廃工場で大勢の猫に囲まれる──これはある意味貴重な体験かもしれない……。

 僕が見えているならマウみたいに会話が通じるかな?考えてみればここは元の世界と違うんだし、猫の知能が高い可能性も無いとは言えない。

 ………それにしても鳴き声が凄いな。何だろ……品定めされてるんだろうか?猫同士の『ナァ~』っていう声がずっと聞こえるんだけど……御近所さんには御迷惑をお掛けしちゃってます。


 と、とにかく、このままじゃ何も始まらないし終わらない。一か八か……行方不明の猫のことを聞いてみよう。

「あ、あの~……ちょっと良いかな? 小学生くらいの女の子に頼まれたんだけど、五歳くらいのトラ猫を知らないかな?」
「………」
「………」
「………」

 一瞬ピタリと鳴き声が止んだ後、猫達はまた鳴き始めた。何コレ、怖い。

 そもそも情報が少なすぎるよね……たとえ知ってても喋れないし。いや……知ってたらマウに教えてくれるかな?そして、マウなら案内してくれると思う……。

 ゴメンね、マウ……頼りっぱなしで。


 と……しばらく鳴いていた猫がまたピタリと鳴き止んだ。今度は何だろ?

 ん?……暗い建物の奥から一際デッカイ黒猫が……いや……いやいやいやいやいや!デカイ!え?ね、猫?だって、大型犬くらいあるよ?それってもう、猫じゃなくて豹じゃないの?

 ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!食べられる!カブリと噛み付かれる!あ……こんな時にお腹が空いていたと改めて気付く。だって、朝から何も食べてないし……。

「あ、あの~……こちらのぬしさんでしょうか?」
「ンドゥナァ~ゥ」

 スッゴい重低音の鳴き声だ……。あ……何か毛並みが凄く綺麗。良く見れば胸元は毛が白いんだな……ちょっと撫でたいと思ったけど、無謀だよね。

 マウに視線を向けたら尻尾が縦に動いている。ま……これだけデッカくてぬしじゃないとかギャグでしか無いかな……。

 そんな『主さん』はゆっくりとマウの前に歩み寄るとペタリと腰を下ろした。

「ナァ~……」
「ンナァ~ウルァ」
「グナァ~ォ」
「ンフゥ~……。ニャ~」

 マウと主さんの対話が続いている。会話の内容がわからないって不便だ……。時折『主さん』のダンディな鳴き声に普通の猫のような可愛い声が混じる。くっ……笑ってはいけない。

 しばらくマウとのやり取りを行った『主さん』は僕を一瞥すると再び廃工場の奥に姿を消した。
 同時に猫達は散開。あっという間に僕とマウだけになった。

「……あの主さん、本当に猫なの?」
「ナァ~ゥ」

 尻尾は縦……動物園から逃げ出した黒豹じゃなかったんだね。

 この世界には動物園あるのかな?自然を大切にしてるなら動物も大事にしてそうだけど……。

「ンニャ~ゥ」
「ああ……ゴメン。で……どうなったの?」

 一つ一つ事柄を挙げていって尻尾の動きで判断が続く。時間は掛かるけど仕方無い。
 結果として判ったことは、行方不明のトラ猫は生きているらしい。場所はこの廃工場から程近い森の中。ただ、動けない事情があるみたいだ。

 命に別状は無いっていうから肩の荷が降りた気がする。あ……お腹が鳴った……。

 うぅ~ん……何とか食事を確保しないと頭も回らなくなるかも……。思わず迷い猫を優先しちゃったけど……。………。ま、良いかな。

「良し。じゃあ行こうか、マウ?」
「ンナァ~」

 マウにも何か食べさせてあげないとね。迷い猫を無事に見つけたら今度こそ食事を……その為のお金を手に入れないと。勿論、正当な手段で。


 僕は栄養を要求するお腹を撫でつつマウの後に続いた。場所は近くの森……交番の案内にもあった自然保護区で間違いないと思う。

 神社にお願いしに来たあの子、喜んでくれるかなぁ……。
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