ソリティア 転生者の望まぬ隠遁生活

蒼村嬉享

文字の大きさ
10 / 34
第一章 一人ぼっち

第六話 当たり前だと思っていた日常が壊れると現実感が無くなる

しおりを挟む
 マウに導かれて辿り着いた森の入り口は公園になっていた。所謂、自然公園っていうやつだね。所々に防犯カメラがある。

 公園の林道を進むことしばし……マウは脇に逸れ道無き道を進んだ。

 ん?何か森の中に建物が……。

「マウ。もしかしてアソコに?」
「ナァ~ゥ」
 
 マウは真っ直ぐに建物に進む。

 建物はコンクリート製。元は白なんだと思うけど蔦が絡まっていて緑の四角い空間が奇妙に見える。
 う~ん……虫が居そうだ。僕はあんまり虫が得意じゃないんだけどなぁ……。

 蔦に覆われた建物にはガラス窓とかは無い。もしかして、これって水源管理の建物だったのかな。建物の壁……蔦の隙間から『土地改良……水路管理……』とかの文字が見えた。
 水脈が変わったのか分からないけど、水路が新しくなって今は使われてないみたいだ。

 そんな緑の箱の中、蔦や草を掻き分けて進んだ先に……いた!

 キジトラ猫──だけじゃない。仔猫がいち、にい、さん、よん、ご……五匹もいる。

 …………。もしかして、居なくなった理由はこれ?子供が産まれたから帰らなかったってこと?

 あの子、そんな話しなかったよね。

 ……まぁ、細かい話は良いかな。うわっ!威嚇してる……ま、まぁ母親だから当然なんだろうけど。

「マ、マウ! 危ないよ?」

 マウは相手の威嚇など何処吹く風で近付いて行く。『主さん』の時といいマウは胆が据わっているなぁ……。

 そのままトラ猫同士で頭を付けた後、小さくゴロゴロと喉を鳴らしている。こうして見るとマウはかなり色鮮やかな毛並みをしている。成る程……色以外でも見分けは付きそうだ。
 親トラ猫はマウの挨拶で警戒を解いたらしい。仔猫達は興味津々でマウにじゃれ始めている。

 ………何かほんわかする光景だなぁ。

 おっと……猫とホッコリするのが目的じゃないんだった。

「あ、あの~……?」
「シャーッ!」
「うわっ!」

 親トラ猫が僕を威嚇した……。え?警戒を解いてくれた訳じゃないの?

 ヤレヤレといった様子でマウが二回程鳴いたところで、ようやく親トラ猫が警戒を解いてくれた。目だけは警戒したままだけど……やっぱり会話が通じないのは手間だな。

「あ、あのね? 君の飼い主の女の子が君を捜してたんだ。それでね? 家には帰らないのかなって思ったんだけど………」

 親トラ猫はチラリと子猫達を見ている。やっぱり言葉は通じてるみたいだ。

 仔猫がいるから移動できないのは分かる。でも、そもそも何でこんなところで産んだんだろ?散歩中に急に産気付いたのかな……う~ん。

「もし大丈夫なら子供達を運ぶのを手伝うけど……」
「ニャ~」

 親猫の返事を聞いたマウは尻尾を横に振っている。運ぶなってこと?あ……もしかして……。

「家に帰っても子供達を育てて貰えないって思ってる?」
「ンナァ~ゥ」

 マウの尻尾は縦……。やっぱり……。

「多分、君の子供達は誰かに貰われることになると思う。でも、ココに居ると危なくない? 君が目を離してる間、何があるか判らないし……」
「…………」

 多分、親トラ猫は分かってるよね。でも……子を引き離されるのは嫌なんだよね。

 …………。

 肉親と離れるのは辛いよね……。だから僕は神様に頼んで僕の家族から僕の記憶を消して貰おうとした。家族に辛い思いをさせたくなかったし、僕のことを忘れても僕が覚えていれば良いと思ったから……。
 正直言えば体感でまだたった一日だけど辛い。何気無い会話でそこに居るのが当たり前だった家族……。良い思い出も嫌な思い出も今となっては家族の温もりだったんだって今更だけど思った。

「あれ……?」

 気付くと涙が流れていた。おかしいな……あんなに泣いたのに。

「ニャ~……ニャ~」
「マウ……」

 マウが僕に寄り添ってくれている。駄目だな、僕は……。泣き虫を治さないと……。

 そんな僕を見ていた親トラ猫。僕としては家に帰らせたいけど強制出来ないし……。
 本当は子育てを手伝ってあげたいけど、『気付かれない存在』の僕じゃご飯の用意もしてあげられない。自分自身の生活だって怪しい……。

 何とか……神社に御詣りしてたあの女の子に伝えられればなぁ。

 そこで僕は、物凄く単純な見落としに気付いた。


 相手が猫じゃないなら、文字が読めるじゃないか。  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。

いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。 「僕には想い合う相手いる!」 初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。 小説家になろうさまにも登録しています。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

処理中です...